『私という名の牢獄』作者:時貞 / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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「笑え。……笑えよ」
 狭いアパートの一室――。
 日はまだ高く昇っているというのに、遮光カーテンを隙間無く閉められたその部屋は、発した声の主の心理状態をあらわしているかの如く薄暗い。中央には小さな円形の卓袱台がひとつ。その周囲に散乱した、食器皿やコーヒーカップの破片。それらに囲まれて、顔を俯けたまま嗚咽をもらしている少女が一人。見たところ、年の頃は三歳から四歳あたりといったところであろうか。身体の線が細く、その肌の色は病的とも言えるほどに青白い。顔立ちは整っている。瓜実顔におさまった両目はくっきりとした二重瞼で、長い睫がその双眸をより大きく可憐に見せている。少し低めだが形の良い鼻。ぽってりとした唇。真っ直ぐな黒髪を肩の上の長さに切り揃えていた。泣き顔に歪んでさえいなければ、さぞや愛くるしい少女であっただろう。
「めそめそ泣いてんじゃねえよ! 笑え。笑えって言ってんだよッ」
 少女の前に仁王立ちになっていた女が、ヒステリックにそう叫ぶと腰をかがめて少女の頬に力いっぱい平手を叩きつけた。少女は横っ飛びにカーペットの上へと倒れる。顔の半分がじんじんと痺れていた。鼻血が流れてくる。少女は慌てて、小さな両手でその鼻を覆った。
 ――鼻血でカーペットを汚してしまったら、更にお母さんを怒らせてしまう。怒ったお母さんは更に叩いてくるだろう。もしかしたら、一昨日と同じように鳩尾に脚蹴りを叩き込まれるかもしれない。あのときは苦しかった。呼吸が止まり、そのまま死んでしまうのではないかと思った。喉元までせり上げてきた吐瀉物を、必死の思いで堪えた――。
 その時の少女は呼吸が止まって死んでしまうことよりも、吐瀉物でカーペットを汚して母親の怒りを更に煽ることの方が怖かった。
 カーペットの上に身を起こし、懇願の表情を浮かべて母親を仰ぎ見る。両目から大粒の涙がぼろぼろと零れた。
「何だよ、その目は? 甘ったれてんじゃねえぞッ! ――ああ、お前ッ、鼻血がカーペットに垂れてんじゃねえかよッ」
 母親は少女の髪の毛をむんずと鷲掴みにすると、引っ張り上げてゆさゆさと頭を揺さぶった。少女は母親にされるがままになっている。抵抗する気など、もはや無い。涙とともに流れ落ちた鮮血が、薄いベージュ色のカーペットの上にじんわりと染みをつくっていった。
「お、お母さん……」
「……」
 突然母親の手が止まる。それと同時に、室内に強烈に立ち込めていた暴力的な臭いがおさまる。母親の身体は小刻みに震えていた。すると突然少女の身体を強く抱きしめ、大声をあげて泣き崩れた。
「――ああ、ミヤちゃんッ。ミヤちゃんッ。ごめんねえ。お母さん、なんでいつもこうなっちゃうんだろう? ミヤちゃんのことが本当は大好きなのに……。なんでいつもこうなっちゃうんだろう?」
 少女は何も言葉にせず、母親に抱きしめられるがままになっていた。
 少女は思う。いつものことだ。これで今日はもう、お母さんから叩かれる時間は終わった――。

 少女の母親は見たところ二十代後半、いや、見ようによっては三十代半ばとも思われる。横顔のラインが少女に少し似ているが、基本的に少女は父親似であった。母親はいつも碌に化粧もせず家に閉じこもり、ただただ夫の帰宅を待っていた。剥き出しになった素肌はからからに乾燥し、ところどころひび割れが出来てしまっている。
 彼女が子育てにノイローゼを感じ始めたのは、少女――ミヤが生後一ヶ月経つか経たないかといった早い時期のことであった。ミヤはなかなか母乳を飲まなかった。通常の新生児が飲む量の半分も飲まず、担当医師から処方された栄養剤入りの粉ミルクをなんとか飲ませたが、飲んでしばらくすると吐き出してしまう有様だった。すると、腹が減って泣き出してしまう。これが一時間毎に繰り返されるのだ。
 夜泣きも頻繁であった。仕事で疲れた夫は別室で寝入ってしまい、彼女は一人、夜中に何度も起きては泣きじゃくる我が子をあやした。ようやく娘が寝就いたと思い、ホッと胸撫で下ろして眠りに就こうとした途端、再びむずがる我が子――彼女は寝不足の日々が続いた。
 そんな日々が続くうち、彼女は我が娘の存在が疎ましく思えるようになってきてしまった。そんな自分の感情が最初は恐怖であった。彼女自身、幼い頃に両親からの虐待を受けた経験を持つ。彼女は、我が子にだけは自分のような思いをさせたくはないと思っていた。しかし、その強い意志とは裏腹に、我が子に対する母親としての愛情が日に日に薄れていってしまう現実も感じていた。いや、愛情が薄れていくというよりも、我が子をどう育てていけば良いのかがわからなくなってしまったのである。
 彼女の子育てノイローゼに拍車を掛けたのは、子育てに無関心な夫――仕事一筋で家庭を顧みない夫にもその原因があったであろう。夫は家事や子育てを彼女に一切任せ、休日であっても一人で趣味やレジャーを楽しんでいるような男であった。お互いの両親の反対を押し切ってまで結婚に踏み切った二人である。当然彼女も、子育ての悩みを今更両親に相談することなど出来なかった。周囲に腹を割って話せる友人や知人も居なかった。
 やがて彼女の子育てノイローゼはエスカレートし、彼女自身がもっとも恐れていた幼児虐待という形にまで発展してしまったのである――。
 彼女も悩んだ。悩みに悩んだ。娘は大事な存在であると思っている。かつての自分のような経験をさせたくは無い。しかし、どうしても虐待してしまう。虐待したくは無いと強く思いながらも、暴力をふるってしまっている自分が居る。娘をどう愛したらよいのかがわからない。どうして自分が虐待を繰り返してしまうのかがわからない。そしていつも、暴力で娘を傷つけたあとには耐え切れないほどの自己嫌悪が待ち受けていた。

 今日も少女――ミヤは、母親からの罵声を浴びていた。
 母親が部屋に飾ってある置時計の位置がずれていたので、それを元の位置に戻そうとしただけの事である。いきなり背後から大声を浴びた。
「オイ、お前ッ! 何悪いことやってるんだよッ。勝手に触るんじゃあないよッ」
 振り返った瞬間、母親の平手打ちが飛んできた。もはや肉体的な痛みには慣れてしまっている。ただ、どうしても理解できない事で叩かれなくてはならないこの状況に、そして、自分を叩くときの母親の人間離れした形相に、強烈な痛みを覚えた。
 ――どうしてお母さんは私を叩くんだろう? どうしていつもこんなに強く叱るんだろう? 私はそんなに悪い子なんだろうか? ねえ、お母さんはどうして……。
「何だよ、その目は? 冗談じゃないよッ! 誰が育ててやってると思ってんだよッ」
 母親は、自分自身の発する言葉でエスカレートしていく。少女の身体は鞠のように転がった。 母親の脚蹴りが背中に浴びせられる。少女は目を瞑り、必死に耐えた。
 ――この時間さえ乗り切れば、お母さんも痛いことをしないんだ。お母さんも……。
 母親は、半狂乱に髪を振り乱しながら少女に暴力を振るった。肉体的な暴力と、言葉の暴力とを。それでも少女は目を瞑ったまま、じっと耐えた。
 必死に耐えた。
 耐えつづけた――。


       *


「笑え。……笑えよ」
 古い造りの公共住宅の一室――。
 日はまだ高く昇っているというのに、遮光カーテンを隙間無く閉められたその部屋は、発した声の主の心理状態をあらわしているかの如く薄暗い。
 彼女――ミヤはその顔に冷静な表情を浮かべたまま、ベッドに横たわる年老いた母親に向かって言い放った。母親は皺だらけの顔に無理に作り笑いを浮かべ、懇願するように震える手を伸ばす。
「何だよ、その目は? 甘ったれてんじゃねえよッ! 一体誰に食わしてもらってると思ってるんだよッ。このボケ婆あがッ」
 彼女――ミヤは腰をかがめると、老婆の頬に強烈な平手打ちを食らわした。老婆は涙と鼻汁を垂らしながら、しわがれた声で泣きじゃくり始める。
「めそめそ泣いてんじゃねえよ! 笑え。笑えって言ってんだよッ」
 そう言うと、ミヤは年老いた母親の顔面にペッと音を立てて唾を吐き掛けた。それをまともに受ける老婆。無理に作り笑いを浮かべようとするが、表情がすぐくしゃくしゃに崩れてしまう。 老婆の嗚咽は止まらない。

 彼女――ミヤは思う。
 自分に子供が出来なくて良かった、と。もし子供が生まれていたら、彼女も自分が母親から受けたように、我が子に対して暴力を振るってしまったかもしれない。しかし、彼女にとっては幸いとでもいうべきか、夫とのあいだに子供は授からなかった。
 彼女――ミヤはこうも思う。
 自分に子供が授からなかったのは、その子が受けるはずだった自分の暴力を、すべてこの年老いた母親に受けさせるためだったのだ――と。



      ――了――
2005-10-26 18:25:04公開 / 作者:時貞
■この作品の著作権は時貞さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
お読みくださりまして誠にありがとうございました。
最近身辺が何かと慌しくなってしまいまして、こちらに来たのも久しぶりながら、こうして投稿させていただくのも久しぶりであります。連載の方も微々たる進捗ながら書き綴っており、だいぶ時間が掛かりそうですが、たとえ過去作品集に流れてしまったとしても完結させる気でおります。
さて、今日は久々に時間が取れまして、他の方の作品を読むことが出来てとても楽しかったです。それに勢いをつけて一気に書き上げてみたのですが、如何でしたでしょうか?
ご意見、ご批評、何でも構いませんのでお言葉をいただけたら幸いです。
それでは、よろしくお願い申し上げます。
この作品に対する感想 - 昇順
 こんばんは。はじめまして。
 あのう、文章とか、描写とか、小説としては大変ちゃんとしたものだと思うのですが、失礼ながら、なんか、いやーな読後感だけが残ってしまって…。こういう作品って、どういう読者を想定して、どういう意図でお書きになっているんでしょうか。
2005-10-26 19:30:04【☆☆☆☆☆】中村ケイタロウ
読ませていただきました。嫌ですねぇ。幼児虐待は。私の知り合いにも虐待された経験のある方が沢山おります。殆どの方が親は憎んでると言ってましたね。そりゃあ好きになれってほうが無理ですって(一人だけ例外がおりましたが)私もたった一言だけ母上にもう見捨てたと言われた経験があるのですが、それだけでも大変傷ついた経験が御座います故……話が逸れましたね。兎に角、相手が子供でも老人でも虐めちゃダメですよね。
2005-10-26 20:55:03【☆☆☆☆☆】水芭蕉猫
中村ケイタロウ様>
お読みくださりまして誠にありがとうございます。お気を悪くされてしまったようで、たいへん申し訳ございません。特定の読者を想定して書いたわけではないのですが、僕としましては虐待という現実的なテーマをそのままリアルに描いてみようと試みたのです。救いの無い話であることは重々承知しており、良い読後感を感じる方はいらっしゃらないでしょうが、日々報道されるその虐待という行為の”救いの無さ”を描いてみたかった、というのが動機でしょうか。もうひとつまったく別の面での意図もあるのですが、それは伏せさせていただきます。たいへん考えさせられるご意見を誠にありがとうございました。

水芭蕉猫様>
今回も貴重なご意見をありがとうございました。躾という名目の裏に隠れて行なわれる虐待、介護という名目の裏に隠れて行なわれる虐待、以前にそういった関連のノン・フィクション小説を読んでおりまして、今作は一度描いておきたかったテーマでした。その小説の内容は実際地獄でしたね。虐待される側ももちろん地獄ながら、虐待する側もまた・・・。自分でも書いていて嫌な気分になりました。それでも一度書いておきたかったテーマなのです。今回はとても暗く重いSSでしたので、次回は思いっきりハメを外したギャグを書こうかな(笑)今回も拙作をお読みくださり、誠にありがとうございました。
2005-10-27 10:27:03【☆☆☆☆☆】時貞
きつい……、これだけ重くのしかかり読む者の気持ちを落とす文章、構成力は素晴らしいです。私も母親に階段から突き落とされたりと虐待されてましたからね。辛い辛い。これだけ辛い物語を書けるならば、そこからハッピーエンドにもっていく構成にしたら物凄い感動を生み出す事が出来るのではないでしょうか。次回作ではぜひ、気持ちが温かくなる嬉しくなる読み終えた後笑顔になれるそんな作品を期待しちゃいます。
2005-10-27 13:30:44【☆☆☆☆☆】猫舌ソーセージ
猫舌ソーセージ様>
やはりきつかったですか(汗)そうですね。自分自身がどっぷりこのテーマにハマって一気に書き上げてしまっただけに、一貫して救いの無い内容となってしまったようです。決して読んでくださった方を不快な気分にさせる目的ではなかったのですが、皆様からのご意見を拝読しているうちに、これは今現在の自分の実力ではまだまだ扱うべきテーマではなかったのかな、と実感しております。猫舌ソーセージ様からのご意見、たいへん参考になるとともに今後への励みともなりました。いつもながら本当にありがとうございます。次回は今作とは対極のお笑い路線でいこうかな(笑)
2005-10-27 14:43:44【☆☆☆☆☆】時貞
拝読しました。鬱鬱とした読後感はあるのですが、時貞様の伝えたかったことが何であるのか、正直なところ能く解りませんでした。如何せん短過ぎたと思います。鈍感な私には、これだけ(の文量)だと辛さ等の心情も感じられず(苦笑 作中の「笑え」と母が言う要因は育児ノイローゼで御座いますよね。ではミヤは如何でしょう。単なる模倣でしょうか。そもそも暴力は報復でしょうか。勿論それもあるとは思いますが。受け継がれた愛情表現なんですよね。暴力も愛情も、受け継がれてやり方が解るのです。私にとって難解だったのは、母にはミヤにも夫が居て、どうしてそこから愛すると言うこと、愛されると言うことを学べなかったのか。思考の経路が理解出来得ませんでした。と、妙に曖昧な感想申し訳ないです。自身の家庭が平和だなとは思いました。次回作・連載の続き御待ちしております。
2005-10-27 16:26:37【☆☆☆☆☆】京雅
京雅様>
京雅様からの投げ掛けに、ひとつひとつ頷いては反省しきりです。京雅様が疑問に思われた数々の点はごもっともで、明らかに僕の説明不足、頭の中で自分だけが捉えている情報を、文章で表現するということが完全に出来ておりませんでした。”我が子に虐待を加えてしまう親の大半が、自らも幼少時に親からの虐待を受けた経験がある”といったデータをもとに、少し構図を変換して(親→子を最後に、子→親に逆転させて)描いてみたのですが、テーマそのものすら消化しきれず失敗してしまったようです。毎回思いつつもなかなか実が結ばないのですが(汗)、この失敗から学んで今後の創作に活かしていきたいと強く思いました。毎回の事ながら、ご丁寧なご意見を誠にありがとうございます。
2005-10-27 17:28:02【☆☆☆☆☆】時貞
作品を読ませていただきました。典型的な負の連鎖……嫌ですね。ミヤの状況は心に訴えかけてくるほど良く描かれていて上手いですね。でも、ミヤの感情をもっと描いて欲しかったです。どんなに暴力をふるわれても心のどこかで母親の愛情を信じてしまう感情や、母親を怒らせてしまったのは自分だというミヤの自己批判などがあるとリアル感が増すと思います。また、『笑え』と言うときの母親の表情と、自分の行為に対して泣く母親の表情の違いを丁寧に描いて欲しかったです。ラストの母に対する暴力も、自己批判と自己擁護の感情を書いてからラストのセリフにつなげても良かったと思います。長々と戯れ言失礼しました。では、次回作品を期待しています。
2005-10-28 08:12:49【☆☆☆☆☆】甘木
甘木様>
おはようございます。いつも拙作をお読みくださりまして、また、その都度ご丁寧なご感想をいただくことが出来まして、甘木様には本当に感謝の念が絶えません。そしていつもながらに思うのですが、甘木様の作品全体を捉える視野の広さと、書き手が真から納得してしまうほどに的確なるご意見・ご指摘には畏敬の念すら覚えてしまいます。今作に関しましてはかなり弱気になってしまっていた時でしたので、甘木様からいただいた心有るご指摘の数々にかえって励まされました。この気持ちをパワーに変えて、より精進していきたいと思います。貴重なご意見を本当にありがとうございました。
2005-10-28 09:42:44【☆☆☆☆☆】時貞
こんにちは、ミノタウロスです。以前の連載で私もDVを取り上げた話を書きましたが、これは大変根深く、連鎖はなかなか断ち切れない問題です。断ち切る為には3世代をかけて断たなければならない。大変難しい現代社会の病です。受ける人、与えた人の実際の声を聞くと痛烈です。リアルな話はもっと悲惨です。殴りながら愛して、愛しいと涙を流しながら更に相手を罵倒する。こう言う人は情が深く、深すぎる故に相手を自分の一部と混同し思い通りにならない歯痒さに感情を爆発させます。しかし深い情愛をも持ち合わせているため、その後の愛し方が異常に丁寧で優しく非常に弱い面を見せ付けます。それをされた方は己の非を探します。相手の愛を真実と信じたがります。異常にさせたのは自分のせいだと思います。歪み始めた愛情は連鎖を強めます。
昔から家庭内の暴力は蔓延してました。核家族化はそれを【異常】にしすぎました。あまりにも多すぎる現在、このテーマは真剣に向き合わなければ……と常に思っております故、何だか感想でなくなってしまってますな。個人的にこの内容はもっと深く追求した物を求めてしまいますので、連鎖が親に帰ると言う構図が興味深かっただけに、この分量では物足りませんでした。
大変長々と失礼致しました。では次回作、更新共にお待ちしております。
2005-10-28 10:44:33【☆☆☆☆☆】ミノタウロス
 こんにちは。
 ちょっと読み直させていただいててふと思ったんですが、世間に流布している「虐待の負の連鎖」という理論、どこまで本当なんでしょうか。なんだか、あまりにも運命論的な悲観論という感じがするんです。もちろんある程度の蓋然性はあるのでしょうが、「虐待された子は虐待を繰り返す」という理論の流行が、虐待されてきた人々をさらに苦しいところに追い込んでしまう恐れもあると思います。(おそらく、その恐れは既に現実のものとなっているでしょう)
 思うに、世間やマスコミが愛用している「負の連鎖」理論をそのまま無批判に適用してしまわれたことが、この小説の問題点なんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう。「負の連鎖」ってほんとうなのか、ほんとうだとすればどういう心理のメカニズムなのか、という思索がもっと背景にあれば、心理描写にリアリティーが出ると思います。それが無いので、主人公が何故老母の虐待に走ったのかがよく解りません。「負の連鎖」理論の機械的適用のように見えます。
 そこところの心理が書かれていれば、重い重い読後感と引き換えに、読者も何か得るものがあるだろうと思うんです。
 最初の感想で僕が「気を悪く」していたということは全くありません。むしろ僕の感想でお気を悪くなさっていたらすみません。
2005-10-28 11:02:04【☆☆☆☆☆】中村ケイタロウ
ミノタウロス様>
いつも拙作をお読みくださり、そしてたくさんのお言葉を残してくださるミノタウロス様。沈んでしまっている時にミノタウロス様からいただいたご感想を拝読して、僕は何度励まされたことか数えきれません。そしてミノタウロス様の知識の豊富さ!たいへん参考になるものでございました。仰るとおり、このテーマを活かすためには今回のようなショートx2ではなく、様々な角度から深く抉り込んでいくようなもっと長めの分量が必要であったようです。色々とご教示いただき、誠にありがとうございました。参考になると共に、今回も大きな励みとなりました。いただいたご意見を活かせるように、今後も頑張っていきたいと思います。ありがとうございました。
2005-10-28 11:12:47【☆☆☆☆☆】時貞
中村ケイタロウ様>
二度も拙作にお目通しいただきまして、誠に感謝の念が絶えません。本当にありがとうございます。中村ケイタロウ様からいただいた真摯なご指摘には感謝こそすれ、気を悪くすることなど決してございません。仰るとおり、読み手の方に伝えるべき情報があまりにも不足していた点と、僕の実力不足からなるストーリーの浅さこそが問題であり、皆様からいただいたご感想を拝読して自身の甘さを痛感している次第であります。再読していただいたうえにたいへんご丁寧なご意見をくださりまして、誠にありがとうございました。しっかり受け止めさせていただきました。頂戴したお言葉を無駄にしないように、精進していきたいと思います。
2005-10-28 11:33:27【☆☆☆☆☆】時貞
えーと、何があったのかは存じませんが、沈んでおられたのですね。気付きませんでした。私の言葉などが少しでもお役に立てたのであれば私はそれだけで大変喜びを感じます。勘違いでしたら恥ずかしいのですが、もし連載に行き詰まりを感じているのであれば、焦る事は御座いません。どんなに過去ログへ行ってしまってもアップされたら拝見させて頂きます。時貞様が登竜門に居る限り、応援歌を送らせて頂きます。貴方様なら大丈夫ですよ。
2005-10-28 18:36:05【☆☆☆☆☆】ミノタウロス
 作品を遅ればせながら読ませて頂きました。
 ……ちょっとね、こういう作品を読むとかなり感じ入ってしまう部分があるんですよね。イラっときてしまう部分が結構ある。いえ時貞さんの書き方が悪いんじゃないですし、こういう作品が嫌いなわけでもありません。ただ、何か、胸の奥がムカついてしまうんです。じゃあ読むなよ、と言われたならそれまでなんですがね。
 思うのは、幼児虐待や家庭内暴力ってグロテスク表現の数倍異常心理を表出するものだと。
 歪んだ環境で育った子供が必ずしも暴力に走るわけじゃありません。自分の体験を語る場ではないので具体的に自己体験を述べることはしませんが、「暴力の中で育った子供は(全てとは言っていませんが)自分の子供に暴力を振るうようになる」というメッセージは、少なからず幼少時に暴力を体験した人を不安にさせる、とだけ言わせて下さい。全てが全て暴力に走るわけじゃありませんよ。数字的にもね、半数を少し上回る程度が暴力に走るだけです。そんなことを暴力の体験者の一人として、言わせてもらいたいです。「何言ってんだ、そんなクソ真面目なことを言う場所じゃねぇだろ」と言われたら、まあそれまでですが。
 さて、勝手なことはこれまで。どうも時貞さんの作品の書き方というのは、中盤にダイジェストのような、若干説明の方に力を入れた部分といった部分が出てきますね。いえ、二作品しか読ませて頂いていない僕が偉そうに言えることじゃないんですが。背景を理解させる、という意味ではポイントが高いですね。だけど、もちろん単調にならないように工夫されていると言うことも理解した上でですが、それでもまだ少し単調感は拭いきれていなかったな、と純粋に感じました。もう少し実際にリアルタイムで起こっている出来事に接着してもいいのではないかな、などと。勝手なことばかり言ってしまって申し訳ありません。今後の時貞だんのご活躍に期待させて頂きます。
2005-10-29 21:56:10【☆☆☆☆☆】恋羽
読ませて頂きました。コメディテイストがある作品を多く書く時貞さんだけに、今回の作品は異色でしたね。負の連鎖構造。良いとはいえない読後感ですが、理由が不鮮明な和解よりは現実的(私好み)です。痛いし重いこの物語。ただ一つ救いがあるとすればそれは、ミヤが子供を授からなかった事。彼女達の連鎖はここで終わるのでしょう。尚、毎度の事ながらとても読みやすい文章だと思いました。次回作も期待しております。それでは〜。
2005-10-30 00:04:50【☆☆☆☆☆】月海
ミノタウロス様>
本当にありがとうございます。ミノタウロス様からいただいたパワーは計り知れません。暖かいお言葉、胸にジーンときました。ご期待に添えますよう、もっともっと勉強して精進していきたいと思います。二度も暖かい励ましのお言葉を掛けてくださりまして本当にありがとうございました。このご恩に報いるためにも頑張りますね!

恋羽様>
たいへんご丁寧なご意見、そしてとても真摯でストレートなご指摘を本当にありがとうございます。非常に参考になるとともに、僕の勉強不足を痛感させられました。恋羽様のご指摘の数々はまさに今現在の僕の甘さを鋭く突かれており、これほどご丁寧にご指摘くださったことに感謝の念が絶えません。自分を省みる時間を与えてくださった、僕にとってとても意義のあるお言葉の数々でございました。恋羽様からいただいたお言葉を糧に、もっともっと精進して、少しずつでも前進していきたいと思います。たいへん貴重なご意見を本当にありがとうございました。

月海様>
毎回お読みくださりまして、月海様には頭が下がりっぱなしです(笑)お返事が遅れてしまって誠に申し訳ございません。今までとは違う、重く暗く救いの無い作風をという意図で挑戦したSSでしたので、月海様のご感想を拝読してたいへん励まされました。今回ほど自分の力量不足を痛感させられたSSはございません。頂戴したお言葉をパワーに変えて、もっともっと精進していきたいと思います。暖かいお言葉、いつもながら誠にありがとうございました!(次は思いっきりギャグに走ると思います 笑)
2005-10-31 11:32:34【☆☆☆☆☆】時貞
設定としては僕の苦手なタイプの物なのですが・・
内容は少女の心の中が鮮明に描かれていて非常に読みやすくなおかつ少女の悲しさがとても伝わって来ました。
話は変わりますが、僕は虐待とはこの世で最も軽蔑されるべき行為の一つだと思っています。
この小説は虐待の悲惨さ悲しさを克明に描いたマイノリティな小説だと思います。

2005-11-03 10:11:30【☆☆☆☆☆】パープル
計:0点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。