『歌われる詩』作者:水守 泉 / t@^W[ - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
 実に数ヶ月ぶりの投稿になります。イメージは読んでの通り童話風ですが多分色々気になる所は出ると思います、そもそも小説とは何か違う気もしますし。 ともあれ、思う所があれば遠慮無く突っ込みを入れてくださればこちらも助かりますしありがたく思います。それでは楽しんでもらえれば嬉しい限りです。
全角2440文字
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原稿用紙約6.1枚
 あるお城にお姫様が居ました。
 お姫様はお城のみんなから愛され、毎日なんの不自由もなくすごしていましたが外に出た事は生まれてからただの一度もありませんでした。
 ですが、お姫様は外というものを知らずに育ったので何を気にすることもなく、その全てはお城の中だけで十分でした。
 そんなある日、父親でもある王様はお姫様を部屋に呼び言いました。
 儂はどうやってもお前より早く逝ってしまう、これまでお前や民の事を考えよりよくなるように生きてきたがそれも長くはない。そうなると最も気がかりなのはお前の事だけだ、外を全く知らぬお前は儂が居なくなった後どうなってしまうのだろう、とな。
 しかし『外』などと言われてもお姫様には全く考えが及びません、それはそうでしょうこれまで『外』などというものを知らずにお城の中だけですごしていたのですから。王様はそんなお姫様を見てますます不安を募らせました。そこでお城に来ていた吟遊詩人を呼ぶとお姫様が『外』を知るのを手伝ってはくれないかと頼みました。
 吟遊詩人は快く承知しましたがこう言いました。
 私は様々な場所を旅し、人々から日々の糧を得る身です。それ故、姫が何もせずに食べていける余裕はありません。
 そう話す吟遊詩人に王様はお姫様と吟遊詩人が十分に食べていけるようにお金を渡そうとしましたが吟遊詩人は首を横にふり言葉を続けます。
 だからといって王様から施しのようなお金を受け取るわけにはまいりません。そのため姫も働いて日々の糧を得るための事をしてもらいますがそれでもよろしければ王様の頼みを聞き届けましょう。
 王様は迷いました。お姫様はこれまでお城の中で何の苦労もしていないため吟遊詩人の言う事が出来るのか疑問だったからです。しかし、お姫様の事を思えば仕方のない事だと考え、1つだけお姫様を決して誤った道へ進ませないならと言ってから改めて頼みました。
 吟遊詩人は早速お姫様にそれを伝えるとお姫様は簡単に首を縦に振りました、何も知らないお姫様には怖いといった気持ちはなかったのです。
 次の日から2人はお城を出て旅に出ました。吟遊詩人は王様からお姫様が詩を歌えると聞いていたため辿り着いた街で吟遊詩人が楽器を奏で、お姫様が詩を歌う事になりました。
 そうして外に出たお姫様は今までと全く違う生活に驚きました、お城では何に不自由する事もなく暖かく柔らかなベッドにたくさんの食べ物と綺麗な服があったのに『外』にはそれらが一切ありません。ですが、お姫様は不平や不満を一切言う事がありませんでした。それは自分が歌う詩を街の人々が聞き、吟遊詩人が詩に合わせて楽器を奏でると人々が2人へ拍手を送り笑顔で褒め称え、子どもたちが自分で探して摘んできたであろう花々を渡してきたりする事はお城の中ではなかった事でそれらは柔らかいベッドや美味しい食事以上にお姫様の心を満たしていたのです。
 それに季節に合わせ様々な花々が咲き、また着いた街では様々なお祭りが開かれている事もあり、お姫様にとっては何もかもが新しく素晴らしいものでした。そうしながらお姫様は様々な人々にも出会いました。たくさんの素敵な人や嫌な人、楽しい人、怖い人、優しい人、悪い人、悲しい人、喜ぶ人を見て知っていく事など、あらゆる事がお城での生活以上にお姫様の心をとらえ、また考えさせました。
 そのようにしてお姫様と吟遊詩人の旅は春が二度過ぎた頃に再びお姫様の住んでいたお城へと辿り着くことで終わりました。城に居た頃はただ与えられるだけで満足していたお姫様は自分で考えて様々な事を知ろうとするようになり、そんなお姫様を見て王様は吟遊詩人へお姫様と共に礼を言いました。
それに対して吟遊詩人はこう答えました。これで私の役目は終わりました、ですが姫が誤った道へ進まなかったのは私のお陰などではありません。全て姫自身が考え、選ぶ事で掴み取った成果であり姫が正しく成長した事に関して私はただの1つも何かしたわけではありません。ですが、私は違います私は姫と旅をして素晴らしいものを見ることが出来ました。知らぬ事を怖れず、あらゆる事をまっすぐな気持ちで知ろうとする姫の行動は私やその他多くの人々が生きていく中で捨てていたものでした。ですから私こそ王様と姫にお礼を申し上げたい、姫、貴女と旅が出来て良かったと。
そんな吟遊詩人にお姫様は言います。なら、貴方から教えてもらいたい事があるのですが聞いてもよろしいでしょうか。
はい、なんなりと。
わたくしには未だ知らぬ多くの事がありますが、旅をしてからいつでも知る事が出来たはずの事がまだ分かりません。
それはなんでしょうか。
わたくしが未だに知らぬ事、それは貴方の名前です。ですから教えていただけないでしょうか。そしてそれをわたくしに教えると同時にわたくしの名前を聞いてはもらえませんか。これからもわたくしと共にお互いが知らぬ無数の事を知ってもいいと思ったのならば。
吟遊詩人はその言葉を聞いて顔をあげました。そこには旅をする前から知っていた輝かんばかりの笑顔がありました。それを見て吟遊詩人は自分でも気づこうとしなかった自分自身の事に気づいたのです。
だからそれを伝えるために、そしてお姫様の言葉への答えとして自分の目の前にあるお姫様の顔と同じように笑顔で楽器を取り出しました。そして自らの声で1つの詩を歌います。何も知らなかったお姫様と出会った1人の男の物語を。
それから長い年月が過ぎ今ではお城もなく、そこにお城があった事は歴史の中でしかわかりません。けれど人々は詩を知っています、1人のお姫様と吟遊詩人が出逢い、共に旅をして多くの事を知ってからお城へ戻った後たくさんの詩とたくさんの花々でお城とその周辺に住む人々を幸せにした事を伝える詩を。
これからも続き、未来へ歌われていく今と昔を刻んでいく詩を。
2009-07-27 22:58:01公開 / 作者:水守 泉
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この作品に対する感想 - 昇順
作品を読ませていただきました。文章は読みやすく全体的に柔らかい印象を受けました。ただ物語の始まりが唐突なのと、全体的な描写が少ないため、読者が物語世界に浸る前に物語が終わってしまった感じです。あと、ラストが自己完結しすぎている印象を受けました。では、次回作品を期待しています。
2009-08-02 22:33:55【☆☆☆☆☆】甘木
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