『絶望のど飴』作者:日影 / ~Xe - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
※初めまして日影です夢も希望もない主人公。彼は絶望のど飴を口にしたことで、観測者結衣、兼、露出狂(?)に死を宣告されます。生き延びるためには、絶望のど飴を満たすしかなかった。『生きること』について必死に悩み考える、彼の結末が幸せなのか不幸なのかはきっと誰にも分かりません。ちょっぴりでも、彼のその後を想像してもらえる作品になれば幸いです
全角14509.5文字
容量29019 bytes
原稿用紙約36.27枚
 俺は高杉 隼人。特に訳もなく大学生活を営んでいる。訳がないというのは、大学に通う目的がないという意味だ。つまり夢も希望も持ち合わせていない、最近増えている腑抜け大学生の一介に過ぎない。
「絶望のど飴?」
 なんだよこれ? 思わず笑いが吹き零れた。
 何の変哲のないデパートの売れ残り市場。市場といっても小さなコーナーで、今では面白そうなのど飴が残念そうに転がっているだけだった。
 俺は黒と緑で渦巻くそれを手に取った。
 包装ビニールの小さな注意書きを読む。
「なになに? 希望をお持ちの方は決して飲用しないで下さい……だってさ、ふざけてるぜ」
 グロテスクな色合いは、仕様なのか意図なのか。意図だとしたら、悪意なのか純粋に悪戯心なのか。十中八九後者だろう。恐らく、気味の悪さを逆に売り込もうとしたのだろうけど、売れ残っていれば戦略ミスも甚だしい。
 ふと、値札を視界に捉える。
 肩を窄めるよう置かれた土台、その隅から伸びる旗はヒラヒラと揺れ、『売れ残り全品百円』と記してあった。微風に靡く旗を手で押さえて、『百円』の文字に顔を近づける。むむ〜、高いような面白いようなー……。
「ってぇ! 面白い云々は関係ないんだよ! このこのっ、笑わせやがってぇ。……ぁ!」
 ――うぅー。途端に周囲からクスクスと笑い声が聞こえてきた。
 は、恥ずかしい。またやっちまったらしい、俺の悪い癖だ。
 単に独り言ではなく、物に向かって突っ込みを入れる癖。
 去年辺りに治ったと思っていたのに、友人と離れて大学生活を送ると同時に再発。精神病院に相談してみたが、心の寂しさがそうさせるとかなんとか。
「俺ってば寂しい人間なのか……」
 思えばここ数ヶ月、大学の友人も出来ず、高校の友人に誘われることもなかった。
 家に帰れば誰もいない部屋に『ただいま』と呟く日々。
 まともな食事にはありつけず、待っているのはテレビと勉強と布団。それと、充電器に挿しっ放しの携帯電話……。
「くそ!! お、俺は悪くないし変人でもない! なのに、なんで皆俺を……。詰まんねぇ、こんな世の中のどこが面白いってんだよっ!!」
 買い物籠をぶら提げていた主婦が、恐怖で震える。
 子供が数人泣き出す。
 爺が腰を抜かして床にへばっている。
「ははんっ、ざまぁー見ろっ! 俺を、俺を馬鹿にしたからだぞ!?」
 俺はレジの順番待ちを押し退けて、握り締めていた飴玉を店員に手渡した。
「ひゃ、百円になります……」
 俺の顔を見て萎縮する店員を睨み返す。に、睨んでも仕方ない……。クソ! 財布を取り出して、小銭入れから百円玉を探す。……な、ない。五十円玉ならあったのに、もーいぃ!! 十円玉を摘み取っていく。一枚……二枚三枚……四枚……ご、ごまって、ええぇー、これ五円玉じゃんかよ!? くぅ、ない。隈なく数えてみた結果、九十九円ってどういうことだよ、神の嫌がらせか? 俺ってば何か迷惑かけたかよ!?
「こ、これでっ!!」
「――そ、それでは一万円札からでよろしいですね?」
「いいから早くしろよ!」
 あぁイライラする……。
 一度崩すと泡のように消えていくから、最期の最後まで使いたくなかった。
 それをたった百円の、それも特に欲しくも無いのど飴のために使う羽目になるとは。
 お釣を乱暴に奪い取り、その際に貴重な小銭を受け取り損ねたが、無視して出口まで走った。背中に伝う冷めた視線が堪えられなくて、自転車を置き去りにそのまま家まで駆け急いだ。
「あぁ馬鹿だ!! 何やってんだよ俺っ!? 一分一円が惜しいのに、その両方を無駄に……無駄にぃ!!」
 炊飯器の中身が空で、更にイラついた。
 後で自転車を取りに行くのはいい。けど、もうあのデパートには近づけない、近づけるものか! 近くて安いから結構頼りにさせてもらっていたのに。これからはわざわざ、遠くて高い品を買えっていうのか……。
 どこかのアホンダラがテレビで謳っていた『人生楽ありゃ苦もあるさ』と。けれど本当にそうだろうか、いや、成功者は本の一握り。では社会の負け組みはどうなる? 何時だってそうさ……。
「悲惨な事ばっかりでうんざりする」
 体から力が抜けると、拳からストンっと何かが滑り落ちた。
 災厄の元凶である不気味なのど飴。……つっ! お前のせいで、ひ、酷い目に遭った……。
 振り上げたそれを、遣る瀬無く元に戻す。
 のど飴に罪はないし、投げ捨てた所で三文の徳所か足しにもならない。
 包装ビニールはパンクしていた。
 切り裂けた部位を、更に指先で抉じ開けていく。
 すると、禍々しくのど飴が暗がりに当てられて――俺視点で映るそれは、破壊的な魅惑を帯びていた。破壊されたのは、主に俺の理性。けれど、いくら狂気に錯乱していた俺でも、のど飴の放つ危険オーラは感じ取れていた。
 だけど、だからこそなのか、脳の天辺からキュキュキュと吸い寄せ求めてしまう。
 そんな魅力を感じていた。
 俺は希望をまだ持っているのだろうか? どっちにしろ、舐めると何が起きるってのか……。御託はいい、口に含めば全てが分かるはず。
「――若しかしたら、し、死ねるとかかな? ……マジで有り得そうだ。はは、いっそ殺して欲しいね」
 鼻に近づけて匂いを嗅いでみた。
 人畜無害、至って無臭且つ無刺激。
 ならばと、唇の内側にそれを押し込んだ。
 に、苦っ! くはない、みたいだ。だけど断じて甘くもない。しょっぱくも辛くも、というよりそもそも味が無かった。
「勇気を振るって舐めた人間は、味気ない人生ですねとか、そういった類の洒落なのか?」
 ちっとも面白くない、むしろ腹立たしい。
 どんな蛆の沸いた頭が、こんな味気ない商品考案しやがったんだよ!? だいたい、よく商品として流通できたな……くそぉ! おぉう!? な、なんだこれ……? 段々とだけど、ハーブを嗜んだかのような鼻腔の颯爽感。
 悪くはない。
 舌の角度を変えてもやはり味気なくて、飽きてしまうはずなのに、ベロが求めて吐き出そうとしない。
「ま、不味いのか美味いのかハッキリしろよ!!」
「そうね。そののど飴はね、貴方の人生そのものなんだよ」
 背後から透き通る女性の声。
 だ、誰だ!? バッ! と後ろを振り向くと、眩いほど金色に輝くナイスガールが立っていた。うそ、だろ? 比喩ではなく、そいつは実際に仄かな光を放っていた。シャンと伸びた細長い脚に邪魔な装飾品はなく――つまり、ラインギリギリの短パンを辛うじて履いていた。無駄の無い軽やかな肉質の腕。そいつは陰鬱そうに艶やかな黒い長髪を掻き揚げた。い、いや髪なんかよりも! その!!
「ふ、服を着ろよ!? そして俺の部屋にどうやって忍び込んだ!?」
 俺は放心を解いて、申し訳なさに背を向けた。
 な、なんで俺が突然現れた女の、は、裸のようなものを見て、その……罪悪感を持たなきゃならんのだ! けれど、昨今の痴漢状勢は、大抵は訴えられたら問答無用で負ける。男に弁解の余地など無い。男女平等を規するならば、徹底的にすべきだ。例えばトイレを男女共通にするとかだなぁ!!
「うーん。それは困るよ。私は男性と同じ所で用を足したくないもん」
「!! お、俺ってばまた独り言……。そそそんなことよりお前だ!」
「あぁ私? そうね、先ず自己紹介。私は観測者結衣」
「い、意味が不明だ?」
 まぁいいからとホッと呆れて、女性は続ける。
「そーね、結衣って呼んで。そーれーとっ、こっち向いてもいいよ? 服……ちゃーんと着ているし」
 女性が詰め寄ったのを感じて、俺は咄嗟の対応に慌てる。
 結衣? 何者だ、聞いたことないぞ。新手の泥棒か、だとしたら相当間抜けだな。いや妙すぎるし、泥棒ではないのか。……ならば俺に何の用だ、怨まれてる? 確かに怨まれる事は多々あるが、家にまで押しかけられて殺されるほど、他人に怨まれていないはず……。かんそくしゃ、だっけか? だとしたら、俺を笑いに来たとか。
「そうね。その通り、貴方をまぁ場合によっては笑いに来た者。怨みもなければ泥棒でもないよ?」
 淡々と、けれどフレンドリーな口調にまたも動悸が走る。
 ――俺の心が読まれてる!? い、いやありえん!
 俺はそーっと慎重に恐る恐る振り返る。
「ねっ。服は着てるでしょ?」
 締め切った暗い部屋で、女性の胸が一際目立つ。
 目が釘付けになる。
 うっ! き、着ている。確かに、けれどいいのか? ブラジャーのような服――つまりは、胸に細い布を一枚回しているだけ。次第に、とても立体的で美しいお胸様に思考が白濁としてきて。こうなるともう、ブラジャーは履いているのかが気になってくる。御へそも鎖骨も生肩も見放題で、最近のメディアから報道されなくなった露出狂なのか。だとしたら、珍しい……。
 ちょまっ! 胸が暗闇に没して、自然と気合の入った肩が下がる。

                   /ここが本編の約1/5です(無視して読み進めてくださいm(_ _)m)/

「妄想野郎……。こ、コホンッ! えっとね。もうそうね、貴方じゃ生き残れないかも」
「生き残る? お、俺は死ぬのか? 結衣は女神様だったのか? いやんん? 女神は人を殺さない、むしろ俺を幸福に!」
「だーかーらっ、私は観測者で結衣なの。それ以上でも以下でもない存在」
「そうなのか……」
 言葉を紡ぐように結衣は答える。
「露骨に落ち込まないでよ。ただね、絶望のど飴を口に含んだ貴方へ、そうね、忠告しに来たの」
「死ぬのか……!! ま、待てよ、忠告って事は、まだ生き残れる方法があるってことだよな?」
「そう。その通り、見所あるじゃない。少し気に入ったから、通常よりは詳しく教えてあげる」
「教えるって生き延びる方法だよな?」
「そう」
結衣は雅に女神に匹敵する微笑を浮かべた。
「方法は至極単純で、その絶望のど飴を舐めきる前に取り出すのよ」
「そ、それだけ?」
「そう、それだけ。でもね、方法は簡単でも、実行するのは至難の極みだよ。試しに吐き出してみたら分かる」
「か、からかってんのか!?」
「そうかもね。でもほら、試してごらんって。文句はその後で聞いてあげる」
ニッコリと微笑まれ、鈍い頭は挑発されていることを漸く悟った。
「く、見てろよ!?」
「間違えて飲み込まないようにしてね。飲み込んだら、私でも救えなくなる」
「どこまで俺を幼稚扱いすれば満足なんだ!? この、このぉー!」
 一旦口に含んだものは、心理的に吐き出し難い、人前ともなれば抵抗感も強まるだろう。
 だがしかし、生死を天秤に掛ければ、他愛のない重圧。
 俺はのど飴を舌先に乗せ、結衣にぶつける覚悟で力んだ。力んで、顔を赤くしてもまだ力んで……力んだだけだった。口先を尖らせるのが精一杯で、顎が正常に機能しない。まるで俺の意思を否定するかのように。
 挙句、路頭に迷った空気が頬に溜まり、苦しくなってグッと飲み込んだ。
 く、悔しい……悔し過ぎる!! まだだ、まだ諦めないぞ。次の作戦は額を床と平行にして、のど飴を閉ざされた出口に寄せる。後は頑なに開こうとしない唇を、どうにかして開かせれば、隙間からのど飴が引力に沿って下へ落っこちる寸法だ。
「無理だと思うけど、その……取り敢えず、問題はどうやって開けるかだよ?」
「うわってるん! (分ってるよ!)」
 会話もできなくなってしまったのか、悩ましい……。
 頑固者には梃子を使うものだと、古くからの仕来りで決まっている。
「梃子でも動かないって言葉もあるよね?」
「うるへーぁ! (うるせーな!)」
 特攻した指は強固な守りに阻まれて、侵入不可能と知る。
 続いてペンを用いたが、若干力及ばず……。
 本気を出せないもどかしさが、また対抗意識を燃やさせる。なぜなら、ついつい匙加減を見誤り、貫いたは良いが脳髄に達して死んでしまっては元も子もないのだ。
「賢明ね」
「…………」
 俺はドライバー作戦を中断して、クスクスと笑う結衣をこれでもかってくらい睨んだ。
「諦めて話を聞く気になった?」
「き、聞いてやるよ……!! おぅ!? こ、声が出てる、口が開いたっ! よし今なら……むぐ、むぐぅもぎゅ〜ぅ。はぁはぁ、なんで急に開かなくなるんだよ!?」
「だーかーらっ、私の話を聞いてよ。あんまり時間掛けちゃってると、その」
「ど、どうなるんだ?」
「――舐めきると死ぬのよ」
「まっ!! ど、どうやって吐き出すんだよ!? 女神なんだろ?」
 自分でも顔が青ざめていくのが理解できた。
 血の気が引くというのは、雅に俺の状況なのだろう。
 藁をも縋りたい。
 そ、そうだ。女神がいるのならば、神だっているかも知れない!? ならば、困った時のなんとやらだ!
 最寄のお寺に向かって、必死に手を合わせて懇願する。助けてください、と。
「そのーさ、この状況が既に、神の悪戯なんじゃないのかなって思わないの? あっ、ごめん水差した?」
 結衣の言うとおりだ。
 それに結衣は他称女神であれど、自称女神ではない。故に俺のは単に藁ではなく希望的観測に縋っただけ。しかも俺は、更にそれらを前提とした別の奇跡を強請ったのだ。なんとミクロな希望だろうか。他力本願も笑わせる、だから俺に友人が出来なかったんだ……。
「心の奥ではちゃんと分かっていた、その積もりだったのに……。満身創痍ってやつだ」
「弱り目に祟り目?」
「踏んだり蹴ったりだよ……」
 生きる気力を失っていく。
 脱力したその場で、ただ舐めたくもないのど飴を転がす。
 刻々と縮んでいく希望、結果として体内に浸透し終えると俺は死ぬ。タイムリミットは大きさからして、じっくり舐めれば二時間は保てるか……。がっつり噛み砕いて効率的に消化すれば、モノの三分と掛からないだろう。
「死にたい? それともー、生きていたい? 私は観測者だから、貴方の意志を尊重したい」
「駄洒落か? ふざけやがってからに……」
「あーホント、駄洒落っぽくなってる。けどね、本気で聞いているの、真面目に答えて」
「――俺は……、さぁ。ごめん、もう分かんなくなっちまった」
 結衣は首を捻ってうーんと唸る。
「そーね……えと。なら、質問を変えてあげる。死ぬのは嫌?」
「あぁ。死にたくはないけど、生きる理由が見当たらない」
「遣り残したことはない?」
「んー。最初から目標なんてなかったからな、何にもない」
「質問攻めはこれで最後。そのー、今はどんな味がする?」
 どんなって……。右の頬袋から左の頬袋にのど飴を移行させた。
 その際、舌で軽く嗜む。
 相変わらずだ、味気ない味としかこれは表現できない。でも、あれれ、可笑しいな。
「どう?」
「味は無い、はずなんだけど。うぅ。す、凄く懐かしくて切なくて……淡い味? わ、わからん、ごめん」
 押さえきれない衝動が雫に具現化され、五年振りの水跡を作る。
 あの時は俺も幼くて、親友と大喧嘩して泣いてしまったんだ。お互い身勝手な意地を張り合わせて、詰まらない事に愚痴ったり非難を飛ばしていた。それから、うぐっ……ど、どうなったんだっけ――。
「うん。ゆっくりでいいから、話してみて。聞いてあげる」
「あぁ、あぅ! あ、そうだ。えと、うぅー」
「うん」
結衣が跪く俺を、優しく、けれど力強く支える。
 なんで今更なんだよ……。冗談だろ、くそっ! 嬉しくない、俺に優しくするのは偽善を行いたいからだ! 勝手に満足して、俺を利用して。ふざけんなっ! 俺はお前の道具じゃない、俺はお前に優しさなんて求めてないんだっ!!
「なんの話?」
 ちくしょー! 観測者のくせして、俺に介入するのは越権行為だろ!? もう、放っておいてくれよ……。
 散々放任されて育てられたんだ、放置は慣れてる。
 死ぬときは孤独に寂しくひっそりと、そう決めてあるんだ。この想いだって、どうせ見透かされてんだろ? ちくしょーー!! 好い気になるなよなっ!?
「――越権行為になるかは、貴方には関係ない。それと、そーね。うん、見透かしてるよ。絶望のど飴を舐める人間は、心に決定的な弱さを持った人、そう定められているのもある。乗じて私の能力を駆使すれば、大体の思考は汲み取れる」
「なら、俺がどうなりたいか分かんのか?」
「全然。私は観測者結衣で貴方じゃない。分かりたいとは思うけど、全てを理解できないのが現実なの」
「――俺……きっとたぶん、死にたくないんだよ」
「生きたいの?」
「生きていたい、でも、どこにも居場所がないんだ。こればっかしはどうにもならない」
「良かったー。まだ見込みあるよ。貴方のこれから次第だけど、大丈夫! 私も出来る限り助力する」
「い、生きていいのかな? 俺、おれ……」
 俺はクシャクシャになった世界で、結衣に腕ごと持ち上げられていた。
 抗えない底知れぬ強さに、心が呼応して熱を帯び始める。
「折角だしさ、生きようよ! ねっ?」
 結衣が笑顔で俺の手を握る。
 その時だった。
 舌に稲妻が迸り、と思うと地味な痛みがジワジワと広がっていく。
「うっ! あぅ、味が変わった……」
「ど、どんな味になった? 詳しく教えて!」
 結衣に真正面から直視されて、頭の中から一瞬のど飴が消える。
 手の届く範囲、いやいや、雅に目と鼻の先に女性ホルモンを叩き付けられたら、男は黙って呆然とするしかなかった。
 大よそ、俺が短時間で我に帰れたのは、
「変なこと想像してないでよ! 本当に死んじゃうよ?」
 と結衣に脅されたからに他ならない。
 と、兎に角味だ! 最小限の動作で舌をのど飴に近づける。
 成る丈、口内を刺激して唾液を出さないよう配慮した。
「怪しげな堅唾も分泌させないよう配慮してよ……」
「それは難しい……じゃなくって! えと、トロケルくらい甘くて、それでいて喉が焼けるくらいにか、辛っ! うぇっ」
 俺にはどうも理解できない。
 こののど飴の存在意義もそうだが、知ったことではない。けれど、今も密接に関係しているのど飴の秘密は知りたい。知らなければならない気がする。
 結衣は隣で盲目と考え込んでしまったが、考えて導き出せる答えならば、一人より二人の方が建設的だ。一人足りないのがまた悔しいが、昔の偉い言葉を引用して、三人寄れば――
「そっか、文殊の知恵……わかった。でも時間は限られているから、割愛して説明するよ」
「と、あったように、皆の力を合わせて――」
「減らず口は叩かないで、それだけ寿命が短くなるよ。先ず確認する、生きることを目標に話すけどいいよね?」
「あ、あぁ」
「返事は要らないから。頷けば肯定って勝手に認識するよ」
 完膚なきまでに意見の封殺をくらった。思想で通じ合えるから、然程問題ではないのか。
 皮肉にも顎で返答しろと……、これはとても本格的になってきた。
 昨日までの俺なら、自分のことも第三者視点で適当に受け流したが――もう嫌だっそんな人生! 他力本願が当たり前だった俺に、居場所なんてあるはずがなかったんだ。俺には自分らしさが欠落していた、こんな木偶(でく)の棒、誰が心から受け入れてくれるだよ! 甘えんじゃねぇーぞ俺!! 甘える覚悟も甘えられる覚悟もない俺が、何調子に乗ってやがったんだっ!? くそ、くそぉーーーー! 新しく生まれ変わりてぇ……。
「うん、そーだよね、変われるよ。だって少なくても、この五分間で、貴方は色々と変化しているもの……」
 肩をポンポンっと叩く結衣の優しさに負けないよう、俺は涙をグッと堪えて頷く。
「うん! でー、この絶望のど飴はね、貴方の心とシンクロしているの。そーね、一言で纏めると心の味、かな。今の心境も含めて、これまで培ってきた想いの重さで味が変わる。たーとーえばっ、さっき言ってたよね、喉が焼けるくらいに辛いって」
 うんうん。俺は真剣に頷く。
「私たちの世界で辛さは、後悔の念。そして序に甘さは、愛しさの念。えっと、そののど飴の吐き出す方法は、一度何の味もしないようにするの。そしてそこから、味ではなく幸せの滲み出るのど飴を精製する。ここまでくれば、生き延びられたものよ」
 問題はどうやって精製するか、その具体的な対応策だ。
 俺の口元が僥倖に触れて緩む。
 なにせ味気ない味ならば、身を以って体験したことがある。心の変動がポイントならば、あの時の心境に戻ればいいだけじゃないか。なーんだよ、第一段階は早速クリアだな!
「それは誤解だよ。誰もが皆そこから始まるの。そして、私の知る八割はゴールに辿り着けずに死ぬ。私たちはスタートラインを踏み切ったんだよ、また戻りたいの?」
 なっ! 正直結衣の問いは衝撃だった。
 戻りたくない、けれど戻らないと辿り着けないんじゃないのか?
「目標は常に前へ前へと設定するものなのよ」
「俺にできるかな?」
 思わず口走ってしまった。
 心で想えば会話は成立するのに、口に出して公言したかった。
 そして誰かに認めて欲しい。
「できるよ! 私の算出したデータだと、二割は無地に生還する。うん、そーだね。貴方ならもっと高確率で辿り着けると思う」
 俺なら……。そうか、ならやってやるっ! あぁ俺は生き残るんだ、僅か二割の勝ち組に加わってやるさ!!
「でも、慢心はだめだよ」
 う、うん。邁進もいけないな……。
「んじゃー、そーだ。満身創痍になりたがるのもだね」
 気分がリフレッシュされ、元気が沸きあがってくるのを感じた。うははっ、空でも飛べそうだ。心がポジティブに向かうと、なるほど。俺は大切に保存しておいたのど飴を、チロチロと舐めて確信した。
「味変わった?」
 おう、変わってる。
 喉の痛みがなくなったと思ったら、お次は過剰摂取で死ぬのではと、懸念したくなるくらいにショッパイ。溶かして小さくしたくないのもそうだが、純粋にショッパさから舌を逃がしたかった。
 とてもじゃないがチロチロなんてできやしないぞ。
「ショッパさは、幻想の念。これを無くすには、満たしてあげるしか方法はないんだけど。そのー。幻想を満たすのは一番厄介なの」
 単語からして『幻想』など、満たせる分野ではないだろうに。
 愛しさなら、欠落した分の愛を。
 後悔なら、欠落した過去と決別のけじめを。
 それぞれ方法を模索しやすかったが、幻想は頭を捻っても満たせない。何が欠落しているのだかサッパリで検討に困る。えと、ちょっと変だ、ショッパイだけじゃないみたいで……頭の中がフワフワする。まるで雲の上を漂っているような。人はこれを『夢心地』と呼ぶのだろう。
「寝たら駄目。本当に死ぬよ?」
 うわっ! 今俺は、夢現の世界で空を飛んでいた。
 もちろん、強迫観念に撃墜させられたのだけど。でもこの浮遊感は芯に迫るもので、俺の精神力では抑えきれない。早く抜け出さないと、こんな所で挫けていたくないっ!! のに、ふわぁ〜ぁ〜……気持ち良い。ずーーーーっと、このままでいたいなぁ〜。死んでもいい、そんな気にもなる気持ち良さ。
「本当にそれでいいの? 私は強引に止める事はできない……貴方がそれを心から欲するなら、それが貴方だから」
「だってよぉ〜、滅茶苦茶凄いんだぜぇ? 今の俺ならなんだって出来る。生きてるのと比べれば、天国通り越してここは楽園だ……うへへ」
「――そっか」
「あぁ、お前も来いよ?」
「遠慮するよ」
 虚ろな視界に、結衣の厳粛な目元が映る。
 そうか、この気持ち良さを理解できないから拗ねんだな? はは、仕方ないよ、こんな素晴らしい世界を体験できないのだから。いーぞぉー! ここはもう、身も心も捧げてもいいとさえ思える。
 このままの俺を連れて行ってくれても構わない……。
『本当に気持ち良いのか?』
 お次は誰だよ? 聞き覚えのある声だけど、それが誰かは思い出せない。けれど俺は、ずっと身近に知っていた。ずっと聞いていた声色……。でも俺は、いつもコイツの意志には背いてきた気がする。
――良いに決まってる。お前も羨ましいのか?
『お前は本当にどうしようもなく馬鹿野郎だよ。さっきまでの意気込みは何処に消えた?』
――人間は損得勘定で動く生き物なんだぜ? 楽に傾くのは当然だろ。
『嘘付くなよ、俺には分かるんだぜ? 今のお前は苦しんでる。泣いてる。嗄れるほどに嘆いてる、助けてくれと……』
――俺が? 笑わせんなっ! 俺は最高にハッピーなんだよ!?
『黙らっしゃいっ!! 俺には分かってんだ! お前の胸中に戦慄く熱いソウルをなぁ!』
――なんのことだ……。
『気付いてんだろ!? 頼むよ……俺の最初で最後の頼みだ。一度で良いから俺に耳を傾けてやってくれ……』
――どうしろってんだよ!?
『助けて、くれ。頼む、俺は最低な野郎だが、きっとお前はまだ輝ける! 俺をお前の手で救ってくれ。何もかも殺さないでやってくれ!!』
 うっ。唐突に全神経が激しく痛む。
 痛みの根源は心臓でも心でもなく、もっと深く根付い部分――胸中。まるで破裂を許されないゴム風船が、音を立てて膨らんでいく。もしも仮に風船が破裂したら、きっとそれは死の合図だ。嫌だっ、死にたくない。折角、折角生まれ変わるチャンスだったんだ! また台無しにするのか、俺は……。そうか、そうかそうかそういうことか!!
――やっと伝わった! 俺はお前だ! そしてお前は俺だ!
『そうだ! けどな、今を生きるお前に、過去の柵(しがらみ)である俺は足枷でしかない』
――教えてくれ、俺はどうすれば……。
『俺をお前の手で抹消しろ』
――い、いいのか? そんなことしたらお前は、俺は……。
『共倒れしたって仕方ないだろ、相棒。いいから消すんだよ。要らない飾りは脱ぎ捨てちまうんだ!! 一心に生きたいとだけ願え!! そうすれば……』
――クソっ、クソー!! 生きたい。生きたいよ。生きてぇ生きてぇー! 何十年も何百年も生きていたい!!
『そうだ……俺の分までしゃんと生きろよな。そ、それと、この際だ! お前のことは大嫌いだが、信念は嫌いじゃなかったぜ。……もう時間か。最後の最後になるが、その。お、俺の事はいつまでも、わす……れ…………』
――忘れないさ。忘れてなんてやるものかっ! 今まで苦労掛けて悪かったな。もうお前を苦しませたりしないって、約束する。男同士の誓いだ、絶対に守る! だから……ありがとな。
「終わったみたいだね」
 結衣? ぬおぉぉーーー!? 咄嗟に体を起す。
 雅か朦朧としていた間、俺は結衣の膝枕に肖(あやか)っていたとは! 感動と勿体無さに、けれど清々しい気分だった。活力が無限に沸いてくる。何も怖くないぞ!
「ビックリ展開だったね。そうそう、のど飴の調子はどう?」
 えーっと、天井の染みを見上げながら口内を探索する。んー、あれ? あーあった……。ま、不味いぞ! これは非常にピンチだ!?
「苦いの?」
 そ、そうではなくて、寧ろ甘酸っぱいけど、そういった不味さじゃなくって!! 言い換えれば危うい不味さ。のど飴は脆弱なほど小さく、とてもお手頃サイズに変わり果てていた。
 不覚だ、無意識に唾液が溢れていたのか……。後悔は後でするものっ、今は誤って噛み砕かないよう心がけるのみ。何かの拍子に亀裂が入ったりしたら、穴から唾液が溶け込みより効率的に……。マイナスに考えるな! ここまできて死ぬはずがないんだっ!!
「幻想を満たせたね。希望と絶望の狭間に位置する、幻想。貴方は自分の弱さを断ち切ることで、現実を理解した」
 俺のお陰だな。
「どっちの?」
 どっちも俺だよっ! それよか、いよいよ以ってヤバくなってきたぞ!?
「そうね。でも、たぶんそー、もう直ぐゴールだよ!」
 だから頑張って、と言いたいのか。言われずとも、遣れるところまで遣るしかない。相棒ともそう誓ったんだ! もう翻弄されない! どんな卑劣なほどの高壁でも、力尽くで打ち破ってやるさっ! 掛かってきなっ。
 けど、甘酸っぱいとはどういう意味なんだ? それに酸っぱいのは新種だが、甘さに関しては克服したはずだ。
「人間はそれほど単純じゃないよ。一つが満たされれば、他が零れるの」
 んじゃ永遠とイタチゴッコなのかよ!? そんなことしている間に成仏しちまう。
「んーでもね。精確に満たしていけば、ちゃんと幸せの滲む味になるの」
 まるで難解パズルだな……。
「そう。人の心は複雑怪奇、容易に理解できない」
 わかったよ、でどういう風に満たせばいいんだ?
「そうだね。えーっと、甘さは、愛しさの念。酸っぱさは、執着の念。つまり、愛しさが油みたいにこびり付いている状態。だから、キレイにしてあげるのよ」
 これを俺なりに解釈する――欠落した愛しさが、心に張り付いて蝕んでいる状態……。しかしなぁ、過去とは俺なりに決別したつもりだったが、それでも未練があるのかよ。俺は結構な貪欲魔人だったのか?
「確かに貪欲だけど、それはー、ちょっと違う。執着心とは、過去から現在までの過程。今の貴方は、そーだね、過去のコンプレックスを抱いているはずよ。それを解消すれば満たされる」
 一から思い起こして、ヒーフーミーと数え切る前にのど飴が溶けちまう……。だったら、真っ先に浮かんできたコンプレックス、これが恐らくだが大きなベクトルを占めているはずだ! ……両親に虐待された過去、これしかない。
 虐待って言っても身体への暴力ではなく、はたまた精神への暴挙でもない。まるで逆、俺の両親は子供に全く関心を寄せない放任主義者。むしろ殴られて育てられれば、怒りの行き場も生まれただろうに。
「それで貴方も他人に興味関心を抱くことを戸惑った。結果的に、人を愛する事ができず、愛される恐ろしさを覚えたのね。うん。これで甘酸っぱいのも頷けたよ」
 他者に心を見透かされるのは面白くないな……。
 俺は誰とも打ち解けようとはしなかったし、受け入れようともしなかった。故に、結衣に心の散らかった内部を、しかも土足で図々しく侵入されると困惑する。
「貴方は一度、トロケルほど甘いのど飴を満たすことができた。これはそのじゃー、私のお陰……だったのかな」
 そうだ! 俺は満たした、結衣が無理やり入り込んできて、俺は成す術もなく心を荒らされたんだ。その結果満たされていたんだ!
「助けてあげる方法がわかったよ!」
 ホントか!? 良かった、相棒に感謝! 結衣に感謝感激! この世界に感謝感激飴嵐!
「飴……なんだね? しかも嵐って……。いいけど、あーそうだ。その、少し恥ずかしいなぁ……。でも、うん! 貴方の言う越権行為になるから、そのー……」
 俺は人間だ! 人間には黙秘権を行使する権限が与えられている。口が裂けても秘密は漏洩させない! だから教えてくれ、正直もう時間がない。米粒ほどの大きさなんだ!?
「せ、急かさないで!」
 結衣は深い深い呼吸を繰り返す。すると、打って変わってキリっとした真剣な表情で、真っ直ぐに俺を見つめた。
 まるで俺は蛇に睨まれた蛙だった。
 さ、サプライズだ……。
 バラの芳しい香りがとても優しくて、思考の全てが臭覚に集結する。
 と、結衣の凛として整った輪郭が俺に触れていた。
 これが幸せの滲み出る味ってやつか……。
 粒子となったのど飴を喉奥に滑らせる。
 ゴクン。
 豪快に唸らせ嚥下していた。
 死んでもいい。下向きな発言ではなくて、心から満たされ充実したからこそ、無意識に浮かんだ言葉。
 そっと結衣の柔かな唇が、俺の唇から分離した。
 霊魂を抜き取られ呆然としていた俺に、結衣はクスクスと笑う。
 その可憐な仕草は、やっぱり女神様みたいだと思った。
「無事に生還、おめでとっ」
「――えっ! ぁで、でも俺飲み込んじゃったし……」
「意識がハッキリしているのが、なによりの証拠だよ?」
 えっ嘘? マジですか? 俺、おれ……やったーーー!! やったぜ相棒っ! ちゃんと見ろよ畜生ーーー!! 嘗(かつ)て、これほどに止め処なく押し寄せる興奮に出会えただろうか。
「声に出しても平気だよ?」
「そうだ! 生きてる、俺は生まれ変わったんだ!」
 そう考えると、一呼吸一呼吸が凄く新鮮に感じてくる。
 前代未聞の喜びに、何故だろう、涙が止まらない。
 楽しくて涙が出る、
 笑顔で涙が出る、
 ワクワクがドキドキで、
 明日が五分後が待ち遠しい。
 しかしどうしよう、初めて芽生えた感情に理解が追いつかない。
 下手をすれば一生治らない不治の病だったりしてなっ!
「あーっと……勘違いしないでね? アレは本命じゃないから! それと、今の貴方はのど飴の効力で幸せなだけ。私に対して何らかの好意を持ったなら、それは一時の幻なの」
「一時なのか? また昔に戻っちまうのかよ!?」
「貴方の生き方次第だよ」
「そか、そうか! そうだよな! 生きよう! そうだ、デパートに行ってお釣返してもらわないとっ!?」
「自転車もだね」
「おう! 店員にも謝ってこなくちゃならねぇー! 土下座でもなんでもしてやるさっ」
「大丈夫! 今の貴方ならできるよ」
「ありがとなっ! お礼したいから、家で待っていてくれよ?」
 俺は玄関を飛び出した。
 憂鬱だった世界が愛しく思えてくる。
 普段は夜空を見上げたりしないけど、ちょっぴり眺めてみたい気分だった。おぉ! な、流れ星様だ! 拝んだのは生まれて初めてだった。
「生まれ変われますように!」
 そう願い、手を振って見送る。
 暫くは一人突っ込みの癖は続きそうだが、この才能を活かして友人を作る努力をしよう。きっと分かってくれる人もいるはずだっ。五年前にケンカした友人だが、実はあの後漫才で仲良くなっていた。
 今頃どうしているのか、メールでも送ってみようか。
「そういや俺、なんでこんなに気分がいいだっけ?」
 大切な出来事があったはずなのに……。自転車に跨りながら思い出す。けれど、んーまぁいいか。きっと嬉しい事があったに違いないのだから。
 そしてついつい衝動的に買ってしまった、ミント味ののど飴を口に放り込む。
 余談だが。
 俺は何故か、神様は大嫌いな性格になっていた。なのに、女神に纏わる事項を連想すると、不思議なことに心がスーっと暖かくなる。そんな奇怪な現象に、けれど、その度に幸せな気持ちにさせられた。
 きっと女神様は何処かに存在していて、遠くから俺を見守っているのかも知れない。
 良く夢に現れる露出狂のお姉さんが怪しいなぁ、と俺は密かに疑っていた。
2008-03-03 02:44:03公開 / 作者:日影
■この作品の著作権は日影さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初投稿で自信はないですが、勇気を奮って出しました

初っ端の話は前置きみたいなもので、人によっては読むのを苦に感じられるかも知れません(ストーリー性が薄いので・・・)。そこは自分でも力不足だと思っています
その方はすみませんが、本編のだいたい1/5から読んでください。ここからなら、差し支えなく内容も十分に掴めると思います

改行をわざと多めに設けてみました。読み難い・読み易いがあれば教えて下さいm(_ _)m善処します

今後は皆様の感想を頼りに、向上していけたら嬉しいです
この作品に対する感想 - 昇順
 あらすじの『絶望のど飴』という言葉が気になり読みました。ストーリーは面白いと思います。
 感想としては、このノリでこのテーマを扱うのは無理があるかなと……。主人公のテンションが沈みきっていないというか、死ぬときにそんなのんきな会話はできないだろ、とそんな印象を受けました。
 改行については好みによりますが、私は問題ないと思います。
 主人公のその後を読者に想像させる方法としては、話を最後まで書かないというものがあります。
 この場合ですと『ミント味ののど飴』ではなく例えば『売れ残りのガム』にするわけです。飴はもうこりているだろうから、次はガムを買うというのが私の思考です。想像の趣旨が違っていたらすいません。
 最後に誤字脱字と思われる箇所を。
「そういや俺、なんでこんなに気分がいいだっけ?」は『いいんだっけ?』
 書き出しの『つまり夢も希望も持ち合わせていない』は妙な部分で改行されています。それと最初に一文字開けていない箇所がいくつかありました。サイト右上にあるサポートツールの『小説作法のチェッカー』にかければみつかると思います。 
2008-03-03 11:04:54【☆☆☆☆☆】翼
返事遅れてしまいました。
>翼様
的を射た感想ありがとう御座いますm(_ _)m

『死を理解していない主人公』から→『死を理解した主人公』を描きたかったのですが、表現がまだ未熟でした。もっと危機感を抱かせた方がリアルですよね。

『売れ残りのガム』ですが、確かにそっちの方が面白みが沸くと思います。参考にします!

最後の脱字はこちらのミスです……
細かい指摘恐れ入ります。

思い切って投稿して正解でした!
また投稿するときは、よろしくおねがいしますm(_ _)m
2008-03-05 20:42:03【☆☆☆☆☆】日影
作品を読ませていただきました。題材は面白いと思いますが、主人公の心情面が弱くて題材を生かし切れなかったと感じました。また、全体を通して主人公の言動がやや軽い感じなので、切迫感が弱まってしまった印象を受けました。でも、物語の流れは綺麗な流れでした。では、次回作品を期待しています。
2008-03-10 07:18:57【☆☆☆☆☆】甘木
計:0点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。