『我思うところ。』作者:かわとうエミリ / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
私は目を覚ました。いつもと変わらぬ一日だが、私には不満の数々が存在する。我思うところを綴っていこうではないか……
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原稿用紙約3.85枚
 私は暖かい空気に包まれ、目を覚ました。
 最近、めっきり寒くなってきた。私はこたつの中で丸くなって、寝てしまっていたようだ。
 それではまるで猫のようだって? 
 ご名答、いかにも私は猫なのである。
 こたつ布団のから顔を出し、ふぁと欠伸をする。と同時に私の気管に、冷たくも新鮮な空気が流れ込んできた。
 こたつの中の空気は、喉がもごもごしてしまう。どうも、人間は我々猫がこの中に入ることを、考えていないようだ。これは立派な猫差別であろう。
 ちなみに猫差別は、最近、夜の集会で頻繁に議論されている内容であり、一種のムーブメントになっているのだ。
 まぁ、君たちに話しても、意味のないことだ。
 猫は猫。人間は人間。両者は共存しているようで、分かり合う事はできぬものなのだから。
 どうやら、今はこの家にいるのは、主である私だけであるようだ。
 私は、洗面所に颯爽と移動した。そして後ろ脚に力を込め、ふわっと、洗面台に飛び乗った。
 鏡には、美しい三色の毛並みで、大きなぱっちりとした眼を持ち、すっと伸びた輝く髭を持つ、美しい猫が映っている。
 それはもちろん、私である。
 以前、この家の娘が、自分の顔に絵具を塗りたくっていたのを、目撃したがあれはまるで道化の様であった。生物は生まれ持ったままの姿形が、一番美しいという事を人間は知らないようだ。
 しかし、この家の母は絵具を塗ろうが、塗っていなかろうが、直視できたものではないが……
 いささか眠りすぎたようだ、私の腹時計がそのように言っている。
窓の方に、視線をやると綺麗な夕焼けが見えた。この様に自然を美しいと、 感じられるのは感受性豊かな猫だけであろう。
 人間とは全くもって、可哀そうな生き物である。
 洗面台から飛び降り、今度は台所に移動する。台所の隅に、私専用の食事用特別場所が設けられている。
 皿の中に入っている、少し硬めのフレークを食べる。味はいまいちだが、私は健康に気を付けているため、栄養をバランスよく摂取できる、この食事を続けている。
 人間は栄養バランスなどを考えず食べるそうではないか。
 食事をしていると、この家の娘が帰宅した。
 どうやら、一人ではないようだ。
 確認すべく、玄関へ走る。
 なぜなら、私はこの家の主であるからだ。この家の状況を把握する責任は、私にあるのだ。
 娘の横にいたのは、一人の男であった。どうやら、間抜けそうな顔を見たところ、大して害はなさそうだ。
 男は無礼にも、私を掴もうとしてきたので、その手を引っ掻いてやった。
 いつも人間は何かと、私に触りたがる。私が美しいが故なのだろうが、あまりにも無礼である。
 人間に教養というものを求めても、無駄なことぐらい理解しているので、もう一度引っ掻いて台所へ引き返した。
 ふと、見ると外は薄暗くなっていた。
 大変である。
 そろそろ、集会が始まるではないか。今日は猫曜日では、いわし曜日に当たる曜日であり、毎週、隣町の長老猫が公演する事になっているのだ。
 私は、ドアの前で数回娘に向かって、開けるように叫び、ドアを開けさせた。
 ドアの隙間から、娘の顔が見える。心配するのもわかるが、今日も猫差別について、話し合わなくてはならないのだ。猫は忙しい。
 なんだかんだ言って、私は彼らとともに生活することがこの上なく、気に入っている。
 この家に帰ると、いつも心が和み、ここが私のいるべき場所だと確認できる。
 そして、家族を見ると安心し、なんの気兼ねもなく毛づくろいができる。
 娘よ、留守は任せたぞ。
 そして、私は薄暗闇を駈けていく。
2008-01-20 20:16:50公開 / 作者:かわとうエミリ
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■作者からのメッセージ
今回は視線の角度を変えて、書きました。
と言っても猫の視線ですが……
我々とは違う猫の視点で、人への風刺も込めて書いたつもりです。
はたして猫がこのように考えているかは、いささか疑問ですが……
この作品に対する感想 - 昇順
どうも、鋏屋と申します。
作品を読ませていただきました。
端々に登場する単語はおもしろかったです。鰯曜日とかですね。
動物の目線で人間の世界を見るという手法は良くありますが、健康に気を掛けてるからフレークを食べるとこなんか現代っぽくっていい感じでした。
ただ、私は少々短すぎるのと、淡泊な気がしました。家の娘がボーイフレンドを連れてきたときの絡みや、集会の内容など、もう少し練った内容だとよかった。
それにしても、何故猫はこうも、世間や人間を見下したイメージで書かれる作品が多いのだろう……?
戯れ言を、失礼いたしました。次回も是非読ませていただきますので、頑張ってくださいね。
鋏屋でした。
2008-01-20 23:06:26【☆☆☆☆☆】鋏屋
作品を読ませていただきました。物語の着想に対して文章の良が足りなくて少々物足りなかったです。昔からある題材だけに主人公(猫)の個性をさらに鮮明にして、人間批判や同族批判などをもっと詳しく書いて作品としての個性を強めてもよかったと思います。
では、次回作品を期待しています。
2008-01-21 22:35:55【☆☆☆☆☆】甘木
初めまして『登竜門』という作家達の家に住み着いている気まぐれ猫です。
猫の視点ですか。名前のとおり猫が好きなので楽しく読ませていただきました。上の御二方が言うようによくある話ですが、猫曜日や猫差別などの今までの小説に無い単語は面白いと思います。(鋏屋さんと同じ意見ですいません)
僕としてはもう少し家族との交流を書いてなぜこの家、この家族が気に入っていることを書いてもらえると良かったなと思いました。
戯言を失礼しました。次回作を期待しています。
2008-01-22 19:49:48【☆☆☆☆☆】気まぐれ猫
計:0点
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