『Rulers』作者:ユイ / ِE - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
この世界には、【神】という独裁者と、【Rulers】という五人の支配者がいる。【神】に逆らえる者はいない。それは、殺されるから。そんな【神】が支配者達に下した命令は、「この世界を滅ぼすこと」だった。
全角31023.5文字
容量62047 bytes
原稿用紙約77.56枚
序幕【Rulers】

 この世界の独裁者。
 それは、【神】。
 逆らえる者はいない。
 殺されるから。

 この世界の支配者。
 それは、【Rulers】。
 逆らえる者はいない。
 殺されるから。

 【神】は【Rulers】へ命令を出した。
「この世界を滅ぼすこと」
 今、世界は滅びている。
 あなたの知らない【Ruler】達によって……。

第一章【Time ruler】

 小さな、小さな村に時を操る少女がいた。
 彼女の名前は、斗鬼(とき)という。
 誰もが恐れた。
 魔物と呼ばれ、怪物と呼ばれ、斗鬼の存在が認めれらることは、なかった。孤独だった。ずっと、ずっと一人だった。
「この怪物!」
「……」
 斗鬼の近所に住む小さな男の子が、石を投げつけてきた。だけど、斗鬼は怒らない。
「……地獄、見せてあげようか?」
 不気味な笑顔を見せて、声のトーンをいつもより落とすと、「ひぇー」と言いながら、男の子は去っていった。
  斗鬼は、特定の人物の人生を未来に進めることで、人を殺めることが出来る。老化させ、殺していくのだ。
 斗鬼は、いつもブラウンのベルトの腕時計を左手に身に着けている。時を操れるのは、この腕時計のおかげだ。
 人は、この腕時計を【The Manipulation Watch】と呼ぶ。操り時計……【TMW】と。

 時に逆らえる者はいない。
    斗鬼を除いて。
 斗鬼に逆らえる者はいない。
    神を除いて。

 【TMW】は、所持したからといって、誰もが操れるわけではない。【気】が必要なのだ。その【気】を今亡き両親が、斗鬼に授けた。
 「そんなもの、イラナイのに……」
 この時計のせいで、どれだけの物を失っただろう?家族、友達、学校……。
 人を殺める人間が、学校に受け入れられるはずがない。 
 魔物、妖怪、怪物……。
 そんな言葉が、斗鬼のいない学校で、家庭で飛び交う。
 斗鬼に聞かれたら、死んでしまうのだから、こっそりと。
 斗鬼は、草原に横たわった。
 何事もないように、空は青い。田の稲穂は揺れる。山の木々はざわめく。
「悔しい……」
 斗鬼は、この十三年間、数えられないぐらいの人を【地獄送り】してきた。
 しかし、自分を【地獄送り】することは出来ないのだ。
 自分以外の環境や他人を、未来や過去へ送れても、【自分自身】だけは、連れて行くことが出来ない。
 それが出来たら、楽なのに……。そしたら、両親のところへ行けるのに……。そんな歯がゆさを物心ついた日から感じていた。
「斗鬼ちゃん」
「……ばぁや。どうしたの?」
 ばぁや、こと玉井 テル(たまい てる)が、腰の高さまである草むらから慌ててやってきた。
「斗鬼ちゃんに、手紙が届いたんだよ。さぁ、早くおいで」
 テルに手をつかまれ、強引に引っ張られる斗鬼。
「ばぁや?」
 皆が恐れる私に誰から手紙が来たのだろう? という疑問を抱きながら、草を掻き分けた。
 わらで作られた簡単構造の家。
 斗鬼は、テルに育ててもらった。
 戦争で夫に先立たれ、子もいなかったテルは、人を殺める斗鬼のことを恐れることなく、愛情を注いだ。
 人は、テルを【物好き】と呼ぶ。
「ばぁや、手紙って?」
「これじゃよ」
 テルが差し出したのは、真っ黒な封筒に白い文字で【古来(こらい) 斗鬼様】と書かれた、奇妙な手紙。
「……何これ?」
 気持ちが悪い、というのが斗鬼の本音だった。お葬式? なんていう思いも湧き上がってきた。人を簡単に殺める斗鬼でさえ。
 息をごくりと飲み、差出人の名のない封筒を開けた。

古来 斗鬼様
隣町に住む、麻(あさ)と申します。
先日、『時を操れる少女』がいると噂でお聞きしました。
人を過去・未来送りできるという特殊な能力を持っておられると。
あなた様の力をお借りしたい。
これを見てくださったのなら、【暁町 一丁目 五六九番地】まで来て頂きたい。
お願いします。
事情により、この手紙に詳細を書くことが出来なかったことをお許しください。
お待ちしております。


「私の力?」
「そうみたいじゃね」
「こんなのどうせ悪戯でしょ? 特殊な能力が見たいだけよ」
「そうかねぇ?」
「そうよ。しかも、それなら訪ねてくればいいじゃない。それに、どうして、私が足を運ばなきゃいけないのよ? 面倒。放っておくわ」
 斗鬼が住む、この時代に電話という優れた機械は存在しない。もちろん、携帯電話と呼ばれるものも。
 お互いが連絡を取るには、手紙か直接たずねるくらいしか方法がないのだ。
「……ねぇ、ばぁや。この手紙、消印ないよね? 誰が届けたの?」
「さぁ? それが、ばぁやも畑仕事してたときに届いたみたいで、知らんのじゃよ」
「……鳥。なるほどね」
 屋根の上のわらを突く白い鳥を見て、斗鬼は呟いた。
「斗鬼ちゃん?」
「ばぁや。やっぱり、私、暁町に行くわ」
「え?」
 斗鬼は、鞄に荷物を詰め込んだ。食料、水、ランプ、ナイフ……。
「どうしたんだい? 斗鬼ちゃん」
「私、しばらく旅に出るわ。あとで手紙送る。すぐに」
 靴紐をぎゅっと縛り、斗鬼は家を飛び出した。
「斗鬼ちゃーん。気をつけるんじゃよ」
 心配するテルに、斗鬼はVサインを見せて微笑んだ。こうする斗鬼は、普通の年相応の十三歳の少女なのだが……。
「怪物! おまえどっか行くのか?」
「黙れ! 能無しのガキが! 殺されたいか?」
 ガキなのは斗鬼も一緒だ。
 だが、殺められるとわかっている相手にわざわざケンカをふってくるとはなんという能無しだ、と斗鬼は馬鹿にする。
 暁町は、ここ、夕日村から徒歩七時間といったところ。市場が盛んで、朝市などが有名な場所だ。テルに連れられて、数回行ったことがある。
 暁町へは、山を越えていかなければならない。まだ、あまり整備されていない山道は、人が二、三人やっと通れるくらいの幅だ。
「……四時か」
 腕時計を見て、時間を確認する。出発するのには、中途半端な時間だったと後悔した。山の中のため、日は差し込みにくい。日が沈むと、外灯のないこの山道をあるくのは危険だ。
「今夜は、野宿か……」
 深いため息をつき、旅人のために用意された木製のベンチ。斗鬼は、そこに横になった。

「お兄さん」
「あ?」
 寝起きの斗鬼は、いつも以上に機嫌が悪いらしい。しかも、ショートカットの髪のせいで、男に間違われる始末。
「んだよ?」
 斗鬼は男口調で答え、体を起こす。「お兄さん」と声をかけた人物らしき人は、小さな、小さな少女。四歳くらいだろうか。朝になったらしく、少女の顔はほんの少し差し込まれた日の光で眩しい。
「……え、と、ごめんなさい」
 その場から、逃げようとする少女の細い腕をがっしりと掴んだ。
「人の睡眠妨害しやがって、逃げるなんかどういうことだ? あぁ?」
「あ……の私、道に迷ってしまって……」
「どこの者だ?」
「わかりません」
「はぁ?」
 しゃーねぇと、呟き、あくびをし終えた後、【TMW】の硝子の蓋を開けた。時計の針の軸を数回反時計回りに巻き戻す。
 そして、かがんで少女の肩を掴む
「この少女の過去を辿れ」
 斗鬼の体は、光を放つ。
 これこそが、【Time Manipulation】……時の操り。
 一瞬にして、斗鬼と少女の視界に、にぎわう市場が広がる。
「……暁か?」
 斗鬼が野宿していたところは、暁・日向町・夕日村の近く。地理的にも、暁というと頷ける。
「すみません……」
「誰だい、アンタ?」
「私は旅人。ここの地名を教えていただきたい」
「地名も知らないのかい? 暁町だよ」
 ぶっきらぼうに答える、中年女性。
「ありがとう」
 そう言った後、時計を数回時計回りに巻き、「我を元なる場所へ」と唱えた。
「……お兄ちゃん?」
「何だ?」
「何、さっきの? 時間が……」
「おまえには、まだ早い。偶然にもおまえと行き先が一緒のようだ。着いて来い」
 荷物を抱えて、歩き出す斗鬼に、四歳の少女は追いつこうと走ってくる。
 不気味な笑みを浮かべながら……。
「はぁ、お兄ちゃん。のどかわいたー」
「馬鹿いうな。あと三時間はあるぞ?」
「みーずー。みーずー」
「五月蝿い。迷子の身分でえらそうな口をたたくな」
「ひどーい」
「それに、私は、男ではない」
「え、女!?」
 少女は、驚きの表情を見せた。やっと気がついた少女に、斗鬼はひどく呆れた。
「……そうだ。ところで、おまえ、名前は?」
「人に名前聞くなら、自分の名前を先に名乗りなさいよ」
 自分より、はるかに年下の少女に説教されたが、最もかもしれない。
「……斗鬼だ」
「トキ姉ちゃんね。私は、和歌(わか)よ」
「和歌、ね。はいはい」
 このとき、和歌の苗字を聞いておけば、と後に後悔することになる。
「あ、ここ、ここ。私の町」
 約三時間後、ようやく暁町に到着した。
「それじゃあ、もう道はわかるな?」
「うん。ありがとう。トキお兄ちゃん」
 最後にがくっと肩を落とす。まぁ、この容姿じゃあ、男に間違えられてもしょうがあるまいと、気を取り戻した。
「さて、と……」
 鞄から黒の封筒を取り出す。
「一丁目……、か」
「兄ちゃん、どうした?」
 また、男と間違えられたが、気にせず、声の方向へ振り向く。
「あ、ちょっと道に迷って……」
「男のくせにえらい、か弱い声だしよって。旅人か?」
 米俵を担いだがっちりした体系の男だった。
「はい……」
 女なんですけどという斗鬼の小さな声は男には届かなかったらしい。
「どこ行くんじゃ?」
「一丁目の麻さん宅に」
 一瞬、男の表情が固まった。そして、男の顔がくもる。
「……どうかしましたか?」
「いや。じゃあ、わしが案内したるわ。丁度、通り道やし」
「ありがとう」
「礼はかまんて」
 男の後をついていき、数分歩くと、レンガで造られた家が並んでいる町並みが見えた。
「ちょっと、待っとき」
 ある家の前で、男は米俵を道に置いて、「麻はーん」と呼んだ。
「その声は、向かい隣の神さんですな。どうぞ」
 腰を丸めた老婆が扉を開けた。
「ちわー。麻はんに用がある子連れてきたで」
「と、斗鬼様か?」
 そう言うと、老婆はきょろきょろして斗鬼を見つけた。
「お待ちしておりました。名嘉様が中で待たれております。どうぞ」
 老婆は、一礼して斗鬼を招いた。
「あ、はい。それじゃ、どうも」
 神という名の男にも会釈をして、麻宅に入った。
「うわ……。大きい」
 三階建てのレンガ造りのシャンデリア付ハウス。わらの家育ちの斗鬼には、縁のない家だ。
「二階の一番奥の部屋に名嘉(なか)様がいらっしゃいます。ご案内いたしましょう」
 腰を丸めた老婆に階段を登らすのは、可哀想だと思い、
「いえ、わかりますので、大丈夫です」
と答えた。
「さようですか」
 西洋風の家。
 コンコンと、軽くノックをする。
「誰だ?」
「あ、斗鬼です。古来 斗鬼です」
「そうか。待っておったぞ。入れ」
 呼んでおいてそれはないだろうと、思ったが、堪えることにした。
「……おまえが、斗鬼か。男そのものだな」
「……悪かったわね」
「おや、失礼。初めまして。お主を呼んだ麻 名嘉だ。よろしく」
 金髪で、手足の長い、鼻筋の通った綺麗な顔立ちの少年だ。粗末な服を着ている斗鬼とは、比べ物にならないほどおしゃれな物を身に着けていた。
「そこのソファに座りたまえ。【Time ruler】」
「……失礼」
「お、帰ってきたな。お帰りフラック」
 羽音を立てた白い鳥、鳩が窓を突いた。
「やっぱり、伝書鳩で手紙を私に? あなた【動物使い】?」
「ご名答。なかなか賢い鳩でね。いい子だよ、フラック」
 そう言いながら、名嘉はフラックという鳩の頭をなでる。
「で、私の力を借りたいとは?」
「……せっかちだね。まぁいい。単刀直入に言う」
「……?」
「君の【TMW】で、蘇らせてほしい。ある人物を」
「誰?」
「俺の妹さ。俺の片割れ」
 偉そうな態度をとっていた名嘉が、急に深刻な表情をした。
「死んでいるの?」
「あぁ……。でも、君なら、過去に連れ戻すことが出来るんだろう? 俺の愛する美嘉(みか)を……」
「わからないよ。人を過去へ、そして未来へ連れて行くことは出来ても、蘇らすことは……したことがない」
「一%の確率でもいい。限りなくゼロに近くても。美嘉を……。取り戻したい」
 さっきまでの偉そうな態度とは違う、名嘉の頼み。
 土下座までして、フローリングの床には水滴がぽたぽたと落ちている。
「出来る限りのことはしよう。ただ……」
「ただ?」
「高くつくぞ?」
「構うもんか」
 こんな豪邸に住んでいる者なのだから、金のことなどは気にしないだろうが、念を押しておいた。
「それで、美嘉という者は?」
「隣の部屋だ」
 その部屋は、淡いピンクのじゅうたんにクリーム色のカーテンで、いかにも女の子という感じの部屋だ。
 部屋の中央に、ダブルベッドくらいの大きさのベッドが置いてあった。
 美嘉らしき女は手を組んで、目をつぶっていた。名嘉と同じ金色の髪で、色白の少女だ。
「この少女か?」
「そうだ」
「……おまえの名は、名嘉といったな?」
「あぁ」
「もし、美嘉が蘇ったとしても時が経てば、死ぬぞ? 数年前に戻しても、現在にあたる時になれば、死ぬ。長くは生きられない。それは、神の定めだ。私もそれには逆らえない。」
「それでもいい。数秒でも、美嘉に会えれば……」
「時は、いつにする?」
 名嘉は、真剣な表情で少し考え込んだ。
「三年前。そしたら、三年は生きられるよな?」
「たぶんね。あ、でも、この三年間の記憶はないから」
 なんていう、重要で、責任のない言葉を発して、硝子細工の【TMW】の蓋をぱかっと開けた。時計の針の軸をルーレットのように反時計回りに回転させて、少女の手にそっと触れ、
「この少女、三年前へ帰れ」
と、呪文を唱える。
 斗鬼から放たれた光が美嘉に伝わっていく。
 その光景を、息をのみながら、名嘉は見つめた。
「……ん」
 美嘉の口から、小さな声がもれた。
 放たれた光で眩しそうに、少しずつ瞳を開いた。
「……美嘉!?」
 名嘉は、すぐに美嘉に駆け寄り、手を握った。
「お兄ちゃん? 私……」
「……美、嘉」
 感動の再会に、邪魔者はいない方がいいと気を利かせ、斗鬼はそっと部屋を出た。

「斗鬼さん、お茶でもどうぞ。食堂へご案内します」
 部屋を出ると、さっきの老婆の声がした、が背が低いため斗鬼の視界には入っていなく驚いた。
 豪邸の食堂は、広すぎる。
 斗鬼の家には食堂なんていうリッチなものはない。居間も寝床も食卓も全て狭い同じ部屋で済まされているだから。
 この麻家のハイカラなテーブルには、何本かのろうそくが灯されている。クッキーやら、パウンドケーキやらがお皿に盛られている。
 夕日村を出て、食パンをひとかじりしかしてない斗鬼は知らぬ間によだれが垂れていた。
「お好きなだけどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
「今日は、こちらに泊まってくださいね」
「え、どうして?」
「名嘉様がお話があるそうですよ」
 意味深な笑みを浮かべながら、老婆は時の目の前でティーカップに湯気の立つ紅茶を注ぐ。
「あの、お砂糖ってあります?」
 差し出された紅茶は、斗鬼にとってあまりに苦く、老婆に尋ねた。この豪邸で砂糖がないわけがないのだが、一応疑問形で終わらした。
「少し、お待ちを……」
 腰に右手をのせて、老婆は調理室らしきところへ向かった。老人を動かせて悪いな、とあとで後悔した。
「どうぞ」
「え……」
 老婆が持ってきた砂糖は、色とりどりのバラの砂糖だった。
「綺麗。紅茶に入れるのもったいない」
「そうですね。でも、これ、美嘉様ご自慢のお砂糖なんですよ? 特注なんです」
「へぇ〜」
 そして、ポトンと小さな音を立てた砂糖は、紅茶に溶けていった。
「……あの、こんなこと聞いていいのかわかりませんが、名嘉さんと美嘉さんは仲がいいのですか?」
「……はい。あのお二人は」
「おいッ!」
 老婆の言葉を遮ったのは、名嘉だった。
「余計なことを聞くな! おまえも余計なことを喋るな!」
 厳しい口調で、名嘉は怒鳴ったあと、食堂の椅子に座った。
「斗鬼、おまえはが女だというのは本当だろうな?」
「ほんとだけど?」
 それが何? と付け足そうとしたが、余計なことを言うのはやめた。
「ならいい。美嘉には、おまえのことは話していない。余計なことはどうか言わないでほしい」
「……どうして?」
「自分が、蘇ったなんて、うれしい話じゃないだろう? なんか、気持ち悪くないか?」
 人を簡単に殺めている斗鬼は、そのようなこと思わなかったが、一応「そうね」と相槌を打った。
「ところで、話って?」
「……おまえを呼んだのは、美嘉の【蘇り】ともう一つ理由がある」
「……」
「おいで、フラック」
 名嘉の肩の上にばさばさっと羽音を立てたあの白い鳥が舞い降りた。
「俺は、動物を操れる。【人間】以外はね。さっき、おまえが言ったとおり【動物使い】だ。世間では、そう呼ばれる。恐れられるがね。君を同じように。あ、そうだ。フラック、ジョンを呼んでおいで」
「ジョン?」
 直感で、犬かなと思ったが、斗鬼の予想は破れ、フラックが連れてきたのは、毛並みの整ったブラウンの色の猫だった。
「ジョン、【Time ruler】にあいさつを」
 命令する名嘉の目は赤く光る。そして、ジョンは……。
「ハロー」
「こ、こんにちは」
「アイアム ジョン。ワッツユアネーム?」
「と、斗鬼です」
 英語で喋った猫に、日本語で返答する斗鬼。なんとも、アンバランスだ。
「いい子だよ、ジョン。さぁ、クッキーをお食べ」
「へぇ。賢いのね」
「俺の【能力】だからね。動物自身に【才能】があるわけでない」
 よくも、そう自惚れるものだ、というのが斗鬼の本音だった。
「お兄ちゃん」
「……! 美嘉。紹介しよう。俺の友達の古来 斗鬼だ。一応、女だそうだ」
「こんにちは」
 食堂の入り口で、身を潜める美嘉に元気のよいあいさつをした。
「……こんにちは」
 自分を蘇らせたのは、あいさつを返した人物なんていうことは、当然美嘉は知らない。
「お兄ちゃんの友達? 恋人?」
「美嘉、一つ言っておくが、俺はこんなに趣味が悪くない。それに、これは、どう見たって男だろう?」
 お客の前で、失礼にも美嘉は笑った。
「……ジョン、あれ? あなた太ったかしら?」
 美嘉の足元にいつの間にか来ていたジョンに美嘉は尋ねた。今の美嘉の記憶から三年の月日が流れているのだ。当然、環境なども変わる。
「ミャーオ」
「それじゃ、私は自室に戻ります。バーサ、悪いけどお食事持ってきてね? 気分が悪いの。斗鬼さん、ごゆっくり」
力のない笑みを浮かべて、美嘉は食堂から出て行った。
「なんか、元気ないわね」
「美嘉は、元からか弱いんだ! おまえとは違う。比べるな!」
「……【蘇り】失敗したのかしら?」
「……美嘉は、元から活発なヤツではない。三年前と同じだ!」
「そう。それより、【動物使い】の話してくれない?」
 あまりにも強く否定するので、もう美嘉の話題には触れまいと、違う話題をふった。すると、名嘉は、一呼吸置いて、ポケットからある物を取り出した。
「地図……?」
「あぁ」
「この5つの星印は何?」
「【能力者】だ」
「【能力者】?」
「おまえや、俺のような【能力】を持つ輩。人間に恐れられている輩。そして、俺らは……」
 斗鬼は、息を飲み込み、名嘉に尋ねた。
「私達は……?」
「世界を滅ぼす、それが宿命だ」
「え……」
「愛することなど許されない。全てを滅ぼし、全てを潰す。それが俺らの宿命」
「な、何それ!?」
「この地図の下に書いてあるだろう?」
【能力持つ者、この世滅ぼすべし】
「何のために?」
「【神】のためだ」
「い、嫌よ。そんなそれに第一、【神】が存在するわけない」
「俺も最初は、疑ったさ。だけど、美嘉が……。【神】によって殺された」
「え……?」
「俺だって、信じていなかった。だけど、こんな手紙が届いた」
 名嘉は、斗鬼に一枚の手紙を手渡した。

麻 名嘉様
この世に、五人の【能力者】が存在する。
この世界の独裁者。
それは、【神】。
逆らえる者はいない。
殺されるから。
この世界の支配者。
それは、【Rulers】。
我……【神】からの【Rulers】への命令。
「この世界を滅ぼすこと」
残り四人を探し、この世を滅ぼせ。
一週間以内に仲間を探す旅に出なければ、おまえの愛する者の命はない。


「こんなの俺が【才能】を持つから、嫌がらせだと思った」
「……」
「でも、八日後、美嘉は死んだ」
「……」
「最近、夕日村に【時使い】がいると聞いて、すぐにフラックに手紙を送らせた」
「そうだったんだ。ねぇ、他の【能力者】には手紙送ったの?」
 名嘉は、首を横に振った。
「地図で、ある程度の場所は、わかっても特定の場所がわからないと、フラックも手紙が届けられない。この地図は、アバウトすぎる」
「じゃあ、あと三人は、私達が自力で見つけなきゃいけないの?」
「いや、俺はやらないよ?」
「え?」
「俺は、残る。おまえ一人で探せ」
「なっ!」
人を五時間も歩かせて呼んだ上に、更に自分は残って、私にだけ旅をさせるのか? と斗鬼はついに怒りがこみ上げてきた。
「だ、だって……。【神】はあんたに頼んだんでしょ?」
「別におまえと一緒に探せなんて書いてない。それから、あんたって呼ぶな! 俺は【名嘉】だ」
「……私だって、そんなことしたくないわよ! 私が残る! 名嘉が探してよ」
「俺は、美嘉と生きるんだよ」
「私だって、ばぁやと……」
「……それでは、一週間したらそのばぁやとやらは死ぬぞ? 美嘉のように……」
「じゃあ、名嘉も探さないと美嘉さんが……」
 最もな意見だ。いくら蘇らせたとはいえ、もう死なないという保証はない。
「俺は、美嘉と離れたくないんだ。もう……」
「三年の間に残りの三人を見つけたら、大丈夫でしょ? 行きましょう? 大切な人、失くしたくないでしょう?」
「……バーサ、俺の荷物をまとめろ。食料や武器、旅に困らないもの、必要最低限で」
「……自分でやりなさいよ」
「バーサは召使だ。俺のいうことには服従してもらう。これ、麻家の常識」
「あ、そ」
 斗鬼は、こんな自己中のヤツと旅に出るのは、とても不安を感じた。
「ところで、斗鬼の【TMW】を見せてもらいたい」
「へ? これ?」
 左手に着けた斗鬼の腕時計をまじまじと見つめた。
「これって、はずせられなぇの?」
「無理よ。ちなみに触れれば電流が流れて麻痺するからね」
「ふぅん? まぁいい。俺にはフラックがいる。じゃあ、俺は旅のことを美嘉に伝えてくる。おまえはここで、茶でも飲んでろ」
 そう言った名嘉の表情は寂しげだった。当然といえば、当然だろう。もう、二度と会えないのかもしれないのだから……。世界で一番、愛する人に……。
 取り残された斗鬼は、フラックに声をかけた。
「ねぇ? ばぁやに手紙届けてくれない? お願い」
 フラックは、そっぽを向いた。【動物使い】の名嘉の言うことにしか服従しないらしい。
「ばぁや……」
 小さな声で、呟いた。その斗鬼の寂しさを悟ったようにジョンは、斗鬼のもとへやって来た。まるで、一人じゃないよって言い聞かしてくれるように……。
「おいっ!」
 命令どおり、紅茶を飲んでいた斗鬼に偉そうに声をかけた。「おい」という代名詞に置き換えて。
「おい!」
「私には、きちんとした名前があるんですけど?」
「……斗鬼、明日の朝出発する。今日は、客室で寝ろ」
「はいはい」
 この男には、命令形しか存在しないのだろうか? と背を向けた名嘉の背中を見つめて、紅茶をすすりながら、そんなことを考えた。
「斗鬼様、客室へご案内いたします」
「あ、場所がわかれば、自分で行きます。何処ですか?」
「二階の一番奥の右の部屋でございます。すみませんねぇ」
「いえ……。それじゃあ、おやすみなさい」
「おやすみなさいませ」
旅の疲れもあり、ベッドに横になると、すぐに眠りについた。

「起きろ、【時使い】」
「ん〜? ばぁや……。まだ寝る」
「ふざけるな。俺は男だし、年寄りでもない」
 いつもより、低い声で目覚めた斗鬼は、驚き布団を跳ね上げた。
「……!?」
「何を驚いている? 早くメシを食って、出発だ」
「ふぇ? ばぁや?」
「……いい加減、目を覚ませ」
「あ……うん」
 やっと、ここがどこで、誰に起こされたのかわかった斗鬼に、少し呆れて名嘉は出ていった。
「おはようございまーす」
「おはようございます、斗鬼様」
 先ほどとは違い、ハイテンションな斗鬼に、麻家の召使は、微笑をそえてあいさつをした。
「朝から、うるさい。ここは、おまえのうちじゃない」
「うるさいなー。一々、憎まれ口たたかないでよ」
「ふふふ」
 斗鬼は、その笑い声に、名嘉の隣にいる美嘉の存在に気がついた。
「あ、おはようございます。美嘉さん」
「おはようございます。お兄ちゃんと、仲がいいのですね」
「え、コイツと!?」
「コイツとは何だ? 無礼者」
「あんたは黙ってなさいよ」
「斗鬼さん、どうぞ朝食を召し上がってください」
 目の前には、フランスパン、コーンスープ、オムレツ、鶏肉のソテー、サラダ、 フルーツの盛り合わせなどの斗鬼の家では見られることのないものばかりが並べられていた。
「あ、それではいただきます……」
 使ったことのないナイフとフォークをぎこちなく手に取った。
「おい、常識知らず。持ち方が逆だ」
「え?」
「ナイフは右手、フォークは左手だ。これくらい常識だろう?」
「あ……、うん」
 常識と言われても、使ったことがないのだからわからなくて当然なのだか、ナイフとフォークを持ち替えて、赤めた顔を見られないようにうつむきながら、朝食を食べ始めた。
「ねぇ、この朝食誰が作ってるの?」
「コックに決まっているだろう?」
「……へぇ。豪邸はすごいのね。おいしいわ」
「田舎のメシと比べるな」
 相変わらず、憎まれ口をたたく名嘉をキッと睨みつけて、【時使い】は再び朝食を口に入れた。
「そういえば、斗鬼さんも、お兄ちゃんと一緒に旅に出るのですよね?」
 名嘉の片割れとは思えないほど、上品な口調で話しかける。
「はい」
「でも、どうして急に?」
「美嘉には関係ないよ。気にしなくていい。すぐ帰るから」
 斗鬼に話しかけるときと全然違う表情で、名嘉が口を挟んだ。安心させるような笑みと一緒に。
「……気をつけてくださいね」
「ありがとうございます」
「……美嘉、あとで大事な話があるんだけど、俺の部屋に来てくれないか?」
「うん、いいよ」
 名嘉は、真剣な眼差しで美嘉に話しかけた。何かを決するときの表情のように。
「ごちそうさま。食器どこに持っていけばいいの?」
 その雰囲気を壊すように、陽気な斗鬼の声が聞こえた名嘉は、
「……置いておけ。バーサが片付ける。ここは、貧民家庭とは違う」
怒りを混ぜた声で答えた。
「斗鬼様、出発のお仕度をしてくださいな」
「はい。ごちそうさまです」
「いいえ」
 仕度と言っても、もう整ってあるし、名嘉を待つだけである。美嘉への話が終わるまで。ベッドでごろごろしながら、こんなことを呟いた。
「旅かぁ……。あ! それより、ばぁやに手紙を書かないと」
 身を起こして、鞄から急いで羊皮紙を取り出し、万年筆の蓋を口で開けて、書き始めた。
「フラックが届けてくれたら、すぐに届くのになぁ。名嘉に頼もうか……」
 でも、名嘉のあの性格からして、他人のために何かをするということはなさそうだ、ということをたった一日で悟っている斗鬼はため息をついた。
「おい、斗鬼! 準備はできたか? 出発するぞ」
「はーい」
 客室のドアの向こうから名嘉の声がする。美嘉への話というのは、意外と早かったらしい。
「ねぇ、この辺にポストってある?」
「知らん」
 名嘉は、即答した。それも、そうだろう。フラックで郵便物を届ける名嘉にはポストなんて必要がないのだから。
「……ね、ねぇ、フラックに手紙届けるように頼んでくれない?」
「いやだ。そんなことでフラックを使いたくない」
 思ったとおりの反応であったが、肩を落とす。
 階段を下りて、老婆にポストの場所を尋ねると、
「私が出しておきましょう」
という、いかにも召使らしい返答が返ってきた。
「お兄ちゃん、斗鬼さん、気をつけてください」
「あぁ。すぐに帰ってくるから」
 斗鬼の答える間など取らせず、名嘉が答えた。
「それじゃあ」
 肩にフラックを乗せた名嘉は、別れを告げる。
「お世話になりました。行ってきます」
「お気をつけて」
 そうして、二人の【能力者】は麻家をあとにした。麻家の玄関では、老婆と一人の少女が手を振っていた。
「で、どこに行くの?」
「とりあえず、一人の能力者が、三百キロ先の北町付近にいるらしいから」
「さ、三百キロ!?」
「しょうがないだろう? 他は、五百キロ以上離れているんだ」
「……うん」
 三百キロなんて、どのくらいかかるのだろう? という疑問を抱きつつ、北町へと一歩、また一歩進む。
「今、何時だ?」
「十時よ」
 ブラウンのベルトの【TMW】見て、斗鬼は答える。
「ん〜、今日中には行きたいな……」
「む、無理無理! 疲れるっていうより、ふざけてる!行けるわけないじゃん」
「情けない。まぁ、そう言うと思って、用意をしてきた」
「何を?」
「ホース」
「馬!?」
「そう。なんのために【動物使い】がいるとお思いか?」
 【Animal ruler】は見下し、【Time ruler】に勝ち誇ったような笑みを浮かべた。

 これから、始まる【ruler】の旅……。

第二章【Sound ruler】

 コンコン。木造の家に響く、ノックの音。
 玄関に出てみれば……。
「げ……」
 【音使い】こと鳴瀬 音(なるせ おん)の目の前に現る者は、十代前半に見える女。
「な、なんだよ、おまえ」
「おはよう。ね、オンくん一緒に学校行こー」
「やだっつーの。ってかうちに来んな!」
「何でー? ね、行こうよ」
「おまえ、俺が怖くねぇの?」
「全然」
 その一言に音は今日も肩を落とす。
「おまえなー、本当に俺のことわかってんの?」
「うん」
「俺は、人を殺せるんだぞ?」
「知ってるよ?」
「犠牲者もいるの知ってんだろ?」
「知ってるよ?」
 全く、対応の変わらない目の前の少女に再び肩を落とす。
「じゃあ、何で?」
「だって、私、オンくんが好きだもん。って何百回言ったかなぁ?」
「マジうぜぇ。早くうせろ」
「本当はそんなこと思ってないくせに」
「はぁ? おまえに何がわかんだよ?」
「本当にうざいなら、殺しちゃえばいいじゃん? なのに殺さないってことは、本音じゃないんだよ」
 うれしそうに話す少女に、呆れる少年。
「勝手に言ってろよ」
「うん。勝手に言ってる。だからさ、行こうよ、学校」
「……おまえといると調子狂う。マジでどっか行って?」
「やだ。オンくんのそばにいる」
 そう言うと、少女は音の腕をつかんでぴったりとくっついた。
「もう、栄華(えいか)ー!!」
 ついに、音がキレた。そして、何故か少女は笑みを浮かべる。
「何だよ、気持ち悪ィ」
「だって、オンくんが、私の名前呼んでくれたんだもん。うれしい」
 俺の気持ち、全然通じてない、と肩を落とす。本日三回目だ。
「おまえ、いつか殺す……」
「オンくんに殺されるなら、私しあわせ」
 なんて栄華は笑ってた。この少女、ただ者ではなさそうだ。
 夕方五時、音が住む辺りに笛の音が響く。時を知らせる合図。遊んでいる子供達やまだ農業をしている大人に家に帰る時間を知らせるため。
 この地域……北町は、六時を過ぎると、真っ暗になる。外灯一つなく、明かりといえば、月と星くらい。だが、月や星の明かりなんてしれたもの。この時間帯に外を出歩くのは危険なのだ。
 その笛の音は、北町の住人の危険を救うためのものでもある。
 その笛の音の持ち主は、ある少女に「オンくーん」と呼ばれる者である。
「何だよ。帰れよ」
 北町のシンボルともいえる、大きな木製の時計塔の梯子を栄華が上ってきた。時計塔の天辺に座る音は目も合わさずに答える。
「綺麗だね、笛の音」
「……」
「それって、お父さんの笛なんでしょ?」
 音は答えない。昔から、両親の話題になると、黙り込むのだ。
 梯子に足をかける栄華に「降りろ」と小さな声で言うと、自分も栄華の後に続き、降りていった。
 夕日が、並んで歩く二人の少年少女の影をつくる。影だけを見れば、恋人同士のようなのだが……。
「オンくんが笛の音鳴らし始めたのよね? みんなを危険から救うために」
「……違う、俺を危険から救うために」
 そう、それは音自身のため。決して住人のためなどだはない。住人達に危険を知らせ、この町に貢献している「フリ」をしているだけなのだ。そうしたら、少しは、自分の印象がよくなるかもしれないという音の悪知恵から出来たもの。
「え? なんか言った?」
 音の独り言のような小さな声は栄華には届かなかったらしい。
「栄華、おまえの家はそっちだろう? こっちは俺んちだ」
 道が二手に分かれ、右に行けば音の家。左に行けば、栄華の家だが、栄華は、右に行こうとする。
「私もオンくんち行くー」
「うるせぇ。来んなっつってんだろ?」
「行くー」
「おまえの親が怒るだろ? 俺のこと嫌ってるし」
「……だから、帰りたくないんじゃん」
 栄華は瞳に涙を溜めた。すごく、すごく、悲しそうだった。
「栄、華……?」
「こんなこと、オンくんに言っちゃダメなのわかってるけどさ、お父さんもお母さんも、オンくんの悪口ばっか言うんだもん。そんな家、帰りたくないじゃん」
「……親がいるだけありがたく思え」
「で、でも……」
「日が沈む、帰れ」
「オンくん」
 悲しそうな声で自分の名前を呼ぶ栄華を放っておいて、音は背を向けて自宅へ帰っていく。
「オンくん」
「……」
「オンくん……」
「何?」
 あまりにもかわいそうに感じたのか、音は返事をして、一応振り向いた。栄華をチラッと見ただけだけれど。
「好きだよ。じゃあね」
 栄華からの突然の告白。今までの態度で、好意を持たれていることは感じていたし、本気かどうかわからない「好き」は言われたことがあるが、きちんとした告白をされたことはない。
 小さく手を振る栄華を見て、そしてさっきの言葉を思い出して、頬を少し赤らめた。
「……べ、別になんとも思わないし」
 言い訳、だろうか。誰もいないのに、顔を真っ赤にして、言い訳しながら帰宅した。
これが、栄華との最期だとも知らずに……。
『音』
『誰?』
『我は神。【神】だ』
『え?』
『おまえの仲間の【ruler】がおまえを探している。おまえも、旅に出るのだ』
『何、神!? ルーラー?』
『今すぐ出発しなければ、一番大切な人を失う』
「……!?」
 音は跳ね起きた。どうやら、夢だったらしいが、リアルすぎたようで今も冷や汗が流れている。
「嘘……だよな。夢じゃん。ただの……」
 そう自分に言い聞かせて、また眠りについた。そのせいで、ある人の命が奪われることも知らずに。

 ゴンゴンゴンゴン!早朝に、木造の家に響く扉をたたく音。
「栄華……? にしては、やけに激しいな」
「開けろ! 妖怪!」
「……?」
 玄関に近づくと、男らしき人の陰が見えた。
「誰だ?」
「よくも、娘の命を……」
「娘の命……?」
 それを聞いた瞬間、音の体温は急激に下がった。
 急いで、扉を開けると、胸倉をつかまれ、鈍い音がした。男に殴られた。栄華の父親である男に……。その男の後ろで、泣き崩れる栄華の母親もいる。手をついて、倒れた音は、男に尋ねる。
「どういうことですか?」
「聞くまでもないだろう? 【殺人鬼】!!」
男は、怒鳴った。そして、その男の目からは、涙が流れる。
「栄華は……。まさか」
「殺された。俺の目の前の男によってな!!」
 真っ赤にした顔からは、怒りがよみとれる。憎しみも。そして、涙からは、娘を亡くした哀しみが……。
「そんな! 俺、いや僕はやっていません!」
「よくもそんなことが言える。証拠なら残っている」
「証拠?」
「おまえが、人を殺めたときに残す印! 【音】という文字が栄華の額に彫られていた!」
「嘘だ! 本当に僕は、何も……。何も、してない」
『聞こえるか、音?』
『え?』
『すべては、おまえのせい。俺様の忠告を守らなかったから』
『おまえは……さっきの、神?』
『そうだ。俺様が、少女を殺めた。おまえのいつもの殺め方で。どうだ? 愛する者を失う哀しみは? 辛いだろう? 泣きたいだろう? 俺が憎いだろう?』
『憎いさ……! 何よりも! おまえを殺す!』
 心の中での【神】と名乗る者とのやりとり。
 どうやら、先ほどのも夢ではなかったらしい。
『旅に出ろ。そしたら、少女を蘇らせる……かもしれないぞ? おまえの仲間である支配者の【Time ruler】……【時使い】によって』
 少年は、最愛の人……栄華を取り戻すために、旅に出ることを決した。
 急いで荷物を鞄に詰め、家を出ようとした。
「【殺人鬼】! どこへ行く!?」
「……うるさい。黙れ」
「……っ!」
 栄華の父親が悔しそうに下唇をかむ。
 下手したら、自分も殺されかねない。父親は、何も言えなくなった。栄華の母親も、先ほどまでの涙が止まり、恐ろしげに音の顔を見る。音の一言は周囲を静寂にする。
 【音】を支配しているかのように。
 だが、これは【能力】でもなんでもない。音には【音】を支配することができる。もっと、恐ろしいことができる。
「音……」
 父親が、うつむきながら、小さな声で名を呼んだ。
「何ですか?」
「本当に、栄華を殺していないのか?」
 想像もしなかった質問なのか、音は少し驚いた。
「……はい。僕は、殺していません。決して……」
「わかった。でも、それなら何故、旅に行く!?」
「栄華の敵討ちです」
「え……」
「栄華は、【神】によって殺されたんです。その【神】を殺します」
「神、が……そんなこと!?」
 驚きを見せる栄華の父親と母親に、音は、小さくうなずいた。
「神は人々に平等であると、僕も信じておりました。だけど、その【神】が栄華を……。栄華を殺したのです。本当です」
 栄華の父親と母親は絶句した。
「……そ、そんな」
 泣き崩れる父親の肩を、音はそっと抱いた。
「僕が、復讐します。栄華のためになるかなんて、わからない。だけど……。俺は、温厚な仮面をかぶり、人々を騙し、栄華を殺した【神】が許せない! だから、神を滅ぼし、栄華を蘇らす」
「蘇らす? どうやって……」
「……世間では恐れられる僕の仲間の支配者の中に【Time ruler】がいます。時使いです。もしかしたら、栄華をよみがえらせることが出来るかもしれません」
「……わかった。おまえを信じている、音。え、栄華を……、必ず、栄華を……」
「はい! それでは……」
 十四歳の少年は、栄華の父親に背を向け、一歩、また一歩、踏み出していった。

 愛する者を助けるために……。

第三章【Light ruler】

「光(ひかり)」
「何?」
「あなたは、心優しいわ。人を殺める【能力】を持っていながら、それを使うなんてことはない。何があっても……」
 【Light ruler】に話しかけるのは、光と同い年くらいの十代前半の少女のようだ。    【ruler】に警戒心も持たず、話しかける。
 それもそのはず、光は【ruler】でも、人を傷つけること、殺めることはしないのだから。ごく普通の人間。
「それより、路香(みちか)……。早く、帰りなさい。あなたを待つ人は多いのよ? 今頃、行方不明なんて言われて、大捜索よ?」
「ははは。そうね。それじゃ、帰ろうかなぁ?」
 路香は資産家のお嬢さまである。こうやって、光の家に来て隠れては、メイド達から逃げている。
 念のために言っておこう。光は【ruler】。人を殺められる。それを、しないだけ。だからと言って、他人の目は冷たくないわけじゃない。厳しい。そんな光の家へ訪問する者など、いない。ここに能天気に自宅へ帰ろうとしている少女を除けば……。
「じゃ、光、またかくまってね? お礼はまた持ってくる」
 お礼……。それは、食料などの援助。なかなか定まった仕事に就けない光にはありがたいお礼である。仕事が定まらないのも、やはり【ruler】であるせい。偏見は強いのだ。
「路香……」
 路香は光の唯一の友達、唯一の希望だった。彼女を失えば、光は、生きることすらできなくなるだろう。決死で過言ではない。光にとってそれほど、重要な存在。
 そして光は、路香にとってもそういう存在になりたいと思っている。
「おい、人殺しー。おまえってどうやって、人殺すの?」
 仕事に行く途中、光より、二、三歳年下だと思われる少年が喧嘩をふってきた。
「……そんなこと、どうでもいいじゃない」
「興味ある。俺だって、殺したいし」
「私は、決して人を殺したりしないわ!」
「ふぅん? じゃ、せめてどんな【能力】かだけでも教えてよ? 非公開なんだって?」
 馴れ馴れしく、男は問う。うっとうしいと思っただろう。寛容な光でさえ。そして、怒っているだろう。「人の殺し方」を平然とした顔で聞くのだから。
 光には、名の通り、【Light】……すなわち光の【ruler】である。光を操り、自由自在にコントロールできる。
 例えば、この男の視界にある色全てを奪い、闇の世界へ放り込むことだって。だけど、光は、そんなことはしない。
「人の殺し方なんて知るものではないわ。知らない方がいい。絶対、損するよ?」
 それだけ言うと、仕事現場へ向かった。
 だけど、一人ぼっち。それは、【神】が【ruler】へ決めた規則なのかもしれない。
『我は神。孤独を味わえ。孤独を苦しめ』
 呪いのような声。
 人々が想像する【神】とは違う。
 平等に人に幸・不幸を与え、自分の味方だと多くの人に誤解されている【神】は、実は、この世を滅ぼそうとしているのだから。
「……声? 何か、聞こえたような……。空耳?」
 光が気にしたのは、【神】の囁きだった。
「誰……? 何、神? 神様?」
 光が尋ねても、返事はなかった。空耳で、あろうと放っておいた。
「光!」
「路香!」
 夜に、路香が光のうちを訪れた。というより、不法侵入。光がご飯を食べていたら、後ろから、わっと驚かしてきたのだ。
「び、びっくりした」
「ごめん。ね、またかくまって?」
「いいけどさ、どうしたの? 夜に来るなんて珍しいじゃない?」
「……うん。また、両親が喧嘩しててさ。見るの辛いんだよね。あんなに喧嘩するなら、離婚でもすればいいのにさ。世間の目を気にして、そんなことしないの」
 路香の声をすごく沈んでいた。
「大変だね。でも、家族がいるだけでも羨ましい。私にとったら、贅沢な悩みだな」
「……あ、そうだよね。ごめん。こんな話して」
「いいんだよ。でもね、そんなに簡単に離婚すればとか言わない方がいいよ? もし、離婚して、お母さんが家を出て行ったら、寂しくなると思う。失って初めて気がつくことがあるんだよ。あたりまえの存在が実はすごく大きい存在だったりするし……」
「……」
 路香は、光の言うことにすごく納得ができた。何故なら、光は経験をふまえて発している言葉だからだ。重みもあるし、納得ができる。
 光は、幼いときに両親を亡くした。あたりまえの存在である両親を。それから、路香に出会うまでは、一人ぼっちだった。そして、あたりまえの存在の大きさを思い知らされた。それだから、路香に助言できる。
「光、ごめんね」
「何?」
「ご両親のこと思い出させちゃって」
 決して、いい思い出じゃない。思い出したくないことだろう。それに気遣って、路香は謝った。
「……謝らないで。いいのよ」
 珍しく、路香と目を合わさずに答えた。そんな光の肩は震えていた。そして、光がご飯を食べていたちゃぶ台には、涙が落ちた。そんな光を路香は、肩を抱いて、寄り添っていた。
「路香……。ご両親、心配してるんじゃない?」
 泣き止んだ光は、窓から見える暗い空と月を見ながら言った。
「大丈夫。私のことなんて思っていないわ」
「でも、帰ったほうがいいよ?」
「……うん」
 本当は帰りたくない、光と一緒にいたかったというのが路香の本音だった。でも、それは言えなかった。
 光は、【Light Stone】と呼ばれる、光る石をぶら下げたネックレスを外し、握り締めると
「この道に光を差せ」
と唱える。
 路香の家までの道に、光が差し込んだ。蛍が灯す光のような、幻想的な光。
「わぁ……。きれい。すごいね、光は」
 いつものことながら、路香は光の能力に感心する。
「じゃ、行こう。送るよ」
「いいって。大丈夫。光のおかげで明るいし。じゃあね」
 そう言って、路香は光が差すほうへ消えていった。
 明るい笑顔を見せる路香が、光は正直羨ましかった。「謝らないで」とは言ったけれど、本当は、両親のことなど触れられたくなかった。自分の前で、両親の話をしてほしくなかった。
 路香には、帰る場所があること、心配してくれる人がいること、妬ましかった。この日の醜い【嫉妬】が、路香との別れだった……のかもしれない。
 翌日の早朝、光は、家の周りからの声で目が覚めた。何かあるのかと、外に出ると、いきなり首筋にナイフを突きつけられた。
「……!!」
 冷や汗が流れ、心臓は、どくどく自分でも聞こえるぐらい大きな脈を打つ。ナイフを手に持つのは、見たこともない青年だった。
「よ、よくも、路香を……!!」
 涙声で、青年は、訴えてきたが、光は事態を把握できていない。青年の周りには、光を責め囲むように、近くの住人が集まる。
「路香が、ど……したの?」
「しらばっくれるな! おまえも所詮、神に操られた支配者なんだろう?」
「何? どういうこと?」
「まだわからないのか!? 路香を殺しておいて、責められるのは当然だろう?」
「路香が、死ん……だ?」
 光の体から血の気が引いていく。
「どうして……!?」
「おまえが、殺したんだ! 覚えていないのか!?」
 青年が、ナイフを持つ手は涙のせいで震える。どす黒い紅の血が、光の首筋に流れる。
「知らない! 私は知らない! 殺してなんかいない」
「嘘をつくな! おまえ以外、この町で【能力】を持つ者はいない! 路香は、血も流さ ず、死んでいた。そして、額には光という文字が刻まれていた。おまえのその力で殺したのだろう?」
 光は、路香を殺した覚えなどない。だけど、周囲の自分を責める目で路香が死んでいるという事実はわかり、涙が流れた。
『光、おまえが路香を殺したんだよ』
『誰?』
 昨日の空耳のようなものが、耳元でまた囁かれる。心の中でその者に問うと、返事までくれた。
『【神】だ』
『神様、私は路香を殺してなどいません!!』
『ふふふ……。君が、路香を家から追い出したあと、灯火は消えた』
『何故!?』
『おまえの邪悪で醜い心が、灯火を消し、嫉妬が殺気へ変わり、殺したんだ』
『嘘!? そんなはず……』
 それから、神の声は聞こえなくなった。心の中で大きく否定したけれど、光が嫉妬心を抱いたのは確かだ。それが、本当に【殺気】になり、路香を死へ追いやったというのか……光はわからなかった。
「どうしたんだ?」
 青年の声がする。
「……」
 光はそれに答えず、ひたすら涙を流す。心優しい光は、愛する者を自らの手で殺してしまったのかもしれないという不確かな事実に自己嫌悪に陥っているのだろう。
「なんだ? 今更、謝罪か!?」
 愛する者を殺した私など、もう殺されてもいいと神の言葉を信じきって、口を開いた。
「私を、殺してください」
 青年が、手にぐっと力を入れ、血が勢いよく出そうになったとき……。
 光が首にぶら下げたネックレス……【Light Stone】が光を放ち、その光の威力で青年を吹き飛ばした。
「な、何!?」
 青年と住人達は驚く。光を放った当本人でさえ驚いているのだから。
『光……』
『神?』
 先ほどとは違う声が、光の耳元で何か囁かれた。でも、すごく温かい囁きだった。
『私は、あなたが身に着けている【Light Stone】です。神ではありません』
『しゃべれるの……?』
『はい。それより、あなたは、もう死んでもいいのですか? 後悔はありませんか?』
『……路香のいない人生なら。それに、私は路香を殺したの。死んで償います』
『あなたは、路香を殺していないわ! 神の作り話です。騙されないで。どうか、生きて。私と共に生きましょう。路香の分も』
『……』
『今、あなたの仲間の【Ruler】があなたを探しています。その仲間の中に、死者を蘇らせる能力を持つ者がいます。その者を見つけ、路香を蘇らせましょう』
 それだけ言うと、【Light Stone】の光は薄らいでいった。光の心は混乱していた。神には殺人者だと言われたが、【Light Stone】は神の作り話だと言う。どちらを信じればよいのか、わからなかった。だけど、生まれてからずっと一緒にいる【Light Stone】の言うことを本能的に信じ、仲間を探そうと決心した。
 すべては、路香のために……。
 急いで、旅へ出る準備をした。一刻も早く、路香を蘇らしたいと思うから。先ほどの青年が、勝手に家に上がりこみ、光に尋ねた。
「旅に出るのか?」
「はい」
「どうして? この町では住人から責められるからか?」
「違います。【ruler】……私と同じ支配者の中に、蘇りをできる人がいます。その人を探し、路香を蘇らすのです」
「路香が、蘇る……?」
「はい。きっと」
「……そうか。それは、嬉しい。私は、路香の婚約者でした。突然、路香を失い、路香が信頼している人と知っておきながら、周囲の意見に惑わされ、一時的な感情であなたを責めてしまいました」
「……」
「だけど今、私は、路香が信頼したあなたは、殺していないと信じます。疑って、すみません」
 そう言うと、青年は、ポケットからハンカチを取り出し、光の首から流れる血をふき取った。
「表には、住人がいます。そこの窓から出てください」
青年は、玄関とは反対の方向に取り付けられた窓を指差した。
「信じてくれてありがとう。それでは」
「お気をつけて……」

 光は、胸に誓った。絶対に、路香を取り戻す、と。路香のために。自分のために。あの青年のために。

第四章【Water ruler】

「うわぁ。キレイ……」
 クラスメイト、それから先生の感動の声。
「どうやってするの?」
「もう一回見せて!」
「また見たーい」
 アンコールの声が飛び交う。学校内の噴水の前。学校に噴水……珍しいだろう。それは、この【Water ruler】のためにつくられたと皆は言う。
「今日は終わり。また明日」
「え〜!」
「明日ぁ?」
 クラスメイトの落胆の声。よほど、キレイだったのであろう。【Water ruler】が見せたものは。
「水咲 海(みずさき かい)くん、さっきの水のイリュージョン素敵だったよ。それから、明日の水やりもよろしく」
「……はい」
 校長命令。校内の花壇の水やり、およびプールの清掃、水道水の管理は、生徒である海に任される。【水使い】だから、自由自在に水を操れる。
「皆、呑気だなぁー。僕は、【殺し屋】なんだよ? いい加減、気づかないかなぁ?」
 プールの水の上に寝そべりながら、海は独り言を言う。海は、水や海の上を歩く、走る、寝そべることができる。操りによって。もちろん、泳ぐことも。
 ふぅ〜っと水に息を吹きかければ、水が舞い上がる。そして、一瞬できる虹の現象。
「キレイ……か。表だけ、はね?」
 皆、海の裏の顔を知らない。【殺し屋】という顔。今まで、何十人、何百人を殺してきただろう?
 その度に、新聞の一面記事を飾る見出しには、「謎の“殺し屋”また出現!!」なんて文字が並ぶ。
「海!」
「あ、玲樹(れいき)!」
「俺も、水の上で寝てみたいな」
「よし、じゃあ、水面に少しずつ足を乗せてみて?」
「う、うん……」
 何度もやったことがある玲樹だが、昔と変わらず、恐る恐る、慎重に足を乗せる。
「あ、成功!」
「はは。どう?」
「やっぱ、海のマジックは最高だね」
 マジックじゃないんだけど……と心の中で軽くツッコんだ。マジックでも、何でもない【ruler】なんだ。
 それを、隠し通している。隣で、気持ちよさそうに寝転がっている玲樹にさえ。誰一人にも、打ち明けたことはない。
「海……。俺、しあわせ」
「え?」
「こんなに、優しい友達がいて、俺、しあわせだよ」
 玲樹は本当にしあわせそうだった。その表情を見て、海は良心が痛む。
「れ、玲樹……。俺、実は」
「あ!」
 海が玲樹に真実を打ち明けようとしたとき、何かを思い出したように、玲樹が声をあげた。
「そうだ! 今日、俺、妹の迎え、頼まれてたんだ。ごめん、早く行かなくっちゃ。バイバイ」
 また、恐る恐る、水面上を歩き、玲樹プールサイドを走って駆けていった。
「……タイミング悪ィ」
 そう呟いて、海は目を閉じ、考え込んだ。俺って、このままでいいのかな? 人々を騙し続け、殺めていく。このままでいいのかな? そんなことばかり、考えていた。
『いいんだよ』
 突然、聞こえる妙な声。
『誰?』
『我は神。君は、気に入らない人物を殺めたんでいいんだよ。そして、世界を滅ぼすんだ』
『世界を滅ぼす?』
『そうさ。君の仲間もいるよ。この世界を滅ぼすために。君を探している。君も仲間を探すたびに出たらいいさ』
『仲間……?旅?』
『それで、いいんだよ』
 そう言うと、神という者の声は消えていった。
「何、今の声? 仲間? 旅? 滅ぼす? 俺が……?」
 海は、自問していた。だけど、答えは返ってこない。
「何だよ、それ?」
 苛立ってきた海は、プールの水を操った。プールに収まっていた水を全て自分を取り囲むように噴射して空高く上げ、怒りを発散した。これが、海の一つのストレス発散方法ある。
「……これで、いいわけないよ……」
 わかっていた。けれど、神と名乗った者の言葉が気になった『それで、いいんだよ。殺めて、いいんだよ』……。
「んなわけねぇじゃん!」
 よくわからない感情で、海の瞳には涙が溜まる。頬を伝っていく。水のないプールの中、海は一人ぽつんと立っていた。涙を流しながら。
「俺だって、好きで殺してるんじゃない……」
 海は、ただ単に、人を殺めているわけではない。ある目的があって……。
 それは、【復讐】。両親を殺害した奴らへの復讐をしているのだ。
 もし、両親が知ったら、哀しむかもしれないとわかっていながら、自分の苛立ちに負けて、殺している。
「……父さん、母さん」
 海の瞳から、涙が流れる。それは、頬を伝って、プールの水面に落ちる。
 五年前のことだ。かけおちした海の両親が殺害されたのは……。海の父は、病にかかっていた。その病は、周囲に理解されにくく、偏見を受けていた。その偏見を解こうと、海の母は必死で、理解を求める。
 しかし、必死で働く海の父を偏見だけを理由にリストラ。さらに、海の母までも。住人達からは、疎外され、現在、海が住む町へやってきた。
 どんなに、偏見されても、海の両親は決して海への偏見は許さなかった。海だけは、守り、大切に、大切に育てたのだ。
 そんなある日、海の母の両親……つまり海の祖父母が、かけおちした海の両親の居場所をつきとめ、父を殺害。もともと、偏見が強かった、海の母の両親は、海の父を嫌っていた。そして、かけおちした娘も許せず、実の娘を殺害したのだ。その現場を、海は見ていた。七歳だった。今でも、鮮明に覚えているぐらい印象的だった。
 それから海は【能力】を発揮し、父と母を苦しめたやつの居場所をつきとめては、殺しているのだ。
「憎い! 俺の両親の命を奪った者が……!」
 海の母方の祖父母にあたる者は、すぐに殺した。そして、【Ruler】が殺めたという証が、彼らの額に刻まれた。【水】という文字が。
 過去のことを思い出していると、頬に水滴が落ちてきた。涙ではなく、夕立。
「雨かぁ……」
 水晶でできたブレスレットにそっと触れ、
「雨よ、去れ」
という呪文を唱えると、雨はやんでしまった。
 【Water ruler】の力。こんなことは、いつもやっている。人を殺めることすら慣れて簡単にやっている海に、雨を消し去ることはとても簡単だ。
「帰ろうっと」
 帰る途中、さっきの神という者の言葉が、海の頭の中で木霊した。
『世界を滅ぼすんだ』……。
 世界を滅ぼすなんて、海にとったら、どうでもよかった。今、一番海が成し遂げたいのは、両親を死にやったヤツらへの復讐。
『海……』
『え?』
『おまえも旅に出るのだ。仲間がおまえを探している』
『俺は、世界を滅ぼすとかどうでもいい』
『おまえは、我こそ神の使い人だ! この世を滅ぼせ!』
『……面倒くせぇ』
『じゃあ、おまえの【能力】を預かる』
『え?』
『やらないというなら、私が、おまえに授けた【能力】の意味がない。無駄に使われては困る。そのブレスレット、頂くぞ。これは、そうだな【Light ruler】に渡すことにしよう。そやつに出会えれば、再び手に入るぞ……ふっふっふっふ……』
 海の手首から、ブレスレットは消えていった。
『嘘だろ!? おい! 答えろよ! これがないと、復讐が……。【Light ruler】って何だよ』
 海は、思いっきり握り締めた拳を地面にたたきつけた。空からは、さっきまで海の【能力】で去っていた雨が降ってきた。
「……勘弁してくれよ。おい……」
 海のその声は、雨のザーザーという音に紛れて消えていった。
 その日、改めて【能力】がないという不便さに気がついた。自分の水の【気】で地下から湧きあげていた水も、得ることができない。それがないと、料理もできないし、喉を潤すこともできない。
 この辺りの雨は、酸が混じっていて、簡単に飲むこともできないのだ。
 明日からの学校での生活にも困ってきた。水を使ったイリュージョンで皆を喜ばせ、自分の居場所をキープしてきたけど、もうそれができない。
「……旅? ざけんなよ」
 苦笑した瞳からは、熱いものが出てくる。それが、頬を伝って、口に入り、喉を潤す。
「俺、水晶がないと……何もできないじゃん」
 何度も何度も、独り言を呟く。そして、翌朝、決心した。旅へ出る、と。

 水晶を取り戻すために。そして、復讐を果たすために。


第五章【Animal Ruler】

 名嘉と斗鬼が暁町を出発して、二日……。二頭の馬が疲れ果てている上に、名嘉と斗鬼は跨っていた。
「ふぅ、着いたかぁ。さすが俺の【能力】じゃん?」
「……死ぬかと思った」
 青ざめている斗鬼をよそに、名嘉は自分の【能力】に感心している。
「か、感心している場合じゃないよ! 振り落とされて、私、マジで死ぬかと思って……もう、途中で、人生諦めた、よ」
「ははは。それは、面白い。さて、と。この辺に【Sound ruler】がいるはずだが……。北町って思ったより広いなぁ」
 斗鬼を恐怖に追いやったその名嘉は、ポケットから取り出した地図を広げる。
「あ!」
「え?」
「あんの……【Sound ruler】のヤツ、移動しちまってる! 北町にいたはずなのに、そこから離れていってるよ」
「えぇ……!!」
 落胆の斗鬼の声に、「しゃぁねぇよ」と名嘉は答え、「追っかけるぞ!」とまた、馬に乗った。
「ま、またその超速い馬に乗るの!? マジ勘弁……」
「うっせぇ。早く乗れ!」
 厳しい名嘉の命令口調に、渋々馬の背中をまたいだ。名嘉が、鞭で馬の背中を打つと、ヒヒィーンといって馬は、超高速で走り出した。
「キャー!! 名嘉、スピード落として」
「うるせぇ!」
 のろのろ探し回っている暇はない。早く、美嘉に会わなければいけないのだから……そんな気持ちが、名嘉の心の中で呟かれていた。
「……この辺か?」
 やっと、馬を止め、再び地図を広げる。
「あれ、名嘉、なんか聞こえない? ほら、きれいな笛の音……」
「え? あ、ほんとだ。笛の音、音……。まさか、【Sound ruler】?」
 名嘉の声が弾む。
「あ、あそこに、笛を吹いてる男の子がいるよ! あの岩の上のところ」
 大きな岩の上に立って、【Sound ruler】は、気持ちよさそうに笛を吹く。
「フラック、この手紙をあの少年に届けておいで」
 そう命令する名嘉の目は赤く光る。【能力】を発揮している証。
「手紙? なんて書いたの?」
「ん? 降りて来いって」
 斗鬼は、呆れた。どこまで、この麻 名嘉という人間は他人任せなのだろう? と。
 フラックに気がついた少年は、笛を懐に納め、嘴に銜えられた手紙を取って、広げた。そして、辺りを見渡す。と、名嘉と目が合った。
「おーい! 俺、俺! こっちに降りてこいよ?」
 少年は、頷き、岩の上から軽々と降りてきた。
「おまえたちが、【Ruler】?」
 少年は、険しい表情で尋ねる。
「あぁ。【Animal Ruler】の麻 名嘉だ。よろしく」
「【Time Ruler】の古来 斗鬼よ。よろしくね」
 少年は、斗鬼の自己紹介が終わった後、首を傾げた。何? と斗鬼が尋ねると、
「おまえ、男だよな? 女みたいなしゃべり口調で気持ち悪い」
という返事が返ってきた。名嘉は爆笑している。斗鬼は、顔を引きつりながら、答えた。
「これでも、一応【女】だから」と。
「あ、ごめん、ごめん。俺は、鳴瀬 音。【Sound Ruler】だ。よろしく。それで、俺は、あんたに頼みがあるんだけど……」
 音は、斗鬼の顔を真剣に見つめた。
「ある人物を蘇らせて欲しい。この近くの北町にいる」
「え……?」
「お願いだ!」
「……いいけど」
「けど?」
「高くつくわよ。じゃあ、行きましょう」
 斗鬼はにやりと笑った。
「ありがとう」
「じゃ、音、俺の後ろ乗れよ。そいつも一応女みたいだし。男同士の方がいいだろ?」
「なっ! 一応って何よ!?」
 斗鬼の言葉を無視した名嘉は、音が乗ったことを確認すると、再び鞭を打った。
「北町って、この辺り?」
 名嘉が、音に尋ねた。
「あぁ……。ここからは、馬を止めて歩いたんでいいかい? もう、近いから」
「じゃあ、おまえは降りろよ。俺は、馬に乗ってるから」
 その言葉に斗鬼は再び呆れた。この男は、どこまで無精者なのだろう? と。でも、余計なことは言わずに、自分は馬から降りた。
「ここ、ここにある人物がいる」
 斗鬼の故郷と雰囲気が似ている田舎だった。それに、名嘉は「田舎くせぇ、ぼろっちい家ー」とケチをつける。
「……その人の名前は?」
「栄華……」
「女の子なんだ」
 玄関で立ち止まって、音は軽くノックをした。
「はい?」
 泣きはらした顔をした女性が出てきた。斗鬼も名嘉もこの人が栄華という者の母親なのだろうとわかった。
「こんにちは。【Time ruler】……時使いを連れてまいりました。蘇りができる者です」
 音が、斗鬼を紹介すると、すぐさま女性は斗鬼の手をとり、
「お願いします! 栄華を、お願いします」
と何度も、何度も頭を下げた。
 そんな女性に、名嘉は共感できる部分があった。悲しそうな目で、女性と自分を重ね合わせた。きっと、美嘉を思い出したのであろう。
「栄華さんは?」
 布団の中にいて、顔には白い布が被せられていた。
「いつに蘇らすことを希望しますか?」
 女性は、栄華の父親らしき人物と相談した。
「一年前で……」
「わかりました。蘇っても、栄華さんには、この一年の記憶は全くありません。全ては一年前のまま。そして、一年経ったら、亡くなります。これは、神の定め。時使いの私も逆らえません。いいですね?」
 栄華の両親は頷く。
「それから……、高くつきますよ?」
 笑いながら、そう言うと、斗鬼は栄華の手にそっと触れ、【TMW】の蓋を開けて、反時計回りにくるりと回した。
「この少女、一年前へ帰れ」
 斗鬼の体は、大量の光を放つ。その光景に、栄華の両親と音は、不安と期待と驚きを抱く。
「ん……」
 栄華の口から、声がもれた。
「栄華!」
 栄華の両親の喜びの声。栄華の手を握り、涙を流す。
「お父さん、お母さん? オンくん? どうしたの? え、とそれから、あなた達は……?」
 栄華は、見たことのない斗鬼と名嘉の存在に気づき、首を傾げる。
「栄華……」
 その栄華の言葉を無視して、名を呼ぶ両親も、音も涙が止まらなかった。
「名嘉、私達は出ようか?」
 小さな声で提案して、名嘉も頷き、家から出た。
「おまえ、すごいな……。蘇りができて、みんなに感動を与える。いいな。俺も、【Time ruler】ならいいのに……」
「よくない、よ? あなたとは違って、すぐに人を殺められる私は、みんなが恐れる。こんな【能力】イラナイわよ……」
 斗鬼の表情は悲しげだった……。その斗鬼の気持ちを、金髪の少年は理解することができなかった。【蘇り】ができて、人を喜ばせることができるのに、何故、悲しんでるの? そう思ったから。自分も恐れられている。斗鬼だって恐れられているけど、感謝もされる……それなのに贅沢な悩みだなって思ったから。だけど、名嘉は深刻な表情をしている斗鬼にそれ以上何も言えなかった。

第六章【海の水晶】

 その頃、光は、町から離れるために必死で走っていた。光が住んでいた町は、広い。広すぎる。誰かに、【Light ruler】だとばれてしまえば、捕まって処刑されるだろう。町内では【Light ruler】が人を殺したという噂が広がっているはずだから。
「はぁはぁはぁ……」
 猛ダッシュで、何十キロも走った息が荒い光の前、地面の上には、光るモノ。
「何?」
 前かかがみに膝についていた手を地面に伸ばす。
「水、晶?」
 光が手に取ったのは、虹色に輝き光を放つブレスレット状の水晶。
「誰かの落し物かしら? でも、綺麗……」
 その水晶をまじまじと見る。見ているだけで、幻想的な世界に入った気分になる。自分が、何をしていたかも、どんな状況に陥っているかも忘れさせるくらい。ブレスレットの輝きが薄れいくにつれ、光は自分のが今置かれている状況を思い出す。
 こんな所で、休んでちゃダメ! 早く、この町から出ないと! そう思った光は、再び意を決したようにぎゅっとブレスレットを握り、走り出した。

 ◇      ◇      ◇      

「ちきしょうッ!」
 旅に出ると決めたものの、海はどうすればいいのかわからなかった。どこへ行けばいいのだろうか? わかるはずがない。神の声は、あれきり途絶えてしまった。どこにブレスレットがあるのかもわからないのに、行きようがない。ただ、適当に歩きさまよっていただけ。今の海に、能力もない。
『【Water ruler】……、困っているようだね?』
 いきなり、耳元に響く神というやらの声。
『当たり前だろ! どこに行けばいいんだ? 早くブレスレットを返せ!』
『光を探せ』
『光?』
『光を求めたら、きっと見えるぞ。じゃあ、健闘を祈るぞ、【Water ruler】』
 そう言い残すと、神の声は途絶えた。
「おい! ちょっと……」
 いきなり出てきて、いきなり消える神にため息をつく。
「光……? 何だよ、それ……」
 そう呟いたとき、海の視界に目を閉じたくなるほど眩い光が差し込んできた。
「なっ……!」
 目を手で覆い、目を細めて見ると、海の目の前に一本の光る道ができていた。

 ◇      ◇      ◇

 海のブレスレットを握る光は、町から出ることができた。そして、光はネックレスである【Light Stone】を首から外し、ブレスレットと一緒に握るとある呪文を唱えた。
「このブレスレットの主のもとまで、【ヒカリ】を放て」
【 Light Stone】とブレスレットを強く握り、目をぎゅっとつむり、【気】に神経を集中させる。今まで、自分の家から路香の家までという、短距離でどのくらいの道のりか知っている場所に【ヒカリ】を放つことはできたが、どこにいるかわからない相手の場所まで【ヒカリ】を放ったことない。長距離だろうと推測した光は、今までにない集中力で【ヒカリ】を放つ。
 ゆっくりと目を開けると、光でできた一本の道。
「成功……した?」
 自信は、なかった。ヒカリの道は、どこまでも続いている。そのとき、光は誰かの声をキャッチした。
「……れか!」
 微かな声で、きちんと聞き取れなかったが、誰かいることは確信した。
「ブレスレット! あなたのブレスレットは、私が持っているわ!」
 先ほどの声の主がブレスレットの持ち主かどうかはわからなかったけれど、光は大きな声を発した。
「ほ……ん…………う?」
 ノイズが混じったようだったが、光には「本当?」と言ったように聞こえた。
「本当よ!」
 ヒカリの道に向かって叫び、光は走り出した。視界に広がる眩い【ヒカリ】。走っても、走っても【ヒカリ】からは抜け出せない。どこまでも続く光の道。
「待っ……て……て!」
 遠くから聞こえる声。途切れ途切れだったけれど、なんとか聞き取れた。
 ――待ってて!
「待っているわよ!」
 光は、そう返した。そして、突き進む。光の道を。

 ◇     ◇     ◇

 光の奥から、誰かの声が。そして、「ブレスレット」という単語を耳にした海は、一直線に光に道を突き進む。
 ――早く、早く、早く……!
 海の一番の宝物。それがなければ、【能力】が発揮できないのだから。そして、復讐ができないのだから。
 海にとって、この世を滅ぼすことなど、どうでもいい。自分がしないといけないこと、したいと思うことは、「復讐」なのだから。
 今まで、こんなに全速力で走ったことなどないだろう、と海は思った。ブレスレットのために、走る。復讐のために走る。
「あ……!」
 光の道の奥にうっすら人影が見えた。
「……っ!」
 歯を食いしばり、海は再び、光の道を一直線に突き進んだ。

 ◇      ◇      ◇

「あ……」
 ブレスレットの持ち主らしき人の顔が、見えてくる。【ヒカリ】が眩しすぎて、よくは見えなかったが、男ということはわかった。そして、その男は近づいてくる。
「ブレスレット! 俺のブレスレットは!?」
 男は、光の持ち物を見ながら、問う。
「ここよ」
 光は、右手の掌にブレスレットを載せ、男に見せる。
「あ、よかった! 俺の……」
 そう言って男は、ブレスレットを奪い取る。
「ね、ねぇ? もしかしたら……と、思うけど。貴方、まさか【Ruler】?」
「そうだけど?」
 男は、光が見つめる視線に目も合わさず、ブレスレットを大事そうに手首にはめる。
「じゃ、アンタは【Light ruler】?」
「そうだけど、どうしてそれを?」
「【神】とか言うヤツが、俺のブレスレットを【Light ruler】に預けたって言ってたからよ」
 男の表情や声色は、先ほどよりどんどん明るくなっていく。そのことから、ブレスレットがよほど大切だったことがわかる。
「……そう。それじゃあ、残りの仲間を……」
「おっと、【Light ruler】さんよぉ。それは、とんでもない話だぜ」
 男はにやつきながら、光の顔を見てくる。
「俺は、【Light ruler】がブレスレットを持ってるって聞いたから、おまえを探しただけだ。これが手に入れば、もう仲間とやらに用はねぇ。じゃあな!」
 そう言うと、男は背を向けてやってきた光の道のほうへ歩を進める。
「……ちょっと、待って!」
「あぁ? 用はねぇと言ったはずだ!」
 荒い口調でそう言われて、光は一瞬、言葉をのみこんでしまったが、負けずと言い返す。
「お願い! 私の大切な友達が殺されちゃったの! でも、【Ruler】の中に時使いがいて、その人を見つければ、蘇らせてもらうことができるの! だから、お願い! 手伝って」
「やなこった、面倒くさ……」
と、言いかけて、男は考え込んだ。
「【Light ruler】、その話は本当か?」
「えぇ、きっと……」
「そうか、それなら俺も行くよ」
 え? と光は言いたくなった。さっきは、あんなに乱暴な言葉づかいをしていたのに、どうして? 光はそう思った。
「俺は、【Water ruler】の海だ! よろしくな。おまえは?」
 先ほどの口調とは全然違い、海という男はとても優しい笑みを向けた。
「……かり……。光よ。よろしくね!」
 光の明るい声に、また海は笑みを浮かべた。
2006-08-27 19:00:11公開 / 作者:ユイ
■この作品の著作権はユイさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初投稿です。
感想や批評をいただけたら、大変うれしいです。
未熟者ですが、よろしくお願いいたします。
この作品に対する感想 - 昇順
はじめまして、チェリーと申します。読ませてもらいました、ん〜空白スペースが多くて、ちょっとスクロール、スクロール、と忙しく下に下がりつつ読むというが面倒でした。もうすこし空白スペースを詰めてみてはどうでしょうか? まぁ私が言えるのはこれくらいでアドバイスはできるほどの力がないのでどうかご了承ください。物語についてのわくわく感想ならいろいろと(笑 能力者、いままでさまざまな小説などの能力者を見たりしましたがこれはこれで一風変わった能力ですねぇ。【TMW】はなかなか変わった能力でこれはクライマックスや重要部分を飾る素材なのかな、と。どのようにこれらを動かし活かしていくのか、そして物語はどうなっていくのかわくわくします♪ ではでは、期待して次回お待ちしております。チェリーでした〜。 ノシ
2006-06-23 22:18:49【★★★★☆】チェリー
チェリーさん>
初めまして。感想をくださって、ありがとうございます。
そうですね、自分も空白を意識して読み返していたら、スクロール、スクロールで面倒でした。これから、もう少し詰めていこうと思います。ご指摘ありがとうございます。
【TMW】は、この物語のポイントとなるもので、目をつけていただいてうれしいです。これからもよろしくお願いいたします。
2006-06-24 14:08:26【☆☆☆☆☆】ユイ
はじめまして、セツといいます。
拝読させていただきました。
チェリーさんと同じように、少しスクロールがめんどうでしたが、話自体はぐいぐい読めて、とても面白かったです。
これからどうなるのか気になりますねー。
次章も楽しみに待っています!
2006-06-24 17:35:36【★★★★☆】セツ
セツさん>
初めまして、感想ありがとうございます。
やはり、スクロール、面倒ですか……。もう少し詰めて投稿していきます。ご指摘ありがとうございます。
それから、面白いという、うれしいお言葉まで、ありがとうございます。よろしくお願いします。
2006-06-24 21:32:49【☆☆☆☆☆】ユイ
始めまして。聖と申します。三話まで一気に読ませて頂きました。「〜〜使い」という五人が世界を滅ぼすちょっとダーク面なお話なのかと思ったら、どうやら神と対決する事になる話のようですね。物語の内容がとても出来上がっていて、分かりやすかったのですが、一つ疑問に思ったのが、「理解の早さ」です。第二話で父親と音の会話シーンがあったのですが、神が殺したと言う音のセリフを、簡単に受け止めてしまっていることが少し疑問でした。そして、斗鬼を抜いた全員が大切な者を殺されないように、と言うことなのですが、全員が全く同じ物語だったので、第二話、三話が少し被ってしまっていたかな、と思います。
とても面白い物語なので、これから主人公達にどんな展開が待っているのか楽しみです。次回更新を楽しみにしています。
2006-06-25 20:41:59【☆☆☆☆☆】聖藤斗
聖藤斗さん>
初めまして。感想ありがとうございます。
そうですね。第二話での、音との会話のシーン、理解が早すぎましたね。音をずっと責めていたわりには、父親はあっさり納得しすぎました。そして、物語が同じで被ってしまうというご指摘で、改めてそうだなぁと感じました。そのアドバイスを取り入れ、次章から工夫していきたいと思います。嬉しいお言葉もありがとうございます。よろしくお願いします。
2006-06-26 20:27:01【☆☆☆☆☆】ユイ
読ませてもらいました。チェリーです。う〜ん、聖藤斗様も申されているとおり、二話と三話が被ってしまいますねぇ。二話を読んでとてもこれはストライクゾーンだ、と思って三話を見てみたら被っていてなんだかう〜ん・・・・・・みたいな気持ちがありましたぁ。四話目はそれをカバーするために用意されたのかな、と失礼ですが思わざる終えませんでした。ですが内容的にも二話、三話、四話は個人【ruler】のシナリオを味わえてとても良かったと思います。会話の中では少々神の発言に対して正直に現実を受け止めてしまうところがありましたが、これは【ruler】という存在が神を身近に感じさせる存在なのだな、と推測でありますが内容に感情移入できて自分で満足感があったり(笑 いやぁそれにしても速筆ですねぇ。私なんか小説できるまで一体何週間何ヶ月かかるやら(遅 早く投稿してビシバシ批判して鍛えてもらわなければ。ではでは読んでいるうちに私の執筆意欲が向上するとても良い作品でした。次回も期待してお待ちしております。それでは失礼しました〜 ・ω・ノシ 
2006-06-26 23:51:41【★★★★☆】チェリー
2006-07-06 17:19:23【☆☆☆☆☆】ユイ
すみません。上の投稿ミスです。

チェリー様>
またのご感想ありがとうございます。二話と三話被りましたか。はい。それをカバーするために、四話は、もともとの話に手を加えすぎたみたいです。確かに、【ruler】は神の発言に正直すぎますね。この世界での神は身近な存在という設定ですが、あまりにも正直すぎたかも……と思います。褒め言葉もありがとうございます。これから、第五話を投稿します。
2006-07-06 17:25:43【☆☆☆☆☆】ユイ
今日和。読ませていただきました
私もユイさんと同じでよく改行しちゃうのですけれども…;とても良い物語だと思います、どんどん先が気になっていく話で、凄く気に入っちゃいましたw
私は全然アドバイスは出来るような立場ではないので、とりあえず応援しています^^続きを楽しみにしています♪
2006-08-24 17:19:44【★★★★☆】春乃啄木鳥
春乃啄木鳥様>

初めまして。ご感想、ありがとうございます。
改行については、ご指摘をいただいたのち、加筆をしたので、以前よりかは読みやすくなったことと思います。
気に入っていただけて、とても嬉しく思います。
もし、何かお気づきになった点がありましたら、いつでもお申し下さい。ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
2006-08-27 09:55:08【☆☆☆☆☆】ユイ
計:16点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。