『アベマ奇譚』作者:模造の冠を被ったお犬さま / TXyX - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
「お日さま、出ないかな」 夜に魅入られた世界。突如訪れた黒夜と呼ばれる自然現象の中、人工照明の下で慎ましく暮らす人間は常に恐怖と隣り合わせに生きている。 ──今回の舞台は明けない夜。clown-crownのオーソドックス。驚愕にして落胆の結末が読み手を襲う!
全角6321文字
容量12642 bytes
原稿用紙約15.8枚
 アベマ奇譚







 無色騒然







 皆既日食は四年前に始まった。
 衝撃によって事件の時刻を精確に指し示す時計のように、星の運行はぴったりと停止したたまま現実としての時間が流れている。ある学者は「一週間以内にすべてが正常に戻る」と予見したが、その一週間はとうに過ぎていた。別の学者は「数世紀はこのまま継続する」と述べ、また別の学者は「永久的にこのまま継続する」と発表した。
 夜であることに対応することはできた。「夜が訪れない白夜の反対なのだから、明けない夜はさしずめ黒夜だ」と、黒夜というネーミングが人口に膾炙され、すぐに一般的な呼称になった。文字通り、一夜にして。
 黒夜である以上どんなに長くても一夜ではあるが、この呼称の浸透具合は非常に──私の実感を加味した形容動詞に直すのであれば──異常にすばやかった。ネーミングに含まれるジョークを受け入れている余裕が、人々の心の中にはあった。黒夜になる以前から夜には慣れ親しんでいる。夜を照らす灯りも用意できている。
 秋の夜長を楽しむような雰囲気があった。
 稲光によって建造物が焼き尽くされるよりも、地震で足元が揺り動かされるよりも、夜が明けないことが何よりも勝る災害だと人々が気付くのは、黒夜の呼称が広まるよりもずっとゆったりとしていた。
 復旧の目処が立たないことが、より強く人を絶望に駆り立てている。絶望は無色、捉えることができない。雷に打たれた建物は修繕することができる。地震で崩れた土地は均すことができる。しかし、夜が覆うのは地域でも国にでもない。手に余る、人の手を離れている惑星単位。星に係る事象に対抗する術を人類はもっていない。
 人が作り上げた灯りは一時しのぎに過ぎず、夜は一過性ではなくなっていた。
 灯りが明かりの代用品として発明され灯りは明かりと交換可能だと驕っていた人々を驚愕に陥れたのは、手にしている灯りそのものだった。太陽光の色彩も温度も、人工の照明は有していない。人間の作ったものには人間味がないという矛盾を、ここにきて壮大に──皮肉にも私はそう感じ、表現する──思い知る。改めて日光を崇め、ランプに嘆いた。
「あ、あと……」
 思索に填まり込んでいた私は小さな呼びかけにようやく気付いた。
「なあに?」
「おばあちゃんが読んでくれたの。おばあちゃんもママに読んでもらったんだって。とっても古い本だった。そのご本にね、書いてある。“むかしむかし、あるところにとても大きな星があって、それはなくなってしまいました”って」
 随分といい加減な要約だ。「むかしむかし、あるところに」までは絵本の定型文だから覚えてはいても、肝心の中身は骨子すらろくすっぽ覚えていない。
「『アトなんとか』ってゆう」
 呼びかけの「あの」に聞こえたのは『アトなんとか』を思い出そうとして口をついて出た言葉だったらしい。思い出そうと何度も口ずさむのを、私が反応しないから何度も呼びかけたのだと勘違いしていた。
「アトランティスじゃないかな」
 ほんの少しの冒険心をくすぐり、それに伴って分別が働く言葉。私はジュリより三歳も年上なのだから、期待いっぱいにはその言葉を呟けない。
 私もそんなには詳しくない。『アトランティス大陸』。文明の進んだ大陸国家が世界を手に入れようとして神の怒りに触れ、その地ごと海に沈没した。
「神さまが怒って島を海に沈めちゃうやつ」
 ジュリはぽかんと口を開けて──それが思案を巡らせている表情だった──すこし考えた後、「それじゃない」と拗ねたように言った。
「島じゃない。星だもん。それじゃなくてね、竜が出てくるお話だよ?」
 アトランティスしかりムーしかりレムリアしかり大陸が沈没する話はよくあるが、星が滅ぼされる話は聞いたことがない。沈没する話のいずれかから派生したパターンなのかもしれない。そう考えると、ジュリによって新しく追加した竜登場の条件も、なにかの話──例えば、行いの悪い人間を懲らしめるために姫をさらい勇者と対決する竜のような話──からも拝借したキマイラのように無節操な作り話なのだろう。そういえば竜もキメラ──蛇をメインに置いた合成獣だ。
「どんな話なの?」
「よく覚えてないんだけど……──。うんとね、そのお星さまには人が住んでるの。──……でね、その人たちは地面の下に竜さんがいるのを見つけるの。──……だからね、掘ろうとするの。──……そうするとね、びっくりした竜さんが動いたの。……そしたらね、地面がぐらぐらに揺れてたいへんなことになったの。──……んでね、とんでもなく竜さんが大きいってわかった人たちは竜さんが出てこないように地面に覆いをしたの。──……するとね、竜さんが怒って覆いをばりばりって破って出てきたの」
 ところどころで口をぽかんと開けながら喋っている。話しているより考えているときのほうがかなり長い。知略ボードゲームをしているような時間配分だった。
「あの、おしまいだよ?」
 考え中だと思っていたら、もうこれで終わりらしい。先の言から補足するに、その竜は星一個分の体長を誇りそれが地表から出現したことによって星がまるごと木っ端微塵になったということか。
「あ、思い出した。『アトラテックス』だ」
「それが星の名前?」
「うん。そうだった。……両方だったと思う。ご本の名前も」
 口伝えによって変形したパターンなのかオマージュなのかは知らないが、やはりアトランティス伝説の影響を受けた話だ。『アトランティス』と『アトラテックス』では偶然というには似通い過ぎている。内容以前に。
「ねっ、あのお星さまもなくなっちゃわないかな」
 光に照らされた顔を向ける。白い。
 純真にして残酷。子供を言い表すよくある言葉だが、この場では言うまい。この星にある動力資源を結集して日光を遮る『衝立』を破壊してしまおうとする冗談のような計画が持ち上がったことがある。世界中のエナジイの総和を求める真面目な計算をして、それが不可能だと答えに行き着いたために頓挫した。答えが可であったら本当に実行されていただろうか、私がジュリより大人とはいえ、大人がそんな冗談のような計画で意思を統率し実行に移さんとしていることに薄ら寒さを覚える。ジュリと同じ、お伽噺を信じ込む子供ではないか。
「お日さま、出ないかな」
 壊してしまおうとするのは太陽を見たいがため。当然だ。当然のことに胸を撫で下ろす私がいる。子供がおもちゃを乱暴に扱うのとは違う、ただの破壊衝動ではないことに安心する。世界は黒夜であっても、暗黒ではない。
 どうやら、この輝きの下でも私に楽観は許されないらしい。
 自然光を求めてジュリとともにこの『輝きの木』にやってきた。輝きの木それ自体は光らず、そこに集まる数種の虫がまばらに発光する。まばらに、というのが良い。
 いつもどれも同じ顔でのっぺりしている人工照明でまばらに光るのはフィラメントが切れかけのときだけだ。それだって、寿命が近くなって息も絶え絶えにぜいぜいと喘いでいる老人を見ているようでこちらまで苦しくて切なくなる。今まですましていた寡黙な使用人が突然、身体の不調を訴える。死に際にならないと表情を見せことなく、見せても断末魔の苦しみのみ。黒夜には必需品なのに、使用する度に罪悪感が募る。
 ジュリは太陽のことをほとんど覚えていない。それにも拘らず太陽が見たいのは、周りの大人が話題にするからだ。黒夜が訪れる前には照明機器を必要としない時間帯があったことも、それが太陽という光り輝く恒星によるものだとも、『衝立』の向こう側には今も変わらず太陽があって『衝立』さえ邪魔をしなければ光に溢れた世界になることも知っている。大人がそれを待ち望んでいることも知っていて、ジュリは同調している。
「ママにクレオンを買ってもらったの。お日さまが出たら、お外の絵も描けるね」
 かつてジュリが「太陽は塗り絵をするんだよ」と言っていた。それも大人たちから聞いたのだろう。太陽は世界に彩りを与える。
 夜を侮った人々を恐怖に見舞ったのは、対抗手段としての武器の心許なさ。人工照明の温かみのなさは人々の予期しないものだった。そして温かみ以上に人工照明から抜け落ちていたのは、鮮やかさ。世界は褪せていた。
 黒の反対は白。黒が濃すぎて、黒を切り裂いても白しか見えない。二元説の世界。有か無か是か非か正か負か、光か闇か。黒は夜の闇を表し、白は光を示す。黒は色の不在で、白は色の現出。どちらも単一で、広がりがない。色合いも彩りも存在しない。
 色がない、というのは正確を期していない。人工照明には橙や朱や青味がかった色などある。色はあり、だからこそものの色が消える。光とは、原理は反射。ものが光を照り返して、それが目に入って色を感じる。ものを照らす光がもとから着色されたものであれば、照り返す光も偏ったものになる。赤いライトに照らされたものは赤にしか見えない。のっぺりした人工照明は照らすものまでを無表情に変える。
 黒は無色で、白は全色。
 すべての色を内に秘めた色。白というのはそういう色だ。
 そこに到達しない人工照明は色が圧倒的に足りない。足りないから中途半端に色が洩れる。すべての色を詰め込んだ、プリズムを通せばその組成内容が虹として知れる日光には到底敵わない。
「ね、虫が消えてくよ」
 発光を止めたのか実際に去ったのか、光が急速にしぼんでいた。周囲の照度が下がり、距離感が失われていく。とっさにジュリの手を握る。
「嫌な感じがする」
 虫の知らせ、か。視界はほとんど夜に飲み込まれている。手探りで伸ばした手にランプが当たるが、焦っているゆえだろう点灯させる部位がみつからない。自然光だけを浴びるため人工照明を消していたことが仇となった。帳が落ちる。
 下草を撫でるざらざらとした音が聞こえる。撫でているのは一箇所で、かなりの広範囲。風ではない。大きな質量をもつものが近づいてきている。
「離れようよ」
 ジュリの手が私を引き寄せる。しかし、身体が動かない。痺れたように、かじかんだように、神経がどこかで途切れているかのように身体がままならない。
 腹ばいになって進む動物が私たちとの距離を詰めている。草を倒すざらざらのほかにがりがり。剥がれかけた古い皮膚が擦れあう音。
 これは、こいつは──。
「ほら」
 思索に逃げた私を引っ張り上げる。そばにはジュリしかいないのに、黒夜の中ではそれが本当にジュリなのかさえわからなかった。こんなに力があるなんて。
 ざらざらがりがり、さらにくちゃくちゃ。歯のないその生物は胃から生成される強力な酸の溶解液を獲物に浴びせかける特徴をもつ。
「逃げるよ」
 これはジュリの声だったろうか。年齢に相応しくない頼りになる声、ともすれば聞くだけで安心して心身を委ねてしまいそうになる。引っ張られたまま、転ばないようにだけ注意して足を動かす。左手に持ったランプがかんらかんらと揺れている。
 ざらざら……ざらざらざら……ざらざら……ざら……ざらざらざらざら。
 ジュリはまっすぐ走っていない。方向を変えるごとに連結機関たる腕がくいと捻られ身体が揺さぶられる。
「まっすぐ、揺れる。転ぶから」
 まともな言葉にならない。なにもしていないのに息が切れている。
「まっすぐ走ったら木にぶつかるよ」
 ほんの少し、笑っているような声音。
 ランプの灯りもなく、星明かりもなく、虫の光もない。そんなただ中で逃げながら木を避けている。ジュリの言うとおり、今まで一度も木に激突していない。それどころか私が転ばないように段差の少ない道を選んでいる、と今にして気付く。
「見えてるの?」
「見えないよ」
 首を振りながら喋っているのが、見えるように脳裏に浮かぶ。
 ざらざらざら……ざらざらざらざらざらざらざらざら、くちゃり。
 服に飛来してきた何かが飛び散った。てん、てん、てん。それは熱をもち、布地を溶かす。
「かかった?」
「かかってない」
 嘘を吐いた。布地を溶かした生温かなそれを、次は皮膚で感じる。肌がしゅうしゅうと溶けてゆくイメージ。見えないから、どの程度のダメージかは痛みでしかわからない。
「見えないのに、どうして?」
「何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も経験した。だから、覚えてる」
 私とともに『輝きの木』にたびたび訪れていることを指しているのではない、苛立ちを隠せない声音が風に沿って流されてくる。誰。私に連れられて『輝きの木』が光るのを見に来るのをジュリは何より気に入っていた。たとえ今が凶獣に襲われていようとも、過去の思い出を憎々しげには語らない。私の先を行く、この手をつかむ腕は誰。
 肉が溶けて腿に痛みが奔る。
 膝が地に着く。
 手を、放してしまっていた。
 ざらざら……ざら……ざらざら……ざら……ざら。
 獲物を追い詰めた、にじり寄る音。
 からん。
 ランプが転がる。
「今の音……ランプ?」
 ざらざらもがりがりも聞こえない。
 もう、目の前にいるのだ。
 くちゃくちゃと、それと鼻息。
 存在を鼻先に感じる。
 臭気が顔にかかる。
 大きく口を開き私を飲み込もうとする姿が、見えた。
 この目で。
 閃光が緩やかな、しかし俊敏なカーヴを描いて生き物の短い頸に吸い込まれる。
 反射的に口が閉じる。
 私の目の前で、扉が閉まるように口が閉じられる。
 閃光は生き物の右眼を刺す。
 脇腹を刺す。
 右前肢の指の付け根を刺す。
 夜をも掻き消すような耳をつんざく咆哮が辺りに響き渡る。
 その間も閃光は生き物のいたる部位を攻め立てている。
 巨体を縮こまらせた。
 しかめたような顔を背け、尾を見せる。
 閃光の届かない黒夜の深みに去ってゆく。
「かかったなら言ってよ。溶けてる」
 光の点ったランプを持ったジュリが、それを傍らに置きながら私の治療を始める。
 今の戦いがまるで日常の一コマだったかのように、その連続線上で私に駆け寄っている。
「ジュリ」
 私の引き攣った呼びかけに苦笑いで応えた。ジュリのこんな顔は知らない。
「やあ──……



 モノクロームに照らされていながら、懐旧と悔悟と親睦と和解と怯懦と諦念と抑圧と憤怨と寂寥と余裕と祝意と嘆嗟と自嘲と懺悔と愉悦と決断に彩られた表情を見た。






 はた、と醒める。
 全身が熱気を帯び、パジャマが汗で張り付いている。なおだくだくと流れる大粒の汗はベッドに着床する。お漏らしのように濡れている。
 咽喉がいがらっぽい。目の腫れを感じる。寝言で泣き叫んでいたかもしれない。
 しん、としている。体内だけが、動悸でやたらとうるさい。
 夢? ……夢。夢、か。
 なんて夢だ。
「どおりで、色がない──」







“Colorless Disturbance” closed. 
2007-09-14 00:54:00公開 / 作者:模造の冠を被ったお犬さま
■この作品の著作権は模造の冠を被ったお犬さまさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 最後の台詞が書きたいがために、まるまる一個を書き上げました。
 落ち着いた雰囲気の書き物ももちろん良いですけれど、きっちり落としてくれる書き物は私好みです。落ち着いているのにオチがつかないとはこれ如何に。
 オチもオチ。オチオブオチ。古典にして伝統、王道のオチ。それも、悪名高く各所で最悪とされるオチ。登竜門でも扱き下ろされているのを目にしました。「こんな時代錯誤で死んで腐って蕩けたようなオチをつけるなんて死んで腐って蕩けてやがんなこのへっぽこ野郎め死んで腐って蕩けて償え」ってな勢いでした(かなり酷く誇張されている気がする)。オチ自体は偉大な発明だと思いますし、使い方によってはむしろ斬新なものに変わり得ると思うのです。これがそうなのかは知らんが(無責任な)。
 うーん、冒頭でもちょっと書きましたけれど【瘡蓋をぺりと剥がすと】の裏返しのつもりで書きました。前回はなんかよーわからんうちにブンガクサクヒンと呼ばれちゃったりしたので、今回は大衆小説っぽくエンタメ重視のつもりで──失敗しました。まあ、これはこれでいい味もっているのでいざ勝負です。
 こーゆー設定を使い捨てできる辺り「天才だな」と思います。臆面もなく自分で天才だなんて言えるとは、やはり天才に違いないですね。
この作品に対する感想 - 昇順
お久しぶりです……よね?(訊くな)夢幻花です。実は前作もモバイルでこっそり読ませていただいてて、すごいなぁとか思ってました。感想書けよって感じですねっ(汗)
文章にも内容にも、独特の癖があるのに読みやすくて素敵でした。きっちり書き込まれてるのに、情景描写が無いからふわふわしてて、なんだか童話みたいな雰囲気で好きです。ラストのオチ(? なんだかこの表現が物凄く不適切な気がするんですが)は、落とされたとかやられたっていうよりも、それこそほんとに、夢から覚めたみたいな気持ちになりました。
なんか、感想になってませんけど。言葉拙くてごめんなさい。純粋に楽しませていただきました。次回作も楽しみにしてますねっ♪
2007-09-14 19:00:16【★★★★☆】夢幻花 彩
 可愛い彩さんお久しぶり、存在がセクハラの模造の冠を被ったお犬さまです。
 「そうだよっ感想書けよ!」と強くは言いません。弱く言います。なぜなら私も前作を投稿する前に【麗らかなある日の午後に】を読んでいたからです。ジャンル:恋愛だといつも以上に役に立たない感想しか書けません。いや、役に立たないならまだしも見当違いの感想になりかねないから危険です。
 このラストは文句を言われるだろうなあ、と自覚しつつ、文句を言われないように知恵を絞った結果こうなりました。巧く機能しているようで良かった良かった。
 また楽しんでいただけるよう『次回』も張り切っちゃうよ(爽やか風の、実際には爽やかではない声で)。
2007-09-14 21:31:41【☆☆☆☆☆】模造の冠を被ったお犬さま
初めまして。
模造の冠を被ったお犬さまの「アイウィッシュ」が宮沢賢治の文章にとてもよく似ていて好きだったりします。
と、違う作品の感想を書いてしまいました。忘れてください。

模造の冠を被ったお犬さまの作品は文章が綺麗でとても勉強になります。
ところで、こういうオチってそんなに酷評なんですか。どう使うかによりけりだと思うのですが。
わたしにとって心地よい話の結び方でした。お世辞ではなく、玉のように玲瓏たる文章だと思います。
2007-09-14 21:48:12【★★★★☆】奏瓏瑛
>奏瓏瑛さま
 あれはお遊びというかオマケで書いた話であるから。そんな、文豪に似ているとか畏れ多いよ。
 五つの章からなる話で、章ごとに文体を変えていたつもりだったのですけれど……。ああ、きっとどんぐりの章だよね? そうだと言ってくれ。宮沢賢治ではなかったけれど、同じく文豪の夏目漱石を意識していたから。
 文章が綺麗だなんて言われると、嬉しいと思う前に騙してないかと疑ってしまうよ私。「お前の文章は不快だ。敬語使え」とか、わりとよく言われる。敬語なんて難しくて使えんがな。
 こーゆーオチは、打ち切りマンガのイメージがあるね。オチ自体には伏線を必要としないから、紙面が足りなくなったときに強制終了できる。同じオチを使うと、そのときの物足りなさがフラッシュバックして落胆を覚えるというのもある。今までそーゆー地雷を踏んだことない? スゴい回避率だな。読む前に内容がわかる能力の持ち主とか?(それって読む必要ないじゃん)
 人をそんなに持ち上げてはいけない。お世辞にしても身に余る。

 読みは“そうろうえい”で合ってる?
2007-09-15 02:40:37【☆☆☆☆☆】模造の冠を被ったお犬さま
[簡易感想]
2007-09-15 12:34:00【☆☆☆☆☆】奏瓏瑛
>模造の冠を被ったお犬さま

申し訳ありません。人様のページを汚してしまいました。簡易感想でこの記事を投稿してしまいました。本当に申し訳ありませんでした。

しつこいようですが、投稿したかった内容を再度投稿させてください。

名前の読みですが、「そうろうえい」で合っています。分かりにくい名前ですみません。

夏目漱石だったんですね、失礼しました。
韻をふんだ詩の書き方が宮沢賢治に似ているように思えたのでとても感動しました。彼の詩は読んでいて大変心地よいので大好きなんですよ。系統は違いますが、樋口一葉の文章のような言葉の美しさを感じることができるんです。どの文豪か関係なく、そういう意味で「アイウィッシュ」は言葉の字面だけじゃなく音も大切にしていて、本当に言葉を大切にしている、そう思える文章でした。
それにしても、不快、敬語を使えとは随分と手厳しい意見です。正しい敬語は難しくて、個人的に苦手だからそう感じるだけでしょうか。難しいと敬遠するのじゃなく、そういう忠言ができる人を目指して頑張ろう、改めてそう思いました。

オチですが、確かに途中まで面白かったのにオチが台無しにしている、そういう話はあります。わたしの場合は、他人に文章を読んでもらうことがなかったので、地雷を回避したというより、他人の意見を聞く機会がなかっただけなんです。ですが、個人的には今回のオチのつけかたは綺麗だったと思えます。最後に「どおりで、色がない──」と一言付け加えることで、いい形に終わったな、って。これがなかったら、尻切れトンボみたいな印象を受けるのですが。

最後に、褒めるのが下手ですみません。お世辞ではなくて感じたことを素直に書いたつもりだったのですが、大げさだったでしょうか。大げさな表現をしてしまうと、かえって嫌味になってしまうから気をつけたつもりでした。どうもその塩梅が難しくて、なっていなかったようです。決して嫌味でも皮肉でも媚びているわけでもないので、悪しからずご了承ください。

連続投稿を本当に申し訳ありませんでした。
2007-09-15 12:40:10【☆☆☆☆☆】奏瓏瑛
>そうろうえいさま
 漢字としては文句なしに美しいですけれど、表音としては流れがスムーズすぎて面白くありませんね。と、人様の名前に難癖をつけて社交性のなさを披露する模造の冠を被ったお犬さまです(だから不快と言われるんだ)。
 これが常なので、気を悪くしているということはありません。慇懃無礼を感じたのでもありません。偉人であるとか大人物と呼ばれるような『近寄りがたさ』を放つ人間になりたくない、というのが私の根底にあります(周りが扱っているだけであって、偉人本人には落ち度はないのですけれど。敬語を使わないようにしているのはそんな理由も含みます)。だから、文豪に喩えるのがお世辞であれば私は照れるどころか怒り出すかもしれません。でも、奏瓏瑛さまはお世辞ではなく感想としてそう喩えてくれているのがわかりましたので私は怒気を表すことはありません。
 こんなことを長々と書いてもうるさいだけであるし理解してもらえるとも思えませんでしたので、前回のリプライでは書きませんでした。今回こうして書いているのは、二度目の感想を頂いたからです。
 そんなわけで、私は文豪というものを実は尊敬していません。好きでないものを詳しい道理はありませんから、夏目漱石だろうと宮沢賢治だろうと樋口一葉だろうと同じなのです。ただそういう時代がかった文体を選んだ、それだけのこと。
 私を「お前の文章は不快だ。敬語使え」と非難した人物を、私は目指そうとは思いません。常識がただの都合の良いシステムだとすら気付かない人間に、常識について講釈を垂れて欲しくありません。奏瓏瑛さまがそうでないことを、またそうならないことを切に望みます。
 地雷を踏む、という表現は読み手としての感覚を指していました。すべてのオチを網羅してしまうような執筆経験は私にもありません。書き物を読んで、ではどうすればよいのかシュミレーションすることのほうが多いです。
 最後に。私がこのリプライを敬語で書いているのは、敬語でないと私の言葉が奏瓏瑛さまに伝わらないと判断したためです。
2007-09-15 15:18:18【☆☆☆☆☆】模造の冠を被ったお犬さま
>模造の冠を被ったお犬さま

文豪がお嫌いでしたが、それはとんだ非礼をいたしました。心からお詫び申し上げます。大変申し訳ありませんでした。以後、気をつけます。

わたしのネームは字のようりょうで滔々と流れる川をイメージしたものです。なので、ご指摘のとおりつまらなさが欠点です。本名も面白みのないものですからなおさらでしょう。

自分と対立する方を尊敬したいというのは、自分へ向けての言葉ですから、どうぞ流してやってくださいませ。あえて投稿する必要はありませんでした。配慮が足らず、申し訳ありませんでした。
2007-09-15 16:58:29【☆☆☆☆☆】奏瓏瑛
 怒ってないって言ってるのに……。敬語でも伝わらなかったか。
 ブログや書き物を通して、自分の文章力は格段に伸びている気がしていたのだけれどなあ。やるせないなあ。
2007-09-15 18:03:32【☆☆☆☆☆】模造の冠を被ったお犬さま
読みながら、「はうぁーなんすかこれすげぇやー」と思わずマヌケッ面になってしまいました。
それくらい凄いというか、雰囲気が出ていて良かったです。というか個人的な話、「星」とか「月」とか「太陽」とか好きなので、最初のほうなんかニヤニヤでした。笑

2007-09-15 21:11:59【☆☆☆☆☆】ちょう子
この作品から何かを読み取ろうとするのは、脈絡のない夢に無理やり意味を与えようとする行為に近い気がするのでやめました。他人の夢でそれやっても楽しくないですし。この分量にしてこの進み具合、ああこりゃ物語にまで発展しないなと作品中盤で判定を下し、つまらないとわかりつつ最後まで読んでしまいました。ジュリが登場するまでの舞台説明は惹きこまれました。こういう設定を使い捨てできるのは天才です。

全く出発点の違う「光がない」と「色がない」が最後まで結びつかなかったため、オチの良し悪し以前に私の中ではなんにもオチてくれませんでした。閃光は白、と言われても思い描く映像では少し黄色いし、夜は黒と言葉で理解してもやっぱり少し青い。実に色彩豊かな文でありました。木に群がる虫の光に至ってはエメラルドグリーンですよ、というのはこっちの問題ですが。

ところで私が見る夢は常にフルカラーです。今どうでもいいこと書きました。
2007-09-15 23:45:09【☆☆☆☆☆】明太子
>ちょう子さま
 作り物の世界以外で「はうぁー」なんて使ってる人を初めて見たはうぁー。ちょう子さまのマヌケッ面を見たかったよー。
 凄いのは当然さね。なぜなら、天才だから(ふはははははは)。筆がノると雰囲気も出てくるみたいだな。
 私の場合は『夜』とか『暗闇』とか『無明』が好きでノリノリで書いたぜ。



>明太子さま
 な、やはり天才だったろ(ふはははははは)。
 物語を潰してまで舞台説明を取り扱ったのに、オチにつながらなかったのかよ。ぷはーっ、厳しい。明太子さまを納得させるには色や光や目に関する専門書数冊に目を通さないといけない気がするよ(つまり、無理ってことだ)。夜の街灯の下だと、なんとなく濃淡だけの世界に感じない?(そこにくたびれたおっさんが突っ立っていたらパーフェクト) そんな閃きがあって、この書き物を着手したのだけれどな。そこんとこ巧く書けてなかったか。
 私の夢にも色が着けられているようです。ピンクのボクサグローブを着けたチャイナ娘は強烈だったので確かです。
2007-09-16 00:45:48【☆☆☆☆☆】模造の冠を被ったお犬さま
 感想まで読んでようやく意味が理解できたような気がしました。なるほどー。最後の一言を放った人(主人公?)は上手いこと言ったと思います。
 あと、クレオンよかったです。友達がペットボトルをペッボと略していたのを聞いたときと同じくらい「カッコいいなぁ」と思いました。
2007-09-16 09:54:43【☆☆☆☆☆】サトー カヅトモ
>サトー カヅトモさま
 果たしてペッボはカッコいいだろうか? ──その感性はないわ(うわっ、切り捨てた)。
 感想まで読まないとわからなかったとは、欠陥だ。書き物全般を通して、ラストに勢い込んでくっちゃべるのを潔しとしないから、それ以前に前提を揃えておかないと。今回は事前知識として読み手が知っていることが前提で、そのことについては言及せずに書いたからな。認識を合わせるために書くべきか、でも挿入する場所なぞまったくない。情報量の限界に阻まれてるなあ。
 昔は、色がついているのを見ると縁起が悪かったそうです。
2007-09-16 12:36:49【☆☆☆☆☆】模造の冠を被ったお犬さま
白黒の世界には引きずりこまれました。白、黒という単語自体かなり文章内で繰り返されていましたし、ジュリの太陽が色を塗る、という言葉で今の世界には色づけされてない、という風に刷り込まれたのが大きかったと思います。そして後半の感覚的な掴み辛い流れ。まさに夢ですね。
しかし夢オチだけに視覚的に理解しづらい場所がいくつかあったのが少し残念です。あ、俺のイメージ力不足か……。
2007-09-17 01:13:48【☆☆☆☆☆】走る耳
>走る耳さま
 私は跳ねる耳が好きです。つまりウサギの耳です。ウサ耳萌え〜。
 あっあ〜ぁぁぁ。やってしまいましたね、走る耳さま。みんな、(直截的には)その単語を使わないように気を遣って回りクド〜く感想を書いていたのに。──あっはっは。気にすんな。
 走る耳さまには刷り込みができましたか。それはいい。洗脳完了ですね。
 いや、だけれどね。雰囲気作りのために行動描写を抑えた部分はあっても、夢だからという理由ではやってない。後半の流れは、あれも夢を表現するためじゃなかった。夢だから、という理由でわかりにくいところがあったとしら、それはすべて私の未熟さです。
 うん、精進精進。
2007-09-17 19:00:07【☆☆☆☆☆】模造の冠を被ったお犬さま
 こんにちは。
 遅い感想でごめんなさい。面白かったです。青い幻想世界を披露した末の、人を食ったようなサゲに、ちょっとニヤリとしちゃいました。これは小説に対する「ニヤリ」というより、作者のお人柄がうかがえることに対する「ニヤリ」かもしれません。おもろいお人やなあ、と心が温かくなってしまいました。(半ば以上は好意的な意味です。念のため)
 ただぼくも、夢には色が無い、というのは実感としてはうなずけないです。世間で広くそう言われているのは知っていますが、ほんとだろうか。ぼくの夢はフツーにテクニカラーです。白黒テレビで育った世代が言い出したのとちがうだろうか。いかが思われますか?
 それにしても、これってなんか創作落語みたいです。ちょっと手を加えれば高座にかけられそうじゃないですか。「というわけで、なんぼ待っても夜が明けへんもんやさかいに、『こら白夜やのうて黒夜やなあ』とまあ、まことにうまいこと言うお人がいてますもんで。この『黒夜』ちゅう言葉が、一夜にして広まったちゅう訳ですな」

 あと、最後にひとつだけ。前にお書きになったものを「文学」と言ったのはたぶんぼくだと思うけど、否定的な意味はまったくないですからね。ぼくは文学へのロマンチックな愛情と敬意を片時も忘れたことはありません。世の中には、面白いエンタメとつまんないエンタメ、面白い文学とつまんない文学、があると思っているだけですので。
 それでは、ごきげんよう。せかすわけじゃないけど、次回作を楽しみに待っています。
2007-09-22 16:36:24【☆☆☆☆☆】中村ケイタロウ
>中村ケイタロウさま
 今回は面白がられた。じゃじゃーん、『大・成・功!』。
 『面白い』という評価にいくつかの思いが交錯します。ひとつ、「ニヤリ」笑いと心が温かくなるの表現は相反するものではないのか、私の人柄は心が温かくなるようなものではないと思う。それとも見下し視線での、「やんちゃなガキが」的な笑いなのでしょうか(これはまんまり「ニヤリ」ではないな)。あるいは悪友同士の「やりやがったな」的な笑いでしょうか(そこまで親密なものはまだ築けていないと思ったのだけれど)。ひとつ、その評価に異論はない。しかし、「まだまだこんなものではないぞ」という自負が私にはある。これは近いうちに披露できると思うのだけれど、それを中村ケイタロウさまに面白いと感じてもらえるかはまだわからない。最後のひとつ、関西の人間にとって「おもろい」は特別な意味があると聞いたことがある。私ってば特別なんだあ。
 創作落語って、またそういうことを言う。『文学』と言ったときと同じだな。私の性質として、自分の意図しないものが表れていると自分の無力さを感じるのだよ。支配力とか、統率力の欠如。「私の書き物から発掘してくれている」と喜ぶ反面ね、悲しみ。フツーなら喜びが勝るものだろう。でも、制御したいという欲望が私は常人より強いようなんだ。私にとって『落語』は『文学』より遠い位置にあるから無関心を装える分、気にならないけれどさ。あ? いやね、「不快だからやめろ」と言ってるんじゃないのよ。むしろ、褒めようとしているのがわかる。『文学』に浪漫と愛情と敬意を捧げているのもわかる。だからこそ、「私には逆効果だよ」と伝えている。せっかくキモチヨくしてくれるなら、私が実感としてキモチヨくなる言葉を囁いてよ。
 ──って、そんな感想は難儀だな。比喩が使えないってことじゃねーのか? それを禁止されたら感想なんて言えないだろ。
 その通り。でも、私が言いたいのはそういうことじゃない。私が中村ケイタロウさまに宛てた感想で【女流作家のような文章でした】と書いて、その後にカッコでご丁寧に【私が女流作家のような文章というときは否定的な響きを含んでいます】とまで書いたのは、その文章を悪意あるものとして受け取ってもらって構わないと思ったからです。つまり、意図したものか否か(ここでも私の制御の趣味が表れている)。『赤は温かみを感じ、青は冷たさを感じる』というのは色彩心理として通説ですけれどそうでない、逆に感じる人もいる。こんなに長ったらしく書いているのは、それを指摘したまでのことです。相手を傷つけまい・喜ばせようとして中村ケイタロウさまが感想を書いているなら、「それ、不発だよ」と正直に伝えるのも良いんじゃないかと考えます。その指摘を伝えてなお、同じように書いてくるのなら「こいつ、私を苛立たせようと書いてんじゃねえのか」と思い直すことができますし、書き方を変えてきたなら「私に合わせてくれているのだなあ」と思う。空回りしている状態が私には我慢できません。
 前回の感想のときに、ここまで書いていれば良かったのですけれど。それを書くと、絶対に感想が減るしな。書きたくなかったんだ、本当は。感想に制限を加えることになるから。ただ伝えるだけでなく「コレを書いたら相手がどう思うか」を本気で考えて感想を書いている人間なんてほとんどいないし。それが悪いという意味じゃなく。
 感想をもらえるのだけでも嬉しい。これは本当。私がどう思うかなんて考えずに素直なところを書いて欲しい。それが私にとっていちばん役立つ感想になることもある。ただ、そうならないものも残念ながらある。悪いのじゃなく、物足りない感じかな。だから中村ケイタロウさまのような高度な(言葉を選んでみたのだけれど、それでも御幣があるな)感想は潜在能力的に私の痒いところに手が届くのに、ほかの場所を掻いているから「違う違う。もっと右」と言ってしまうのだよね。
 さて、お堅い話になってしまった。お色直しに、色付きの夢について。
 中村ケイタロウさまは色付き夢を見るというけれどさ、そういうことを忌憚なく言えるようになったのって最近のことらしいんだよ。もうリプライで書いている通り、縁起の悪いことだから口にするのは憚られる。万葉集に夢が描写されていることが議論の槍玉に挙がるくらいだったんだから。もちろん、色付きの夢として。そのぐらい珍しいものとして扱われていた。実際に色付きの夢を見る人が少なかったという傍証ではなくて、それを異端として見られていたということね。だから、隠している人もいたはず。今ならなんの根拠もないジンクスだと鼻で笑えるけれど、昔はそういうものとして扱われていたという事実がある。
 夜になると色が消える、というのは昔の人の感覚としては当然だったのではないかという自説をいま考えたよ。今ほど照明が明るくない。それに、日本家屋には派手な色をしたものがなかった。だからその延長線上にある夢もまた、色がないものでなければならない。陽が昇るとき初めて、世界に色が戻ってくるのだ。ま、原因と結果を逆構成しただけなんだけれど。
2007-09-22 22:38:26【☆☆☆☆☆】模造の冠を被ったお犬さま
 こんばんは。
 もーっ。そんなに長く書かれたら返事しないわけにいかないじゃないですか。あなたは一体どういう人なんですか。面白かったから「面白かった」と書いただけで、なんでここまで言われにゃならんのですか。理解に苦しみます。ここに感想なんか書くんじゃなかった、というのが今のぼくの偽らざる気持ちです。ぼくがなんか悪いことしましたか? 文豪の名前を出したとでも? それともぼくのことが好きなんですか? ひょっとして甘えているんですか?

 失礼。冗談はさておき、忌憚の無いところを申し上げますが、あなたはぼくを誤解していらっしゃる。ぼくは「褒めよう」となんてしてません。喜ばせるつもりもありません。キモチヨくさせようなんて思ってません。ただ、思ったことを言ってるだけです。言葉遣いが比較的丁寧なのは、単なる習慣です。ぼくはただ、文学だと思ったから文学と書いたし、落語みたいだと思ったから落語と申し上げたまでです。だって、このオチを見て落語を連想しないほうがぼくにはむしろ不思議ですよ。それを言われて苛立つとおっしゃるのなら、それはそれで仕方がありません。不本意だけど、ご自由に、思うさま苛立ってください。別に「不発」とかじゃありませんので、どうかお気遣い無く。それで平身低頭するほど、ぼくはいい人じゃありません。

 ところで、支配、統御とおっしゃるけど、そんなことできるわけがない、とはお思いにならないのですか? そりゃ、あなたは天才なのかもしれないけど、ぼくだって、誰だって、一個の脳味噌を持って自律型で動いているんです。人と接するときにはコミュニケーションの困難さを前提としていただかないと困ります。空回りが我慢できないだなんて、ワガママ言っちゃいけません。人と人とが文字だけでコミュニケーションしているんですよ。空回りするのはデフォルトです。いらだたしいその困難さの中に辛抱強く踏みとどまることなしに、いったい意思の疎通なんてできますか? なにがそんなに不安なんですか?

 率直に申し上げて、あなたの態度はあまり愉快ではないので、失礼なことを書いてしまったと思います。だとしたらごめんなさい。今後この作品の感想欄へはこれ以上なにも書きませんので、どうかご了承下さい。

 そうそう。あなたの「夜間無色説」、面白いけど、遊郭の内装が極彩色でド派手だったことを説明できないんじゃないかな。祇園祭の宵山飾りだって色とりどりですよ。昔の人ほど、微弱な光の中に豊かな色彩を見出したのではないでしょうか?
2007-09-23 01:51:00【☆☆☆☆☆】中村ケイタロウ
 ありがとう。
 もう、『無色騒然』への感想は要らないよ。欲しいものをもらったみたいだ。満足した。中村ケイタロウさまにとっては不本意だろうけれど。
 空回りは我慢できないと書いた。あれは嘘だったみたい。空回りしている場所がわからないのが我慢できないのであって、空回り自体は割りとどーでもいーのかも知れない。
 日本人の色彩感覚が豊かだったことは、日本独自の色名称を見ても明らかだと思う。淡い色が多いからこそ、わずかな色合いの差を感じ取れたのだろう。特に自論を擁護するつもりはないけれどさ、せっかくだし拘ってみよう。遊郭の色使いは商品のライトアップで説明してしまう。スーパとか、商品を照らす光は強い。これは暗いとくすんで美味しく見えないからなんだけれど、それと同じことを遊び女にもしているのではないかな。市井の女との差別化ということも考えられる。祇園祭りについては、昼の喧騒を留まらせておく意図があったのではないかな。祭りの日をハレと呼ぶ風習は今も残っているし。と、まあ挙げられた二件は特別により例外という、いかにも苦し紛れの論で防衛してみたつもりだよ。祇園祭りも遊郭も知らないからね。この辺が精一杯さ。
 おっと、書き忘れてはいけない。もちろん私、中村ケイタロウさまのことが好きです。ツンデレにそーゆーこと言わせるもんじゃないよ。
2007-09-23 10:42:53【☆☆☆☆☆】模造の冠を被ったお犬さま
雑談板でよく見かけるお名前の方でしたので、一体どんな作品を書かれるのだろうか、と興味を持ち、読ませて頂きました。全体を通して、謎めいた印象を強く感じました。複雑な、いや、『……ふくざつ』な感じでした。光と闇の対比、暗闇の中で繰り広げられるアクション、不思議な登場人物など、それらが(いい意味で)不気味な旋律を奏でているなぁ、と私は思います。そういった世界観の構成には手腕を感じます。ただ、これは失礼に当たる言葉でありますので読み飛ばして頂いて結構ですが、実のところ「人口に膾炙する」というフレーズ辺りから、すでに作者様と私の間に大きな隔たりがあるように思えてならなかったのです。この作品は一人称語りで構成されているので、地文に文章語を用いるのはどうも不自然なのでは、という疑問がありました。いわゆる夢オチ、というスタイルを貫くために一人称語りを用いられたというのはわかるのですが、それであればひたすら口語的にまとめてほしかったな、と思います。いずれにせよ、不思議な感じのする作者様との出会いに感謝して、いまいち論旨のはっきりしない感想を終えようと思います。
2007-11-23 21:41:31【☆☆☆☆☆】夏梅 乃楽
計:8点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。