『絵に描いた猫。 [修正]』作者:トロヒモ / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
一匹のネコが感じた…
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原稿用紙約6.79枚
絵に描いた猫。


最近の世街は腐っている。
どこの景色を見ても、花一つ咲いてない。
最近の人間は腐っている。
誰一人として、この事態を悪く感じてねぇ。


街中に、ごくごく普通の家庭が存在している。その中に「松山」という苗字の、ごくごく普通の家庭がある。松山家には、現役サラリーマンの父親に、主婦をしている母、小学3年生の兄と、4歳の妹がいる。この俺様は、そんな、ごく普通の家に厄介になっている居候である。
 俺様は、いつもの様に街を探検しにいく途中である。探検するのだって容易ではない。風が強く吹いている時は、体が飛ばされそうになるし。雨の日なんて、外に出る事さえ許されねぇ。何より哀しいのは、珍しいものを見つけても、それを、手に取ることもできないって事だ。仲間と思っている奴等に、相手にもされやしない。
 そんな、哀しい時に必ず行く場所がある。街はずれに、「筑巌山」(つくいわさん)と呼ばれている山があって、そこに遊びに行く。あそこは最高だ。木々に囲まれている御蔭で、風は吹かないし。見たこともない生き物や花がたくさんある。ここだけが、俺様を歓迎してくれる。そうだって、俺様は信じていた。

「ねぇねぇ、お兄ちゃん。私の絵知らない?」
「絵?」
4歳の松山凛(まつやまりん)は、兄の伸夫(のぶお)に、奇妙な質問をした。
「そう、ここに描いたの」
凛は、自分がいつも使っているスケッチブックを、おもちゃで散らかっている子ども部屋から持ってきて、ページを開いて、伸夫に見せた。そこには、中心の部分だけが、真っ白くなっている、凛が描いた絵がある。
「なんだこりゃ?」
伸夫は、不思議そうに、そのページを見続けた。
 その夜。夕食の時間になると、伸夫は、昼間の不思議な出来事を両親に説明している。両親は、子どもの話しと割り切って聞いてたので、伸夫の話しを、ちゃんと聞いていなかった。
伸夫は、ちゃんと聞いてもらいたくて凛に、スケッチブックを持ってこさせた。そして伸夫は、父親が見ているテレビの目の前に行き、あの奇妙なページを、開いて見せた。
「テレビが見えないだろ、どいてくれ伸夫」
父親は、伸夫を払い除けようとした。
「ちょっと、この絵を見てよ」
父親は、伸夫が開いているページに気づくと、その絵を見た。
「ん〜、この絵、誰が描いたんだ?」
父親は、そのページに描いてある絵を、じっくり見ている。
「凛だよ」
「うまいじゃないか凛」
伸夫が期待していたセリフは、父親の口からは、出てこなかった。
「ねぇ、お父さん。不思議だと思わない?」
「全然、不思議じゃないぞ。ちゃんとしたネコの絵じゃないか」
伸夫も、スケッチブックを覗き込んだ。すると、そこには、ネコが笑って散歩している絵があった。昼間には、確かに真っ白だったはずの場所に、ネコの絵がある。伸夫は目を丸くして、口が開きっぱなしで、まるで、狐に化かされたような顔つきをしていた。
「もう気が済んだだろ」
父親は、伸夫の頭を片手で撫でて、テレビを見始めてしまった。伸夫は、自分が言った事が信じてもらえず、拗ねて眠ってしまった。
 翌朝。伸夫は、朝起きて直ぐに、スケッチブックを開いた。ちゃんとネコの絵がある事を確認してから、学校に行く準備を始める。もちろん帰ってきてからも、確認する。伸夫は、これを、毎日やっているせいで、いつの間にか日課にしてしまった。無いか、在るかのチェックも付けている。
「ん?」
伸夫は、おかしい事に気がついた。晴れている日の昼間は、真っ白なのに、雨の日は、ネコの絵がある。伸夫は、怪しいと思い。学校の休みの日に、凛と一緒に隠れて、スケッチブックを見る事に決めた。
 当日。太陽の光が、家にあるピンクのカーテンを貫通して入ってくるぐらい眩しい日に、伸夫と、凛は、予定通りスケッチブックを隠れて見ている。待ちに待っていた日だけに、二人の顔には、少しばかり力が入っていた。時間が経つのは、早いもので、昼過ぎになっていた。その時、二人の目の前で、スケッチブックが動き出して、そこからネコの絵が飛び出してきた。
「凛、今の見たよな?」
「うん…」
二人は、ありえない光景を目の当たりにして、少し固まっていたが、ネコの後をつける事にした。伸夫は、見失わないように、じーっとネコを目で追っていた。しばらくネコの後を夢中でつけていると、二人は、筑巌山に入ってしまった。
「凛、捕まえるぞ」
蝶や花と戯れているネコを見て、居ても立ってもいられなくなった伸夫は、雑草の中、身を潜めながら凛に、小声で指示をして、ネコの方に飛び出した。ネコも伸夫に気づくと、急いで逃げようとする。ネコは、伸夫の手を掻い潜って、咄嗟に、後ろにあった、二本の細い柱の裏に隠れた。
「今だ!」
伸夫が、大声を出した時、二本の柱が、動き出した。柱の正体は、凛の足だった。慌てたネコは、反動で体が少し固まってしまった。その瞬間を凛は見逃さなかった。ネコは敢え無く捕まる。ペラペラなネコの体は、がさつな、凛の捕まえ方でボロボロになっている。
「ニャー!」
ネコは凛の手の中で、怒って泣き叫んでいるの。しかし、凛は笑顔で、ネコを撫でている。その時、ネコは、自分を捕まえた奴が、凛だと気づき、少し落ち着いた様に見える。ネコは、知っていたんだ。自分を描いてくれた凛を。


――そう、俺様は自分の親を知っている。

 俺様は、どんな時も一匹だと思っていた。あんな狭苦しいスケッチブックの中で、暗いし、友達もいない。せっかく、外に出られると、思っていたのに、自分が絵だから、仲間にも相手にされないし、自由も制限されている。そんな風に思っていた。けど、違う。凛と、今日触れ合ってみて、少し分かった気がする。
凛がくれた暖かいものが、ほんの少し、この俺様に命(時間)をくれたんだと。気がつくのが少し遅すぎたかもしれないな。なんだか、少し眠くなってきちまったぜ。


最近の世街は腐っている。
どこの景色を見ても、花一つ咲いてない。
でも、こんな世街も満更じゃないな。
もっと早く気づけば良かった。
自分が変われば、こんな世街も、もっと違う風に見えたのに。




絵に描かれた猫は、凛達の前から姿を消した。家に帰った凛は、ネコが寂しくない様にと、もう一匹のネコの絵を描いた…。













完。
2006-01-18 01:22:06公開 / 作者:トロヒモ
■この作品の著作権はトロヒモさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
どうも、こんにちは。トロヒモといいます。
このストーリーは、スケッチブックの中で狭苦しさに、嫌気がさした、一匹の絵に描かれたネコが、外に出てみて、変わる話しです。周りを変えるのではなく、自分が変われば良かったというネコを描いて見ました。


皆様の、アドバイスを参考に、自分なりに直してみたつもりです。気になる所や、感想などがあったら、書いてもらえたら光栄です。
この作品に対する感想 - 昇順
読ませていただきました。内容というか題材というか、発想は良かったと思います。ただ読み返しが足りていない印象を受けました。視点が定まっていないというか、伸夫視点にしたいのか猫である「俺様」視点にしたいのかが分かりにくくて(というか唐突に伸夫視点になったり俺様視点になったりして)終始安定していなかったような印象です。で、あとは個人的に感じた違和感ですが、「柱の正体は、凛の足だったのです」というところだけがですます調になっていること。あと読点の打ち方がとてもリズムが悪いような気がしました。こう書いてみると何だかあらさがしばかりしているようで心苦しいのですが、ただ絵の中から猫が出てくるというのはとても楽しかったので、もう少し丁寧に書いてもらえるとさらによかったかな、と思います。
2006-01-13 22:14:37【☆☆☆☆☆】ゅぇ
初めまして、かにそうすと申します。拝読させていただきました。
ネコが絵の中から飛び出てくるという発想、そして『俺様』の正体が絵のネコだったというのも面白かったです。ただ、読み返しが足りないというのは私も感じました。視点が三人称なのか、それとも『俺様』のネコなのか、その辺もはっきりさせたかったなと思うところです。また、タイトルが『猫』であるのに対し、本文は『ネコ』にしているのは何か意味があるのでしょうか? できれば統一してもらいたいなとも思います。でも、作品自体はとても暖かく楽しかったです。次回作に期待しています。
2006-01-14 13:33:59【☆☆☆☆☆】かにそうす
作品を読ませていただきました。読後に感じたのは「もったいないなぁ。もっと膨らませればいいのに」でした。せっかく面白い設定なのに読み足りないです。特に絵の猫の心情が前後にしかなく、絵の猫のキャラクターを生かし切れていなかった印象です。もっと絵の猫の現状を否定するような感情や、凛に対する感情に触れて欲しかったですね。では、次回作品を期待しています。
2006-01-15 23:33:48【☆☆☆☆☆】甘木
拝読しました。題名から仕掛けそのものが見えてしまうため、何をネコに語らせたかったのかが肝になるはずなのですが、その部分に力が籠められているようには感じられず、何を描こうとしたのか能く解らないまま終わってしまった印象です。先ず、御自身がテーマを把握してみては如何でしょうか。次回作御待ちしております。
2006-01-16 08:16:23【☆☆☆☆☆】京雅
初めまして、ミノタウロスと申します。冒頭の問題提起。こう言うのが好きな私はこの童話チックな話にどんな解決を導きだすのか興味津々でした。この結末いい感じです。確かに文章の視点がやや混雑している気がしましたが、理解出来ない程ではないありません。しかし、もし修正にチャレンジするのであればこの作品は良くなると思いますよ。視点を混在させるのであれば冒頭と結末のみ【俺】にするとか、整理してみては。では、次回作お待ちしております。
2006-01-17 15:49:42【☆☆☆☆☆】ミノタウロス
ゅぇさん、かにそうすさん、甘木さん、京雅さん、ミノタウロスさん、感想や批判いただけて、とても嬉しく思いました。
書きたい事や伝えたい事が、この話しには、たくさんあるのですが、字にするのが、苦手でして…、理解不能と思われても、仕方がないと思っています。
もう一度、このストーリーを修正して出してみたいと思います。その時に、またアドバイス、感想もらえたら、嬉しいです。トロヒモでした。
2006-01-17 23:09:08【☆☆☆☆☆】トロヒモ
批判と批評を書き間違えましたスミマセン。
2006-01-17 23:15:37【☆☆☆☆☆】トロヒモ
拝読しました。改行によって多少読み易くはなったと感じるものの、ネコの心理の推移が速過ぎたと思います。(文量、物語内の時間が)短かったのが残念です。次回作御待ちしております。
2006-01-23 09:47:03【☆☆☆☆☆】京雅
計:0点
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