『夕方色な道』作者:灯瑠 / AE - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
「夕方の色」に染まった道にあなたは何を考えますか?
全角2605.5文字
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原稿用紙約6.51枚
…立てない

 突然視界がゆがんで、気づいたら私は道で座り込んでいた。
 足に力が入らない。体が震える。

 何故だろう?

 友達と一緒に通った時は平気だった。
 でも、一人でここを通るとどうしても動けなくなってしまう。
 よく分からないけど、怖いな

 物心ついた時から、私にとってこの道は「呪いの道」になっていた


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 朝のホームルームも終わりに近づいていた。

 「おはよーございまーす」
 のぺっと挨拶をして、教室のドアを開ける。先生がギロリとにらんできた。
「戸口。今日はどうした」
「どうもしませんが」
 さらっと返す。
「戸口!遅刻しといて、何だ、その態度は!ふざけるな!!」
 汚い先生の怒鳴り声が教室中に響く。クラスメイト達はシーンと顔をうなだれていた。

 先生が顔を真っ赤にさせて怒っている。
(…タコみたいだな)
 タコという表現に我ながらふっと笑ってしまった。
 私の「ふっ」に腹を立ててか、タコは怒りを倍増させてしまったようだった。
「戸口。答えろ」
「いやあ。『呪いの道』を通ったもので」
「なんだそれは」

 ヘラヘラと自分の席に逃げる。遅刻くらいいいじゃない。先生の舌打が聞こえたので、とりあえず私も舌打を返した。
 どうもこの担任は好かん。私、こういう熱血タコが一番嫌いなんだよなあ。遅刻してしまったもんはしてしまったんだよ。終わったことをウダウダと。男らしくない。

「はぁーあ」

 それにしても…だるい。
 私は机につっぷした。『呪いの道』を通った後はいつもこうだ。体がだるくて重くて、勉強どころじゃない。
 通らなきゃ良かったな…
 もう遅いか。

 だるだるの私と裏腹に、熱血タコはツバを撒き散らしながらマシンガントークしている。
「いいか、お前らはもう高校2年だ。将来のコトも真剣に考えなきゃいけない年である。なのにノコノコ遅刻してくる奴がいるって事自体大きな問題だ。小さな乱れも大きな乱れ。将来の夢もあーだこーだ…」

 熱血の話(聞いちゃいられない)も終わりに近づいたころ、背中をツンツンとつつかれた。
 だるだると振り向くと、後ろの席の池内さんが目を輝かせている。
 
「…何か用?」
 池内さんは目をキラキラ、こっちをチロチロ見ている。
「…何?」
「アイ・コンタクト送ってるんだ」
「通じないから口で言って」
 天然バカ子…さすが池内さんだ
「分かった。口で言う。ね戸口さん今日もカッコイイね!」
「いや…かっこよくないし」
「前から思ってたもん。かっこよくないなんて…それって謙遜って言うんだよ」
「知ってるよ」
「ほらほらほらほら!カッコイイ!なんか、問題ナッシング!って感じだよね!」
 お前の頭がナッシング、だろ。という言葉をかろうじて飲み込んだ。こんなに天然でボケでアホな子はこの時代、珍しいぞ?
「前から言おうと思ってたけど、私ね、戸口さんみたいにクールになりたいの!」
「いや、無理」
「やーん!かっちょいー!」
 …ダメだこりゃ。私はふっとため息をついた。池内さんと話すと、いつもあっちのペースになってしまう。
 入学式で出会い、あれからもう2年か。私たちはいつの間にか友達だった。
 正反対だけど何故かいつも一緒だったな…
 私たちはいつも「戸口さん」と「池内さん」。素っ気無くふるまっていても私は池内さんが大好きだった。

「バーカ」
 池内さんのおデコをピンとはじく。
「った。ふふ、戸口さんもバーカ」
 彼女も私のおデコをはじいた。

ピン、ピン、ピン、ピン、ピン、ピン、ピン、ピン…ベスッ!ベスッ!

「おい、バカ共」
はっと横を見ると熱血タコが出席簿を片手に、さっきより赤い顔になっていた。
「とりあえず一時間目始まるまで廊下に立ってろ」
「はーい」

 私たちが仲良く廊下に立ったのは言うまでもない。



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「んーっ、今日も疲れたね!」
 池内さんがピョンとのびをした。
 もう日は暮れかかっている帰り道。道がオレンジ色に染まっている。
 野球部がひたすらボールを追いかける校庭を横目に、帰宅部の私たちはスッタラスッタラ歩いていく。

「瀬木先生ったら反省文書け、なんて。ホームルームでお喋りしてただけなのにね」
「2週間、毎朝毎朝やってたらそりゃね」
「いけないのかな?」
「いけないだろ」

 そうかあ、と珍しくも池内さんは神妙な顔をする。おお、珍しい池内フェイス。
――ふと、池内さんは足を止めた。
 おっと、と私は3歩前に行ってしまった。

「どした。早く歩きなよ」
「ん。オレジンだなって」
「おれじん?」
「オレジン?正しくはオレンジ?だなって。道が」
 どういう間違え方…もうつっこむ気力もない。

 でも、確かに辺り一面オレジン…オレンジ色になっていた

「ね、綺麗じゃない?」
「あ、まぁね」
「…なによお。反応薄いなあ」
「あんたが濃すぎるんだよ」
 うすいよおと池内さんが暴れる。池内さんっておとなしいね、というのは一生私の口から出ないであろう。命かけるよ。

「ねえ、戸口さん。オレンジって夕方の色だよね」

え?

「……夕方の色。」
「…戸口さん?」


  夕方の色…
  オレンジ…
  道いっぱいに…


「戸口さんってば!」


  なんだろう、この感覚。
  なにかが…

  だめ、思い出せない


「ねえっ!!」
 池内さんが私の頭をはたく。
「うっ、あっ、何?」
「何って…どしたの?ボーッとして」
「いや…」

 私はオレンジの世界を見わたした。
 一瞬…何だったんだろう…

「ごめんね、私なんか悪いこといった?」
 私は悲しそうな顔をする池内さんに、軽くチョップした。


「………バーカ。」





-続-
2005-11-20 23:28:10公開 / 作者:灯瑠
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■作者からのメッセージ
はじめまして。初小説です^^;

まだまだ未熟ですが、ちまちま書いていきます
長い目で見守ってやってください
この作品に対する感想 - 昇順
はじめまして。時貞(ときさだ)と申します。拝読させていただきました。トワイライトゾーンのようなミステリアスな出だしでしたが、今回の内容そのものはどちらかというと、軽いノリが楽しいお笑い路線といった感じでしたね。文章も読みやすかったですし、掛け合いの面白さやテンポの良さなど、初小説とは思えないほどすらすら読まされてしまいました。お笑いの中にあって、謎めいた雰囲気を小出しにしているところも興味をそそられますね。正規表現から外れている個所も目に付きますが、それらはおいおい身に付けていっていただきたいと思います。それでは、次回の更新も楽しみにお待ちしております。乱文失礼致しました。
2005-11-21 12:53:45【☆☆☆☆☆】時貞
初めまして、京雅と申します。拝読しました。人間関係性を表した掛け合いがテンポも良く容易く物語へ入れました。ですが、人物の容姿や背景が朧だったために情景も薄かったと思います。惹きこみが良かっただけに、映像として見えてこなかったのが勿体なく感じました。次回更新御待ちしております。
2005-11-23 15:40:50【☆☆☆☆☆】京雅
初めまして甘木と申します。作品を読ませていただきました。登場人物の掛け合いや、『呪いの道』というキーワードも十分興味を惹く物でした。ただ、物語を構成する背景や、登場人物の容姿など情報不足でイメージしづらかったです。教室の雰囲気、呪いの道がどれだけ嫌か、池内がどのような体勢で見ているのかなど、もう少し描写を細かくすると作品世界がより鮮明になると思います。では、次回更新を期待しています。
2005-11-23 22:14:40【☆☆☆☆☆】甘木
計:0点
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