『遺書』作者:風間新輝 / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
SSです。抜群に切れ味のない、もはや、駄作としか言えないとも言える脱力系のSSです。少し覗いて見ようという方はぜひ。
全角1583文字
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原稿用紙約3.96枚
 ――お父さん、お母さん。 う〜ん、なんか軽いよな。――お父上、お母上。 呼んだことのない呼び方もなあ。なら、――お父様、お母様 でいこう。
 えっと、――先立つ不孝をお許しください。 いや、不孝というのは孝を否定しているのだろ。うん、これは中国由来の考えなはずだよな。ここは日本だしな。それによく考えてみれば、子供のほうが弱い存在で、死ぬ確率が高いのが生物学的にはただしいはずだ。それなのに、こんなへんちくりんな不孝なんていう言い方おかしいよな。なら、――先行く僕をお許しください。 あれ? うちって仏教だったよな。輪廻転生するだけじゃないか。なら、何を許してもらうんだろ? それに死んだら仏様だもんな。なんか違和感あるよな。なら、――先行く僕をお祝いください。 うん。これで齟齬がなくていいぞ。
 ――僕が自殺を思い立ったのは……。 そうか、自殺かぁ。なんかつらつらと世の中がああだこうだなんて書くのは馬鹿らしいよな。それくらいなら、書かないほうがいいか。でも、これだけじゃ短いしな。やはりここも理論的であるべきだな。――自殺というのは僕に与えられた選択肢の一つであり、一般の動物が持つ生存本能というものから逸脱し、このような選択をしたのだ。言うなればこれは生物や本能というものから解き放たれた、僕という生命の進化なのだ。 うん、こうするとさっきのお祝いくださいにも合うし、どことなく箔がついたなぁ。
 あとは何を書くべきかなぁ。遺書なんて初めて書くからなぁ。そうだ。父と母の心配をしておこう。きっと僕が死んだら悲しむだろいからな。――お父様、お酒はほどほどにして健康には気をつけて、二人でささえあってください。いつも剛毅で男らしい性格に僕は尊敬の念を抱いていました。好きなゴルフにお金をかけすぎるとお母様はいつも僕に愚痴を言っています。それで家庭内不和なんてことがおこらないようにしてください。 うん、我ながら的確な心配だな。
 ――お母様、いつも朗らかに笑っていらしてください。濃すぎる口紅やハデな服装は控えないと、周りから笑われてしまいますよ。お歳というものを少しは考慮してください。箪笥の引き出しに隠してある、わずかばかしのへそくりは老後のために使っ
てください。今みたいにきかないダイエット食品に手を出してももったいないだけです。あと、あまりにも隠し場所が安直すぎるので隠し場所をかえるべきだと思います。
 ――お父様とお母様が二人で仲良く暮らしていってくださることを心から僕は祈っています。僕がこの世を去るのは先程も書いたように進化なのです。笑って見送ってください。生まれてきたことに後悔はありませんでした。生んでくれてありがとうございました。そしてさようなら。
 ――幾 杜栖























「ごはんよー」
 おばさん特有の大声で母は僕のことを呼ぶ。
「わかってるって」
 僕は返事をし、二階の自室から一階のリビングへと向かう。リビングでは父が赤い顔をして、ビール片手に野球を観戦している。それを横目に見つつ、僕はテーブルについた。テーブルにはもう既に、食事が並べられていて、湯気がたっている。僕は先ほどから酷くお腹がすいている。確実に飢えていた。小さな皿に三人分つまれた肉団子がやけに目についた。僕は生理的に出てきたよだれを飲み込む。そして、行儀が悪いことに、さきにちょいと肉団子をつまみ食いした。口が開き、舌に触れ味覚を生じ、歯が肉団子を噛み、小さくしていく。それを僕は文字通り噛み締めるように味わい、そして嚥下した。確かに生というものを感じた。
 そう、僕という人間はやはり生きるということ、生存本能からは逃れることができないのだった。
2006-09-03 19:07:47公開 / 作者:風間新輝
■この作品の著作権は風間新輝さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
悪戯です。ちょっとした。ついつい遊び心で書いてしまったそんな作品です。
――以降が遺書の内容となっています。

いろんな誤情報を含んでいます。そしてちょっとした悪戯もこそっと入れてあります。
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