一読、かなりの感銘に心が波打ったのですが、このジャンルは、感想を記すのが難しいですね。肝腎の原典、グリムの『ばら』を読んでいないので、その情動がグリムによるものか河鳥亭様の筆力によるものか、すぐには判別できないのです。文章的に整った掌編にもかかわらず、まだ感想が少ないのも、そのせいではないかと。今度図書館に行ったとき、原典を確認しようと思います。
とりあえず、内容そのものではなく文章的な部分のみで、僭越ながら私見をば。
まず、語り手が女性であることを、できれば最初の段落、少なくとも第二段落までに、なんらかの単語で補填したほうがいいと思います。第四段落の『姉』が出るまで、把握できませんでした。
そして、そのこととも少々カブるのですが、『私は生活のために必要な仕事はすべてこなさなければならなかった』という第三段落の記述から、私はてっきり語り手を元気な男の子なのかと思っていたところ、第四段落で『体の弱い私』と記述されており、これにも少々引っかかりました。
童話、あるいは寓話というものは、ファンタジックだったり寓意的であったりすればするほど、基本的な『語り』の流れは、把握しやすいほうがベターです。もし児童相手の読み聞かせならば、児童からのツッコミに随時対応していけばいいわけですが、文章作品の場合は特に、ですね。もちろん狙ってするシュール芸やドンデンのショート芸ならば、確信犯的に『隠す』『乱す』のもアリなのですが、この含蓄に満ちた一幅の叙情画のような作品では、やっぱり引っかかりなくするすると語りたい、そんな気がします。
以上、細々と指摘いたしましたが、この作品全体には、最初に述べましたように、しみじみと心をうたれました。すなおに感謝いたします。
2008-10-24 22:00:33【☆☆☆☆☆】バニラダヌキ
【作者】何年か前に書いたものですが、投稿する前に読み返してみて、自分でも「あれ、これは男の子だったっけ、ああ、女の子なんだ」と気づきました。冒頭の文体の堅さからして、男性的にすぎたと思います。ご指摘の通り「姉」がほとんど唯一の手がかりになりますが、これは投稿直前、苦し紛れに加筆したものでした。1段落2段落あたりでも工夫のしようはあったかと思います。
2008-10-25 01:00:11【☆☆☆☆☆】河鳥亭
初めまして。夢幻花と申します。
Kinderlegendenですね。幼稚園のとき、教室で読んだ覚えがあります。グリム童話集には収録されてないせいか、知ってる人が少なくて淋しかったり。懐かしいなぁ、という思いと共に拝読しました。
手元に原文が無いので、はっきりとしたことは申せませんが、原文ではもう少し文体がやわらかだったような気がします。それで、読んですぐに語り手が女性であることが解ったような。
「こういう小説」として読むぶんにはとても読みやすいし、素敵だと思うのです。ただ、グリム童話のアレンジとしては少し、首を捻ってしまうところがありました。
もともとグリム童話って、フランス、ドイツ周辺で、口頭によって伝えられる御伽噺だったんですよね。近所に住むおばあさんが、小さい子供に話して聞かせるような。より宗教的な観点を交えたものの、ヤーコプはできるだけ口承に近い形になることを意識し、第一版グリム童話集を完成させます(まぁ、もともとがブレンターノという人に依頼されて調べた資料としてのメルヘンだったため、子供に読ませるのに相応しくないという評価を受け、たびたび改編しますけれど〉
長くなりましたけど、そんな訳で、グリムやシャルルの童話は、たとえ近代小説風であろうと、「聞き手」を意識した形であってほしかったように思いました。
それともう一つ、「本当にしてはいなかった」は、「本当にはしていなかった」の方が自然だと思いました。(そうそう、コメント欄で古風な言い回しと仰ってましたが、これ、古風ですか……?)また、弟が「ぼくにこいつをくれたのだよ」と言うところがありますが、少々古風に拘りすぎたような、不自然な印象を受けてしまいました。「ぼくにこいつをくれたんだ」くらいで充分なのではないかな、と。
失礼なこといろいろ申しましたが、全体的にはとても綺麗な文章で、素敵だと思いました。多分、私が童話オタクじゃなければ気にならなかったのでしょうけど(笑)
次回作も期待してお待ちしたいと思います。長々、大変失礼致しました。
2008-10-27 18:01:46【☆☆☆☆☆】夢幻花 彩
こんにちは。はじめまして。
僕も原典を読んでいないので、なんとも言いがたいのですが。
近代小説として仕立て直すのならば、もう少しまとまった長さが必要だったのではないかという感じがするのですが、いかがでしょうか。情景や生活などの具体的な描写がほとんどないため、舞台が近代なのか前近代なのか、西洋なのか東洋なのかも判然とせず、近代小説と言うよりもやはり「童話」「寓話」という印象を受けました。近代的な小説であるなら、そこらへんの描写が欲しかった気がします。いっそのこと、たとえば1940年代の日本を舞台にしたりしても面白かったかもしれません。
さて「本当にする」は古風か? えーと、彩さんには悪いけど、現代語としてはやや古風だと僕も思います。でも、今でも使いますよね。解説が必要なほど古い言い方とは思えません。それから「くだすった」は、僕の印象では、古い用法と言うよりも東京方言のような気がするんだけど、どんなもんでしょうか?
2008-10-27 19:18:55【☆☆☆☆☆】中村ケイタロウ
【作者】次はですね、「フリーデルとカーテルリースヒェン」です。
2008-10-27 22:17:44【☆☆☆☆☆】河鳥亭
計:0点