『せめてもの小さな優しさ(仮)』作者:修羅場 / RfB/΂ - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
幼き頃の記憶にある人はあるでしょうか?
全角1771.5文字
容量3543 bytes
原稿用紙約4.43枚
 犯人逮捕、個人相談、せめてこの声はこの人だと判ってしまう恥ずかしさだけは隠したい。バラエティ出演、最近の若者の暴行等、テレビを観ててバラエティだったら面白みがあるけれど、犯罪関係の知り合いとかはやはり彼女だったのか、彼だったのね。

真実を知るのは時に残酷なことだからテレビ側はこうするんだ。





   せめてもの小さな優しさ



 せめて顔だけを、声だけを変えてあげよう。一部分だけを隠し、声を変えよう。
それはいわゆるモザイクとか裏声とか濁声とかのことをいう。
これは本当に出来る限りの思いやりな行動だけど、そんな行動になんだか素直に嬉しい気持ちにはなれないのが瑕になる。


 さて、皆さん。今から心を初心に戻して見ましょう。戻しすぎてもあれなので、小学低学年くらいに戻してみましょう。
戻したからなんだと思うかもしてませんが、昔を振り返ってみて下さいよ。あの日、先生に叱られたり、友達とイタズラしあった無邪気で、好奇心に溢れる無垢な気持ちの塊だったあの頃をっっ!!

 ぁ、ぃゃっ…すみませんでした。……ぃや、ほんとに………。


 …マジごめんなさい、本当に。
だから、……ね? ぶたないで? …え、無理?



 む、無理にとは言いませんから。気楽に…、ね?


 ……ぇー…コホンっ、……では、教科書のP.12を開いてぇー……。そこの上に載っている写真が織田信長ですぅー……。

 ん? なんですか? …なんで唐突に授業始めてるんだ…、…いい質問ですね。


 ……あらあら、あなたの信長はずいぶんと悪いことをしたようですねー。




 そう、これは好奇心でもない心が生み出した。無垢な作り出した「暇つぶし」が呼び起こした行動なのです。みなさんもよく、昔教科書やノートの隅っこに書いていたでしょ?


 らくがき。



 長い長い歴史の話なんて、ただのリアルな昔話聞かされてると同じこと。これだけじゃ、授業をやることに対して否定しているだけなのでもう少し話を進めましょうか。


 でも、最近の子供は偉いです。


 教科書に載っている写真やノートの隅っこにはもうラクガキをしないのですから。じゃあ、どこにしているのか。簡単なことです。
ノートや教科書とは別に、何の関係も無い違う紙を用意すれば良いだけのことなんですよ。先生の目を欺き、隙を狙う。
 そして狙った時間に落書きをする。ね? 良い考えでしょ? これで完璧。
実際、私の友人も私もこの動作を既にやっている。いわゆる実話。


 らくがきは別に「暇を潰す」だけのものではありません。時にこの更衣は人を救う事だって出来ます。絵描きにとってラクガキとは「資料」であり、「アイディアスケッチ」でもあるのです。

大袈裟のようですが、本当なのです。

 例えばの話、物凄く人に見られるのが恥ずかしい写真があるとしましょう。その写真には恥ずかしい証拠と、自身の姿が哀れに写っております。さて、ここで問題。
この写真をどうやってもってすれば多少の恥ずかしさをしのげることが出来るでしょうか。


 答えは、らくがきです。


 こういうときこそ、ラクガキが人を救うのです。でも、あまり長くは持ちませんが…。目鼻がある辺りを黒く塗りつぶす。
それは教科書に載っている写真にラクガキするのと同じこと。この行為はせめてもの小さな優しさなのです。

 そう言ってもおかしくはないと思います。これなら多少、ばれても多分平気でしょう。





 ……あら〜? ……おかしいなぁ、今日、先生はそんなガ●ダムのようなお話をしましたっけぇ……?



 これはアウト。落書きをしていることに目を付けられました。この子はこの日からずっと先生に目を付けられたそうです。
怖いですねぇ。「見つかる」という行為はとてもじゃないけれど怖いです。





 ……では、今日はこの辺で終わります。





 ここまでで質問のある人ぉ。心当たりがある人ぉ。






後で職員室に。

2006-10-07 10:22:01公開 / 作者:修羅場
■この作品の著作権は修羅場さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
指摘等おねがいします。
この作品に対する感想 - 昇順
初めまして。この作品、私個人としては好きな部類に入ります。どこがどうという指摘なんてできないんですけど、目の付け所が面白いと思います。私もよく、教科書の写真に落書きをしました。一時期凝ったテーマは、「女装」。いかにして、森鴎外の横顔や、カツラのモンテスキューを美しく変身させるか、級友たちとしのぎを削ったものでした。ダビデ像にはモザイクをかけましたし、ミロのビーナスに腕を書き足しました。そんな落書きが、誰かに対する冒涜になるやもしれないとか、場合によっては残酷な意味合いを持つかもしれないなどとは、これっぽっちも想像できずに。だから、作品を読ませて頂いて、無邪気だったころの自分を思い出し、ちょっぴり切なくなりました。説明を一切省いて、読む人に任せてしまう潔さを感じます。
 ただ、織田信長が教科書の12ページ、ということはないんじゃないかと、そんな細かいことが気になったりもしたのですが……。
2006-10-15 21:25:04【☆☆☆☆☆】碧
計:0点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。