『エスパーファミリー』作者:ペン / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
同居人はエスパー!?みたいなラブコメです
全角1715文字
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原稿用紙約4.29枚

 プロローグ

 本当に、それは突然だった。
 時は三月。寒い冬が終わり、春がもうすぐそこまで顔を出していた頃合だ。
 進学先も無事決まり、俺は高校生になるまでの僅かな休息――春休みを堪能していた。
 ここまではいい。何も問題は見当たらない。
 問題は、これだ。
「オー。山サン! 元気にしてマシタか?」
「久しぶりだなぁシャーク! おうおう、相変わらずでかい図体しやがって!」
「山サンこそ、その笑顔、大和魂こもってルヨ!」
 家に帰ってきたら、親父と謎の外人が親しげに話していたのだ。
 うむ。当然の事ながら、俺にはこの状況が示す意味がわからない。
「おう、浩太。帰ってきてたのか」
 玄関で呆然と立ち尽くしていると、親父が俺に気付き声を掛けてきた。
「オウ! 山サンの息子サンですカ?」
「浩太ってんだ。俺に似てハンサムだろ? おら、浩太。お客さんだ。挨拶しろ」
「……どうも」
 とりあえず、謎の外人さんに向かって軽く頭を下げ、挨拶をする。
 お客さん? もしかして、この人は会社の上司か何かなんだろうか。
「ナイストゥーミーチュー。ワタシ、シャークと申しマァス。これからお世話になりますが、よろしくお願いしマス」
 シャークさんはにっこりと微笑みながら俺の手を握り、握手を交わした。
「あ、どうも。こちらこそ、よろしくお願いします」
 やはり、親父の仕事関係の方なんだろうか? これからお世話になる、ということは上司でなく同僚又は部下なのだろうか。
「それじゃ、シャーク。さっさと部屋に荷物を入れちゃおうか」
「そうデスね。銭は急げデェス!」
「ははは。それを言うなら、善は急げだろう? 浩太、着替えたらお前も手伝うんだぞ」
「俺も?」
「当たり前だ。ほら、さっさと着替えてこい」
 何を手伝わせるのやら。
俺は首をかしげながら、二階にある自室へと向かった。
「え?」
 自室のドアを開ける。
 そこで、また信じられないような光景が目に飛び込んできた。
 女の子だ。自分の部屋に、女の子がいたのだ。それも、まさに着替え中の。
 金色に輝く長い髪と、白色のスタンダードな下着が俺の目に留まる。
「な、ななな……」
 女の子は、しばし呆然と俺を見据え、やがて唇を震わせながら口を悲鳴の形に変化させていく。
「あ、あの、失礼しました」
 俺はそのままドアを閉める。
 何だったんだ、今のは。いよいよ俺の妄想が具現化したのだろうか。
 自室で着替え中の金髪美少女と鉢合わせるなど、現実的に考えて早々ありえる事ではない。
 俺は目を擦り、もう一度ドアを開けた。
 そこには、やはり金髪の美少女がいた。開いた口が塞がらないといった様子のまま、石造のように固まっている。
 おかしい。これはリアルなのだろうか。何だかそっちの説の方が濃くなってきた。
 ううむ、だとしたら、今の状況を冷静に分析すると――。
「へ、へへへ変態――――!」
「ぬおっ! や、やっぱりそうなるか!?」
 女の子の悲鳴が、家中に響き渡る。
 待て、これは誤解だ。不可抗力だ。決して覗こうとして覗いたわけじゃない。
 誤解を解かねば。しかし、この状況では何を言っても無駄な気がする。
「ち、違うっ! というか、お前は誰だ! 俺の部屋で何を……おぉ!?」
 直後、信じられない事が起こった。
 俺の体が、地球の重力に反して宙に浮いたのだ。
「何だ!? お、おい。何がどうなってんだよ!?」
 自由を失った俺の体は、そのまま勢い良く上昇する。
 そのまま、ごん、という音を立てて俺の頭部が天井に激突した。
「ぐほぁっ!」
「くたばれ、変態!」
 ふ、と体が楽になる。同時に、重力に引き寄せられ、俺の体は地面へと落下した。
「ち、ちが……俺は、変態じゃ……」
 弁解の声が、むなしく途切れた。頭を強打したせいか、思うように言葉が出てこない。
 地面に倒れている俺を、女の子はまるでケダモノでも見ているかのような視線で見つめていた。
 
2008-02-27 14:51:52公開 / 作者:ペン
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