『メモリーシフト 第1話』作者:クリフ / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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〜プロローグ〜

「おい!こっちへ来たぞ!」

「女子供たちは早く逃げるんだ!・・・・ぐわぁぁぁっ!」

旧世紀382年・・・・、とある小さな村が魔物達に襲われていた・・・・・

この世界では20年以上前から魔物たちが暴れており、

世界は破滅の危機に陥っていた。

人間たちは必死の抵抗をしたが、

その敵の多さと強さゆえにどんどん人の命は絶たれていった・・・・

そして・・・・・

〜第1話〜

ここは港町セレニア

2人の漁師が話している

「おい、また村が襲われたってよ」

「ぁぁ、知ってるぜ、何もあんな小さな村襲わなくてもいいのにな・・・」

「ほんと、血も涙もねーやつらだぜ」

ここ最近、魔物たちの侵攻がさらに激しくなってきた、

じょじょに世界の終わりを感じさせている・・・・

実際この港町も、人口はここ数年で半分以下になった

「おい」

話している二人に一人の若い男が船を見ながら話しかけてきた

「この船、どこに向かうんだ?」

見たところ18歳くらいで、顔はかなりの美形である

かなり上質の綺麗な鎧を身に付けているが、汚れ使い古した感じだ、

マントも付けているがこちらもすこし汚れていて、

どうしても美形な顔立ちとは裏腹に暗い感じがする。

髪は短く(その方が戦いやすいのだろう)腰には剣が掛けられている

「ガリンスに向かう船です」

男が少し目を大きくしながら答えた

「ありがとう」

そういうとその若い男はその船に乗った



3日ほど経ったであろうか、男はようやくガリンスに着いた

船から下りるとすぐに宿屋へ向かい、部屋を借りて荷物を置いた

ガリンスとはセレニアと昔から深い繋がりがある貿易国で、工業が栄えているにぎやかな街だ

男は宿屋から出て酒場に向かった

「いらっしゃい、なんにする?」

入るなり店長らしき人が話しかけてきた

「いや、俺は人を待ってるんだ」

「そうかい、なら他の客の邪魔になんないようにしてくれよ」

店長がふてぶてしく言う

「そうするよ」

男は適当にそう答えて壁に背中をつけて座った

それから5分ほど経つと、一人の男が酒場に入ってきて話しかけてきた

「よぉ!ゼフ、久しぶりっ、会いたかったぜ〜」

その男は酒場で人を待っていた若い男(ゼフ)に、陽気な大きな声でそう言った

「・・・・久しぶりだな」

ゼフはその男とは正反対につぶやくように答えた

「なんだよ全く、相変わらずくれぇなぁ」

「お前も相変わらずだ・・・・」

「しかしお前、大きくなったなぁ〜、初めて会ったときはまだ12歳だっただろ」

ゼフの両肩に手を乗せながら男は言った

「まぁな・・・」

さっきからゼフとは対照的に明るい男の名前はフォート

ゼフとは親しい仲(?)の42歳である・・・・

剣術の腕前は一流で、いつも持ち歩いている剣は彼いわく「心友」だそうだ

「懐かしいなぁ・・・もう6年前のことか・・・」

フォートは一人で昔のことを思い出している

「そんなことより今日は別の用事があるんだろ?」

「ぉぉ!そうだった、実はよ、おめぇに手伝って欲しいことがあるんだ」

「・・・なんだ?」

なんとなくゼフはいやな予感がしていた、彼の「用事」は今までろくなものが無かったからだ

「お前、最近小さな村が襲われた話知ってるだろ?」

「・・・・・あぁ・・・」

「その村を襲ったやつらがこのあたりに潜んでるらしいんだ」

「・・・・それで?」

「それでじゃねぇよ、ここまで言えばわかるだろ、そいつら倒しにいくんだよ」

(やっぱり来たか・・・・)

ゼフは少しため息をつきながら仕方なく聞いた

「それで、どこなんだそこは」

「おぉ、珍しいな、お前から場所を聞いてくるなんて」

(・・・・断ったってどの道行くことになる・・・)

今まではこういうことを頼まれたら必ず断わろうとしたが、彼を怒らせると手が付けられなくなり、結局いつもしぶしぶ一緒に行っていた

「・・・・まぁいい、場所はこのあたりにある・・・」

地図を指しながらフォートが説明した。

この街から20kmほど離れた場所にある洞窟らしい

出発は明日の朝に決まり、ゼフは宿屋に戻り明日に備えて寝た



そして次の日の朝・・・・

「ん・・・・んぅぅ・・・」

日差しが窓から差し込んできて、ゼフは目を覚ました

「く、くぁ〜・・・」

眠い目を擦りながら準備着替えて、朝食を食べる

この世界では、小麦粉で作ったパンのような食べ物が一般的である

ゼフもそれを食べた

朝食を食べ終えて待ち合わせの場所に行くと、フォートはすでにそこにいた

「おっ、来たな、待ちくたびれたぜ」

フォートはかなり前から待っていたようだ

(待ち合わせ時間よりも少し早く来たのに・・・・)

ゼフは飽きれた

フォートは42歳なのに精神年齢はかなり若い

18歳のゼフのほうがよっぽど大人っぽく見えるほどだ

「よっしゃぁっ、早く行こうぜ♪」

フォートのそのはしゃぐ姿は10歳である・・・

「あぁ・・・・」

ゼフはさらに飽きれながらそれだけ言った

(やれやれ・・・)



20分ほど歩いたであろうか。

すっかり街から離れ、周りは森になっていた

「あんときはまだガキだったなぁおい、それがこんなに・・・」

フォートは歩いている間ずっと喋りっぱなしだった

久しぶりに会ったので、楽しそうにゼフが小さかった頃の話をしている(とはいっても12歳の頃の話だが・・・・)

ゼフは相づちはうっていたがまったく聞いていなかった

「なぁおい、それでよぉ・・・・・・っ!」

今まで楽しそうだったフォートの顔が急に変わった、その顔はまさに剣士の顔である

ギラリした目で、獣のような眼光、

剣に手を当てながら慎重にあたりを探っている

ゼフもほぼ同時に異変に気が付いていた

二人はお互い背中を合わせながら、剣を構えてあたりに注意を払った

『ガサガサッ』

(っ!)

今確かに近くで何かが動く音が鳴った

ゼフは気が付いたがフォートは別の方に注意を払っていて気が付いていないようだ

(フォート・・・)

小声でフォートに呼びかけた

「・・・・」

(おいっフォート、今音が聞こえなかったか?)

「・・・・」

返事が無い

(フォート?おいっ・・・・・)

ゼフはたまらず振り向こうとした、その時

「ビチャッ」

(・・・・・なんだ?)

足で何か踏んだらしい

液体のようだ・・・・

ゼフはゆっくりと下を見下ろした

「・・・!」

言葉に出来ないくらいの衝撃がゼフを走り抜けた

ゼフが踏んだものは・・・血だった・・・・

よく見たが確かに血である・・・

(まさか・・・・)

後ろを見た、そこにはフォートが立っている

しかし今までのフォートではなかった

心臓から背中に刃物が貫通した後・・・・

そこから大量に血が流れ出ていた・・・・



驚き少し離れると、今までゼフに寄りかかっていた、「それ」は倒れた

今まで気が動転して状況が把握しきれていなかったゼフに、

じょじょに「フォートが死んだ」という現実が把握できはじめた

「ぁ・・・・あぁ・・・ぅ・・・」

ゼフは言葉もなくそこに泣き崩れた、

「フォート・・・ぉぃ・・・フォートぉ・・・・」

それ以上言葉が出てこなかった

ゼフは生まれたときから親もいなく一人で生きてきた・・・

フォートはたった一人の友だったのである

その友が・・・今、目の前で死んだ・・・

深い悲しみと同時に、殺した奴に対する怒りが込み上げてきた・・・・

(だれだ・・・・)

「誰だ・・・・誰なんだよ・・・・」

ゼフは静かに立ち上がって辺りを見回した・・・

そこには誰もいなかった

唯一の手がかりは、さっき聞いた何かが動く音だけである

(絶対見つけ出してそいつを殺してやる・・・・)

ゼフはフォートが死んでもなお強く握り締めている剣を取った

(フォート・・・・)

いろいろな思い出が甦ってくる・・・・

その剣を持つと、さっきまで怒りしかなかった自分の心がじょじょにまた、深い悲しみに戻っていく・・・

しばらくその剣を見つめた後、それを左側の腰に取り付け(右側の腰には自分の剣が付けられている)フォートの墓を掘り手厚く葬った

次の日、一晩森で過ごし、ようやく落ち着いたゼフは、お墓に手を合わせ街に戻った(洞窟へはとても行く気になれなかった)
2003-08-19 01:16:30公開 / 作者:クリフ
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初投稿です
深い内容を心がけて書いてみました
第1話です
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