『自暴二鬼』作者:不翔鳥 / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約2.99枚
 あるとき 赤鬼と青鬼が晩酌をしていた。相当なうっぷんが溜まっていたのか、その内やけになった二鬼は酔いつぶれ、いつしか赤鬼と青鬼の区別がつかなくなるほど真っ赤になった。
 そんな時、ふと青鬼が愚痴をこぼした。
「まったく、最近の閻魔の旦那と来たらよぉ 人使いが荒いのなんの!ちったぁ、あっしらのことも考えてほしいもんよ!」
 そして髑髏の杯をドンと置いた。赤鬼が、その杯に酒を注ぎ足した。真っ赤で濁った酒は、やがて髑髏から溢れ出したが そんなことは気にも留めず、赤鬼が言った。
「まぁ、そう言ってやるなって。あのお方もそりゃあ苦労なすってんだぜ?この前もよ、『最近は何かと若い亡者が多い!しかもほとんどの者が家族を取り残し、悲しませた罪を背負っておる。社会の波だかストレスがどうだかは知らぬが、嘆かわしいことよ……』と、ため息まじりに言っておられた。見かけによらず、慈悲ぶけぇお方よ」
 赤鬼は、ごつごつした手の甲で、今にも涙が流れそうな目元をぐっとぬぐった。青鬼は注がれた酒を一気に呑みほして言った。
「あぁ分かってる、よぉく分かってるさ!にしてもなぁ、近ごろは忙しいなんてもんじゃねぇぜ。この数十年、ろくに休みも頂けねぇし、ほうびもほとんど無しときた!ふん、こっちが死にたくなってくるぜ……」
 青鬼はゲップ混じりに 大きなため息をついた。赤鬼は そんな青鬼が鬱陶しいとでも言うように、眉間にしわを寄せた。
 そして話題を変えようと、その長い爪でつまみを食いながら言った。
「そういやぁ、黄鬼の話、聞いたか?つい二年ほど前のことだが――なんだ、この肉!あんまりいい人間のじゃねえだろ!ったくこれだから最近の奴らは――あぁ……なんだったか?おぉそうだ。んでよ あのクソまじめな黄鬼がよぉ――オレがサボったことを言いつけやがった奴だぜ?――あんまりにも忙しいもんだから 自分の金棒で頭ぶっ叩いたんだとさ!なんでも『一度でいいから死んでみたかった』だそうだ。ハッハッハ、鬼が死ねるわけねぇのになぁ。何を血迷ったんだか……!オレもいっけぇやってみようかねぇ?」
 赤鬼は苦笑いした。青鬼も力無く笑い、残ってた酒をラッパ飲みした。口から赤い筋が垂れているが、気にしていない。ぶはっ、と言って口元をぬぐい、そのまま机に突っ伏した。

 もう寝てしまったのかと思われていたその時、青鬼はぼそっとつぶやいた。
「人間っていいよなぁ……」
 青鬼に布団をかけてやろうとしていた赤鬼は顔をしかめ、布団を放り投げた。
「かっ!なんだなんだ、おめぇまでおかしくなっちまったか?」
 そしてガッハッハと笑った。青鬼は突っ伏したままなので、表情はよく分からないが、嘲笑と眠気の混ざった声で言った。
「だっていいじゃねぇか。好きな時、好きな場所で、好きなように死ねるんだからよ……」
2008-08-27 23:17:43公開 / 作者:不翔鳥
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■作者からのメッセージ
某妖怪アニメを見ていたときに、ふと酒に酔った妖怪を書きたくなり考えた話の試作第二号です。

今回は、読んでるうちについつい苦笑してしまうようなものを目指しまし、タイトルも工夫してみましたが、どうでしょうか……?
もっとも、実際の場面を想像してみると、なかなか怖いかもしれません(^^;
この作品に対する感想 - 昇順
こんにちは!読ませて頂きました♪
赤鬼と青鬼がでてきたので、私の頭の中では「泣いた赤鬼」という昔話が浮んでしまい、かってに感動ものかなとか思っていたら、全然違っていて、ある意味、自分に苦笑いしてしまいました。酔い具合や小道具なども上手く書かれてるなと思いました。最後のオチも、自分にないものは、なんだって羨ましく思ってしまうという教訓めいた物を感じました。あっ、これも私が始めに昔話を思い出したせいなのかなw
では次回作も期待しています♪
2008-08-27 21:54:24【☆☆☆☆☆】羽堕
初めまして。楽しく読ませていただきました。
赤鬼と青鬼のやり取りが楽しくて、個人的には好きです。自暴二鬼っていうタイトルも巧いですね。うふふ、面白いなぁなんて自分は感じます。髑髏の杯や人間の肉という細かい設定もよくて、ストーリーに入り込めました。何より、この短い文量で何だか良い気持ちになれるなんて……。ショートを上手に書ける方はすごいです。
一箇所だけ、「赤鬼は そんな赤鬼が鬱陶しいとでも言うように」となっていました。もしかしたら自分の間違いかもしれませんが、「そんな青鬼」の間違いではないかな?なんて感じてしまったりです。
次回作も楽しみにしています。
2008-08-27 22:47:08【☆☆☆☆☆】目黒小夜子
>羽堕さん
昔話だと、「鬼は悪」という設定が多い中、『泣いた赤鬼』では鬼が人間のような心ある姿で描かれているので、僕の中でも印象的なものですね。
今回の作品を書こうと思ったのも、もしかしたらそのような人間くさい鬼たちの影響があるかもしれません(笑
ご感想ありがとうございました!

>目黒小夜子さん
面白い と感じて頂けて、とても嬉しいです。タイトルもかなり悩んだものでしたので……。

ご指摘頂いた部分は、確かにその通りでした。申し訳ありません m(_ _)m
ご感想、ご指摘、ありがとうございました!
2008-08-27 23:27:41【☆☆☆☆☆】不翔鳥
作品を読ませていただきました。題名がいいですね。ちゃんとオチと結びついていてニヤリとさせられましたよ。短い故に締まっていていいけど、青鬼の心情を窺わせるシーンをもっと読んでみたかったですね。では、次回作品を期待しています。
2008-08-31 23:42:58【☆☆☆☆☆】甘木
軽く読めて面白かったです。
私には永遠の生命など恐ろしいです。人間で良かった……終わりがあるのなら。魂が永遠だったら嫌だなぁ……などと余計な事を考えていました。
人間臭い鬼達が可愛かったです。
では、また。
2008-09-05 14:26:49【☆☆☆☆☆】ミノタウロス
計:0点
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