『桜で始まり桜で終わる』作者:仁亜 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約23.65枚
人、人、人…もう嫌になる、人間なんか大嫌い。なんで人として生まれてきてしまったんだろう…

第一話 転校生はお節介
 あたしは水越亜美高校2年生。大の人嫌いで今まで笑顔を見せたことがあるのは親とたった一人の親友だけ。別に誰かに人は悪い奴だからとか言われたわけでもない。ただただウザイだけ、勿論自分だって嫌いだし親友だってたまに嫌いになる、親なんかしょっちゅうだ。こんなあたしは彼氏なんかいるわけないし、恋だってまだ一度もしたこと無い。人にときめいたりドキドキすることなんてきっとあたしは一生無い。そう思っていた…
4月15日、あたしはたった一人の親友と登校していた。たった一人の親友は楠綺羅同じく高校2年生で
明るく元気でいつも心を閉ざしているあたしとは世界の違う人。
「あっそういえば今日転校生が来るんだって! 楽しみだなぁ」
綺羅はにっこり微笑んでいた。その顔は誰が見ても幸せそうである。
「いいの? そんなこといって…彼氏いるじゃん」
そう、綺羅には彼氏がいる。それもクラスで一番モテている人、告白は相手からだったらしい。
「それとコレとは話が別!」
何故か開き直る綺羅をみてため息が出る。でも軽く微笑んでいるのが自分でも分かった。

 「えーっと今日は転校生を紹介する」
綺羅が言っていたことはあたっていた様だ、先生が教卓の後ろに立ってそういった。
皆がザワザワと話し出す。そんなに転校生が珍しいのだろうか、別に転校生だろうが関係ない。とことん避けるのみ。
「王滝優です。よろしくお願いします」
転校生は男だった。別に格別カッコイイと言う訳でもない、かといってめちゃくちゃカッコ悪いという訳でもない。いたって普通の人だった。
少し転校生の顔を見ると視線を外にして満開の桜を眺めていた。
「よろしくな」
どうやらあたしに言ったらしい。それに運悪くあたしの隣の席になってしまっていた、あたしはちらっとそちらを見てすぐに視線を外の桜に戻した。暖かい気温と涼しい風あたしにはぴったりの季節だ。ただ転校生とかクラス替え、進級はちょっと…いやだいぶ嫌いだけど。

 綺羅が教室に迎えに来て、一緒に帰るとこだった。
「あぁあ! 先生に提出しなきゃいけない物があったんだ! ごめん亜美ちょっと待ってて」
綺羅は急にそう叫んだ。
「じゃいつものとこで待ってるから」
「は〜い」
あたしと綺羅だけが通じる‘いつものとこ’と言うのはあたしと綺羅が初めて会った場所。
ちょうどその木も桜の木で初めて会ったときは桜が半分散ったときだった。
あたしは鞄から本を出し、木にもたれかかり本を開いた。
「なんだ先客いたんだ」
その声は男の声でどこか聞き覚えがあった。本から視線をそいつに移すとなぜ聞き覚えがあるのかすぐに分かった。あいつだ…優だ。
「あっもしかして隣の席の人? さっきは聞こえなかったみたいだからもう一回言っておく、隣になった優だ、よろしく」
アイツはにこっと笑っていった。
変な奴。でもどうせ明日になれば話しかけてこないだろう。きっと…
「なんだよ、感じ悪っ」
さっきの笑顔とは裏腹に少し拗ねて言った。
幼稚園児みたい、どこか綺羅に似ていた。コロコロ変る表情、元気で明るくて感情を表にすぐ出してしまう。
「なんだちゃんと笑えるんじゃん」
えっ? どうやら自然と顔をにこやかになっていたらしい。こんな奴初めてだ。なんだろう、奥に秘めた表情をまた表に引っ張られるようなこの気持ち、
初めてだ、異性にこんなことを思ったのは…
はっと我に返ったら、あたしはアイツを見つめててアイツはあたしを見て微笑んでいた。
あたしは急いで本に目を戻し、出来るだけアイツを見ないようにした。
「おいっお〜いあみさ〜ん」
あたしはアイツを徹底的に無視した。アイツは呼び方をコロコロかえて呼ぶが全て無視。
いつになったら諦めるかな。と言う思いと、五月蠅い。と、答えちゃおうかな。と言う三つの思いが入り混じっていた。
「……」
さっきまであたしを呼んでいた声は消え、少し静かになった。
やっと黙ったか。
そう思ったのだが後からいつもとは違う味わったことの無い感情が溢れてきた。
ヒョイッ
一瞬で目の前の風景が変わり、本の細かい字が縦に並んでいたのが桜の木が並ぶ芝生に変っていた。
「呼んでるんだから、返事ぐらいしろ。」
あたしの目の前の風景を変らせた犯人は左手を腰に当てさっきまで呼んでいたあたしの本を持っている。
「返せ」
自然と…ではなく自分の意思で思いっきりアイツをにらみつけた。
「俺の話し聞いたらな」
アイツは勝ち誇った顔であたしを見た。
あたしは軽くため息をつき、あいつが言う話ってやつに耳を傾けた。
「あのさ、亜美って呼んでいい?」
アイツは軽く首を右に傾けていった。
たったそれだけ? それだけのために本取り上げたのかよ!
正直あきれた、それと同時に笑えてきた。心の笑いを表情に出さないのはあたしでも大変で、ついにやけてしまう。
「どうぞ」
アイツと反対方向を向く、顔では結構笑っているが声は冷たい。これはあたしぐらい人嫌いじゃないと出来ない芸だ。
「じゃ亜美は俺の事優って呼べよ!」
そんなに嬉しいのだろうか、笑いがおさまってから優の顔を見ると、めちゃくちゃにこにこしてて本当に嬉しそうだった。
大きく息を吸い、さっきとは比べ物にならないくらいの大きなため息をつく。
「返事は!? へ・ん・じ!」
あたしの両頬をつまみグイーっと左右に引っ張る。
正直痛い、あとウザイ。ついでに馴れ馴れしい。
あたしは、最後の馴れ馴れしい奴が大嫌い。こんな奴らが消えてくれるなら地球でも差し出したいくらいだ。まぁそれは流石のあたしもしないが…
「はいはい…」
そうあたしが言い終わると、芝生の向こうで大きく手を振る親友の姿を見た、すくっと立ち上がり優に手を差し出し
「本」
それだけ言った。
「ほいっ」
優は指がはさんであったページを開けてあたしに渡した。開いてあるページはさっきあたしが読んでいたページだった。
そんな優のちょっとした気遣いを踏みにじる様に本を閉じ鞄に突っ込んだ。ジーっと鞄のチャックを閉めあたしは親友がいる場所へと向かった。
「じゃーな」
優がそういい手を振っているが気付かぬ振りをしてスタスタと歩くテンポを速めた。
「ねぇ! あの人誰?」
綺羅が後ろを振り返りそっとあたしに尋ねた。
「知らない…」
あたしは嘘をついた。だが綺羅には見破られ、
「そっか」
そう微笑みながら言った。

4月16日
あたしはいつもどうり登校して、席に着き重たい鞄を机の上に置いた。
バンっその音の主がすぐ分かったあたしは首が下がるほどのため息をして、嫌々顔を上げた。すぐさま目が合ったのは      優だ
「なに…」
嫌々口を開いた、この続きは、お前なんかと朝っぱらから顔合わせたくないんですけど、そう続ける予定だったのだが…先に優が言ってしまった。
「なにじゃねぇなにじゃ! 俺が手振ったのに無視しやがったろ!」
もういいじゃんそんなこと…そう思いながら
「ごめん気付かなかった」
と言っておいた。全く良心は痛んでないのだが、これ以上ため息は増えて幸せが遠くなっていくのはごめんだし、優なんかと喋るために使用する酸素がもったいない。ので一応謝っておいた。あたしは人一倍の面倒くさがり屋だ。
「あの…今度一年生を歓迎する会をするって案が出たんだけど…出し物何か案ある…?」
話を割って入ってきたのが、学級委員。下里…何とかって言う人。
「あたしそれパス」
あたしは頬杖をついていった。
「あっ…でも先生が…」
そう学級委員が言うと、あたしはそっちを見ただけ…のはずなのだが
「ごめんなさい…こんなのやりたくないよね…ハイ…ごめんなさい…」
なぜか謝られてしまった、それも二回も。
言っておくが見ただけ。決してにらんだ訳ではない。
「お前の目つきって…相当なんだな」
優にそう言われた。あたしはいつの間にやら凄い目の持ち主になっていたらしい…

三時間目英語の授業だった、英語なんて大嫌いだし、教師も嫌いだ。どうしても英語の授業だけは受けたくないあたしは、いつものとこへ向かった。
キーンコーンカーンコーン
三時間目始まりのチャイム。きっと一斉に授業が始まったであろう、約一名を抜いて。
涼しい風と最近の睡眠不足の影響でうとうとしかけると、
「サボりはいけないんだぞ〜鉄面皮君」
アタシが最も聞きたくない声の主の方を見ると、そいつは腕組をして、アタシが此方を見たのを確認すると、あたしのほうへ歩いてきて隣に腰を下ろした。
「亜美人嫌いだったんだ、クラスの奴に聞いた。悪い気付かなくて…」
昨日とは違う深刻な顔だった。でもあたしには読み取れた
コイツ何か企んでやがる。
「だからさ、俺がお前の人嫌い直してやる!」
優は瞳をきらきらさせていった。
「余計なお世話」
冷たく返した、普通さ人嫌いって分かったらよってこないでしょ。…いやこいつは普通じゃなかったんだ…
「そんなこと言わない! じゃさっそく今日からな!!」
そしてあたしは優のせいで直したくも無い人嫌いを直すことになってしまった…

やっと全ての授業が終わり、大きくあくびをして涙で潤んだ瞳を拭う。そしてこのクラスは人々に待ち合わせ場所となる。
一番最初の人は男子、割と背の高いほうで、ある女の子を待っている。
二番目は女子、友達を迎えに来たらしい。
三番は同着。二人とも女子で、一人は友達。一人は彼氏待ちだった。
五番目は…綺羅だ。クラスにいる大量の人の中からすぐさまあたしに気付き、手を振った。
がたんっあたしは椅子から立ち、鞄を持って綺羅のいるドアの方へと向かい始めた。元の教室は狭いのだ。なのに沢山の人の待ち合わせ場所と化していて、狭い教室がさらに狭く感じる。はっきり言ってウザイ、何も教室まで入ってこなくてもいいじゃないか。廊下で待ってろ廊下で!
そうイライラする気持ちを抑え、人一人がやっと通れる位の人と人の隙間を綺麗に通り、やっと出口。そう思った、だが
がしっ誰かに強く腕をつかまれもうちょっとで脱出できるのに人で溢れかえる教室に戻されてしまった。
「今日、一緒に帰らねぇ?」
腕をつかんだ人物優があたしにそういった。
はぁ…コイツか。
「無理、綺羅と帰るから」
あたしはそういった。心の中では
あの…速く離してくれません? あたし人の多い場所嫌いなんですけど…
そう思いながら。
「じゃ、明日」
「ヤダ」
「明後日」
「いや」
「明々後日」
なんで明々後日のことまで決めなならんのだ。このままいくとあたしはこの地獄から暫く抜け出せそうは無いな…そう確信したあたしは
「さあね、気分しだいじゃない?」
そう言い返し、無理やり手を解いて綺羅の待つドアへと向かった。
「お待たせ」
あたしは綺羅にそう言った。
「いえいえ」
ニコニコと微笑み笑いながら綺羅は言った。
ちらりと教室の中を見ると、人と人の間であたしに向かって手を振る優の姿が見えた。
ここで返しておかないと明日五月蠅いからな…
そう思い、人に気づかれないぐらい、そして優だけが気付くぐらいに小さく小さく手を振った。

4月17日
昨日夜遅くまでテレビを見ていたせいで、あくびが止まらない。視界は涙で潤み全然見えない。拭っても次々にあくびか出るのだ。きっと今あたしの瞳は真っ赤に染まっていることだろう。
おまけに花粉症で鼻水が止まらない。他人から見れば絶対に泣いている様に見えるだろう。
でもあたしの人嫌いを知っている人はそんなことは思わない、だから誰も声をかけてこない…
「なに泣いてんだよ!」
…居たよ、一名。コイツ頭おかしいんじゃないか? このあたしが泣くと思うの?
あたしが泣いていると勘違いしたのはコイツしかいない。優。
「泣いてない」
一言返した。すると優が首をかしげて
「そういえばさ、俺ばっか亜美、亜美、呼んでるけど…お前俺のこと優って呼んだことないよな」
そう言った。
心の中ではちゃんと呼んでやってるよ、仕方なく…
軽くうなずいてやった。速く話を終わらせたい…そう思いながら。
「あの…水越さん…やっぱり先生が全員参加だって…」
ナイスタイミング! 一瞬瞳が輝いた。下里…美花さん! やっと思い出した。ま、思い出してもすぐ忘れるんだろうけど。
「じゃぁ先生に言っておいて、その時間保健室で…」
そうあたしが言い終わる前だった
「なに言ってるんだよ、参加すんの! 参加参加」
そう優が言ってしまった。
「本当?! じゃぁ一週間後の4月24日三時間目ね!」
美花さんは、手に持っていたボードに丸をつけ、日付とプログラムをあたしに押し付けた。
あたしはギロッと思いっきり優をにらみつけた。するとヘヘっと優が笑った。
プログラムには2年、校歌斉唱と書いてあった。
4月21日…仮病でも使って休むか…
そう考えていた。

4月23日
明日の仮病のためあたしは着々と準備を重ねていた。
明日、仮病を使って休むには、怪しまれないように前日から仮病を使っておく必要がある。
4時間目、あたしは保健室に向かった。
「こんにちわ」
軽く保健の先生に挨拶をする、
「あらっどうしたの? 愛しの愛しの亜美ちゃん。 仮病? あははっそんな訳ないか」
保健の先生は大のあたし好き。優のようにあたしに関ってくる。
仮病? と聞かれたときは一瞬びびった。この人の勘は鋭いので要注意だ。
「頭痛いっす」
額に手を当て痛いふりをする。あくまでもふりだ、ふり。
「イヤ〜ン。可愛い可愛い亜美ちゃんはいつも元気でいてくれなきゃ〜」
あたしに近寄り、あたしの両頬に手を添えて言った。
うぜぇ…
そう思う気持ちをおさえる。まぁこの人には仮病の面ではお世話になっているのだ、頭痛いだの、腹痛いだの言っておけばすぐに休ませてくれる。
「ハイ、体温計。体温低すぎるときは言ってね、先生がギュッして暖めてあげるから」
あたしに体温計を渡し、にこにこ笑った。
余計なお世話、てかウザイ
そうイライラするも明日のためにココは我慢
おとなしく体温を計る。あたしは平均体温が37℃、この体質にはいつもありがたく思っている。早退ほどではない、でも授業をしていい体温でもなく保健室で休むということになるのだ。
ピピピピ…
制服のせいで小さくなった体温計の音を聞き取り、何度か確かめると、37度6分! 一番良い数字だ。
寄って来る保健の先生に、体温計を見せると、
「その辺のベッドで寝ててね」
そう言われた。軽く頷いた。心の中ではガッツポーズをしながら。
いつものベッド中へ入っていく。明日のための準備で今日出来ることは完璧に行った。
小学1年からこの手を使っているが、いまだ一回も失敗したことがない。まぁ日ごろから保険の先生に気に入られるようにしてまで仮病を使う奴はあたしぐらいだが…
キーンコーンカーンコーン
気付けばあたしは寝ていたらしい。しばらくボーっとしていると
「あっ起きた」
ずいぶん前からおきてます。そう思うと同時に頭の上からする急な声にびっくりして、ぱっと声のするほうを見ると、優だった。
なんだ…優か…
そう思うようにゆっくりもとの視線に戻した。
「俺で悪かったな。綺羅とか言う奴がよかったの?」
どうやらやっとあたしの行動で気持ちが分かるようになってきたらしい。
「うん」
あたしは素直にそういった。
「お前さ…もうちょっと気ぃ使えよな」
優は頬杖とついていった
「そりゃ優より、綺羅のほうが良いに決まってんじゃん」
あたしは軽く笑ってそういった
「やっと優って言った」
そう言えって言ったからじゃん。
そう思ったが黙っておいた。
キーンコーンカーンコーン
またチャイムが鳴った。
「じゃな。明日のためにも直せよ」
優は手を振って言った。あたしも軽く手を振ってやった。
あたし…明日のためにやってるんだけどな…
そう思いながら。
「なになにぃ? 優ちゃんのこと好きなの? ダメよ〜先生の亜美ちゃんなのに…浮気しちゃ」
急に職員室から帰ってきて先生は言った
いつ先生のものになりました?
そう笑って聞きたかったが、また襲ってきた眠気には勝てなかった。

4月24日
ついに仮病を使う日がやってきた。あたしは高校2年生で一人暮らしなので、別に親の了解を取るとかそんなことはしない。綺羅に電話して、仮病使って休む。そう言うだけ。
でも明日もこの影響は続く。軽く頭痛いふりとかして、まだ完全には直ってないけどあまり学校休んじゃいけないんで…みたいにいい子ぶっておく。コレでまた保健の先生の好感度アップ…していると思う。たぶん…
ピーンポーンピーンポーン
あたしの家のチャイムがなり
誰? こんな時間に…
そう思いながら玄関のドアを開けると、優が立っていた。
少しびっくりしていると
「なに? その格好」
優はあたしの服を指差して言った。
今のあたしの格好は、長袖のTシャツにジーパン。とても学校へ行く人の格好とは思えない。
サボる気満々のあたしは制服なんか着ているわけがない。
「今日、頭痛いから学校休む」
そうあたしは言うと、優はあたしの前髪を上げ、自分の額とくっ付けた。
「熱ないんだけど」
優はそう返した。
当たり前じゃん。仮病だもん。
そう思いながらいると
「原則熱ないときは休んじゃダメ。ハイッさっさと着替えてくる。学校行くぞ」
そう優が言った。
マッ…マジ…?
10年とちょっと使ってきて、初めてこの方法を失敗した。
これからは優にも目付けとかなきゃ 
ともう一度この方法を見直すことになってしまった。
結局その日は無理やり参加させられ、仕方なく校歌も歌ってやった。
なんで小学生みたいなことやんなきゃいけないんだろ。
そう思いながら。初めは皆あたしを異様な眼で見ていた。
えっ水越参加するの?
とでも言うかのように。

4月27日
明日からは3連休、その後も二日経ってGW。みんな何処へ行く? とか話しているけど、あたしは何の予定も無い。どうせ起きるのは昼近くになるだろうし、せっかく塾が無いのだから、家でゆっくりしていたい。
そんなことを考えていると、
「亜美さぁ、明日暇?」
と優が話しかけてきた。暇って言えば暇だか暇じゃないって言えば暇じゃない。返事に困った。暇と答えれば何が帰ってくるかは大体想像できた。
仕方ない、一回くらい付き合ってやるか。
そう決心を決め、あたしは口を開いた。
「別に…予定は無い」
なんだか二文字で返すのがもったいない気がした。
「マジ? じゃさ明日午前11時亜美ん家迎えに行くからな!」
優はそう言い、手を振って急いで教室から出て行った。
何故か優のキラキラした顔がずっと頭の中に残っていた。

4月28日
午前9時半、あたしは目覚ましの音で目が覚めた。重たい体をゆっくり起こし、パジャマのままペタペタとペンギンのような歩き方で台所へと向かった。
あたしの親は今イタリアに居る。たぶん…仕送りは毎月来ているが、手紙は一通もよこしてこない。
そんな親の顔なんかあたしの頭の中には全くといっていいほど残ってはいない。金だけよこせば気に入ってもらえるとでも思ったのだろうか? だとしたら、あたしはその親と永遠に縁を切りたい。
あたしだって一応両親位心配する。年に一度くらい手紙を送ってもいいじゃないのか? そう思うのにももう飽きた。家にある両親の写真は押入れにしまいこんである。捨てたりするのは帰ってきたときになに言われるか分からないから…良心痛むしね。
朝食を食べ終わり、鏡の前で髪をとく。さぁて問題は…
洋服だ。
別におしゃれしていくとかそういう意味じゃなくて、Tシャツにジーパンはなんか言われそうだし…かといって、それくらいしかあたしの服は無い。
さぁて、どうしたものか…

第2話 男子との初の買い物
あれこれ悩んでみたが解決方法は見つからず結局いつもと変らない服装で行くことにした。
全ての用意が終わり、ふと時計を見ると10時45分もうそろそろ優が迎えに来る時間だ。
…ん? あたし…優に住所教えたっけ? 
よく考えてみればそうだ。まっまさかとは思うけど…綺羅が教えたということもありえる。
綺羅はおしゃべりだから…
と、納得しているような
綺羅はまた余計なことを!
と怒っていたような気もする。もうこうなったら優に問いただすしかないのだ。
ピーンポーン
チャイムが鳴った。たぶん優だ。あたしは鞄を持って、ドアへと向かった。
ガチャ…
「おはよ」
あたしとそう変らない洋服で優が言った。
白いTシャツにジーパン、スニーカー。まだ4月下旬。サンダルを下ろすわけにはいかないし、かといって同じ服って言うのも…そうだ!
「ちょっと待ってて」
あたしは自分の部屋に行き、クローゼットを開け、バッと一枚ジャンバーを取った。
急いで玄関に行き、スニーカーをはきかけで外に出た。ジージャンを一枚着ただけだが…まぁなんとかなるだろう。
「あのさ、一つ聞きたかったんだけど…亜美親って居るの?」
行き先も決まってないのに、歩き出すと優が聞いた。
「居るって言えば居る。今はイタリアかな? イタリアに行きたいって言ってたし。」
あまり触れて欲しくないことだったが一応答えておいた。
「イタリア? 亜美の親って有名人?」
一番聞いて欲しくないとこだった。てか親から話し逸らしたいんですけど…
あたしはため息をつくと、優のほうを見て
「水越茜、水越暁。聞いたこと無い? 結構有名なピアニストのはずなんだけど…」
まぁ親が自分で有名って言ってただけだから、違うかもしれないんだけど…
それを聞くと結構驚いたようで、
「え…? それが親?」
とあたしには恐る恐る聞いたような気がした。
あたしは頷いた。速く終わって欲しい一心で…でも優は話を逸らす気は全く無いようで、
「じゃ仕送りとか結構来てるんだ」
何故か優は納得したように言った。
なぜそこで納得する?
とか思いながら居ると、
「いや、亜美の服全部ブランドだからさ。もしコレ全部自力で買ったなら凄いなぁと思って」
と返され、一瞬心が読まれたかと思ってびっくりした。
自分の服を良く見てみると、優の言うとおり、全部ブランドだった。
2007-05-15 21:05:10公開 / 作者:仁亜
■この作品の著作権は仁亜さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めまして仁亜(トア)といいます
初の恋愛小説でドキドキしたりとまどったりします((汗
主人公は人嫌いですが、感情豊かにしてみたつもりです!
頑張って書いていきます!
アドバイス、誤字、があったらバシバシ言っちゃってください。
デヮ
この作品に対する感想 - 昇順
 個人的に、こーゆー人格って反感をもつんだよなあ。
 仁亜さんこんにちは。インデントと三点リーダに気を使うと、仁亜さんへの印象がよくなると思います。
 ライトノベルの感覚をもって書いていると思いますが、読み手もライトノベルの感覚で読まないとついていけないなあと思いました。一般の読み手をライトノベルに巻き込む引力がないように思いました。
2007-05-03 13:43:51【☆☆☆☆☆】模造の冠を被ったお犬さま
アドバイスありがとうございます。これからの参考にさせていただきます。
これからも頑張っていきますので、また気になるところがあったらどんどんいってください。デヮ
2007-05-04 20:18:17【☆☆☆☆☆】仁亜
計:0点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。