『Other World of Myth』作者:鋼玉 / t@^W[ - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
ここはどこだろう……一体何か起こったかそのときは分からなかった見知らぬ場所、見知らぬ人そこで偶然知り合った青年、レンと自らを魔女と名乗るメティスにであったまさか、ここが異世界なんて
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Other World of Myth

No.00

太古、無の中から一柱の神生まれ
 形成さずほどなくして消えゆ
 その骸より十三柱の神生まれ
 神ら、自らの断片を礎に
 一つの大地創造す
 地には数多の命芽吹き地に溢れん

 神らさらに己の姿を模り
 己によく似て知を備えし獣たちと同じく短き時を生きるものを創造す
その者らに神と精霊は力を借し
その者らその力の断片を具現し、神々の存在を知る
その者らやがて神の元を離れ
大地に降り立ち歩みだす

十二柱の神これを見守らんとするが
一柱の神、異を唱えたり

その神は曰く
『我は創られし者達に道を与え
そこを歩かせるべし
己で道を歩むことができるのは
我らのみ
創られしものに道を与えぬなどと
無慈悲である』


他の神はそれに反す
『我々は創られし者達には道を与えぬ
生を受けたもの、たとえ神でなくとも
たとえ、どんなものであろうと
己の道は己で切り開いてゆくべし
それは人だけにあらず
全てのもの定め
汝の申すこと
その定めに反す』

十二と一、対立の後に
一柱の神離反す
神、天を離れ
数多の世界のはるか深く
闇のわだかまりしところに降り
自らを変ず

一柱の神
自らを礎に自らと同じ色の瞳を持ちし
五つの分身と
多くの闇のものを創造し
自ら王となり
世界に滅び与えんと挙兵す
神、応じ
光と闇は対峙す


                           『記憶の書』 序文 

どこの世界にもある
ごくありふれた創世神話
光と闇とが対峙し
世界の存亡をかけて
永劫の戦いを繰り広げる

しかしどの世界にも同じ様な神話があるのは
何故であろうか
その理由は誰にもわからない

だが
ある少女の旅には
全く無関係とはいえなかったことは
確かと言えよう

時が満ち
偶然か必然か
運命の歯車はゆっくりと回り始める
一人の少女を巻き込んで

旅が始まる
その先に待つのは何なのか
それを知るのは

おそらく

神話の中の
神と魔のみであろう


No.01

命が生まれると
世界という機械が動き出す
神々はそれの動き伝えるため
次の、その次の世界を生み出す
神は多くの世界を創造し、その世界には一二の神が遣わした神、それに仕えし数多の精霊が住み、人々はその存在を信仰とその力を借りた魔法で知っていた。
しかしいくつかの世界は魔に奪われ、滅びの道をたどった。
また、いくつかの世界は、神、精霊は古代の遺物と化していた。

数多の世界
その一つで物語は始まる。

***

ここはどこだろう?

頭の中にゆっくりと確実に疑問符が増殖する
確か学校に遅刻しそうになって
何かに足をとられて転んだんだっけ
でも何でこんなことに?

そう思いながらゆっくり足を前に踏み出す。
「っ痛」
足がじんと痛んだので見てみると、転んだ拍子にひどく擦りむいたようだ。

あたしは学校に行こうとしたはずだ。
何がどうなったのか分からないけど
とにかく知ってる場所に出ないと……
私は痛む足を引きずるように歩いていく

どこだここ?

もう一度同じことを考える。
しかし、いくら歩いてもあたしの知っているところは見つからない。

記憶違いとか、寝ぼけているとかそういう次元ではない。
確かにその可能性も考えた。
だから街を歩きながら自分の知っているところを建物の屋根、壁、道に転がる小石に至るまで探した。

しかし、どんなに歩いてもここがどこなのか分からないし、知ってる場所は見つからない
携帯電話を持っていたことを思い出し、かけてみる。
……通じない

…………

悪い夢だろうか…
頬を強くつねってみても、当たり前のように痛みを感じ、目も醒めることは無い。
もうどれだけ歩き回ったか、同じところを何度も通っているような気がする。
あたしは足の痛みもあって適当な壁に寄りかかり、周りを見回してみる。
建物はプレハブ、コンクリートは全く見当たらない。
石やレンガ、木が建築材として使われ、デザインは西洋風だ。
人通りは多くは無いが、道を行く人々の容姿は日本人のそれとは異なり、色とりどりの髪と顔つきをしていた。
道行く数名はあたしを見るといぶかしげな視線を向け、係わり合いになるまいと言うように視線をそらし去っていった。
ちなみに今とおりの入り口にいるが人は通ってきていない

「それにしても…どうなってるんだろ。外国みたいなんだけど…わからないや。誰かに訊くしかないか…」
そうしないと状況が分からない。
次に通りかかったヒトに聞いてみよう。
そう思ったとき、誰かが来た。
とおりに入ってきた人、金髪の青年に話しかけた。
「ここどこなの? 」
彼は声をかけられたことに気づきこちらを向く。
「……………? 」
「え、なんていったの? 」
彼の言葉がわからない。向こうもあたしの言葉はわからないようだ。
「……………? 」
「言ってることがわかんないんですけど」
あたしは首をかしげたり首を左右に振ったりして何とか言葉が分からないことを伝えようとする。
「…………? ……! 」
すると青年はやっと言葉が通じないことに気づいたらしく、一瞬考え、ぽんと手を打った。
そして身振り手振りであたしについていくように合図した。
「ついて来いって? 大丈夫なの? 」
通じないことがわかっていつつ聞いてみる。
彼はなんとなく何を言いたいか察したのか笑顔でうなずき歩き出す。
信用できないがこのままではどうしようもないのでとりあえずついて行く。

彼は無言のまま歩いていく。
色々訊きたかったが、言葉が通じないんじゃしょうがない。
あたしも黙ってついていった。
何かあったらダッシュで逃げることを考えながら
町並みを抜けてやがて町のはずれらしきところに着くいた
一面の草原と耕作地……
本気で思った。一体ここはどこだと。
「あたし、いったいどこにきちゃったんだろ」
あたしには分からない。
今できることといったら彼を信用するぐらいだ。

彼は耕作地のほうへ向かわず道から外れた方へ行く。
あたしの不安はますます深まる。
マジで大丈夫なんだろうな…
と、彼を睨むが本人はさほど気にしていない。
それからしばし無言のまま草原を歩くと一軒の家の前で彼は足を止めた。

小さな一階建ての家。藁葺きの屋根に、木の骨組みに土と思わしきものでできた壁。
何か御伽話に出てきそうな家である。
小さい頃に読んだ絵本にこんな家がよく出てきた気がする。
魔女が住んでたり…小人が出てきたり…
とか思ってると彼の方(名前はわからないから代名詞で呼ぼう)はドアをノックした。
「…………! 」
バンっとドアが勢いよく開き、彼は驚いたように部屋の中の人物に対し両手を挙げ、大声で部屋の住人に対し何かを言う。
あたしの位置からは部屋の中が見えないので何が起こってるのかさっぱり分からない。
しばらく事態を見守っていると部屋の中の人間が口を開いた。
「…………誰かと思ったら……あなただったの。久しぶりね」
穏やかな声と共に家の住人が姿を現す。
長いゆるくウエーブのかかった黒髪の女性で顔の右半分を隠す形で流している。
髪に隠されていない方の目は紫色。歳はよくわからない。
彼女の腕には弓道で使うような形の大きな弓があった
「ああ、これ? 最近物騒だから……ごめんなさいね。あなたを蜂の巣にする気はないから」
「…………! 」
事も無げに言う彼女に彼の方は当然ながら抗議の声をあげる。
言葉は分からないが文句を言ってることくらいは分かる。
…あれ?
なんであたしこの女の人の言葉分かるんだろう?
どう考えても日本語に聞こえた。
さらに驚いたことに女性の言葉は彼の方にもわかるようで、なにか話している。
当然ながら彼の言葉はわからない。
どうなってるんだろう?

「あら、そうなの。それで今日は。ええ時間はあるから大丈夫よ」

しばらく彼は彼女に文句を言っていたが思い出したように、あたしのことを彼女に話したみたい
だ。
彼女は私のほうを見て、微笑を浮かべ、
「はじめまして。なんだか分からないけど困っているようね。事情は中に入って教えてくれるかしら」
「は、はい」
あたしは彼女に招かれるがまま家の中に入る。
家の中は薄暗く、意外と言うか外の様子から予測される広さに比べ不自然な位に広い。
「さ、かけなさい」
女は部屋の中央のテーブルの脇の椅子を勧め、あたしと彼が座る。
女の方は家の奥の方でお茶をいれ、二人と自分の前におき、座った。
「まずは自己紹介からはじめましょうか。私はメティスって呼ばれているわ。あなたのお名前は? 」
「恵。篁恵(たかむら けい)って言います。あの、ここって日本のどこですか? 」
正確には名前は恵佳(けいか)なんだけど親を含めてみんなケイって呼ぶからこっちの方が本名のようになっている。
彼女は眉を顰め、
「日本……聞いたことはないわね。ここはトゥエル国中部の町セレスよ。あなたはそこから来たの? 」
「あの……トゥエル国って? 」
そんな国名聞いたことないし。
この人何言ってるんだろうか?
それは彼女の方も同じだったようで日本と聞いた瞬間思いっきり何言ってんのあんたみたいな
顔になっていた
「ここの国のことよ。ああ、地図見せた方が早いかしらね」
彼女は立ち上がり、棚の中から一枚の紙を出し、テーブルの上に広げる。
あたしは地図を覗き込む。
それは今まで見たことのない地図だった。
北に大きな大陸があり、その間には海らしきものが広がっていて大小の島がある。
南にはそれより小さな大陸がある。
色々小さく記号が書いてあるが、私の知っているどの文字とも違う。
「何……これ…」
「あ、ちなみにここがトゥエル国ね」
メティスが北の大陸の南部一帯を指で円を書くようになぞる。
「からかってるの? あたしはこんな地図見たことない! 」
あたしは立ち上がり彼女に食って掛かる。
がたんっ
大きな音を立てて椅子が倒れる。
彼の方があたしをなだめようと口を開きかけるがそれより先に、メティスが口を開く。
「う〜ん、単なる思い違いとかじゃないのよ、ね? 」
「それだけは断言できる。ほんの数時間前まではこんなとこにいなかった。一体どうなってるの? 」
「それを、今から考えるのよ。彼があなたをここに連れてきたのはそのためよ」
ふうっとため息をつきメティスは彼の方をみる。
彼の方は二言三言彼女にいい、彼女はそれに頷く。
「でも」
「とりあえず、座りなさい」
彼女は倒れた椅子をおこし、あたしを、無理やり椅子に座らせる
「はい」
あたしはおとなしく、椅子に座る。
「さて、事柄を整理しなきゃならないけど、あ、そうだわ」
再び彼女の周りの空気が、柔らかなものに変化する。
彼女は一度言葉を区切り、先ほどからずっと黙っていた彼を一瞥して、
「言葉が通じないのは不便だからそこから何とかしましょう、ちょっと利き手出して」
「え、あ、はい」
あたしは右手を出す。
すると彼女は棚の上の箱から小瓶をだし、その中身の液体であたしの手の甲に何か書く。
それは何か模様のようで……
書き終わるとメティスは自分の手のひらにも何か書き(どうやらあたしのてに書いたものと同じ
模様のようだ)あたしの手の甲に合わせ、静かに言葉を紡ぐ。

「我 記憶を司りし者の僕なり
 記憶を司りしものよ 我との縁に従い
 我の持ちし 言の葉の一片をこの者に
 分け与えることを許したまえ」
 
急激に平衡感覚を失い、意識が反転し、暗転する。
一体何が起こったのか
ここが一体どこなのか
あたしはどうなるのか
分からないことは山積みだった。







2006-11-08 22:41:48公開 / 作者:鋼玉
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■作者からのメッセージ
昔書いた作品を焼直しした作品です
完結できればいいのだけれど…
内容は……まあ王道です
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