『 【Revenge and Renai】〜『蘇り』と『死』〜』作者:茜丸 / t@^W[ - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約13枚
〜プロローグ〜
 
血に染まる月。赤く燃え上がる炎。炎は勢いよく燃え上がり、月に向かって伸びている。
そして、決して月には届かない炎は、とても悲しく、哀れだ。
全てを失ったあの日。炎と、血と、多くの死体。
唯一心を開ける家族。母、弟が死んだ。みんな死んだ。
 
地獄ならもう見飽きた。 自分自身が死ぬのは、不思議と恐ろしくもなかったし、悲しくもなかった。 感情と言う物も、簡単に砕け散った。 一つの思いを残しては。ーーー。

―――――「復讐」―――――。
 
この言葉だけが、心に残った。 そして、自分に誓った。必ず復讐してやる。
殺してやる。絶対に。と。
 でも、それを成し遂げることが出来ない、今、死んでいく自分はなんて哀れなんだろう。  
そして、世界は激しく反転し、真っ暗になった。まるで、自分が永遠に続く、深い、深い闇の中に、沈んでいくような感覚だった。

 しばらくし、かすかに見えたのは、

――――「光」。――――。
 

【一話】「記憶のない男」

 雨が降っている。彼は、風になびく白い髪を手でかきあげ、歩いていた。目に見えるのは、草原。この広大な草原には所々に木がはえているだけで他は何もない。とても、静かだ。本当に。
唯一聞こえるのは、自分の足音と、雨のしたたる音のみ。木々が揺れると心地よい葉の音が聞こえる。この音がなければ、人は、世界には自分一人だけだ。と思うだろう。それほど、静かなのだから。

 ――雨。別に嫌いじゃない。全てを洗い、血の跡も消してくれるから。でも罪は消えない。罪は。――――。

「どうかしましたか?」 

後方から声が聞こえた。ふと我に返り、振り向くと不思議そうな顔をした少年がこちらの様子をうかがっている。黒髪の彼の名は「ミロ」。「ミロ ルイーン」魔法士だ。15歳との事だが、まるで11歳〜13歳ぐらいに見える童顔をしている少年だ。時には少女に見える時すらある。が、本人も気にしているみたいなので、あえて口にはしないのだが。

「いや、なんでもない。それより目的地はまだなのか?」

どうやら長い時間呆けていたらしい。歩きながら呆けるとは………。自分らしくない。「ふっ」。と、見えないくらいに鼻で笑った。 
今、自分たちは「シルファイン〜復讐者の団体〜」と言う組織の命令で、「ライト ウィル〜月の町〜」に向かっている。 しかし、三日ほど歩いているのに、まだライト ウィルが見えてこないのだ。


「えぇっと、方向はちゃんとあってると思うんですが。」
 
綺麗な敬語だ。


「…………なら、いい。」簡単に返事を返すと、ミロは小さく「はい」と残念そうに答えた。

  そして、この白髪の男。この男の名前は、「アイル テーリング」。17歳と言う若さで、シルファインの隊長を務めている。隊長と言っても、このシルファインには隊長が3人居るのだが。その内の一人がアイルである。彼は剣士で、少し他の隊長とは違い、特別な存在だった。隊長のもう
一人は、アイルとミロの師である、「ナツ ミルダ」。 この女性は、魔法士の中では3番目に強いと言われる優秀な魔法士である。

「きゃああああああっ!!」

突然の悲鳴に、アイル達は驚いた。が、しかしその一瞬でアイルは自らの剣を鞘から抜きはなち、遠くから聞こえる声の持ち主のもとへ素早く走った。ミロも一瞬遅れてアイルの後を追う。恐らく女性の声であろう。このあたりにはよく「ビースト〜魔獣〜」が出るので、そいつらに襲われているのだろう。ビーストは空間を裂いて魔界から突然現れる厄介な生物だ。 ――助けを求めている人間がいる―― この気持ちがアイルを自然に動かし
ていたのだ。

「見えた。」

遠くに女性らしき人影が見える。やはりビーストに襲われているのか、直径20メートルにはなるであろう3本首の爬虫類科のビーストが横に居るのが見える。

――「間に合え」――――「間に合え」――――。

全力で走るが、あと50メートルぐらいのところで、ビーストが刃物のような鋭い歯で女性に噛みつこうと首を上げ、勢いをつけた。「このままじゃ間に合わない。」言うのが早いか、アイルは走りながら剣を背中にかつぎ上げ、渾身の力で剣を振るった。「黒風斬」これがこの技の名前だ。振り抜いた剣先から、三日月型の黒い斬撃がビーストに向かって飛ぶ。凄まじい衝撃音が鳴り響く。そして、一瞬でビーストの首をはね、斬撃は空に消えた。紅い血しぶきが辺り一面に飛び散る。 アイルは50メートルと言う離れた距離からビーストを倒したのだ。慌てて女性に駆け寄ると、彼女は恐怖で硬直している。そしてカタカタと震え、その目から、涙があふれ出た。

「おい。」

呼びかけると、彼女はゆっくりとこちらを見た。そして小さく「なに」と答えた。

「このあたりには、よくビーストが出るのか?」

と、一応聞いておく。

「うん。このあたりの草原にはよくビーストが出るの。」

なんとか喋ったと言うような口調で答えてくれたが、アイルはここで、

「なら、一人で出歩くなっ!死にたいのかっ!?」

怒鳴った。 彼女はビクッ。と、驚いたが容赦はしない。アイルは人間には死んで欲しくなかったのだ。自分の同類はもう作りたくない。見たくない。死んでいった弟を思うアイルは今のような強い心の男ではなく、とても、とても、弱いのだ。



「お前が死んだら、悲しむ人が出来るだろう………。」


―――俺のように。 そして無言で震えていた彼女にも、家族が居るらしく、コクッと頷き、涙を拭いてから、

「うん。」 

と、笑顔を作り答えてくれた。アイルも納得し、剣を一度振り、鞘に収めた。そして、腰を抜かして座り込んでいるその女性に手を貸そうと近づいていくと

「ああああああっ!また女の人泣かせてぇ〜〜っ!!」

少し遅れて来た、ミロだ。どうやらここまで走ってくる途中転んだらしく、服は泥で汚れ、顔にも泥が付いている。みっともない。

「はぁ……………………。」


全力でため息をつくと、ミロがアイルに向かってズカズカと歩いてきた。そして、

「大体ねぇ、隊長はあぁで、こうで、こうなんで□☆○△↑☆〜〜〜〜!」

ミロの言葉はもはや理解不能の領域まで達してしまっていた。全くあきれるが、こんな場面には過去何回も遭遇している。しかし、どの人もビーストを恐れ、今のような状態だったので、ミロは俺が泣かしたのだと勘違いをしているらしい。

「だから、俺が泣かしたんじゃないって何度も言ってるだろう?」

アイルはミロから視線を外し、あさっての方向を向きながら淡々と答えてやった。すると、ミロの顔はますます赤みを帯びてゆき、やたら反抗してくる。

「……………。」

彼女は驚いた表情でこちらの口げんかを無言で見守っている。が、ミロは気づいてない。大きなため息をまた吐く。と、その時、さっきまで降り続いていた雨がやんだ。

「雨、やんだな……。」

気づいたアイルがそう言うと、ミロもいいかげん怒りが収まったのか、ゆっくりと深く深呼吸していた。

「もう、そろそろ行きますよ。」

と、話を切る。 

そして、アイルとミロはライト ウィルに向かうために歩き出そうとした。と、後方から、

「あなた達はいったい………。」

彼女だ。そしてミロが意味ありげに答えた。

――――「ただの旅人ですよ。」―――――――

        「ウソだけど。」
          「コラッ。」


あれからアイル達は丸1日歩いた。さっきまでは、相変わらず見晴らしの良い草原だったが、今は目の前に、空につきそうなくらいの、高い壁がそびえ立っている。不思議な濃い青色をした石で出来ている壁だ。いや石ではないのか。

「ふぅ、やっと着きましたねえ〜。」

思わずミロが安堵の声を漏らした。もうずっと何もない草原で歩き通しだったので疲れているのだろう。アイルは目の前にそびえ立つ壁をコートの帽子のせいで半分も見えていない視界から見上げた。その壁の、思い圧倒さに、吸い込まれそうだ。それほど、この壁は重い気をまとっているように思えた。

「ああ、ここが月の町、ライト ウィル。」

この壁は、ライト ウィルを取り囲んで円状になってそびえ立っている。アイルは、師の、ミルダ師から任務を言い渡されここへ来たのだが、
――「任務は、この紙に書いてあるから内容は目的地に到着次第読め。」――
とのことだったので、まだ詳しい内容は知らされていなかった。そして今ならその紙を開いても良いだろう。そう判断し、

「ミロ、今回の任務は?。」

と、鋭い声で聞く。ミロにとっては、こんな遠出の任務は初めてだったので、少し緊張しているようだ。だが、ミロの気持ちもよく分かる。ミロは自分よりも臆病であるし、初めての遠出の任務。アイルは自分の初任務の時の事を思い出した。自分の初めての時なんて、ミルダの「やってみろ。」の一言でスケールパーソンを三人も同時に相手させられたのだ。====「あれは本気で死ぬかと思ったな……」

「え〜っと………。少し待って下さい。」

ミロは腰に付けたバッグをあさり始めた。そして、ようやくメモを見つけたのか、それを音読し始めた。  
――「今、ライト・ウィルでは多数の【スケール・パーソン〜鱗の人種〜】の目撃情報が寄せられている。なので、今回の任務はそのスケール・パーソンの暗殺、取り締まりだ。この紙を拝見しだい、ミロの魔法で私に連絡しろ。 以上。って書いてありますね。」
「スケールパーソンか………。」

アイルはその言葉を聞いただけで、腹の底から溶岩のような熱い何かが込み上げて来るのが分かった。憎しみか?。復讐心か?。 拳には自然に力がこもる。それでも、なんとか平然を装ったが。 この世界には主に、〜三つの人種〜が存在していた。一つは人間。一つは鱗の人種(スケールパーソン)。一つは【妖精の人種〜フェアリー〜】だ。人間とファアリーは外見がほとんど同じで、唯一違っているところと言えば、耳の形が違う所だけだろう。生活などもほとんど同じで、昔から同じこの世界で協力し、共存してきた。 しかし、スケールパーソンは外見から、もう人間やフェアリーとは違っていた。名前の通りに、身体には蛇のような鱗が模様していて、体格はほっそりしているのに体長は、大人で約190〜250?ぐらいあるであろう。まだここまでなら人間に近い想像がつくが、耳から耳まで裂けた三日月のような鋭い口。鋭利な牙が人間からかけ離れた存在だと言うことを物語っている。全てのスケールパーソンは特別な「目」を持っている。寿命も長く、人間の10年は、スケールパーソンの1年である。鱗は堅く、よほどの力を込めなければかすり傷すらつかない。そして今、フェアリーと人間、対スケールパーソンで戦争をしている。領地争いだ。 
アイルの母親は人間だったが、父は、このスケールパーソンだった。そして父に、全てを奪われた。  ――全て。――マルシェン(町)の人々も、自分も。殺された。何の迷いもなく、一瞬で。
  これは後に「マルシェンの襲撃」と言われた。
そして、アイルはミルダ師の蘇生魔法で生き返らせてもらった。「まだ魂がこの世に残っていた。」からだそうだ。スケールパーソンと人間の間の人種。これが、アイルが他の隊長達とは違い、少し特別だと言われる理由だった。差別もあった。 アイルの復習したい相手とは、父親の事だったのだ。
 アイルは、醜い「赤い印」が記された右目に手をかざした。――スケールパーソンと同じ目。――
今は見えていない右目だが、念じればスケールパーソンと、同じ力が使える。

「町へ入って、どこか宿屋に入って、人目がつかない所から連絡しよう、ミロ。」

アイルは震えた拳を握りしめながら、門へ歩きながら言った。

「はい。」

ミロは、心配するような声でアイルに返事をし、後ろを着いてくる。ミロもアイルの復讐の事を知っているのだ。門。 門といっても、扉は無く、通るところだけ壁に扉の大きさの穴が空いているだけだ。門番は二人いる。どちらもフェアリーだ。そう言えば、この町はフェアリーが主に住んでいる町。と、師が言っていた。


2007-05-08 19:16:11公開 / 作者:茜丸
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■作者からのメッセージ
この作品に対する感想 - 昇順
0512
2007-05-08 19:11:25【☆☆☆☆☆】茜丸
読みましたぁ!!
すごく細かいですね!!
ってか文才ありますね!!
私とは大違い・・・。
2007-05-08 19:19:43【★★★★☆】麻奈
まず、一文一文わざわざあける必要はないです。スカスカに感じます。
それに、「〜」の文末には“。”は付けない。地の文では、文頭一文字目は空けて書く。
あと、個人的に麻奈さん、あなた評価甘いです。この程度で文才があるなんて言ってたら、ここにいるほかの方々は、もう神ですよ(笑)。
まあ、最後のことは私が見た感じでのことですから無視してください。
では、次回更新を期待します。失礼いたしました。
2007-05-09 01:48:33【☆☆☆☆☆】勿桍筑ィ
計:4点
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