『爪』作者:翠にゃん / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
「爪」と「サボテンの針が抜け落ちた」という2つをいれたもの というお題を出され、書いたものです。
全角2401.5文字
容量4803 bytes
原稿用紙約6枚
午前3時。
あまりの息苦しさに目覚めたとたん、視界に入り込んできたのは真っ赤な月と真っ赤な景色だった。
寝ぼけてるんだろう・・・と思いながら目を閉じてはみたものの、どんどん苦しくなっていく。
体中のあらゆる器官が握りつぶされるような感覚に陥り、ついに俺は飛び起きて顔を手で覆った
・・・・・・つもりだったのだが。
「あ・・・あれ?」
体がいうことをきかない。
飛び起きた・・・のも気持ちだけで、微動だにしていなかったのだ。
そして。
「ギャァウゥアウゥアウゥアァァァァァァ------」
何か化け物の発するような声。
そっちの方を見ようとした次の瞬間、ズタズタになった枕が落ちてきた。
「なんで上から俺の枕が??」
不思議に思いながらふと前を見ると、さっきと違う景色だった。
今の衝撃で、体の向きが変わったらしい。
そして声の正体が目に飛び込んできた。
それは・・・・・・暗闇に光る真っ赤な目。月の光に照らし出された鋭い爪。
その爪からしたたり落ちる、真っ赤な液体。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっっっっ!!!!????」
声にならない声を発した俺に気づいたのか、化け物は「グルグル」とノドを鳴らし、
赤い足跡を地につけながら1歩、また1歩と近づいてくる。
(ヤ・・ヤバい・・・殺される・・・)
化け物がニタリと笑った気がした。
俺は必死になって逃げようとするが、やはり体は動かない。
目の前に迫りくる化け物が、突如地を蹴った。

シュッ

右頬を鋭い爪がかすった。
「うわぁぁぁっっっ!!!」
右のこめかみ辺りに鋭い痛み。俺はゴロゴロと床を転がる。
あと少し左に逸れていたら目に直撃していただろう。
転がる俺を追い掛けてきた化け物が次の瞬間、視界から消える。

シュシュッ

爪が空を切る。
「くぅっ・・・」
背後から攻撃されたらしい。背中に鈍い痛みが走る。
化け物の手は休まることなく、俺の体に傷を作っていった。



・・・・・・・・・。
どのくらい時間が立ったのだろう。
化け物との死闘を繰り広げているうちに、俺はあることに気がついた。
どういうわけだか化け物は、なぜか右横っ腹のわざわざ急所を外したところを狙っているのだ。
確かに傷はどんどん増えていくのだが、死に至るような攻撃ではない。
(こいつ・・・もてあそんでるのか・・・・・・)
体さえ動けば防御も攻撃もできるのに・・・。
俺はくやしくて、化け物を睨みつけた。

「ギャァウゥア---」

反抗的な目をした俺にムカついたのだろうか。
しばらくこちらの様子をうかがっていた化け物は、咆哮をあげて襲いかかってきた。
またしても床を転がる俺。
(もうダメなのか…)
半分絶望的になりながら固くつぶっていた目をおそるおそる開けてみると、 化け物と自分の姿が鏡らしきものに映った。
そして俺は迫りくる爪と自分の姿を見て絶叫した………。



「な・・・サ・・・・・・・・・・・・・・サボテンっっっっっ!?!?!?!?」




ガバッッッ!!

自分の声で飛び起きた俺は、全身にびっしょりと嫌な汗をかいていた。
「ゆ・・ゆめ・・・・か・・・・・・」
物凄い疲労感だった。
「み・・・水でも飲も・・・・・・」
ベットから降りようと右足を床につけた瞬間、
「??」
何か違和感を感じた。
床はヌメヌメとすべり、非常に気持ち悪い感触だったのだ。
暗くてよくわからないので、電気をつけてみた。
すると・・・・・・・・・・・・
「ぎ・・・ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

床は真っ赤な液体が一面に広がり、ところどころ赤と白の羽のようなものが散乱していた。

そしてパニック状態になった俺の視界に何か蠢(うごめ)く物体・・・
「って・・うわっ・・・にゃーすけ・・・・・・・・・」
「にゃぁん?」
どっからひきずりだしたのか、赤いインクの入った入れ物にダイブしたらしい。
全身真っ赤にした飼い猫のにゃーすけが、不敵な笑みを浮かべて俺にすりよってきた。
落ち着いて周りを見てみると、床だけではなく本棚やらパソコンやら、はたまたベットの上まで
赤い足跡や染みがぺたぺたとついている。
そして元は白かった枕がバラバラに引き裂かれて床に落ち、中身の羽毛が飛び出してひどい状態になっていた。
安眠を約束してくれた、ふかふかのお気に入り枕。
「くそっ・・・高かったのに・・・なんてことを・・・」
このあと待っている掃除洗濯や出費のことを考えて、
がっくりと肩を落とした俺の目に飛び込んできた、さらなる衝撃。

「イヤァァァァァァっっっ!!! 俺のサボ子ぉぉぉぉっっ!!」

サボテンに名前つけてる痛い男・・・っていうのはとりあえず置いといて。
毎日毎日朝も帰宅時も夜も話しかけて、やっと気持ちが通じ合えてきた(はずな)のに・・・。
Myサボテンの『サボ子』は床に転がり、赤いインクと爪あとがあちこちについた無惨な姿になっていた。
「あぁぁぁぁ・・・」
そしてサボ子のチャームポイントだった、可愛らしいトゲの1本が床にポツンと抜け落ちていた。
そこにはびちょびちょになった羽毛らしきものがひっかかっていて、
あきらかににゃーすけが「ちょいちょいあむあむ」したあとが残っていた。

「そっか・・・お前が助けを呼んでたのか・・・・・・(泣)」

無惨になったサボ子と、満足げなにゃーすけを交互に見比べ、
俺は久しぶりに立ち直れないほどのショックを受けていた。

2005-11-02 17:34:41公開 / 作者:翠にゃん
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■作者からのメッセージ
相変わらず拙い文章ですが、よかったら見てやってください。
感想もらえたらもっと嬉しいです。

その前に投稿したやつの続きを先にあげようと思いつつ、
結局まだ完成していない…そんな遅筆の翠にゃんでした。
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