『初めての殺し屋 第一話』作者:トイレマン / TXyX - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
殺し屋・のお話
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(初めての殺し屋 第一話 朝のコーヒーはブラックで)




ジリリリリリ!!! という目覚まし時計のけたたましい音で目が覚める。
パジャマを脱ぎ、いつものようにいちご柄のスーツを着る。
チンっという音が鳴り、香ばしいかおりを放つ小麦色のトーストが焼けたようだ。
朝、私が最初に口にするのは決まってコーヒーだ。砂糖は入れないブラック。
大人の私には甘いものなど合わない。私はこくりとコーヒーを一口ふくんだ。
苦い、間違いなく苦い。いくらブラックとはいえこれはおかしい。
苦さのあまり顔がゆがみそうになる。だが、この私がたかがコーヒーごときで表情を崩すのはポリシーに反する。
豆が古いのか? そう私は思い賞味期限を確かめる。
1年前か、まあ豆は古いほうがかえって渋みがでて…

そんなわけないだろう

「うぇー!! ごほごひぃひぃ!!!」

あー、にがかった。もう、サイテーなんなの!!
私は嫌な事があるとオカマ口調になってしまうのだが、こんなこと人には言えない。あくまで自分の心の中にしまってある。


プルルルッルル!!


電話が私を呼んでいる。何故よりにもよって靴下を履いているときにかかってくるのだ。
靴下は少し小さく、思ったように入ってくれない。しかたなく半分ほど入ったところで電話へと向かう。
電話のある廊下に向かう途中、恐ろしい激痛が走った。
足の小指をタンスのカドにぶつけてしまった。
あまりの痛さに地面をのた打ち回る。くそ! 靴下が脱げてしまった! 早く電話に出ないと切れてしまう!!
私はほふく全身しながら受話器をとった。
「もしもし」
受話器からは低い男の声が聞こえてきた。
「私だ」
その声が聞こえた瞬間、私の体が強張った。
「ボス! なんでしょうか?」
この声を聞いたのは3ヶ月ぶりだ。
なにを隠そう私は殺し屋コロスーゾ(株)に勤めるごく普通の殺し屋なのだ。
ヒットマン?7 通称ヤマちゃんこと、五十朗 照正 22歳独身
私は大学を中退し、この会社に入った。その選択は正しかったと思っている。
クールで美しい私にはこの職業が一番にあっていると思ったからだ。
「おい、聴いているのかヤマちゃん。」
私はハっと自分の世界から戻った。
「は、はい。なんでしょうか?」
あわてて弁解する。冷や汗をかいてしまった。
「仕事だ。ある女性を殺害してほしいと依頼がきた。」
私の汗が一瞬にして引いた。それは予想してなかった言葉だったからだ。
「ま、まってください!! 私はまだ人を殺すなんて無理です!!」
取り乱す私に対し低い声が受話器から聴こえる。
「甘えるな。いつまでも学校のウサギやゴキブリの殺人などやっているレベルじゃないだろう?」
たしかに私は入って1年がたつが、未だに人は殺したことが無い。
「いいか、詳しいことはファックスで送る。期間は1週間だ。わかったな」
ガチャン! 受話器を切る音が聞こえ、私はその場でしばらく放心
していた。




10分ほどしただろうか、ガガガガ…という機械音と共にファックスが送られてきた。
私はそれを手に取って見た。

佐藤 香織

年齢 14

住所 ポコペン横丁3区

彼女は3日前のポコペン銀行強盗の犯人の顔を見てしまったらしい。
依頼人は犯人から、警察に言われると面倒なので消して欲しいとのこと。
これが成功したあかつきには200万の報酬


200万だって!?
私は驚いた。いままでの報酬は最高でも500円であった。
200万なんて大金ははじめてのことだ。これはやるしかない、そう私の本能がささやいた。



ポコペン横丁は典型的な繁華街だ。繁華街から少し離れたところに3区はある。
そこは繁華街のにぎやかさをまるで感じさせない…というか微塵も感じさせない場所だった。
畑がほぼ5割以上を占めている。セミの泣き声が耳を噤み、コンビ二など無く神社や河原があるといったところだ。
「暑い…」
私はファックスにかかれた住所へやっとたどり着いた。午後2時
平日のこの時間だ。ターゲットの佐藤は中学生、おそらく学校だろう。
私は彼女の通う学校へと足を運んだ。田んぼ道を2時間ほど進むと学校が見えてきた。
見たところ緑にかこまれた田舎の学校といった所だ。私はさっそく校門で下校途中の生徒に聞き込みを始めた。
「ねぇ、きみたち。ちょっと聞きたいことがあるんだけど…」
なるべく怪しまれないよう自然に話しかけた。
「なにー? おじさんここらじゃ見ない顔だね。」
田舎だからかわからないが、人当たりが良い。これはやりやすくて助かる。
「佐藤香織さんって人に用があるんだけど、君達知ってる?」
生徒達は顔を見合わせ、
「あの子だよー。あの子が香織だよ。おーい! 香織ー!」
指差す先には小柄な少女がいた。身長154センチといったところか。
肩までのサラサラの髪、大きい二重の目、小さな顔に美しい眉毛。
私の胸になにかが走った。電撃、いや雷撃といっても良い。
昔封印した感情が蘇ってくる。こ、これはまさか…。
そんなこととは裏腹に香織という少女は笑顔で近ずいてきた。
「どーしたの真奈美? この人どなた?」
彼女の大きな瞳が私の目を捉えた。ドキっと胸が鳴る。な、なんだこの雑念は、顔が徐々に熱くなる。
「香織に用があるんだってー」
香織という少女は笑顔で話しかける。天使の笑顔
「なーに? おじさん。私になにか用?」
私は必死になにか考えようとしていたが頭の回路がパンクしていた。
まさか私が、殺す相手を好きになるとは予想できない出来事であったから。








2006-08-25 13:36:33公開 / 作者:トイレマン
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■作者からのメッセージ
お初です、正直、こんな作品を発表してよいのか迷いました^^;
とりあえず最後まで書くことを目標に、頑張ります
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