『黒の大陸 ?章 「暗い部屋」』作者:Rue / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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「どうだ?彼の様子は?」

司令室にやって来た聖香に、李本部長が聞く。

「・・・変わりありません。」
「そうか・・・。もう3日になるかな。」
「はい。・・・食事もまともに摂ってないそうです。」
「『そうです』って、君は会ってないのかね?」
「ええ、とても見ていられませんから・・・。」

光慈は『あの日』以来、
自室に閉じこもったままだ。
食事も摂らず、夜も眠らず、
ただ、ベッドに腰をかけてじっと床を見つめている。
まさに、魂が抜けた状態だ。

「まぁ、無理もないか。シオン君、加納君に続き、
 三上君まで死んでしまったのだからな・・・。」
「ええ。でもそれ以上に、
 親友を手にかけたことが・・・。」

聖香は言葉につまる。
李本部長が心配そうに聞いた。

「君は・・・、大丈夫かね?」
「はい・・・。もう、人が死ぬのは慣れました。
 ・・・こんなこと、人間失格かもしれませんけど。」
「・・・しかたないさ。こんな世の中だからな。」

聖香は指令室を後にした。
持ち場に戻る途中、光慈の部屋の前を通る。
聖香はやはり素通りしてしまう。

「光慈・・・。早く帰ってきてね。」

部屋の前でそう小さくつぶやくだけだった。


その夜。
依然、光慈はうつむいたままだ。

「シオン・・。梨絵・・。仁・・・。」

もう30分もつぶやいている。

「仁・・・。」

『呼んだか?』

光慈は何処からか声がしたような気がした。
顔を上げてみる。
やはり誰もいない。
再びうつむいてしまった。

「仁・・・。」

『あほ!何回も呼ばんでも聞こえてるわ!』

空耳ではない。
光慈はまた顔を上げた。
そこには、死んだはずの仁がいた・・・。

「仁・・?お前どうして・・・。」
『ふん、お前がそんなんやからな。
 安心して成仏も出来んわ。』
「仁・・。お前、死んでも変わらねぇな。」

光慈の顔がほころぶ。

『・・へっ、なんや大丈夫そやな。
 さっきはこのまんま廃人になってまう思たで。』
「そうだな。・・・ごめん。」
『ん?』
「死んでまでお前に慰めてもらうなんてな・・・。」
『ははは・・・。確かに、これじゃあべこべやな。』
「・・・ありがとう、仁。
 もう大丈夫だ。俺はもう迷ったりしない。
 必ず、平和な世界を取り戻してみせる。」
『ああ・・・。頼んだで、親友。』

そう言うと、仁は光の中に消えていった・・・。

「ありがとうな。親友・・・。」

2003-11-11 20:32:13公開 / 作者:Rue
■この作品の著作権はRueさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ウィルスの次には幽霊まで出てきちゃいましたね(笑)。だんだんSFから離れていくような気が・・・。っ、てこれってSFだったのかなぁ(笑)。
<おまけ>
今更ですけど、登場人物の名前の読み方です。
神谷 光慈・・・かみや こうじ
龍崎 聖香・・・りゅうざき せいか
三上  仁・・・みかみ じん
加納 梨絵・・・かのう りえ
李  雲星・・・り うんせい
シオン ハーティス・・・しおん はーてぃす(笑)です。
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