『気付いてしまった。』作者:修羅場 / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
お盆になると魂が帰ってくると言われている。
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原稿用紙約3.86枚
気付いてしまった。


今更ながらこんな事に気付いてしまった自分が不思議で仕方ない。

気付いてしまった。

というより、気付かされた。


【気付いてしまった。】

 皆さん、こんにちは。お元気でした? あ、すみません。挨拶が無いですね。
初めまして、俺は陸生健二(みついけんじ)と言います。
日本女児に生まれ、両親の愛を一身に受け、とてもよい環境で育ちました。
名を授かり、ここまで成長を遂げた事に感謝しています。
そして周りの皆様には、凄くお世話になっています。
でも、学校には行っていません。
学校に行く分のお金が無かったからです。

貧乏? そうなのかもしれません。
家庭内暴力も耐えない家庭でしたので…。
でも、俺はこんな家庭でも我慢しました。

愛されていたから。

今生きているのは両親のおかげです。
だから今こうして我慢をしています。

いくら叩かれようがゴミ捨て場に放置されようが、それが毎度の事です。
愛されています。仕方ないといわれても、愛されています。
両親はそれはそれは心が広く、俺の我侭さえも聞いてくれました。
恵まれてました。

いつの日か、捨てられてしまうんじゃないか。
見放されてしまうんじゃないか。
絶えず泣いて、孤独の身と成るんじゃないか。
口々に言われました。
でも、いいんです。

それでも俺は愛されていたから。


でも、今では両親と呼べる存在も無ければ、食料もありません。

家庭放置? あはは。
それもありうるかもしれない。だって、現にそうなのだから…。
子供一人を家に放置して、飢え死にさせる。
あはは。凄い計画的ですね。
ご利用は計画的に。これはいつも両親が俺に言っていた言葉。
確かに計画的ですよ。

俺は長い長い旅をしています。

本来ならば高校三年生なんでしょうか…。
旅に出てお金を集めるんです。
色々な人とふれあい、交し合い…。
でも、食べるものはありません。
飲み物も、守るものもありません。
絶えず泣く日もありました。
哭する日も、別れを惜しむ日もありました。

あ、そうそうあの時は別れを惜しむ事は一瞬もありませんでした。
それくらいに一瞬だったので。
惜しむ暇もない嘆きの唄を歌いました。

さあ、遥導く広い先へ。
旅路は続いています。


俺は長い長い旅をしています。


そして、長旅を終えた俺は久々に家に帰ってきました。
でも、誰も迎えてはくれません。
なのに、両親は今日も不在です。別に「死んだ」という事ではないです。
ただ居ないだけです。
あ、そうそう両親が旅行好きというのは一部の方が知っていました。
それで今はひとりなんだねって、そんな軽い嘘に両親の知り合いは騙されてます。


だから、俺は気付いてしまった。

気付いてしまった。


今更ながらこんな事に気付いてしまった自分が不思議で仕方ない。

気付いてしまった。

というより、気付かされた。





俺は、もう…




”ここに居ない ”という事に、気付いてしまった。





そしてまた、旅に出ます。


生身ノ肉体ヲ手ニ入レル為ニ……。
お父さん、お母さん。
待っててください。


今まで、見守ってくれた方々。
今まで、育ててくれた皆さん。


俺は言い残します。
ここに居る皆さんに、別れを告げます。


さいごに言うなら
『さよなら』
 ――そして…

  『ありがとう』
2007-03-31 12:15:00公開 / 作者:修羅場
■この作品の著作権は修羅場さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
なんだろう…主人公は幽霊?(聞くな)所謂お盆ネタです。
2007/03/31 ご先祖様とか魂とか灯篭に流して送るというお盆。
主人公の魂は灯篭に乗って、また長い旅を始めました。
この作品に対する感想 - 昇順
何か不思議な感じですね。最後の言葉が意味シンですね。
『計画的犯行』についてはよく分からないところもあったので、そこについてもっと書いていただけたらと思います。(それとも私の読みが浅いのでしょうか…。そうだったらごめんなさい)
2007-03-31 09:46:48【☆☆☆☆☆】奈月
奈月さんへ>コメントありがとうございます(^^) そうですねぇ…
『計画的犯行』なんて端的にいっても意味がわからないですね…(汗)
はい、少しそこらへんを踏まえて加えてみます。ありがとうございました。
2007-03-31 11:32:12【☆☆☆☆☆】修羅場
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