『ドメスティックレンジャー 〜信頼の勇士達〜 1〜4』作者:ハルキ / RfB/΂ - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
ギャグ長編物です。この作品を通してギャグの許容範囲というものを模索しております。内容は地球征服を企むスパチネルタと、それに対抗するドメスティックレンジャーとの戦いが主になります。ありきたりな設定ですが、キャラクターの個性で大同小異になることを避けたいと思います。
全角16052文字
容量32104 bytes
原稿用紙約40.13枚
1. レッドとブルーはそういう関係

 我らドメスティックレンジャーは、世界の平和を守る特殊部隊!
 特殊部隊というくらいだから、その多くは謎につつまれている。
 ぶっちゃけおれ当人も、自分の体がどんな仕組みになっているのか見当もつかない……。
 そう、俺たちはすでに普通の人間ではないのだ!
 日本科学の鬼才、陣内博士が改造を施した5人の若者。
 それこそがドメスティックレンジャーの正体である!
 ……で、あるのだが……。

 赤い覆面男は、はたと解説をやめた。
 そしてやけに真剣な表情で、傍らの男を振り返る、
「なぁ、グリーンよぉ! おまえ自分が改造される前の事、ちっとでもおぼえているか!?」
 問いに、グリーンと呼ばれた覆面の男は小刻みに身体を震わせた。
 俯いた緑色の布地の下から、搾り出すような声が漏れ聞こえる、
「……そんなの、覚えていたならもうとっくに……」
 帰りたい、という言葉を飲み込んで、グリーンは嗚咽を繰り返した。
 その背中を、ピンクが気遣わしげに支える。
 そして震える唇でこう呟いた、
「レッド、あんまりそう言うことを言わないで、それ以上は危険だわ」
 そう忠告する彼女の顔は、覆面の下で蒼白になっていた。
 一方、赤い覆面男――レッドは、その忠告の意味に気付かず、覆面越しに目を輝かせていた、
「なんで今まで忘れていたんだろう! そうだよ、俺たちは元は普通の人間だったんだ!
 帰る家も、家族も、なんでか忘れてたけど! けどきっとそういう……あッ!?」
 突然、電源が切れたようにして、レッドはその場に倒れこんでしまった。
 もし黒い覆面の男が支えに入っていなければ、顔面を打ち付けていたはずだ。
「ブラック、レッドは?」
「……意思統御装置にやられたらしい。気絶状態だ……」
 その場に居た誰もが目を伏せる。
 沈黙を守っていた、青い覆面の男が、ゆっくりと口を開いた、
「バカな奴だ……俺たちに過去を振り返ることは許されないというのに……」
「そのとおりだ」
 新たに参入した声に、その場にいた全員が同じ方向を振り仰いだ。
「陣内博士!」
 それは悲鳴に近い声……。
 陣内と呼ばれた女は、長い髪を怪しく揺らめかせながら、五人のもとに歩み寄った。
 ブラックにもたれるようにしているレッドを一瞥すると、ブルーを振り仰ぐ、
「レッドは?」
「はっ、意思統御装置が働きましたので、一時的に気絶しております」
 答えるブルーの声は緊張で震えていた。
 それだけで、彼らにとって彼女がどのような存在であるかを読み取るのはたやすい。
 陣内は、特に考える時間を必要としなかった。
「そうか」
 その瞳にに冷ややかな光が宿る。
「ソレはもういらない」
「っ! 陣内博士!」
 ブルーは反射的に抗議の声を上げる。
 他の覆面たちが慌ててブルーをいさめようとしたが、もう手遅れであった。
 立ち去りかけていた白衣の背中ごしに、陣内が振り返る。
 その目は全ての興味を失ったようにして、ブルーの姿を映しだしていた。
「ブルー、残念だよ」
 陣内の言葉が終わらないうちに、ブルーの身体が床に沈み込む。
 先ほどのレッドと同じように……。
 誰もが動かずにいた。
 否、動けなかった。
 彼らの頭脳に埋め込まれた意思統御装置の存在が、その足を鉛のように重くさせていた。
 絶望的な空気が空間を支配する。
「おまえたち、二人を思いやる気持ちがあるのなら、気絶してる今のうちに処分してやるがいい」
 淡々とした口調でそう告げると、陣内は今度こそ、この部屋を出て行った……。


 ……。
 部屋は死が訪れたように静かになっていた。
 ブルーが、覆面の上からでもわかる仏頂面を原稿からあげると、喜色満面のレッドと視線がぶつかる。
 ここは陣内博士の研究所に設置された暇つぶしルームである。
 今日は記念すべき第一回目ということで、メンバー全員でここに落ち合うことに決まっていた……。のだが……。
 ブルーは手にしたろくでもないシナリオを、破るべきか思案しながら口をあけた。
「おまえ……なんなんだよ、この妙ちきりんなシナリオは……」
「やっぱり物語の第一回目にはドキドキハラハラな緊張感が必要だと思ってな!」
「だからって勝手に貼るな! しかもなんで俺が死にそうになってんだ!」
「いや、死にそうじゃなくていまからまさに死ぬんだよ」
「勝手に殺すなっ!」
 さりげに覆面に青筋を立てて器用なことをアピールするブルーに、レッドも負けじと唇を突き出した。
「いいじゃないか! ちゃんと俺も死にそうになってるだろ!」
「おまえ、俺を殺したいがために自分が死にかけてるんだろ!」
「ち、ちっげぇよ! まぁ、俺はこのあと奇跡の生還を遂げるわけだが……」
 キラキラと覆面の下でレッドの目が輝いている。
 彼の頭の中では、シナリオのなかの自分が、華麗なアクションを次々に決めているのだ。
「てめぇ一体何がしたいんだよ! 大事な第一回目をこんなのに使いやがって!」
 さすがにおかんむりのブルーが大声を上げる。
 今日は第一回目だからきっちりまとめようと、昨日作戦会議で決めたばかりだというのに。
「他の奴らにはなんて言うつもりなんだ!」
「大丈夫!」
 やけに自身満々なレッドに、ブルーは訝しげに覆面を歪める。
「こんなのを皆OKしたのか……?」
 だから時間を過ぎでもなかなか姿を現さないのだろうか……?
 ブルーは何気なく壁時計を見上げた。集合時間からもう十分は過ぎてしまっている。
「いや、そうじゃなくて……」
 言いながら、レッドはポケットからくしゃくしゃの紙切れ二枚を取り出した。
「これが俺様の自信の源っ!」
「お……? なになに……?」
 素直に目を通すブルー……。
 その紙切れ二枚を読み終えたとき、覆面の下で、ブルーの肌の色はめくるめく虹色になった。
 一枚目の手紙らしきものには丁寧な楷書でこう書かれていた。

『本日はあなたがたの研究所を、全勢力をもって破壊させていただきます。ご了承ください
 by 宿敵スパチネルタ 』

 そして二枚目の紙切れには……

『緊急出動を命ずる。
 五人で力を合わせてスパチネルタ軍を迎え撃つように。
 それに先立ってただちにブルーにもこの命令を知らせるように』

 レッドが差し出したのは、宿敵スパチネルタの挑戦状と、出動を要求する命令書……。
 じっとりと汗ばむブルーの横で、レッドがご機嫌そうにひらひらと手を振った。
「さっき博士から貰ったんだ、それ。まぁ、皆それで忙しいだろうから、きっとこねぇよ」
「ば……」
「ば……?」
「バカヤローがぁぁぁ!」
「ぴぎゃあああ」

 外道レッドの断末魔が上がると同時に、研究所全体が揺れた。
 どうやらスパチネルタ軍との戦いが始まってしまったようだ!
 いそげ! ブルー!
 いそげ! レッド! もし生きていたらの話だけど!


2.スパチネルタの脅迫


 陣内博士の研究所。
 すなわち、ドメスティックレンジャーの本拠地。
 今、その上空では激しい戦闘が繰り広げられていた。
 スパチネルタ側は、圧倒的な数をもってじわりじわりと包囲網を縮めつつあった。
 研究所を守ろうとするドメスティックレンジャーは、もはや背水の陣……。
 それぞれに黒、緑、桃色のごついバイクにまたがって、三人の覆面戦士は奮闘していた。
 特殊なエンジンを持ったジェットバイクは、風を巻き込み空をかける。
 スパチネルタがまず繰り出した敵は、三人の目から見ても雑魚の部類に入った。
 量産型の「虫」と呼ばれるタイプのものだ。攻撃力、スピード、攻撃パターンなどのどれひとつをとっても劣悪なものである。
 確かに数だけはあるが、これが宣言していた全勢力とはとうてい思えない。
 と、いうことは……
「なめられてるのかしら……」
 はるか後方に浮遊する、スパチネルタ軍本丸の飛行船。
 そこで余裕の観戦をしているであろう敵の首魁を想像し、ピンクは歯噛みする思いであった。
「こちらはたった三機……」
 請け負うブラックの声も苦い。
 ちらりと燃料を確認すれば、残量がかなりあやしくなってきていた。
 五人揃っていたならば、一機ずつでも研究所に戻り、博士に燃料を補充してもらうことも可能なのだろうが……。
「もーっ! 何やってんのよ! レッドとブルーは!」
 ピンクも燃料のことには気付いているのだろう、その発言に焦りがにじみ出ている。
 それを尻目に、ブラックは唇を噛み締めた。
 ……もし、このまま戦ったとしても、燃料が切れてしまえば地上戦にならざるをえない。
 そうなれば空中を飛び回る無数の敵を相手にどれだけもつのか……。
 ブラックは脳内でさまざまなシュミレートを重ねたが、どの案も頭打ちだ。
「何かいい案あるか?」
「え……、案?」
「ああ、この状況を打開するための良策!」
「そうね……ひとつだけあるわ……」
 ピンクの声の調子が変わった。
 ブラックは期待を込めた眼差しで、ピンクの目と思しき覆面の凹みを見詰める。
 覆面越しの相手の表情は読み取り難い。
 そのはずであるが、ドメスティックレンジャーの間ではその障害も無に等しい……。
「よし、その案で行こう」
 ブラックは躊躇することなくそう言い放った。
 内容を聞かずとも、通い合った心があれば……!
「そう……じゃあ援護お願いするわね!」
「まかせろ!」
 二人は残りの燃料を全て使い果たそうとするかのようにアクセルを全開にした。
 まずピンクのジェットバイクが発進する!
 ついでブラックの車体が続く……かとおもいきや、彼らはまったく反対方向へと走り出していた。
 研究所へ疾走するピンクと、敵本営を目指すブラック!
 これこそが作戦なのだろうか! 敵を欺き、隙をつく。
 動きを予想しきれなかった虫たちが、次々とブラックのバイクに跳ね飛ばされてゆく。
 敵陣営に動揺が走った――、それと同時に……。
「ええぇぇ!?」
 単身、アクセル全開で敵陣に突っ込みながら、ブラックが動揺しまくった声を上げた。
 慌てて振り返れば、すでにピンクははるか後方である。
「なぜ!」
 ブラックの想像では、燃料の尽きるまで二人で敵陣をかく乱し、戦場の花と散るという結末になるはずだ!
 しかしこのままでは……!
 ブラックの車体はぐんぐん敵本営の飛行船と距離を詰めている。
 燃料の残量はもうスズメの涙ほどもない。
 今引き返そうにも途中でエンスト。最悪の場合地面に叩き付けられた上、敵にトドメを刺される、なんて結果になりかねない。
 なら突っ込むしかないのだが……。
「俺一人行った所でスパチネルタに通用するはずが……」
 それは実際を知る者の恐怖であった。
 ブラックの脳裏を、漆黒のマントをなびかせた一人の男の姿がかすめる。
 だが、ここで迷っている暇はない!
「機関室に潜入して飛行船を落とす!」
 決意を固め、更にスピードを上げて突進する。
 目指すは機関室外壁! のはずだったのだが……
 それはまことに不幸な事故であった。
 空中を浮遊していた虫の一匹が、あろうことかジェットバイクの前輪に巻き込まれたのだ。
 次の瞬間、慣性の法則にしたがって、ブラックの身体は空中に放り出された。
「ぬおおお!」
 機関室から大きく狙いを逸らし、ブラックの身体は容赦なく飛行船の外壁に打ち付けられた。

 敵飛行船の一画で派手な爆発が起こるのを、ピンクは研究所の窓から確認していた。
「結局、何がしたかったんだか、ブラックは……」
 ぽつりと呟く。
 結局、二人の認識は、進んだ方向と同じように、百八十度異なったものであったらしい。
 そして気になるピンクの目的は……、
「よし! 今ならまだ第一回目に間に合うかもしれないわ!」
 どこまでも自己中心的なものであった。
 まったく、レッドといいピンクといい、ドメスティックレンジャーとは一体どういった集団であるのか。
「レッド、ブルー! 二人じめは許さないわよ!」
 今が既に第二回目であることに気付かないまま、ピンクは研究所の廊下を駆けた。

 そのピンクの姿を、カタパルトに設置されたモニター越しに観察する人物が一人。
 誰あろう、このドメスティックレンジャーの生みの親にして、総司令官、陣内博士である。
 陣内博士は白髭を蓄えた腰の曲がった老人……、ではなかった。
 麗しい黒髪を持つ、見た目は十に満たないいたいけな少女。
 それが陣内博士の正体であった。
 椅子に座った彼女は、まるで椅子についた付属物のような大きさでしかない。
 ただ、彼女を一般の小学生と認識する人間は一人も居ない。
 その落ち着いた表情と、深い色をたたえた瞳。
 彼女は間違いなく、この研究所の長だった。
 知的な光を宿したその瞳は、今は二つのモニターを交互に見詰めていた。
 派手に煙を上げながらも、安定した飛行を見せるスパチネルタの飛行船と、仲間の命を顧みず、私利私欲に走るピンクの姿が映し出されている。
「あきれた……」
 博士はそっと溜息をつく。
 ドメスティックレンジャーは彼女の最高傑作だ。
 その証拠として、今日までスパチネルタの繰り出す多数の敵を、たった五人で打ち倒してこれた。
 しかし、それはまだMAXではない。
 もし、正しく力を引き出すことができたなら、彼らはこの世界で最強の武器になるはずだ。
 他の追随を許さず、高密度のエネルギーを操り、ジェットバイクに頼ることなく自由に空を駆る……。
 それを彼らが発揮できないのには訳がある。
 彼らの間に、一つの、だが決定的なあるものが欠落しているのだ。

「信頼……」

 信頼が欠けていればチームワークをとることができない。
 そればかりか、個々の力を十分に発揮する事も難しい。
 もし、このまま彼らの関係が膠着したままならば……。
 そのとき、二つの慌しい足音がカタパルトに乱入した。
 陣内博士の柳眉が僅かに寄せられる。
「遅い、レッド、ブルー」
「申し訳ありません博士!」
 そう詫びたのはブルーであった。
 肩で息をしながらも、戦況を見極めるためにモニターに目を走らせる。
「戦場に三人の姿がありませんが……ま、まさか!?」
 思わず声を上げるブルーに、博士は首を振り、いつもの淡々とした口調で答えた、
「違う。誰の死亡も確認されてない」
 それを聞いてやかましい声を上げたのはレッドであった。
「ほら、だから俺たちが来ることなかったんだって〜!」
 その発言にブルーのこめかみに青筋が走る。
「てめ……!」
「やめて。時間がない……」
 小さなからだをフルに使って、博士がさっと仲裁に入る。
 しかし、流れた険悪なムードは払拭しきれない。
 陣内は奥の手を使うことにした。
「ほら、いちご、食べなさい」
 隠し持っていた箱入りの高級いちごを取りだし、頭三つ分は背の高い二人に差し出す。
 二人の覆面戦士は、大好物の大ぶりのいちごに、反射的に手をのばし、無心で口にしはじめた。
 瑞々しいいちごの甘さに、その場の空気がなごむ。
 この場はなんとか落ち着いたようだ。
 しかし気を抜いては居られない。今や研究所上空は完全に敵の制圧下にある。
 二人がいちごをたいらげるのを待って、博士は静かな口調で喋り始めた、
「二人とも、今すぐ出撃の用意を。 このままでは地域の皆さんからのクレームが予想され……」
 言い果てる間もなく、カタパルトの全モニターに異変が発生した。
 ザ――――ッ
「!?」
 砂嵐の吹き荒れる画面。
 かつてない異常事態。
「博士、これは!?」
「どうやら何者かの介入が行われている……。そろそろ、来る」
 相変わらず冷静な陣内博士の言葉に、覆面戦士はモニターを睨みつける。
 同時に、砂塵にまみれていた画面が、一様にしてゆらりと揺れた。
「おでまし……」
 博士が呟いた次の瞬間、すべての画面に同じ映像がうつしだされた。

『ドメスティックレンジャーのみなさん、こんにちは』
 夜色のマントをまとった金髪の美青年が、人の良さそうな笑顔をこちらに向けている。
『本日は突然おしかけてしまって、申し訳ありませんでした』
 その笑顔と言葉だけを聞いていれば、誰もこの青年の正体には気付くまい……、
「スパチネルタ……ッ」
 ブルーが低く、低くうなる。
 金髪の美青年――スパチネルタは、笑顔のまま軽く会釈する。
『今回は、みなさんにどうしても伝えたいことがありまして……』
 スパチネルタが視線を転ずると、カメラのアングルも自動的に切り替わった。
 三人の目が、新しく映し出されたその足元に集中する。
 それはまるで、悪い冗談のような光景……。
「ブラック……!」
 レッドが珍しく焦ったような声を上げる。
 椅子に深く腰掛けたスパチネルタの足元には、ピクリとも動かぬブラックの姿……。
『安心してください。まだ彼は死んでいません』
 あくまでも紳士的な態度でスパチネルタが続ける、
『しかし、あなた方がこれ以上の抵抗を見せるというのなら……、残念ですが彼の命を奪わねばなりません』
 残念……、その言葉のなんとそぐわないことであろう。
 スパチネルタの様子には微塵の迷いも感じられない。
 あるのは絶対的優位に立つものの余裕と、駆け引きを楽しもうとする異常な嗜好。
 そう、スパチネルタは楽しんでいるのだ。
 それを感じ取って、ブルーは思わず悪態をつきかけた。
 スパチネルタの言葉はさらに続く、
『もし一切の抵抗をやめて、私の指示に従うと言うのなら、彼の命は保障します』
 彼はそこで一度言葉を切った。
 抑えようのない勝利への確信が、彼の笑みを一層深くする……。
『ただし、その場合は服従の証として、陣内博士の身柄を引き渡してもらいましょう』
 わずかに、陣内が息を飲んだ。
 レッドの顔色が変わる。
『それでは、よい返事を期待しております』
 その言葉が終わった後、通信が途絶え、モニターはもとの砂嵐に戻った。
 カタパルトに沈黙が落ちる……。
 それは、第二回目にして早くも訪れた、ドメスティックレンジャー存亡の機であった……。


 はたして、ドメスティックレンジャーは陣内博士を失ってしまうのか。
 というか、いたいけな少女の身柄を拘束してどうするつもりなのだ、この金髪ロリコン!!


3. レッドの決意と醤油せんべい


「博士! 本気でスパチネルタの要求に応えるつもりなのですか!?」
「そう」
 ここは陣内研究所のカタパルト。
 そこでは先ほどから一組の男女が激しい言い争いを続けていた。
 まぁ、言い争いとは言っても、一方的にブルーが加熱してるだけで、陣内博士は見てのとおりのローテンションっぷりなのだが。
 簡単に状況を説明すれば、残りのジェットバイクに乗って、スパチネルタの元に行こうとする博士を、ブルーがしつこく引きとめている。そんな場面だ。
 ドメスティックレンジャーにとって、陣内博士がどれほどかけがえのない存在か、それを示す大事な場面のはずなのだが……。
 そこから視線を転ずれば、緊張感ゼロのレッドが、茶菓子を貪り食いながら博士の椅子に腰掛けている。
 スパチネルタの言葉に一瞬顔色を変えた……、あの前回の引きはなんだったのか、読者をなめてるのか、この野郎!
 そういうことで、緊張感がみなぎっていてしかるべきこのカタパルトでは、現在二つの音が混在していた。
 すなわち、せんべいをぶぁりぼりと貪る音と、むさくるしい男のわめき声とである。
 聞いてるだけで腹を下しそうな不協和音。
 その不協和音が、がら空きの研究所に反響しては消えていく。
 いつもなら黙々と研究を重ねる研究員の姿を確認できるのだが、この緊急事態に研究員は一人残らず避難しており、頼みの綱のドメスティックレンジャーは存亡の機を向かえている。
「スパチネルタはわたしに危害を加えることはしない」
「どうしてそんなことが言えるんですか!」
「……カン」
「っておおい! カンですかよ! カンなのですかよ! 」
 要領を得ない博士のふしぎっ子ぶりに、ついにブルーが泣き出した。
 もし陣内博士を失ったとしたら……。
 ドメスティックレンジャーは卵のない卵かけご飯! シロップのないカキ氷! ルーの入っていないカレー!
 まぁつまり、もう可哀想なくらいアレな存在に成り下がることであろう。
 陣内はそれを知っていながら、あえてブラックの命を尊重する形をとった。
 それは道徳的に言えば正しい判断なのだが……。

「これは、できれば言わずに済ませたかったのですが……」
 神妙な面持ちになったブルーの言葉に、博士は軽く興味を引かれたようだった。
 じっと続きを待つ博士に、ブルーは意を決して言葉をつむぐ、
「ブラックは……、ブラックの奴は本当に人質なのでしょうか!」
 その言わんとするところを感じ取って、博士が咎めるような視線を送る。
 しかし、一度口を開いてしまうと、ブルーの言葉は止まらなかった。
「あいつは、ブラックの奴はもともとスパチネルタの部下だったじゃないですか! しかも直属の! これは何かの罠――」
 そのとき、ブルーの頬を衝撃が襲った。
 思わずよろめくブルー。彼の横っ面を殴ったのは……、
「レッド……」
 拳を突き出したままのレッドの名を、博士が呼ぶ。
 太陽の動きと同じくらいわかりやすいレッドの表情も、このときばかりは不透明なカーテンで覆われているようだった。
 その口元の布が静かに動く、
「ブルーよぉ、もういいじゃねぇか、行かせてやりな」
「レッド! おまえ博士の身がどうなってもいいというのか!?」
「いや……そういうわけじゃないけど……でも、博士は一度言い出したら、もう絶対に覆さないって」
 その言葉に、ブルーは博士を振り返った。
 意志の強い瞳が、静かにブルーを見詰め返している。
「博士……」
「ま、そういうことだから……、博士を止めるのはもうやめろや」
 レッドはそこで言葉を切り、
「そのかわりに、俺らは俺らで、勝手に行動させてもらうっすよ」
「え……? それはどういう……」
 驚きの声を上げたのはブルーだった。
「だぁーかーら、おまえは頭が固いんだよ、この真っ青ゴリラ、ダメ男、消し炭野郎」
 どさまぎで言いたいほうだい言うレッド。
 ブルーが何か言いだす前に、一気に捲し立てた。
「博士を止められないんだったら、博士が向こうのもんになっちまう前に、スパチネルタの飛行船を落としてやりゃあいいのさ!」
 レッドの妄言とも思える発言を、博士は表情一つ変えずに聞いていた。
 その目は『不可能だ』と語りかけてくるようで……。
「博士、俺がドメスティックレンジャーになった日のこと、覚えてますか?」
 レッドの問いに、博士は小さくかぶりを振った、
「よく覚えていない」
「そうっすか、俺もぜんっぜん覚えてません」
「おい! じゃあなんで話題フッタんだよ! 意味不明だよ!」
 思わず突っ込むブルー。
 しかしレッドは覆面越しに、にっこりと微笑み、
「よく覚えてないすけど、俺がドメスティックレンジャーになってるってことは、
 この命を博士に預けてもいいって思ったんでしょうね。当時の俺は……」
 そこで博士を見詰める。
「だから博士が命はろうってときに、のうのうと菓子食って待ってるわけにゃあいきませんって」
 どうやらさっきのせんべいを貪り食う音は幻聴だったらしい……。
 博士を安心させようとしてか、レッドは軽い口調で言葉を続けた、
「それに、いざとなったら意志統御装置でもなんでも作動させますから」
 そう言って自分の赤い額を、親指で小突くような動作をする。

「……わかった。無茶はするな」

 博士は相変わらず口数が少なかった。
 しかし気のせいか、先ほどまでは無かった色が、確かにその瞳に宿っているように思えた。

 ブルーのジェットバイクに跨り、大空へと旅立った博士を見送ると、二人は少しの間無言でいた。
 そして……
「れっでゅお〜!!」
「ぬお!?」
 覆面をしとどに濡らしたブルーが、突然レッドに抱きついた。
 赤いくせに青くなったり白くなったりするレッド。
 鼻フックの要領で、右手の中指と人差し指をブルーの鼻に突っ込み、全力で引き剥がしにかかった。
「な、なんだよき持ち悪……! いや、ほんっっとにキモい!! てかゴリラ! 臭いよおまえ!」
 本気で鳥肌を立てるレッド。
 しかしめげないブルー! 鼻血をしぶかせながらもさらにしがみつく。
「おっ、俺は感動した! おまえがそんなまともなことを言うだなんて!」
「ああ!? てめぇ! 俺様をなんだと思ってたんだ!」
 普段のアレな態度をさんざん見せ付けられて何を思えというのか。
 とりあえずブルーは心底感動してしまったようだ。
「俺は、俺はブラックを一瞬でも疑った俺が恥かしいッ!」
 今にも拝み倒しそうな勢いで、そう叫ぶブルー。
 しかし、レッドからの返事は……、
「ああ、ブラックなら俺も疑ってるよ」
「え……?」
「だいたい黒ってだけでうさんくさいのに、元敵側なんて心底信用できないね」
 ぺっ、と床に唾を吐き出すレッド。
 ブルーはしばし呆然としていたが、はっと何かに気付いた、
「あれ……? じゃあおまえなんで俺を殴ったんだよ」
「ああ、今なら殴っても怒られない雰囲気だなぁと」
「!!」
 ブルーの脳裏に、『外道』の二文字が浮き上がった。
「おい、ぼさっとしてないで行くぞ。とりあえずピンクのあまっちょを探して、出撃はそれからだ」
「……ぉぅ」
 意気揚揚と歩き出すレッドの後を、意気消沈したブルーが続く。
 こうして対スパチネルタの動きは、小さいながらも確実に起こっていったのであった。


 次回! 陣内博士を飛行船に迎え入れるスパチネルタ! 果たしてその真意とは!?
 博士以外の誰にも信用されていないブラック! 
 はたしてブラックの立ち位置はどうなってしまうのか!?


4.レッドの貴重な憂鬱


 レッドとブルーが行動を開始した頃、陣内博士は既に敵船に到着していた。
 博士のカンのとおり、スパチネルタは彼女を客人としてもてなすことに決めたらしい。
 虫たちは未だ空中に散開していたが、陣内の進行を妨げる動きは見せなかった。
 実際に内部を観察してみれば、その飛行船がいかに実用的で、戦闘に長けた造りをしているのかが伺える。
 ただ、表面上、彼女はなんの感慨も感じた様子もなかった。
 しかし、間を置かずして現れた先導係の姿をみて、彼女は思わず悲鳴を上げかけた。
「な……」
 その生き物は、一見馬のようにも見えた。
 獣特有の生臭い息が、その鼻腔から漏れる。
 たしかに、それは馬でもあった。
 ただし、その下半身は「人間」のもの。
「合成獣……」
 今まで、スパチネルタの配下は、人を除けば虫のような機器のみ。
 しかしこれは……。
 哀れな合成獣は、その外見に不似合いなほどうやうやしく膝をつき、正式な挨拶をしようと試みていた。
 しかし陣内はある感慨に激しく揺さぶられ、その挨拶に応える余裕もなかった。
 ドメスティックレンジャーも、言ってみれば合成獣に近い存在なのかもしれない。
  人間の身体を中心にして改造を施し……、生命を弄ぶ行為。
 彼女はこの生命体を目にしたとき、例えようもない嫌悪感を感じた。
 それは、ドメスティックレンジャーが、スパチネルタのこの呪われた所業と同列に列せられることを拒んだものだった。
 合成獣はやがてのっそりと立ち上がると、身体を左右にゆらしながらのろのろと歩き始めた。
 どうやら先導のつもりらしい。
「……」
 動揺を隠せないまま、博士はある程度距離を置いてその後に続く。
 こうして少女はスパチネルタの飛行船に招き入れられた。

 その頃陣内研究所……。
「こ、これはっ……」
 かすかに息を呑む気配。紙を握る指先がふるふると震えた。
 滴る涙が文字を滲ませ……、
 ついにピンクはその場にがっくりと膝をついた。
 やはり陣内博士を喪失することはドメスティックレンジャーにとって……、
「うっううう! ひ、酷い! せっかくの……せっかくの第一回目……うああああ!」
 取るに足らない出来事らしい。すくなくとも、この女にとっては……。
 レッドの例のシナリオを握り締めて、男泣きに泣きくれるピンク。
 その肩をぽんぽんと叩いてやっているブルーも、ピンクには同情するところ大である。
 しかし当事者のレッドは……、
「うっせー! びーびー泣くな! てか俺のシナリオを見て酷いとは何事だ!」
 反省するどころか逆切れ気味だ。
 そもそもこいつがつまらない理由で戦場に馳せ参じなかったせいで、ここまで被害が広がったと言ってもいいのだ。
 本当なら土下座しながら移動するべきだというのに……。

 こうしていても埒が開かない。
 そう気付いたのか、レッドは気を取り直してブルーとピンクを見据えた。
「いいか、おまえら! 知ってのとおり陣内博士はスパチネルタの飛行船に行った。このままだと多分帰ってこない」
「死体になって帰ってくるんじゃないの?」
 物騒なことをさらっと言ってのけるピンク。
 ブルーが敏感に反応するが、レッドは自信満々に応えた、
「それはない! 説明してる時間はないが、博士の命に危険はないと思え」
「じゃあそんなに必死になって騒ぐ事ないじゃない」
 きょとんとした顔で、さらに呟くピンク。
「馬鹿かっ! おまえ博士は無事でも俺らは確実に死ぬだろ!」
「ええ!? なんで!?」
 レッドの言葉にさらに疑問符を投げつける。
 これがわざとなら張り倒して窓から投げ捨てるのだが……。
「そうだったな。おまえレンジャー始まって以来のアホだったよな」
 レッドは面倒くさそうにがりがりと頭を掻いた、
「スパチネルタの目的はズバリ世界征服だ! その点俺らは正義の味方、世界征服の邪魔になる 俺らを生かしておくわけないだろ!」
「あーそっか! でもあれ? 命の保障をするって言ってたんじゃないの?」
「ブラックだけな……」
 そこでブルーとレッドは目を見交わす。
 はっきり言って、彼らはブラックを信用できないでいた。
 そして、仲間を偏見の目で見ることに少なからず負い目も感じている。
「まぁ、それはいい」
 レッドは軽く頭を振り、改めてブルーに向き直った。
「俺は意志統御装置の発動も一応考えてる。できれば使わないつもりでいるがな。
 そういうことでブルー、おまえはどっかで事故ってるであろうグリーンを探し出しておいてくれ。
 意志統御装置は五人そろわねぇと使えないし、
 さすがにここまで出番がないのが驚異的だしな……」
 レッドは、アホ代表のピンクと双璧を誇る最強の不器用男を思い浮かべた。
 今回は誰かさんのせいで人手が足らず、やむなく出動したが、グリーンは本来後援だ。
 ビーム銃を使えばその何発かは味方にあたり、肉弾戦になれば突き出した手首をくじき……。
 そんな奴がジェットバイクに乗って無事でいられるはずがない。
 先ほどから姿が見えないのがそのなによりの証だ。
 ブルーも同じ想像をしたらしく、青くなりながら頷いた。
「よし、わかった」
 そして早速動こうと背を向けて……、
「ところでレッド、おまえは?」
「ん? ……俺はだなぁ、とりあえず博士を救う算段でも立てるさ」
 あえてブラックの名をださずに言う。
 その笑顔は覆面越しにもいびつだった。
 ブルーもそれに気付いて、今度は何も言わずに立ち去る。

 ブルーの立ち去った後、何事か考える様子のレッドだったが、ピンクの熱い視線に気付き、強張った表情を崩した。
「なんだ、ピンク? 俺に惚れたか?」
 冗談交じりの言葉で向き直る。
 しかし彼が予想したようなアホ女の姿はそこにはなく……、
「……本当に博士を救えるの?」
 いつになく真剣な問い。
「ピンク……」
 レッドは態度を改めると、安心させるように言った、
「まかしとけ、ちゃんと策はある」
「ほんと!? さっすがー!」
 聞くや否や、ピンクは飛び上がって喜び出す。
「おう! なんてったって俺様はドメスティックレンジャーのリーダーだかんな! よし、いっちょやるか!」
「おー!」
 内心の複雑な思いをひた隠しながら、レッドはピンクと共に駆け出した。


 陣内が通されたのは豪奢をきわめた一室だった。
 高い天井と、高価そうな装飾。そして――
「ようこそ、陣内博士」
 穏やかに微笑むスパチネルタ。
 長いテーブルに、洗練された曲線美を描く椅子。
 先ほどの映像とは別の部屋だ。その足元にブラックが転がっているようなことはなかった。
 スパチネルタが指を鳴らすと、任務を終えた合成獣は、陣内を迎えたときと同様に、のしのしと身体をゆすりながら去っていった。
 その後姿を見送りながら、博士がぽつりと呟く。
「……ブラックは……」
 声に、押し殺した不安を感じ取って、スパチネルタは思わず笑みをこぼした、
「大丈夫ですよ、彼は私の可愛い部下です、無下には扱っていませんよ。
 そもそもあの怪我だって、彼がこの飛行船に衝突したときに負ったものです」
 言葉に、陣内は探るような視線をスパチネルタに向ける。
 それを受け止めながら、彼はさらに続けた、
「もちろん合成獣の材料にもしていませんよ。むろん、あなたも……ね?」
 その目は微笑んでいるのに……。
 入り口で立ち尽くす陣内を、スパチネルタは礼儀正しく上座に座らせた。
 差し出したワインを断られると、一度引き下がり、見せつけるように一口飲み下す。
「毒は入っていません」
「知っている」
 博士はもう落ち着いているように見えた。
 床に届かない足を組んで、真っ向からスパチネルタを見据える。
「何が目的」
 美しい少女の、有無を言わさぬ厳しい態度に、スパチネルタは困ったような苦笑を作った、
「相変わらずですね。陣内先輩は……」
「その呼び方は、やめろと言った」
 陣内の表情に、滅多に表れない不快の色が滲む。
「そうでしたね、すみません陣内博士」
 あっさりと詫びるスパチネルタ。
 もちろん反省した様子はないが、博士はそれを気にとめなかった。
 それよりも陣内が知りたいのは……。
 微動だにしない陣内の向かいで、スパチネルタはゆっくりとワインを注ぎ足している。
 そして透き通った赤い液体を、グラスの中でゆるゆると回してみせた。
「今回の私の目的は……、至極簡単なものですよ」
 陣内が焦れ始めるのを見計らったように、スパチネルタの口が開いた、
「まず、私の可愛い部下をドメスティックレンジャーから引き抜くこと。
 ……二つ目は邪魔なドメスティックレンジャーを消し去ること」
 軽くウェーブのかかった金髪の下で、その瞳が怪しく光る。
「そして三つ目は……言わなくても察しがつきますよね……?」
「全部、させない」
 広い部屋に重い沈黙がのしかかる。
 互いが互いの腹のうちを探り合い、一歩も引かぬ気迫が満ちる。
 しかし、ここはスパチネルタの支配する空間だった。
「すみませんが、あなたに決定権はないんですよ、少なくとも今は」
 スパチネルタがそう言った瞬間、陣内の座った椅子が急激に変質した。
 その手足に拘束がかかり、ぐいぐいと吊るし上げられる。
 博士は無駄な抵抗をすることなく、じっとスパチネルタを睨みつけていた。
 完全に変化が終わったとき。
 少女の身体は一メートルほど宙に浮き、十字架に吊るされたようなポーズになっていた。
 少しも動揺を見せない陣内に、スパチネルタが近づいていく。
 こうすると、少女と青年の目線が同一になる。
「すみません、手荒なことをしてしまって」
 優しくささやきかける悪の権化。
 はたしてその真意はどこにあるのか。
「でも、こうでもしないと陣内博士はじっとしていないでしょうから」
「……?」
 つと、スパチネルタの指が変質した椅子に添えられた。
 僅かに十字架の角度が変わり、やや上向きになる。
「これで苦しくはありませんね? さぁ、こちらをご覧下さい」
 スパチネルタの指し示したのは、高く白い天井。
 それを巨大なスクリーンにして、飛行船の外の様子が映し出される。
 数多くの虫が制圧するその空に……、
「レッド……!」
 陣内が大きく目を見開く。
 その反応に、スパチネルタは満足げに微笑んだ。
「研究者としての喜びを、私はこう考えています。
 一つは生み出すことの喜び、二つ目はその成果を見る喜び、三つ目はそれを破壊される喜び。
 ドメスティックレンジャーを生み出してからの先輩は、彼らを中心とした……彼らを助ける道具しか研究してこなかった。
 この三つ目の喜びは、きっと陣内先輩の研究意欲に新たな火をつけてくれますよ」
「やめて」
 呼び方を訂正する余裕もなく、陣内は低い声で呟いた。
「ドメスティックレンジャーは、わたしの最高傑作……」
「なら、私の合成獣にあっさり倒されるはずもありませんね?」
 天井に映し出された赤いジェットバイクと、その上に跨る赤と桃色の覆面戦士。
 虫との交戦を始めた彼らの姿を、スパチネルタは既に獲物を見る目つきで追っていた。
「予告どおり全力で殺して差し上げましょう」


 次回! ついに全力を見せるスパチネルタ軍!
 圧倒的不利な状況で、レッドはどのように博士を救おうというのか!?


2006-08-05 11:51:32公開 / 作者:ハルキ
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■作者からのメッセージ
自分が読みたいと思っていたギャグ小説をテーマにがんばります。
感想・評価は甘口から辛口までありがたく頂戴いたします。
この作品に対する感想 - 昇順
はじめまして。時貞と申します。御作品を拝読させていただきました。戦隊物のパロディーですね。時にストレートに、また、時にシュールに攻めてくる数々のネタは素直に面白かったです。僕もギャグ小説は大好きですので!ただ少し、ここまでを通して読み終えたとき、文章が若干単調といいますか、やや淡白すぎるような印象も感じてしまいました。このようなタイプのギャグ小説は文章のテンポが非常に重要ですので、この書き方でも中途までは大変面白く、また心地よいのですが、どうしてもこの書き方は(あくまでも個人的な印象ですが)ショートx2向きのように思えてしまいます。しかし、ハルキ様のギャグのセンス、ネタ自体はとても好みですね!笑えました。構えずに楽しめるギャグ小説、今後の更新にもおおいに期待しております。それでは、乱文失礼致しました。
2006-08-04 16:01:34【☆☆☆☆☆】時貞
時貞さん書き込みありがとうございます。
文章のテンポの悪さは自覚があるのですが、具体的どうすればいいのか模索中です。
もし、いい方法を発見したら一話から改訂したいと思います。
第四話は笑いの要素が少ないですが、これからも宜しくお願い致します。
2006-08-05 11:54:36【☆☆☆☆☆】ハルキ
計:0点
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