『財布を忘れてはいないけど…』作者:かくらく / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
自分の性格を時々恨む。
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 今月、まったくお金が無い。いや、二三千円程度はある。
 だけど全く無いのだ。
 でも、ほしい。今月号……読み逃がした今月号! 本屋の前で立ち往生。

『財布を忘れてはいないけど…』

 週刊誌に連載している長期漫画や読みきり漫画は大抵、何日か後には単行本化する事がある。
 そして世の中には単行本(原作)派とアニメ派がいる。まあ、アニメ派の方々には全く関係の無いということは断言できないが、週刊少年誌とその他諸々の月刊誌などに連載されている数々の漫画は多種多彩でジャンルも様々ある。

 だから週刊誌や月刊誌は分厚いときがある。それに反してファッション雑誌やスポーツ雑誌はまた別で、この類は横に幅をとらず手ごろな薄さのものが多い。
 同じ漫画でも薄さが異なる。マンガタイムなんていう四コマ雑誌があるが、数ある週刊少年誌または月刊誌の横に取る幅は大きく違う。少年誌や少女雑誌は長く連載されている漫画が数多く存在する為、大きく幅を取ることがあるからだ。四コマもそれなりに長期連載しているが、殆ど場所をとらない。
 世の中には様々な漫画雑誌がある。それらは時に必要なときがある。かといって分厚い週刊誌は邪魔に思える。まあ、読み終えた漫画や必要なページだけ切り取って後は廃品回収に出せばいいのだけど、それも面倒に思える時が無くはない。だからこそ、単行本というものがあるのだと私は思う。

 週刊誌で見た漫画が何日か後に単行本化する。そこまで辿り着くには時間がかかる。分厚い少年誌を持っていなくとも既に1巻が出ている漫画があると何気なく手に取り読み出す。読み終えると続きが無性に気になることがある。漫画って恐ろしい。
 このウズウズする気持ちは何なんだろう。続きが早く読みたいと心の奥隅っこで叫んでいる自分が何処かしらにいる。待ちきれなくて、我慢しきれなくって、君に早く会いたいんだ。想い始めると、無性に書店の前を少しだけ右往左往してみたり、ちらっと書店の手前だけ見てみたり。意識は無いのに、いつの間にか漫画のとりこ。友人に「これ、面白いから見てみなよ」とか言われ、勧められるまま読み始める。最初は感じていなかったのに知らないうちに巻き込まれる。

 こうなると既に待てない。っていうか、お金に余裕があれば、こんなもの苦でも何でもない。だけどこれはあまりにも酷過ぎではないのか。単行本!
 気になっていた続編の単行本が書店に並んでいた。別に買う気は無い筈だけど何故なんだろう。私は書店の前にいつの間にか吸い寄せられてしまっていた。今現在、気にかけていた単行本をいつの間にか手に取って満足げに単行本の表紙を眺めていた。

 いやっ、……ていうか確か私は別の用事で着ていたはずなのに不思議な感じ。単行本に巻かれていた帯に目を向ける。帯によると、この漫画の作者が参加している週刊誌が祝20周年か何かで、その記念にってことで出した得点付き単行本なんだそうだ。
 何周年だろうが私には全く関係の無いことだが、でも何故か得点だけはほしい気がする。別に今、この目の前にある単行本の作者が好きだから、漫画に興味があるから買いたいというわけではない。どちらかというと、この漫画に興味は無い。
 ただ、一つどうしても気になる。この単行本を2冊買わなければならないと、全員応募サービスのマグカップが貰えないとか何とか。これはよくある単行本や小説の帯に「全員応募サービス」の応募券が付いていて、それを何枚か集めるか、何かして応募するともらえるというシステム。
 これに応募するには単行本または小説を二冊買わなければもらえないというのがセオリー。集めて送っても当たらない場合もある。懸賞や応募サービスの類はみんな運任せなのである。それが楽しいからとか絶対欲しいとか言う欲の塊が湧き出る瞬間。

 応募してから、そのものの出番が来るとき、または賞品が当たるときを待つ間。最初の数週間は祭り気分でわっしょい盛り上がっているけど10日過ぎると妙な気持ちになる。ネタなどが没になったというのも一理あるが、それでも最後の希望に賭ける。
 色々な不安と焦りがあって、最終的には勝手な想像をして逃げる。被害妄想? 単なる妄想?
 妄想という名の苦痛、現実逃避のような妄想、全てに力尽きる落とし穴。だとしたら今がその落とし穴であると推測した。
(……くっそぉ……。石油の次は単行本まで値上がりかあ〜〜っ!?)
 根拠が無いのに世間のせいにする私。週刊誌の漫画が単行本になったはいいが、1冊だけでは飽き足らず流れ的なもので2冊買ってしまう。お金が無いとわかっていても手にとって即購入。
 これがブックオフなら大人買いもいいところ。当たり前のことだが新刊というのは早々ブックオフには置かれていない。出来ればブックオフで購入という手もあるのだが、そこまで私の堪忍が持つかどうか。

 作者の都合で打ち切り寸前になりそうなときとか、連載を何とか接続したいという作者からの挑戦なのか何なのかは知らないが、よくある手が新キャラ応募という特設コーナー。そして懸賞。懸賞が当たっているかもわからないし、投稿したキャラクターが採用されているかも判らない。確認のために雑誌や単行本を買う。
 普通、単行本なんかは安い価格だと思われがちだがものによっては高い。普段お金があるときは安く感じていたのに持ち金が少なくなると急に単行本までもが値上がりしたような感覚に陥る。
(……でも新刊ほしいよ……今あるうちに自分の手にしたいよ……)
 空しくも今の時点で書店に出されている単行本の残りは極僅か。きっとこのまま行けば、明日には取り扱っていないか売り切れになるだろう。
 残金があまりにも少なすぎる自分の財布の中身を見つめ、単行本の裏表紙にある黒いバーコードと値段を見つめ、深く溜息をついた。財布があっても中身が少ないんじゃ、財布があっても手元に無いのと同じじゃないか。某庶民的アニメのオープニングテーマが脳裏に浮かんでくる。どうでもいいのに浮かんでくる。
 今日買わなければ、多分次の日にはなくなっているかもしれない。もしかしたら突然打ち切りとかなるかもしれない。アニメ界も、漫画界も、世の中も何が起こるかわからない。続きが無いかもしれない。世の中には打ち切りなんていう言葉があるから不安になる。
(………2冊で2千円ちょっとか……)
 不安が不安を呼んで少しの暇つぶしが大幅に時間を延長している事に気づかない。本屋の前で一つのタイトルの単行本2冊を左右の手に1冊ずつ、違う絵柄の裏表紙に左右対象の黒いバーコードと無言のにらめっこ。買うか買わないかはっきりしないまま時間は流れていく。よく言えば、かなりの暇人。悪く言えば、待ち合わせの時間が過ぎてる事に気づかない馬鹿者。
(……帯に付いている応募券二枚で全員応募サービスっていうことは、これ1冊に応募券一枚として2冊で応募が可能になる。……そうすると税込みで1524円……)
 軽く奈落の底に落ちた気がした。変に頭の回転が速すぎてオーバーヒートでもしたのか、単行本2冊を手にしたまま頭の中が真っ白になった。
 これなら分厚い週刊誌1冊を変えは済まされることだけど、運悪く目的の週刊誌は品切れ。だからといって他の書店に置いてあるのかを確認する気力も無くて出来る限り近場で済ませようという魂胆。
 どうせ私はインドア派で、しかもお金も無いし体力も無いし、時間は有るし小銭は僅かですよ。でもね、めっちゃ欲しいんです! という言葉だけ私の辞書にはあって、良く言えば諦めが悪いんです。

【終わり】
2008-04-09 16:04:41公開 / 作者:かくらく
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■作者からのメッセージ
お久しぶりです。
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