『地獄と化した時 =エピローグ=』作者:空鷹 / ِE - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
ロイツ村のとある豪邸に悪魔が現れた。父はルーツ軍事基地から、出兵し戦死する。さらに莫大な遺産を強盗団が狙う。ひぐらしの鳴く夏の日々、幼い少年の感じた、平和が地獄へと化す時だった。
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原稿用紙約4.96枚
 あの日、何もかも変わってしまったのだろう。少なくとも俺は、違うものになってしまった。

 残暑厳しいあの日、夏休みの終わり頃だった。
 ヒグラシの声を聞きながら友達に別れを告げ、家の門を通り、家までの少し長い道をすすむと玄関先に、星印のついた黒い車と、二人の黒い男。前にはひざまづいた母の姿があった。
 ゾクッ
 嫌な予感がよぎる。背筋を凍えさせるような……
 母に恐る恐る近寄ると、二人の男は捨て犬を見るような目をこちらに向けた後、そそくさと車に乗り込み去っていった。
「母さん、どうしたの?」
「…………」
 母は何か言いたそうではあったが、下を向き震えながら泣いている母の背からは何も伺えなかった。しかし、母の手に握られていた白い紙からは全てを知ることができた。

「1611年 7月28日
宛 ラルフ:シュミッド家
貴方の主人であるラルフ:シュミッド大尉は、西部戦線での特殊作戦についていた際、作戦実行中に敵の強襲により、自軍劣勢の中、自ら戦闘指揮をとられ勇敢に戦いました。しかし勇戦の末、敵の刃を受け、壮絶な戦死を遂げられました。我々は彼のことを永久に称えるとともに、ご遺族への悲しみを感じて止みません。
    ルーク中央軍司令部」

 父の戦死を知らせる、白い紙。
 父が徴兵されてから5年と少し。帰ってくると信じていた母を神は裏切り、ついに死体すら拝めないというのだ。帰ってきたのは父の遺品として届けられた軍刀だけだ。母が泣く訳も分かる。俺の頬にも冷たい水が流れていくのが分かる。
 やがて水は地面に落ち、夏の地はそれを即座に吸い取る。
 いったいあの戦争で、どれだけの涙を大地は吸ったのだろう。兵は年間、桜の花びらより遥かに多く散った。そしてそれを大きく上回る遺族達がきっと吸わせるのだから、豪雨の雨量をも凌駕したのではないかと、あの日俺は思った。
 それから四ヶ月、死の戦争は我が方の勝利で終戦した。

 あれから、三年の月日が経った。
 母はあの日以来、随分と変わってしまい、暗い闇が常につきまとっている。俺に対する接し方も冷たい。やってくれるのは、飯の用意と洗濯だけで、会話はほとんど交えない。

 そんなある日、再び神は俺たちをいじめた。
 ガシャーン、バン!
 玄関から異様な音。続いてたくさんの足音が聞こえた。
 命の危険を感じるのに、大した時間はかからなかった。冷たい母もすぐに俺をカギ付の押入れに、ゴミのように押し込み、カギをかけた。
 ガシャン!
 最初の音に近い音が扉の前に響く。
 ついで叫び声が聞こえた。母の声だった。人間とは思えない悪魔のような……
 20分も経ったろうか。今まで通りの静寂に戻った。
カギを開け、扉を開けようとするが開かない。音はたてたくないが、仕方ないので蹴り開けることにした。
 ドン!ズル……
 変な音が聞こえたが、ともかく開いた。暑さのあまりすぐに飛び出すと、何かを踏みつけた。足元を見ると、それは我が目を疑い、憎むものだった。
 足で踏んでいたのは、すでに脈のない母であった。腹に短刀の刃が刺さっており、出血で体と部屋は紅く染まっていた。
「母…母さん……?」
 手で強く揺さぶってみる。当然反応はない。その時俺は、意識せずに大声で泣いていた。
 しかし、再び玄関に人の気配を感じた。
「ほんとだな。確かにまだ誰かいるや。ちゃんと探せよな全く。」
 声が一直線に向かってきている。
 母は絶命後も右手に、父の遺品である剣を強く握っていた。左手の近くにはそれの鞘もある。
 俺は、また無意識の内に剣を母の右手から自分の右手に握り直した。
 重い。予想以上に重い。
 剣は、最初の質量に加えて、母の怨念も抱いてるのだろうか。
 そんなことより、声はすぐそこに迫っている。5メートル、3メートル。 そして、部屋の前。
「あぁ!?なんだガキかよ。さっさと母さんの後を追いな!」
 と、瞬間俺の剣先は背後の男に向け、腕を渾身の力で押した。
 ドス…
「うぅ…あぁぁ……」
 子供だといって油断していたのだろうか。剣は男の腹を深々と貫き、男は唸り声を上げながら、仰向けに倒れた。
 床は違う紅色が混ざり、おどおどしい色に変色した。
 俺は再びひざまづき、横にいる男のような唸り声を上げた。

 どれくらいの時間が経ったのだろうか。
 俺は立ち上がり、男の腹から剣を抜いた。そして、家族写真のある写真たてから、写真を取り出しポケットに押し込んだ。
 それから、人殺しのような…いや、人殺しの目をして家を出た。
 
 復讐してやる……

 不可能を考えない少年、14歳と3ヶ月の夏の夜。


2006-01-01 16:31:44公開 / 作者:空鷹
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■作者からのメッセージ
はじめまして。初投稿の空鷹です。
これは、続編も考えておりますが、試験段階であり、また練習状態です。
この汚く、分かりにくい、最悪な文章を少しづつ改善していきたいと考えている次第であります。
厨房の書いている文です。どうか、悪文お許し下さいませ。
この作品に対する感想 - 昇順
はじめまして。感想などを入れるのも初めてなので至らないところも多いかと思いますが。
最初にいじわるな事を言っておくのならば「中学生が書いているから悪文を許して欲しい」というのであれば、投稿する必要はあったのでしょうか。また、正規表現を提唱しているサイトなのですから、目を通して直してみてはいかがでしょう。
さて。「足元を見ると、それは我が目を疑い、憎むものだった。」の「憎むものだった」が何に対してのものかわかりません。見てしまった自分の目でしょうか。 家に戻ってきた強盗が話しているのが独り言だとは思わなかった(一人で戻ってきたのだとは思わなかった)のですが、彼はずっと独り言を言いながら少年の部屋へ戻ってきたのですか? 「と、瞬間俺の剣先は背後の男に向け、腕を渾身の力で押した。」抜かして読んでみると良いのかもしれませんが「剣先は腕を押した」のように読めます。 「おどおどしい色に変色した。」⇒「おどろおどろしい」の間違いでしょうか? 「俺は再びひざまづき、横にいる男のような唸り声を上げた。」は刺された男のような唸り声ですか? どうしてそのような気持ちになったのか私にははかりきれませんでした。
細かい指摘は以上です。全体的な感想としては、「あまり乗り切れなかった」と言ったところでしょうか。主人公の少年一人称で進んでいる割に、主人公の気持ちの移り変わりなどに比べて客観的な描写が多かったように思います。「そんなことより、声はすぐそこに迫っている」と言っているものの焦ったような感じはありませんし、ね。
次の更新を楽しみにしています。
2006-01-02 03:36:54【☆☆☆☆☆】小杉誠一郎
初めまして、京雅と申します。拝読しました。父の死を知ったシーンは回想の中の回想だから敢えて淡白に綴ったのかと思いましたが、後半は「変わってしまった」原因を示す重要な箇所であるのに事象が単調に綴られ、殊更淡白に感じました。心情描写が足りていないと思います。また、擬音語は、描写で表現しても良かったかなと(それがどんな擬音語であるのかにもよるのですが)。文脈の乱れは、やはり書き続けることと、充分な見直しが必要不可欠ですね。次回更新御待ちしております。
2006-01-02 05:11:07【☆☆☆☆☆】京雅
初めまして甘木と申します。作品を読ませていただきました。全体的に感情面が弱くて作品が淡泊に感じられました。また、異世界物はその世界は読者には見知らぬ世界であるので、どのような社会なのか詳細な情報提示が欲しいですね。我々の社会で見れば車や写真が発明されている頃には、武器の主流は剣から銃器に替わっています。主人公が復讐を誓っていますが、誰に復讐するするのでしょうか? ちょっと分かりづらい表現でした。辛口の感想ですみませんでした。では、次回更新を期待しています。
2006-01-02 07:25:50【☆☆☆☆☆】甘木
計:0点
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