『サマースリーブ』作者:メイルマン / AE - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
全角13223.5文字
容量26447 bytes
原稿用紙約33.06枚

 耳がよく知った夏の音を聞いた。真っ赤に開いた花火が空に消えていった。
 歓声があがって川べりのあちこちから、次々と花火が打ちあがりだした。花火の音に負けない大きなアナウンスが花火大会の始まりを告げた。
 僕は人ごみに押しつぶされそうになりながら、疲れきった両足を踏ん張って、夏の恒例行事を迎えていた。湿った空気が街を覆った夜に5万人以上が由利川に群がると、花火をうまく見られる場所へたどり着くのに、足を何度も踏まれながら汗だくになる必要があった。ハンドタオルはポケットで休む暇も無く、僕の左手で握り締められている。
 階段の途中で渋滞になった。交通整理の警官が大声を張り上げて道を空けるように促しているが、誰も動く気配は無い。聞く人もいない案内を何度も繰り返す警官の横で、カップルがガードレールに腰掛けて花火を見つめている。夜空で種が弾けると、満開の花の光が彼らの顔を照らした。楽しげに笑っている。
 横でビールを飲んでいた男が、奥さんから焼き鳥を受け取った。人ごみの中、至近距離で焼き鳥のにおいをかいだ僕は、晩御飯を食べていないことを思い出した。
――帰りがけに一緒に食べにこう。
 すり抜けることも出来ないくらいに密集した集団は、ゆっくりと階段を上り始めた。花火の音は心臓に響くほど大きい。階段を上るごとに、中空へ駆け上がっていく種火がはっきりと見えた。由利川の穏やかな流れのそばから、断末魔みたいな音を立てて種火はあがる。輝くような破裂の瞬間があって、ポップコーンが弾けるようなパラパラという音は、続いて打ちあがってきた花火にかき消される。
 僕は彼女に電話をかけた。耳元ではっきりと呼び出し音が鳴った。彼女は出ない。
 階段を上りきると由利川はすぐそこに見えた。浴衣を着た女の子が目立った。家族連れや自転車を押す中学生。人々は柵に群がって、長い長い由利川の両端を歓声で囲っていた。
 やっと自由になれるくらいのスペースが出来て、僕は人ごみを抜け出した。
 待ち合わせ場所はおおざっぱに決めていたけれど、これだけ浴衣が多いと見つけるのは大変かもしれなかった。
 結衣はもう来ているはずだった。

 火花が目の奥で散った。マンガの表現は嘘じゃなかった。平瀬のコブシの直撃を食らった僕の右目は、突発的なガス爆発を思わせる熱さで燃え上がった。ボクシングのジムに通っているという噂は本当かもしれない。
 よろめいた体がトイレのタイルにしたたかに打ちつけられた。床は濡れていて、僕には服が汚れたことが、殴られたことより屈辱的なことに思えた。
 平瀬の怒り方は半端ではなかった。仲が良かったわけではないが、高校で同じクラスから同じ大学に来たから、どんな人間かはそれなりに知っているつもりだった。平瀬は頭が良く、大学にも推薦で通った。高校時代はけして勉強している素振りは見せず、よく取り巻きと授業を抜け出すのを楽しんでいた。不真面目でも推薦で大学に受かったのは、平瀬の要領のよさだった。平瀬の教師との会話は機転が利いていて、教師は平瀬の雰囲気になんとなく打ち解けてしまうのだった。見る限り、平瀬はその手の会話をするときは特に力を入れているようだった。
 平瀬の顔立ちはかなり女受けした。彼がいないところで女子が彼の噂話をするのを、僕は教室のすみで耳に挟み、内心うらやんでいた。彼は男から見ても確かに美形と思わせるような端正な顔立ちをしていた。ドラマに出てくる俳優のように、はっきりとした目鼻立ちをして、笑うと八重歯がこぼれた。そして平瀬は結衣と付き合っていた。高校3年生の1年間。
 そんな平瀬が僕を突然殴りつけた。由利川の花火大会を三ヵ月後に控えたころだった。講義を終えてバイトの前に生協に寄ろうとした僕は、突然現れた平瀬に肩をつかまれ、トイレに引きずり込まれた。口を開く間もなく、目から火花だ。
「おい、結衣と付き合ってるんだって?」
 床に転がった僕を見下ろして、平瀬は僕を睨みつけて言った。僕は次の一撃が飛んでくるのが恐ろしく、体をこわばらせながら立ち上がった。
 そうだよ、僕が言うと平瀬は僕の胸倉を掴みあげた。個室の扉に押し付けられた僕の頬を、平瀬のコブシが2度殴った。口の中の左側が熱くなった。たらたらと流れる感触があって、それを飲み込むと痛みが襲ってきた。鉄の味がのどに張り付いた。
「別れろ」
 平瀬はそういうと僕の髪の毛を引っ張り上げて、首を締め付けてきた。こんな平瀬は見たことがなかった。鬼みたいな表情で歯をむき出しにしていた。
 いやだ、苦しい呼吸の中でそう言うと、腹に重い感触を叩き込まれた。一瞬のど元までこみ上げるものがあったが吐けなかった。
 2年前に別れた女にいまだに執着しているとでも言うのだろうか。それはないはずだった。平瀬のほうから結衣を振ったのだ。最近、構内をサングラスをかけた女性と歩いているのを見た。思いつく答えは一つだった。こいつは僕が嫌いなのだ。
 僕は抵抗するのをやめた。足の力を抜いてずるずると床にしゃがみこんだ。喧嘩をしたことが無かった僕には、わけがわからないほど全身を覆う痛みは新鮮なくらいだった。
「わかったな、別れろよ? 変態」
 平瀬は僕につばを吐きつけて出て行こうとした。お気に入りのジーンズに染みができたのを僕は感じた。
 ヤリステヤロー、僕が平瀬の背中に言ってやると、風よりも速く平瀬の蹴りが飛んできた。顔面に一発、帰り際に右足も踏みつけられた。
 ぶつぶつと何かをつぶやきながら平瀬は出て行った。僕は動けなかった。バイトに行けないことを確信した。めったに人が来ない講堂横のトイレで、幸い平瀬が電気を消していった。寝るにはおあつらえ向きだ。しばらく横になることにして、僕は服が濡れるのにもかまわず横たわった。
 呼吸は荒く、体からは恐怖が引かなかった。争いごとが嫌いな僕の頭の中には、これほどのことをされたというのに、泣き寝入りという言葉が燦然と輝いていた。

 僕に「変態」と平瀬は言った。それは正しい評価だ。
 僕が高校時代に女子の着替えを覗いたのは、偶然でも神様のいたずらでもなんでもない。
 僕はそれを見たくて見た。覗けたのではなく覗いた。計画的に、自主的に、望んだとおりに。だから報いを受けるのは当然だ。自己弁護をするつもりはないし、担任が職員会議でかばったように、年頃の高校生が異性に興味を持つのは当然という論理に援護してもらおうとも思わない。
 僕は3年生の春の健康診断に乗じて、同じクラスの女子の着替えを覗き見た。放送部だった僕は覗きに必要な機材のことも、着替え場所に指定されていた視聴覚室にあるカメラのことも承知していた。教室を割り振った健康診断の責任者の迂闊さに、感謝もしていた。
 唯一の誤算は僕と同じ事を考えた奴がいたということだ。そして僕のほうが、モニターのある放送室に先にたどり着いてしまったことだ。
 小川は扉を開けた瞬間に、「あ」と声をあげた。下あごが伸びきって間抜けな顔だった。僕もきっと同じ顔をしていたに違いない。モニターには女子の着替えが今まさに始まろうとしている視聴覚室がばっちりと映っていて、小川の視線がそちらに動いた。
 小川の脳内コンピューターは僕のよりもはるかに高性能だった。僕が逡巡している間に、小川は答えをはじき出し、踵を返して叫びながら職員室へと駆け出した。ノロマな僕には小川を共犯にしたてあげる間なんてなかった。数十秒もしないうちに、身体測定から姿を消した僕を探していた男性体育教諭が放送室へ現れた。
 あとはあっという間だった。噂は学校の中をあっという間に駆け巡り、学校は見事に僕色に染まった。机は落書きにまみれ、最後尾の僕に配られるプリントは破られていた。
 停学処分も親の呼び出しも、あのころの僕をひどく傷つけた。僕はうちひしがれ、停学の間は家でずっと泣いていた。勇気をふるって再び学校に来れたのは、間違いなく結衣がいたからだった。
 学校の中で僕が唯一まともに話せる女子だった。結衣は僕の家の近くに住んでいたことがある。小学校5年生のときに転校してしまったが、お互いに親が共働きだったことで、学童保育で僕たちは仲が良かった。他の子達と少し歳が離れていたせいか、二人で遊ぶことが多かった。高校に入って同じクラスになったときも、僕たちはお互いにすぐわかった。結衣はあのころの快活で可愛い結衣のままだった。少し乱暴な言葉遣いもそのままだった。始業式の日にニコニコしながら近づいてきて、僕に再会の挨拶をした。僕は初恋の相手にどきまぎしながらも、ぎこちない挨拶を返した。交わせる会話はわずかだったが、僕は結衣との再会を喜んでいた。結衣は本当に可愛くなっていた。すらりとした足がブレザーのスカートからのびていて、あらわになった太ももは綺麗だった。小ぶりな顔立ちには女優みたいな清潔感があった。教室の隅っこで一人きりで本を読んでいるような、友達のいない僕からしたら別の世界の人間のようだった。僕は自分が惨めになった。思えば僕はコンプレックスまみれの人間だった。プライドが高く、我欲が強く、それでいて臆病で、何かを変えようとする意思も実行力も無かった。部活もせず、自分はゴミ虫みたいな野郎だなんて思いながらも、本心では他の奴らとは違うと、自分は特別だと信じていた。
 そんな僕が結衣と出会えたことは、僕の人生の中でトップ3に入るくらいの幸運な出来事だ。もう1つはこの世に生まれてきたこと。もう1つは本気で手首を切ったのに死ななかったこと。

 停学中の僕の部屋はカーテンも窓も締め切って、蒸し風呂みたいな湿気だった。カーテンからわずかにこぼれて来る光がうっとおしく思えた。テレビのドキュメントで見たひきこもりの部屋みたいだった。ぎりぎりと募る自己嫌悪と自尊心の崩壊で、僕はベッドの中でのた打ち回っていた。親が扉の外から慰めの声をかけてくると、僕は叫び声をあげてかき消した。部屋につけた自作の鍵は頑丈で、外部からの干渉は許さなかった。
 猛烈に格好悪い自己憐憫に苛まれていた僕は、いつしかカミソリで左手首に傷をつけることを覚えていた。深くは切っていなかった。じわじわと血がにじむ程度に手首を切った。手首を切れば安心するだとか、嫌なことを忘れられるとか、何かの番組でモザイクのかかった少女が話していたけれど、嘘っぱちだった。僕は自分が可愛く、自分を可哀想に思った。自傷は自己嫌悪からの脱出の手段だった。手首を切るほどに打ちひしがれ、精神的にまいっている自分をプロデュースしていた。クラスの友人が突然来て、この手首を切っている光景を目撃すればいい。そして僕に思いきり同情して、クラス中に触れ回って欲しいと思った。そうすれば学校に戻ったときに気丈に振舞う僕は、皆から一目置かれるのではないかなんて馬鹿な空想さえしていた。
 自覚は突然やってくる。僕はそんな風に可哀想な自分を作り上げようとする自分に気づき、猛烈なかんしゃくを起こした。叫び声を上げ、手当たり次第に部屋のものを投げつけた。テレビがパソコンの隣のプリンターを直撃した。目覚まし時計は窓ガラスにひびをいれ、扇風機は支柱が奇妙に曲がった状態で床に転がり、死にかけの昆虫みたいに首を振ろうとした。左手首にカミソリを押し当てて思いきり引いた。狂乱状態でよほど力をいれたらしく、噴水のような勢いで血が飛び出してから僕は我に返った。叫び声をあげながら、僕はばんそうこうが必要だと思った。鍵をあけて階下に飛び出すと、母親が僕を恐怖の表情で見つめた。

 救急車があって、軽い入院があって、僕はほどなく帰ってきた。
 ぼろぼろになった部屋に戻ったとき、僕は自分がなんて馬鹿な奴かと思った。最低のみじめなクソ野郎だった。お気に入りのコンポは電源を入れようとするとガリガリと音を立てたきり動かなかった。テレビのリモコンは僕を無視していて、本体のスイッチでつけなければならなかった。ベッドのシーツは血で汚れていた。手首にはいっぱい傷がついていた。3日後に学校が控えていた。
 僕は泣いた。自分がどれだけ愚かで弱くて、何も無い人間かと悲嘆して泣いた。怒りでも哀れみでもなかった。とてつもなく悲しかった。
 結衣からのメールを見たのはそのときだった。停学になって以来ずっと携帯の電源は切っていた。久々に携帯を見ると、知らないアドレスからからかいのメールが6件ほど入っていた。クラスの奴らが誰かから僕のアドレスを聞きだして送ってきたのだろう。「変態、死ね」とか、「カスカスカスカスカスカスカス」とずっと続いているメールだとか、概ね僕が予想したとおりの内容だった。僕はそんなメールは気にも留めなかった。一体誰が送ってきたんだろうとか、考えることもしなかった。メールの受信画面に谷原結衣という名前がいくつも踊っていたから。
 最初のメールは停学初日に届いていた。「馬鹿じゃないの」という件名で、僕のことを責めていながら気遣っているのがわかった。結衣はそういう子だった。優しさの照れ隠しにきつめの言葉を使った。二件目はその次の日「返信よこせ!」という件名の横に、歯をむき出しにしてヤリを持ったような顔文字がくっついていた。三件目は手首を切った日で、件名には怒りを表しているのだろう、マンガのキャラクターが怒ったときにこめかみに浮かび上がらせるような絵文字が一文字はいっていた。そしてその日の夜にもう一件。件名は無題だった。かなり長く続く慰めの文面の中で、結衣の口調が少しだけ変わったことが僕には読み取れた。きっと僕が手首を切ったことを知ったのだろう。教師の中に口が軽い奴がいるみたいだ。個人情報保護なんてあったもんじゃない。きっと学校中が知っている。僕は学校に行く気が更にしぼんだのを感じた。

 結衣が平瀬と付き合っていることを知った時のショックを、どう言い表したらいいだろうか。僕は平瀬のことをうらやましく思い、ねたましく思っていた。それは平瀬が人気者だからとか、女子にもてるからとかだけではなくて、平瀬の振る舞いの中にいけすかないものを感じ取っていたからだ。僕には平瀬の人付き合いのチョイスや言動や行動の中に、計算されたものを感じていた。平瀬は自然と周りに人が集まるタイプではなく、人気者になれるように行動して人気者になっているタイプの人間だった。
 その平瀬が結衣と付き合いだしたとき、周囲の評価は「お似合いのカップル」という、とんでもなく馬鹿馬鹿しいものだった。かごの中にしこたま入ったゴミをかき出して、僕が自転車で帰ろうとしていると、下校する生徒の波の中に、生徒玄関から出てきたばかりの結衣と平瀬を見つけた。平瀬はなれなれしく、肩がぶつかるくらいの距離で結衣と歩いていた。僕は一瞬状況を理解できずに固まってしまった。凝視する僕に気がついたのか、結衣はこっちを見て少し恥ずかしそうに笑って手を振った。僕は手を振り返すのも忘れそうだった。慌てて手を振ると、結衣の横で平瀬がうんこを見るような目で僕を見ていた。
 あの結衣があの平瀬と付き合うなんて。僕には世界が滅亡のときを迎えていないことだけが救いだった。それ以外のどんな喜ばしいことも、僕の慰めにはなりそうもなかった。
 現代のいじめは過酷だ。みな教師にばれないように、かついざというときに自分が責任を負わなくてもいいように、さりげなく僕を傷つけようとした。グループワークの授業は僕だけが必ず余った。僕と同じように内気で友達のいない斉藤君も、あてつけのように平瀬たちのグループが歓迎して仲間に入れるのだった。僕のほうに消しゴムのカスがいくら飛んできたとしても、他の友人とふざけていて手元が来るって当たったと言えばいい。僕が躍起になって証言したところで、クラス中が(結衣以外は)僕の証言と逆のことをいうだろう。うすうす気づいている教師もいたが、女子の着替えを覗いた非が僕にはあるというのが正常な見方だ。背中に受ける消しゴムのカスがティッシュ箱に変わったときも、教師は知らないふりを続け、クラスはかみ殺した笑いで一杯になった。結衣の手前、平瀬が笑いをもらさないように必死に耐えているのを僕は伏せた目の端で認めた。
 僕の制服が何故かプール学習のときに水面に浮かんでいたり、弁当箱が空になり、中身がトイレをつまらせていたり、自転車の前輪と後輪が一日ごとにパンクしていたり。僕は毎日を戦いながら、結衣と平瀬の噂を集めていた。休み時間は机に突っ伏して、耳に全神経を集中させた。
 平瀬のほうが結衣に告白したらしいだとか、まだセックスはしていないだとか、この間二人で遊園地に行ったらしいだとか、土曜日は学校帰りにそのまま街に出てデートをするらしいだとか、まだセックスはしてないけどキスはしたらしいだとか、公開予定の映画を今度の休みに見にいくらしいだとか、平瀬が結衣にプレゼントをしたらしいだとか、まだセックスはしていないらしいだとか……。
 受験が近づくとみんな勉強に必死になって、僕にかまうような余裕がなくなってきたらしく、いくぶん平穏な毎日だった。秋口、自転車に乗って帰る途中、駅に向かう結衣と平瀬の姿を見かけた。お揃いのマフラーを巻いて、手をしっかりと握り合っていた。平瀬がなにか喋り、結衣は笑っていた。僕は家に帰り、お決まりのようにベッドでうめいた。平瀬の家が燃えれば良いと心から思った。

 国数理英にひぃひぃうめいていた2月と3月が過ぎ、卒業式がやってきた。僕はどうにか大学への進学をものにしていた。平瀬と同じ大学なのがしゃくだったが、僕の学力では精一杯の大学だった。
 結衣は欠席していた。風邪をひいたと担任が言った。卒業式が結衣に会う最後の機会だと見込んでいた僕には残念なことだった。ごくたまにメールをすることはあったが、課題のことや勉強の話をするくらいで、実際に会うような用事なんてなかった。
 退屈な式が始まった。校歌斉唱までの時間、3年生の代表が答辞を読み上げている間、僕は後ろから聞こえて来た「え、別れたの」というささやき声を聞き逃さなかった。平瀬の横に座っている田山の声だった。「ああ、うん」平瀬が答えていた。「マジで? なんでなんで」「いや、なんかうざったくなっちゃってさ。付き合うってちょっとめんどくさいって気づいた」「ぎゃはは、ホント? え、てかやったの?」「やったやった。当たり前じゃん、一年だし、付き合って」「え、どうだった? てかいつ?」「ん、こないだだよ、別れるちょっと前」「なに、じゃあやり捨てじゃね?」「そうかな、そうかも。目標達成みたいな? ぎゃはは」
 耳をふさいでしまいたい気持ちと、全てを聞き漏らすまいとする気持ちが頭の中でぐるぐる渦巻いていた。僕は平瀬がどうしようもなく憎くなり、けれど起こってしまった事は取り返しがつかないという事実も受け止めていた。心の中で結衣が平瀬とそういう仲になっていることを覚悟していたからだろうか。答辞が終わって全校生徒が立ち上がるとき、結衣の空席がはっきりと見えた。
 僕は卒業式を終えたあとの4月が来るまでの涼やかな春を、憂鬱な気分で過ごさなければならなかった。

 結衣と再会できたのは運がよかった。メールで近況を尋ねるのも気が引けたし、平瀬が結衣とやったという話を聞いてからは、僕は結衣のことも平瀬のことも考えたくは無かった。何か心の傷をえぐられる気ような気がしたのだ。
 駅前の書店で結衣は働いていた。立ち寄ったのは偶然だった。驚いた僕はまともに声をかけることもできず、ストーカーよろしく棚の影から立ち読みのふりをしつつ様子を伺った。結衣だった。間違いなかった。
 どうやって声をかけようと考えたが、うまい声のかけ方なんて知らなかった。その日から僕は何度も書店に通いはじめた。遠目で結衣を見かけるだけで満足で、僕は書店に行くたびに、自分が結衣のことを好きだと確信した。ある日書店に紙が張り出された。アルバイト募集と書いてある大きな赤い紙だった。僕は勤務時間も時給も、大学の時間割も見直すこともなく、文具屋に履歴書を買いに走った。
「え、うそうそ。ホント? 入ったの、ここ?」
 対人恐怖症のケがある僕は奇跡的に面接にパスし、僕が考える限り最高に自然な形で結衣と再会した。接客業向きの人間を見極める才能がない店長には感謝しなければならない。
 結衣は僕を見るなり目を開いて驚いた。僕はもごもごと、まぁね、と返した。結衣は笑顔になって「よろしく」と言った。「先輩だからばしばし行くからね」
 結衣は由利川の近くに住み、短大に通っていた。両親は転勤して東京に行ったが、結衣はこっちで一人暮らしをしているらしかった。
「けっこう一人暮らしって寂しいんだよね。今度遊びにきてよ」
 結衣がそう言ったとき、僕は極限まで自然に見えるように、おっけー、と言った。心の中では一生行く勇気はないだろうと思った。結衣への僕の気後れ具合といったら生半可ではなかったのだ。

 結衣は大学生になってさらに綺麗になっていた。女の子はどんどん綺麗になるというが、その通りだ。
 バイトの帰り、改札までの距離を二人で歩く短い時でさえ、道行く人が結衣に目を奪われるのがわかった。結衣はバイト以外は本当に暇らしく、ときたま二人で遊びに行った。僕は緊張してなかなか喋らなかった。下手に喋るくらいなら黙ってニコニコしていたほうが印象がいい気がしたのだ。会話が下手な僕にはそれが最善の方法に思えた。
「あんたってホントかわんないね」
 結衣が言った。何がだよ、というと「シャイなとこ」と僕の本質を現す言葉が返ってきた。内気とも根暗とも弱気とも消極的ともいえる僕の性格を現すのに、精一杯の前向きな形容だった。結衣のこういうところも好きだった。
 うるせえよ、とぶっきらぼうに返すと「でも、落ち着くわ」と結衣が言った。
 その日の夜は眠れなかった。「落ち着くわ」という声が頭の中で反響し続け、どの音楽を聴いてもリズムに乗せて「でも落ち着くわ♪」という替え歌が出来上がった。
 もう誰が何と言おうと僕は恋をしていた。
 大学二年生になっても、僕たちは週に一回くらいはご飯を食べたりした。ここまで行ったら僕にとっては付き合っているも同然の状態だったのだが、結衣にとってはそんなことはないらしい。一度冗談っぽく、おれたちって付き合ってるみたいだね、と結衣に言ったことがある。思いきり目を細めた結衣が「ヘンタイなのにその自信は何?」と僕に言った。その後に結衣が思いきり可愛い笑い声をあげてくれなかったら、僕は真に受けて立ち直れないところだった。
 街を二人で歩いているとき、平瀬の姿を見かけた気がした。僕はその時メガネを忘れていたので、遠くの方にいる平瀬を見分けられた自信がなかった。結衣はショーウィンドウの中の夏服に目を奪われていたので、きっと見なかったろう。
 気のせいかと思い、その時は話題にもしなかった。
 そうして3日後に、僕は平瀬にトイレでぼこぼこにされた。

 何故平瀬は僕を殴ったのか。たぶんあの日に僕と結衣の姿を見て、あるいは誰かから何か聞かされていたのかもしれない、二人が付き合っていると誤解したのだ。付き合っているのかという問いに、とっさにイエスと答えたのは良かったのか悪かったのか。個人的には平瀬の頭に血を昇らせてやったので満足だ。
 平瀬はまだ結衣に未練があるのだろうか。いや、平瀬のほうから振ったのだったらそれはないはずだ。なら一体なんだろう。
 襲撃された次の日、満身創痍の体でバイトに向かうと、僕の無断欠勤をしかりつけるべく待ち構えていた結衣は、僕の右目を指差して「なにそれ?」と言った。よく見れば頬も腫れ上がっているのがわかるのだが、僕はとっさに顔を背けて、階段から落ちたという世界一カッコいい嘘をついた。これで結衣は僕が誰かと喧嘩をし、勇敢に戦ったと思うだろうという、汚く幼い計算が僕の腹にあった。ところが結衣は足を引きずって敗戦兵のように本を整理する僕に本当にひいてしまったらしく、お大事にと言ったきり、その日はさして会話も無かった。すべて平瀬のせいだ。
 僕は想像力をはたらかせて、平瀬の気持ちを予想した。かつて付き合っていた女の子が、僕のような変態と付き合ったとしたら、それは平瀬には許せないことなのではないか。僕には平瀬みたいな奴の気持ちはわからないが、平瀬はそういうことにもこだわりそうな気がした。そうだとしたら、やっぱり救いようのないムカつく野郎だ。
 由利川の花火大会が近づくと、僕と結衣は二人で見に行く約束をした。由利川は近いのに、マンションの陰に隠れて花火が見えないのが不満だと、もっと調べてから住めばよかったと結衣は言った。一人で由利川まで出るのも寂しいから付き合えとのことだった。
 花火大会の日は蒸し暑かった。

 結衣との待ち合わせ場所に着くまでに、ハンドタオルは使い物にならなくなった。汗が絞りとれそうなくらいに濡れたタオルをショルダーバッグの中に押し込んで、僕はもう一度結衣に電話をかけた。花火の種類が変わり、低めの花火が何本も地面からシャワーのように噴き出している。その滝のような音をおしのけて、携帯の呼び出し音が鳴る。出ない。
 僕は周りを見渡した。もう結衣は来ているはずだった。子供たちがわたあめを持って走っていった。警官が拡声器を持ちながら人の多い場所をかき分けて行った。大玉があがり、歓声があがる。缶ビールを片手に大学生の集団がとうもろこしにかぶりついている。一人で浴衣を着て立ってる女の子は……いない。
 僕は周囲を歩き回りながら結衣を見つけようとしたが、なかなか見つけられなかった。電話がかかってくるのを待つしかないと思ったとき、僕は人ごみの中、遠くの方に平瀬の姿を見かけた。隣にいるのは、浴衣姿の結衣だった。二人は川面を照らして打ちあがる花火には目もくれなかった。群集は上を見上げているのに、二人だけがお互いを見つめていた。
 僕は驚き、観衆の間を縫うように二人に近づこうとした。その瞬間、目を疑うような事態が起こった。平瀬が結衣にキスをしたのだ。僕は、あ、と声を上げたが、花火の音にかき消された。僕は結衣が平瀬のキスに応えたように見えた。平瀬は結衣の背中に腕を廻し、ドラマのワンシーンみたいに固く抱きしめている。
 僕は立ちすくみ、恐慌状態に陥った。とっさに長袖の上から左の手首を握る。まだ傷跡が残る手首が激しく脈打っていた。汗が全身から噴き出しているのに、背中がとんでもなく寒かった。手首は熱く、血が流れているような錯覚があった。手首を切りたいような、あの時と同じような衝動が体の内側から蘇ってきた。
 僕は恐ろしい仮説に突き当たっていた。平瀬に振られた結衣が、もしまだ平瀬のことを好きだとしたら。平瀬を振り向かせるために、僕と付き合っているような振りをして、平瀬の関心を取り戻そうとしたとしたら。結衣は知っていたのかもしれない、僕が誰に殴りつけられたのかを。そうして平瀬の関心が戻ってきたのを知ったかもしれない。
 そうじゃなければ結衣みたいな可愛い子が、こんな僕と仲良くする理由がないじゃないか。根暗で変態で自殺未遂者の僕と、一緒にいる理由なんて。
 足の力が抜けて、奈落に落ちていくみたいだった。僕は恐ろしくなって目をふせた。見ていられなかった。花火なんて関係なかった。目の前にあるのは世界で一番衝撃的で、恐ろしい、おぞましい光景だった。
 その時、花火に紛れて小気味いい音が鳴った。顔を上げると、結衣が平瀬に平手打ちを食らわせたところのようだった。結衣たちの周囲の人間が、驚いて二人を見つめている。平瀬は何かを言おうとしたが、間髪いれずに結衣が足を踏んづけた。平瀬は痛さにうめき、結衣は怒っているようだった。
 僕は誤解をしていたかもしれない。そう思うと急に体に力が湧いてきた。僕は強引に人波をかき分け、文句を言われつつも結衣のところへ駆け寄った。
「あ、来た。行こう、もう」
 結衣は僕の手をとって平瀬から離れようとした。
「おい、待てよ」
 平瀬は結衣の肩を掴んだ。僕は夢中になっていたので、その手を強引に払いのけてやった。平瀬は僕に気づくと、あの日のトイレと同じような目で僕をにらみつけた。
「変質者が、別れろって言ったろうが、殺すぞ、消えろ」
 僕は何も言い返さなかった。何かを言おうとしたが言葉が出てこなかった。僕は口下手なのだ。その代わり興奮状態だった僕は、ピストルが暴発する感じで平瀬をぶん殴った。
 文系で運動嫌いの僕のパンチはさぞ効かなかったろうが、手を出されるとは思っていなかったらしく、平瀬は少なからず動揺しぐらついた。その後は悪魔みたいな顔になって、僕の鼻を折るくらいの強いパンチで僕の鼻を殴った。たぶん折れたと思う。
「きゃあ」
 ゴマをつぶすような音が鼻から聞こえて、結衣が叫び声をあげると、遠くから交通整理の警官が近づいてきた。平瀬はまたもやぶつくさ言いながら、さっと逃げ出していった。でも警官は会場のいたるところにいるはずだ。
 僕は生来の大人しそうな顔立ちに助けられ、完全な被害者扱いだった。先に手を出したのがこっちとはいえ、鼻から大量の血を流している人間を、反証もなしに犯人扱いできないようだ。警官は優しかった。
 事情を聞かれると面倒くさいことになる。僕と結衣は駆けつけた警官が目を離した隙に、人波の中へもぐりこんだ。かくれんぼみたいで楽しかった。川べりから少し遠い、屋台の並ぶマンションの前まで来ると、僕は鼻につめるティッシュを取り替えながら聞いた。
 あいつ、なんだって?
「もう一回付き合おうだって」
 なんで?
「諦めきれないんだってさ。誰があんな奴」
 僕は事態を上手く飲み込めないまま正直に聞いた。結衣は平瀬とやったんじゃないの?  僕は足を思いきり踏んづけられ、危うく屋台に突っ込みそうになった。
「誰が? そんなわけないじゃない。振られたからってそんな噂流してんの? あいつ、やっぱりサイテーのクズだね。やりたいやりたいって言うから振ってやったの。良いのは外面だけなんだから。あんたも何信じてんのさ、バカ」
 僕は鼻の痛みも忘れて幸福な気持ちで立ち尽くした。
「なによ、なんか言いなさいよ」
 僕は、よかった、と答えた。本心だった。とても嬉しかった。
「ていうかすごかったねさっき。殴ったりするんだ」
 なんか夢中でやっちゃった、僕は言った。二人して笑った。僕の想像ではここで結衣が僕のほっぺにキスをするくらいの褒美があるはずだったが、鼻を折ってもまだキスまでは遠いらしく、そんな素振りは無かった。
 突然、夏の蒸し暑さが戻ってきたように感じた。花火大会はまだ続いている。
「スイカでも食べてく?」
 結衣の一言で、僕はおなかが減っていたことを思い出した。はっきり行くと伝えると、結衣は意外そうな顔をして笑った。服も汚れちゃったしね、と、僕はシャツの赤い汚れを指差した。
「洗濯してあげるよ」
 結衣は言うと、僕を先導して歩き出した。家は由利川からすぐ近くにある。5分もせずにつくはずだ。
 僕はゆっくりと、時折立ち止まるくらいのスピードで歩いた。
「早く来ないと置いていくよー」
 結衣がそんなことをしないのは知っている。後ろで花火がまだ上がっている。
「もう、遅いってばー。どっか痛いのー?」
 正直なことを話せば怒られると思った。でも少しでも長く歩いていたかった。家がもう少し遠くにあったらいいのに。
 結衣が駆け寄ってきた。姿が花火に照らされてはっきりと浮かび上がる。
――僕はまだ、結衣の浴衣姿を堪能していない。
 こんな気持ち悪いことを言ったらきっと家には入れない。結衣が僕の手を握った。
 背中で打ちあがった大花火の音が、心臓を強く震わせた。
 もうはっきりと夏だった。

2008-08-16 12:37:40公開 / 作者:メイルマン
■この作品の著作権はメイルマンさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
読んでくださった方、どうもありがとうございました。
作品の感想をいただければとても嬉しく思います。
「面白くない」の一言でもいただければ大変ありがたいです。
どんな指摘でも批判でもお寄せください。
1、面白かったか面白くなかったか
2、時系列のわかりにくさは致命的か
3、設定や展開に違和感はないか

特に感想がない方も、この三点に触れていただければありがたいです。
どうかよろしくお願いいたします。
この作品に対する感想 - 昇順
1.川の流れを見ているようだった。
2.いいえ、まったく。
3.特にない。

 最初に思ったのは「語尾に『た』が多い」という初歩的なことだった。私だったら二、三文をまとめてしまう。それ以外はとくになにも感じなかった。あ、高校生・大学生にしては比喩表現が幼稚だとは思った。そこが直裁で面白いけれど。あとは、普通。普通の読み物だった。
2008-08-16 13:42:35【☆☆☆☆☆】模造の冠を被ったお犬さま
こんにちは!読ませて頂きました♪
面白かったです。すごいスッキリできました。主人公の「よかった」は、私の方が、そう思ってるのではないかというぐらいでした。完璧に最悪のエンディングを想像していたので、よかったです。時系列も気になりませんでした。ちゃんと繋がっているので読みやすかったです。設定や展開も、楽しめました。すごくハマれた感じです。一つ「噂は学校の中をあっという間に駆け巡り」ここの「あっという間に」は、なくてもいいのかなと。主人公の一人称なので、それほど気になりませんでしたが、他になかったので。
では次回作も楽しみしています♪
2008-08-16 13:47:13【★★★★☆】羽堕
 こんにちは。拝読いたしました。
 完成度の高い作品だと思いました。ただ、某お犬様が「普通の読み物」とおっしゃっる意味は、僕にも分かるような気がします。
 なんていうか、「彼女に好かれてて良かったやん」というところで終わってしまった感じを受けたのです。短編小説としてそれではダメなのか、と問われると、ぜんぜんダメじゃないんですけど、僕としては少し物足りなかったかなと思いました。なんていうか、僕は救われなかったというか……でもこれはたぶん「八百屋批評」ですよね。ごめんなさい。

 では、三項目のご質問にお答えいたします。

?最後まで読むと面白かったです。でもラストでのカタルシスにたどりつくまでがしんどかったです。
?全く分かりにくくないです。ぜんぜん分かりやすいです。
?違和感はないです。でもこんな女の子いるのかなあ、この男の子のどこがいいのかなあ、とは思いました。いたらいいですよね、ほんと(笑)
?関係ないけど「結衣」と「浴衣」って、字が似てるなあと思いました。これが「裕衣」だったらもう、「ユカタ」というあだ名になっただろうなあ……。(どうでもいい感想ですいません)

 用語と表記に関して少しだけ。「ブレザーのスカート」とありますが、ブレザーというのは制服全体の名前ではなくジャケットの名前なので、ちょっと変な感じがします。上がブレザーなら、ふつう下はチェックのプリーツスカートか何かでしょうか。服飾には詳しくないので、どんな表現が適切なのかはよく分かりませんが。
 それから、「うっとおしく」というのがありましたが、漢字表記は「鬱陶しく」ですから、仮名表記でも「うっとうしく」が正しいと思います。どっちでもいいことですが……。

 なんか偉そうにケチをつけててしまいましたが、単に好みの問題かなとも思います。水準の高さは堪能させていただきました。
2008-08-16 14:24:12【☆☆☆☆☆】中村ケイタロウ
初めましてです。

ぼーっと眺めるだけで読めて、ほわんと読了感が残ってます。こういった落ちついた? 話は好きなので楽しんで読ませてもらいました。なんだか、人間観察をしているみたいな気持ちでしょうか、よく分かりません。フィクションなのに、こんなことを考えて、こんな行動をとる人がいるんだなぁと主人公の動きを眺めているだけになっていたのかも知れません。個人的に、考えながら文章を読まないので、淡々と読んで楽しめる小説というのは好きです。
素敵な小説を読ませてもらうと、好きか嫌いかという判断しかお伝えできなくなってしまいます。批評は出来そうにないです。
後、三点ですが

1、面白かったです。
2、分かりづらいところもなかったです。
3、突っかかることなく最後まで読めました。
2008-08-16 17:22:36【☆☆☆☆☆】トーラ
初めまして、勇波あいと申します。作品を読ませて戴きました。
とても綺麗な文章で、違和感なく読み進められました。只、ストーリーに起伏が少ない、というのでしょうか、ぶらんことすべりだいしか無い公園で遊んでいたような……すみません。勇波のがきんちょ頭ではそんな表現しか出来ませんが。
それにしても、文章の美しさは一級品ですね。主人公の皮肉まじりな語り口がツボでした。

最後に三つ答えさせて戴きますと、
1、「おおっ」というようなエキサイトは無かったのですが、つまらないくはなかったです。
2、全く気になりませんでした。
3、違和感は無かったです。
2008-08-16 18:08:26【☆☆☆☆☆】勇波あい
作品を読ませていただきました。
 取り立てて大きな事象が起こるわけでもないのに、最後まで読ませ読み手の感情を励起させられる作品は凄いなぁと素直に感心しています。
1.面白くなかった。単に私がこの手の主人公が嫌いというか、感情が同期できないからです。また主人公が自己を『プライドが高く、我欲が強く』と評しているのだからプライドを守るための自己欺瞞、我欲を正当化する児戯じみた理由づけのようなものをもっと描いていただけると主人公に感情が同期できたかもしれません。作品としてはたぶん面白いというレベルなのだと思います。
2.非常に解りやすかったです。
3.主人公に対するイジメがが中学生レベルに感じられ現実感をもてませんでした(私が社会人であり昨今の高校でのイジメがどのようなものか解っていないことと、私が在籍した高校のイジメが暴力中心だったせいかもしれませんが)。
では、次回作品を期待しています。
2008-08-17 00:31:25【☆☆☆☆☆】甘木
ご感想ありがとうございます。

>模造の冠を被ったお犬さまさん
どうもありがとうございます。「た」が多いのは自覚していましたが、現在形の表現をしてしまうと時系列の理解が害される気がしました。初歩的なことといわれたらどうしようもないのですが、やはり皆さん「た」の量は気になるんでしょうか。このくらいなら大丈夫だと思ったのですが。細かく区切ったほうが読むリズムが出る気がしませんか? 思い違いなのかな……。
ただご感想で一番気になっているのが「幼稚な比喩表現」というところですね。なんだろう、ひょっとしたら私のこの作品はまったく失敗しているのかもしれません。そういう感想を読み手に与えるつもりはなかったんです。いえ、幼稚だとか幼稚じゃないだとかの程度の問題ではなく。何故そういう疑問が生じるかというと、一般的な高校生・大学生の比喩表現のレベルの範疇に、この主人公のレベルがはいっているという前提があるのです、私の頭の中には。そもそもそれが間違っているのか、または私の意図とまったく別の捉え方をさせてしまったのかと仮説を立てているのですが。うーん、一人称だしなぁ。どのあたりが幼稚なのでしょうか。悩んでいます。教えていただければありがたいです。

>羽墜さん
ご感想ありがとうございます。最初の書き始めのころはバッドエンドの予定で書いていたのですが、こうなりました。時系列は不安だったのでありがたいお言葉です。けっこうするする書けた話は理解してもらえて、考えて考えて書いたものは時系列が理解しづらいというのはなんとも、書き手としては問題ですね(笑)。あっという間に、ですか。ちょっと考えていなかった箇所でした。ありがたいです、もう一度検討してみます。どうもありがとうございます。

>中村 ケイタロウさん
どうもありがとうございます。普通の読み物といわれて若干傷ついているメイルマンです(笑)。確かにこの話、「救い」が中心に来る話ではないですが、でも描こうとはした(しただけですが)つもりなんです。主題ではありませんけれど、サラダ程度に。私としては「彼女に好かれてて良かったやん」のほかに、もっと作品から醸し出したかったです。それが出来るようになればなぁ。
結衣のことですが、事実は小説より奇なり、どこかにいるとは思いますが、私がもっと本当らしさを出せたらよかったですね。私の周りではブレザーのスカートと言っていたのですが、あれは正式名称じゃなかったのか……って当たり前か。なんていうんでしょうかね、あれ。うっとおしいは素で間違いました。変換して確かめればよかったなぁ。ご指摘感謝いたします。浴衣、私も思っていました(笑)。ご感想ありがとうございました。

>トーラさん
はじめまして。ご感想ありがとうございます。面白いという評価をいただいて大変嬉しく思います。人間観察の対象に出来る程度にはフィクションの主人公にらしさを出せたかなとご感想をいただいて思っているのですが、違っていたら悲しいです(笑)。ご感想ありがとうございました。またよろしくお願いいたします。

>勇波あいさん
はじめまして、でしょうか。お名前は見ていたので、はじめましてかどうか自信がありません。ご感想ありがとうございます。ストーリーの起伏はやっぱりないですよね。1つのエピソードから掘り下げたりする話ではないので、仕方ないかなと思うのですが、もし明確な面白さを提供することが出来たら起伏のなさは目立つことはないとも思うので、反省点としなければなりません。文章の美しさは一級品なんて言われたのは初めてで気恥ずかしく思いますが、主人公の語り口を気に入っていただけたようで、それをとても嬉しく思っております。ご感想ありがとうございました。

>甘木さん
ご感想ありがとうございます。自己欺瞞と児戯じみた理由付けですか。そうか、そこはまったく欠けていましたね。全然気がつきませんでした。ありがとうございます。同期はやっぱり難しいですね。短編ならなおさらでしょうか。イジメに関してはちょっと悩みというか戸惑いがありまして、主人公の知覚する物語中の現実と、読み手に現実感を与えるための「本物らしさ」のための情報のギャップはあえて埋めるべきかどうか迷いました。主人公に「僕の高校は進学校だったせいか大人しく、世間のイジメに比べれば僕はまだ楽なほうだった」と語らせることが、逆に主人公自身の「らしさ」を奪ってしまうのではないかというものです。主人公がイジメをどう自覚しているかは、それこそ主人公そのものであるこの物語に大きい影響を与える気がします。ですが読み手に主人公の現実感に理解を求めるなんてのは、書き手の怠慢だと常々思っている私としては、やっぱり説明するべきだったかもしれないですね。でもまだ迷うんだよなぁ。もっと激しい高校にすると色々変わって来ちゃう気がするし。ご感想ありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
2008-08-17 01:13:07【☆☆☆☆☆】メイルマン
お久しぶりですー。お元気ですか(という入りはおかしいか?)
読ませていただきました。欲しい「3点」を提示していただけるのはとてもありがたいです(笑)
1:面白いとは思いませんでした。メイルマンさんの安定した丁寧な文章だから、「あーやっぱりベテランは違うな」というぐらいで(失礼な物言いをしてるのは重々承知なのですごめんなさい)。簡単に言えば、主人公を好きになれないっていうか。気持ち悪いっていうか。それだけなんですけれど。むしろ平瀬哀れ、みたいな(笑)

2:大丈夫だと思います。まったくわかりにくくなかった、ちゃんと理解できたと思いますよー。

3:展開に無理はないと思うし、設定にも決定的な違和感はなかったと思います。ただイジメに関してちょっと生ぬるい感じを受けたような…別にもっとえげつなくイジメて欲しかったというわけでもなく、どことなく浅いなあという印象は受けました。裏サイトでの中傷とか、ああいう類のものももう少し描写として加えておけば、リアルだったかなと思いました。あとはあえて言うなら、主人公のリストカット。これに一番大きな違和感を覚えたかも。こいつ本気ではリストカットなんてしねんじゃないか、と本能的に見てしまっていた私には、「もう1つは本気で手首を切ったのに死ななかったこと」のあたりが非常に嘘くさくいやらしく思われました。これがメイルマンさんの意図によるものだったら、私は完全にスコーンッとハマッてることになります(笑)あーあとあと「た」が多いっていうのは最初私も思いました。ただ文章力のない「た」の多さと、文章力のある「た」の多さというか、コドモの「た」の多さとオトナの「た」の多さというか、最終的にはまったく気にならなくなったので。私は、「た」を多くして細かく区切れば読むリズムが出るというより、雰囲気の問題と感じています。
一言でも、というお言葉に甘えて好き勝手に書いてしまいましたー。では!
2008-08-17 12:46:27【☆☆☆☆☆】ゅぇ
初めまして。作品を読ませていただきました。
1、面白かったです。主人公の引きこもり生活はリアルで気持ち悪いという気もしましたが、不器用で真っ直ぐな主人公を私は憎めなかったです。
2、気になりませんでした。
3、違和感は感じませんでした。
あ、でもひとつだけ。個人的には、どうして平瀬くんは結衣ちゃんと付き合ったんだろう? という感じがしました。

勝手な私のイメージで、結衣ちゃんは清純派で、平瀬くんは人生を楽しむタイプに見えたので。実際気が合う二人にも思えなかったので、どうして女受けする彼がわざわざ結衣ちゃんを選んで、結衣ちゃんに執着するんだろう? という感じはしました。でも、全体的に楽しめましたし、メイルマンさんの文章力を拝見してすごいなあと思いました。
2008-08-17 15:10:51【☆☆☆☆☆】目黒小夜子
こんばんは。読ませていただきました。

1. 完全なるハッピーエンドだったら興ざめだったかもしれませんが、その一歩手前、まだどう転ぶかわからんという読み取り方で個人的にはよしとします(笑)

2. 致命的どころか一切問題ありませんでした(メイルマンさんはさすがにこんなことを心配する次元にはいないと思いますが……)

3. 違和感とはやや異なりますが、若い衆はのぞきを企てる(高三はちょっと年齢層高いですが)くらいの性欲が健全ということで主人公を「本来はまともなはずのキャラ」として立たせているのか、あるいは変態キャラとして見せたいのか、が定まっていないように思えました。後者ならこのエンディングの成立は読み物として認め難いので(笑)おそらく前者だろうとは思いますが、この主人公は全体的に自己分析ができすぎているので変態性が悪い意味で出てしまっているようにも見えます。

あと「本気で手首を切ったのに死ななかったこと。」の意図で作品の色がだいぶ変わってきますね。私の場合、主人公本人は「本気で死のうと思っていた」けれど、読者から見れば主人公は「本気で手首を切った」だけであって潜在的には死のうと思っていない、という意識のずれを表した一文として読んだので良いと思ったのですが、それならばリストカットの場面だけもっと破滅的な書き方(? 文体?)でもよかったかなと感じました。
2008-08-17 18:11:42【☆☆☆☆☆】明太子
ご感想ありがとうございます。

>ゅぇさん
どうもお久しぶりです。まぁまぁ元気にやれております(笑)。なんか今回文章を褒められていて戸惑うんですが、やっぱり面白いものを書きたいですね。イジメは客観的に見ればたいしたことなくても、本人にとっては凄まじい責め苦なのですが、もう少しうまく掘り下げて処理できればよかったですね。本気で〜のくだりは、書いている感覚としては意思というより態様の表現寄りでした。ただ語り手としての主人公がリストカット時よりちょっと進化を遂げすぎていたかもしれません。「た」はもうちょっと検討しなければなりませんね。場面の表現をしすぎると、わかりづらくなると思うんですが、うーん。どうもご感想ありがとうございました。

>目黒小夜子さん
はじめましてでしょうか。目黒さんとは何かの作品であった気もするのですが、思い違いかもしれません(汗)。ご感想ありがとうございます。私も主人公が好きなのでお言葉が嬉しいです。平瀬が付き合ったのは結衣が可愛かったからですね。もうそれだけで、平瀬は可愛い子が大好きです(笑)。もう少し理由をてこ入れしたほうがいいかもしれません。ご意見ありがとうございました。

>明太子さん
ご感想ありがとうございます。なんかそんなに持ち上げられると調子に乗ってしまうのですが(笑)、これってちょっとでも表現の方法を変えたらとたんに時系列のわからない作品に変貌する気がします。今回は皆さんを混乱させなかったようで嬉しいですが。主人公はもちろん前者ですが、ちょっと精神が成長しすぎているかもしれません。事件からの時間も短いですし不自然さがあるかも。だから手首切り時の主人公は本気だとしても、読み手のほうはそういう印象を持ちづらいのかと思います。うーん、やっぱりもう少しですね。ご感想ありがとうございました。作品をお待ちしていますと、どさくさに紛れて言ってみます(笑)。
2008-08-17 23:53:24【☆☆☆☆☆】メイルマン
 【初歩的】というのは「こんなのは誰だって指摘できることで、この書き物以外でだって幾度も幾度もしてきたことで、本当に嫌になってしまうほどしてきたことで、メインルマンさんだってわかってるだろうけれど、そして対応しているのだろうけれど、それでも感じてしまったことだから感想として書いておくのもいいかもしれない、ほかに書くことがないし、でもこんなこと書いても碌なことないよな」というニュアンスの言葉です。『た』で気になるのは最初ぐらいで、あとは別に気になるほどではない。
 【幼稚な表現】は【うんこを見るような目】とか、その直後の【世界が滅亡のときを迎えていないことだけが救いだった】とか。私もそんな風に感じることはあるけれど、そのままだと恥ずかしいのでもっと婉曲に婉曲に表現する。年をとるといろんなことが恥ずかしくてできなくなっていくよね(しみじみ)。扇風機を虫に喩えるのはわりとよかったです。
 ショックを受けているらしい【普通】ですけれど、「ありがちだよね」って意味です。恋愛ものといじめが書かれている読み物を三冊ぐらいずつもってきて、ひとつにまとめたら「なんだか平均的になってしまいました」という感じ。あ、余計に酷いことを書いたかも。でも、メイルマンさんが書くものってどれもどこか懐古的なので持ち味ですね。チャーシューメン食べたい。
2008-08-18 01:49:08【☆☆☆☆☆】模造の冠を被ったお犬さま
お忙しいところ返信どうもありがとうございます。なるほど、気になるのは最初くらいであとは別に気になるほどではない、ならばセーフでしょうか。「私だったらこうする」って言ってしまうくらい邪魔な多用だったかと思ったのでよかったです。高校生・大学生くらいだったら、クラウンさんと同じように婉曲に婉曲に表現するはずなので違和感があるということでしょうか。恥の意識が足りないと。うーん、もしそういうことなら、私は一人称で語られる表現は全てがそのまま語り手のパーソナリティの描写であると思うのですが、その幼稚さを個人の性格を表す要素としては受け取ってもらえず、主人公の「らしさ」を奪うものとして判断されたということでしょうか(例えばネガティブな語り手が主人公の一人称の物語に対して、「なんだかネガティブな人だと思いました」という感想がついては、語り手自身というものを表現できていないかと作者は疑うところです)。となるとこれは他の方へのレスと被る部分が出てきますが、コントロールが難しめな問題かもしれませんね。
私にとって「普通」は、「道端の石ころとみたいなゴミ」と同じ効果があります。普通というのは面白いものが何も見当たらなかった作品のことをいうと思うので。とはいえ言うほどショックは受けていません。
懐古的なものを目指しているわけではありません。もっと気持ち悪いモノのほうが書きやすいのですが、理想への険しい道を歩くたびにその懐古的なものが紛れ込むようです。ホントは普遍的なものを書きたいのです。依然ゴールはまったく見えません。
2008-08-18 03:09:13【☆☆☆☆☆】メイルマン
読ませていただきました,3つの質問に回答します.

?二択で迫られると,困ってしまうのですが,どちらかといえば面白かったです.ラストまでは,読者の予想を覆す,どんでん返しがあるかのかな?と期待して読み進められました...文章はとても読みやすいと思います,が,会話文を改行したほうが読みやすいと思います,また,文章を推敲すればもう少しスリムになるのでは?とも思います.主人公の視点での心境の説明が,過剰な気がします=作者様の強調したいところ,なのでしょうが,伝えたいことを抑えて端的に魅せることも重要だと思います.隅々まで説明しなくとも,必要最小限の的確な言葉を与えれば,読者は文章の裏側を想像できるハズです.さらに,そのようによく練られた文章は,美しいものです...脱線しましたが,ラストに救いがあると感じられたのが,なんか引っかかりました.ですので,面白いと断言できません.予想を裏切られたのは,確かですが,この終わり方でまとまるのかな?という気がします.が,あくまで好みの問題かもしれません.きっとそうです.

?わかりにくくにないので,致命的ではないと思います.作者様が問題がありと感じているならば,とことん練ってみればよろしいでしょう.大きいどんでん返しがあるわけではないので,いじくってもあまり変化はないと思います.無理にヒネるよりも,分かりやすくまとまっていてよいと思います.

?よろしいんじゃないでしょうか.無難な設定・展開と読めました.既読・視感のある設定・展開です,フルセットの.ですから,(読んでてめげるので好みではありませんが)安心して読めましたし,先の予想も付きました.なんと言ったらよいのかわかりませんが,特徴的な表現です,それは他の作品(プロ・アマ)にも共通するものです.たとえば,冒頭の「耳がよく知った夏の音を聞いた。」,わたしなんかは「耳が知る」というのは,いまいちピンときません.いえ,ピンとはきますが,グッとはきません.ピンとくるのは,ははぁーん,作者様が魅える表現を使ったのだな,という揚げ足とり??のような感じです.
 
いずれも好みの問題と集約できる気もします.読者の好みを超えて,できるだけ多くの読者に面白く読んでもらえる文章ってあるのでしょうか.あらかじめジャンルや作者様で取捨選択するべきなのか,好みを超えたところで感想しなければならないのか,よくわかりません.今作は,巧いと思います,面白く読めることは確かです.しかし,読者の心理に働きかけるものは,巧さとは別にあると思います.きっと「普通」は“読んだことある感”によるものだと思います,,平均云々には同感です,そこから抜け出せれば,ね.と思います.ゴール目指してがんばってください.
2008-08-18 06:11:55【☆☆☆☆☆】一読者
一読者さん、ご感想ありがとうございます。
主人公の心理については、書いている本人としては過剰なところはないという意識でしたので、ちょっと見直してみますね。お時間あればどこが過剰に感じられたかをお教えいただければ嬉しいです、もちろん無視していただいてもかまいません。おそらく終わり方がそれまでのエピソードを包んで解放するようなものではないので引っかかるのかな、という気がします。そういう話にすればもっとすっきり終われるのでしょうが。読者の好みを超える作品は、ないのかもしれませんが、アマのうちはそれをあると信じてやることが自作への批判に対する怠惰を除く方法だと思っています。いくら巧いと言っていただいても、目的は心を動かすことですので、まだまだ頑張ります。ご感想ありがとうございました。
2008-08-18 10:34:56【☆☆☆☆☆】メイルマン
1 面白かったです
2 問題なしかと
3 多少の違和感は有りました

3ですが、主人公が大学生にしては幼く感じました。
少し脱線しますが……私は本当の殴り合いと言うものを体験したことがないので、最近、すべての小説、すべてのフィクションに出てくる暴力シーンに違和感を感じています。そんなに殴られて、何で死なないの? と思ってしまいます。これはどんなに素晴らしい創り手に於いても同じ感覚なので……言ってみたかっただけです、済みません。もし、この感覚を取りのぞく手立てがあれば教えて欲しいです。
ラストは良かったです。バッドエンドが好きなわたくしですが、この話は、あのままそうなるのは嫌でした。
では、次回作お待ちしております。
2008-08-18 22:06:25【☆☆☆☆☆】ミノタウロス
ミノタウロスさん、ご感想ありがとうございます。
ミノタウロスさんも幼く感じられますか。自分の感覚に固執するつもりはないので、貴重なご感想です。ありがとうございます。経験したことのないものを伝えることは、多くの言葉を割いても難しいですね。殴る蹴るの「痛み」だと似た感覚もさしあたり見当たりませんし。次回作もなるべくバッドエンドを避けて、かつご満足いただけるように頑張りたいと思います。ご感想ありがとうございました。
2008-08-20 01:02:08【☆☆☆☆☆】メイルマン
ううむ、夏だれしている間に、遅れを取ってしまった。皆さん、すでになんかいろいろ言い尽くされている。あえてまだ指摘されていない疑問点を挙げるとすれば、主人公が入院して部屋に帰ってくるとシーツに汚れが残っている、という趣向の不自然さくらいでしょうか。ひとり暮らしでもないし、親のほうが家庭崩壊しているわけではないですよね?
さて、狸としては今回も充分に楽しめたのですが、その楽しみ方は、もしかしたら真面目なメイルマン様の意図されたような『楽しみ方』ではなかったようにも思います。この過剰に自己分析好きな主人公が繰り広げる一種のドタバタ劇は、エンタメ的な状況と主人公の鬱っぷりの齟齬による一種のユーモア作品、そんな感じさえしてしまったからです。しかしそうした勝手な視線でながめてしまうと、中盤の『覗き野郎イジメ地獄』あたりでは、別の違和感も感じてしまうのですが。
はるか昔、昭和40年代後期に入ったばかりの地方高校しか実地に体験していない狸の感覚なので、現在の高校風景とはまったく違うのかもしれませんが、もし当時の高校でここまで徹底して『女子覗き』を敢行する男子がいたら、学校側や女子の反応はいざ知らず、男子には一部高評価する連中が必ず出てきます。孤立するどころか、主人公の望まぬような仲間(?)が、わらわらとできてしまうかもしれません。そりゃあ成人して自前の金で風俗通いできる歳になっても更衣室やトイレにカメラ仕掛ける寸足らずがいたらスマキにされて川に流されても仕方ありませんが、成績優秀でも眉目秀麗でも運動能力抜群でもなく、アブク金にも愛嬌にも縁のない一介の高校生でしょう? 現代の高校生は修学旅行の女風呂付近でゴキブリのように暗躍したり、トイレのいちばん端の個室のぶ厚い壁に、必死で開くはずもない穴を穿ったりしないのでしょうか。
ともあれラストでは、読みながら恐れていた鬱エンドではなく正方向カタルシスエンドに導いていただき、今夜は気持ちよくたかちゃんの続きを打てそうです。 
2008-08-24 00:02:34【☆☆☆☆☆】バニラダヌキ
バニラダヌキさん、ご感想ありがとうございます。
なるほど、シーツの汚れというより、血の染みが点々と残っているというような表現に代えたほうがいいのですね。血がべったりと残っていては確かに不自然ですね。ありがとうございます。主人公の性格というか、物事の見方を楽しんで欲しかったというのはあります。そして彼が自身の過去を振り返るときに、なるべく心の傷が見えないように淡白な、それでいて面白みもあるような語り方をすれば、語り手である現在の彼という人格が表現できるのではないかと思ったのです。それができても彼のことを面白いと思ってもらえなければそれまでなわけですが(無駄な情報ですが私はこの主人公がお気に入りです)。ストーリーが面白い作品を目指したつもりではないんです。主人公がこの話の一番大事なところで、話はグッドとバッドのどっちに転がってもよかったと思っています。最後に、ちょっと表現不足というか「それじゃわかんねーよ」と言われてしまうところだとご感想を読んで気づいたのですが、この主人公が覗き前から教室の隅にいるのは本当に人付き合いが出来ずにクラスのグループから省かれているからです。そしてこの設定上進学校の高校では男子に性を表に出す雰囲気は無く、あくまでシティボーイズ的なちょっとイカした悪めの男の子が少数いるだけです。自分の表現の古さに涙が出ますが、とにかく主人公のような「大人しくてあまり喋ったことがないからよくわかんない」子が前触れなしにいきなり覗きを働いた、という状況をもっとかき出さなければなりませんでした。大変な気づきを与えていただきまして、ありがとうございました。いつもお付き合いいただいている皆様には心から感謝しております。
2008-08-25 02:46:25【☆☆☆☆☆】メイルマン
計:4点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。