『ミステリ紛い 読みきり』作者:名も無き小説書き / ~Xe - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
文芸部部室にて一人の部員が殺された。屋上で謎解きをするミサト。そして呼ばれたアカネとコウジ。習作的なミステリです。
全角1794文字
容量3588 bytes
原稿用紙約4.49枚
 ぎらりと光るナイフがミサトの眼前に突きつけられる。ミサトはそれを見て小さくひぃっと喉から声を漏らすことしか出来ない。よく見ればミサトの口には茶色いガムテープが貼り付けられ、手と足も身動きが取れない程度に縛り付けられていた。現在のミサトは無いうに大して抵抗する術を持ち合わせておらず、尚且つ現在時刻は夜の七時の文芸部部室だ。文芸部の部室は新校舎にあり、この時間帯では校舎に残っている人間など教師くらいしかおらず、その教師も滅多なことでは新校舎には来ない。即ちこの状況をミサトが打破できる可能性は零といっても差し支えなかった。
 ナイフをミサトに突きつけているコウジはにやりと笑い、あからさまに脅えているミサトを嘲笑する。昔からこうなのだ、このミサトという人間は。普段は活発なくせにこういう緊迫した場面、緊張した場面にはからきし弱い。臆病というか怖がりなのだ。
「大丈夫、痛くはしないよ。すぐに殺すからさ」
 その言葉を受けてミサトが目から大粒の涙を零し、恐らくは殺さないでほしいという意味のことを言っているのだと思われる唸り声を上げる。が、しかしコウジにとってそんなことが何かの抑止力になるはずも無く、コウジは短く笑ってナイフをミサトの喉に深々と突き刺し、そのまま引き裂いた。赤であり紅であり朱である血液が、月明かりにのみ照らされる部室中に飛び散る。それは頚動脈を切断された証、それはミサトの命が途切れることを示す証。
 コウジは声をかみ殺しながらも笑った。これで復讐が完了したのだから。



 とある公立高校の、普段は立ち入り禁止になっているはずの屋上には、三人の生徒がいた。一人は男子、残りの二人は女子である。そして女子の二人のうち一人が二人と向かい合っているという形になっていた。
「コウジ、アカネ」
 少女の一人―――ミサトが二人に毅然とした態度で言う。その態度は確かに毅然としていて、いつものミサトと全く同じ態度なのではあるが、しかしどこかが違っていた。小学校から交流のある残りの二人、コウジとアカネと呼ばれた生徒らもそんなミサトの雰囲気と表情を感じ取ったのか、最初はどうしてこんなところに呼ばれたのか全く理解が出来なかったものの、自然と険しい表情を作った。
 現在時刻は五時半で、本来ならばとっくに帰っている時間である。三人が所属している文芸部の部活動も当分無いので、三人はすぐにでも帰ることが出来たはずだし事実としてコウジとアカネはそのようにしようと思っていたのだが、そこをミサトに引き止められたのだ。目的も言わずについていかされたと思えば、場所はいきなり屋上だ。何がなんだかわからないのも当然で、だけれどそのなんだかわからなさが逆にミサトのこれから話そうとしている事態の深刻さを雰囲気として醸し出していたといっても過言ではないだろう。
「はっきり言うわ。あたしたちの中に、殺人犯がいる」
 二人の眉が同時にぴくりと動く。
「な、なに言ってるんだよ、ミサト。僕たちの中に犯人? 冗談だろう?」
「変なこといわないでよぉ、ミサトちゃん」
 ミサトは二人の声を無視して。
「あたしは考えた。考えて考えて、ようやく答えに辿り着けた。一週間かかった。間違っていたら謝る。けど、単刀直入に言わせてもらう。犯人は……」
 見ればミサトが泣いていた。唯一無二の友人を、親友を、幼馴染を、ミサトだって殺人犯だと思いたくは無いのだ。しかしそうとしか思えなかった。状況証拠、物的証拠、動機。それら全てをミサトは握っている。犯人は一人しかいなかった。外部犯の犯行などではない、そんなことはミサトが一番良く知っていた。密室の謎も全てわかっている。いや、正確に言えば、あれはミサトと犯人しか知らないはずなのだ。教師たちにばれたら最悪部室の取り上げを喰らうので、二人だけの秘密にしようとしていたのだ。
 あれがもし犯行に使われたとしたのならば、あの部室は密室などではなくなる。ならば犯人は自ずと判明する。
 犯人は―――
「……あんた」
 ミサト―――廣田美里が指を刺す。
 コウジ―――赤根浩二が右を向く。
 そこには。
 ミサト―――三郷広太を殺害した。
 アカネ―――小路茜の姿があった。

                    終
2006-01-13 23:15:36公開 / 作者:名も無き小説書き
■この作品の著作権は名も無き小説書きさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 出来心だった。悪気があってやったわけじゃなかった。とても反省している。今すぐ謝りたいと思う。
 とまぁそういうことで、叙述トリック紛いなミステリでした。トリックも動機も不明です。ただ叙述トリックが書きたかっただけです。

 三郷広太(みさと ひろた)被害者
 廣田美里(ひろた みさと)探偵
 赤根浩二(あかね こうじ)
 小路茜 (こうじ あかね)加害者
……とまぁ、このような具合になっています。
この作品に対する感想 - 昇順
拝読しました。「なるほど」とは思うものの、感慨は無かったです。騙そうとする意図(情景描写の欠乏や個人名のカタカナ化)が邪魔になり、文量の割にテンポ良く読めなかったのが要因かと思います。次回作御待ちしております。
2006-01-16 09:28:05【☆☆☆☆☆】京雅
初めまして、読ませていただきました。騙された、けれども「あれ?」と疑問符が浮かぶところがあったのです。それは私の方の読解力が無い故なのですが途中でのミサト、つまり美里と三郷を混同してみてしまいました。あと、描写が書かれていないのは故意なのでしょうが、これは逆に解り難くなるだけだと思います。しかしやはり、この文量では不可能だとは思いますが。唐突感が否めなかったかな、と私は思います。すべて私見です、気になさらなくても結構で御座います。酷評になって申し訳ないです。それでは次回作をお待ちしています。
2006-01-16 17:13:27【☆☆☆☆☆】渡来人
作品を読ませていただきました。描写が少ないため、作品自体に読者を世界に引き込む力がなかったように感じました。叙述トリックにばかりに意識を奪われ、小説としての弱さが露呈した印象です。辛口の感想ですみませんでした。では、次回作品を期待しています。
2006-01-16 20:38:58【☆☆☆☆☆】甘木
感想ありがとう御座います。
皆様の意見を参考にして、これからも日々精進していきます。

矢張り情景描写、状況描写の稚拙さ、少なさが思い切りでてしまったようですね。これからはそのことに関してももっとよく考えてから書くようにします。
ご指摘、ご感想、ありがとう御座いました。
2006-01-16 22:31:41【☆☆☆☆☆】名も無き小説書き
計:0点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。