『ゲドウ戦記【7】』作者:甘木 / AE - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
世界征服を目指す悪の組織〈初代赤龍会〉――その実体は町内征服もままならない弱小組織。ひょんな事から、初代赤龍会の総長になってしまった月護龍太。龍太をサポートするのだか、足を引っ張るのだか分からない、初代赤龍会の濃い面々と引き起こす矮小で下らない事件の数々……。この作品は月護龍太に降りかかってくる苦難と苦闘の記録である。
全角62265.5文字
容量124531 bytes
原稿用紙約155.66枚
 ノストラダムスは一九九九年に世界の終末が訪れることを予言した。
 ――インチキ予言者の世迷い言さ。
 ――いや、ノストラダムスの予言は一〇〇パーセント的中する。
 肯定派にしろ、否定派にしろ、人々は言葉にならない不安を抱えたまま予言された日を迎えた。
 大地は裂け、空は崩れ、街は炎に包まれ、絶望と恐怖の世界に支配される――ことはなかった。日本はおおむね平和なまま二〇〇〇年を迎え、さらには二一世紀をも迎えたのである。
 表面上は……。
 だが、人々が知らないところで終末は訪れていた。


 一九九九年七月、関東地方にある採石場跡地で日本の未来をかけた闘いがあった。
 日本支配をもくろむ秘密結社『大日本BF(ブラッディーファルコン)団』と、日本の平和を守る『日本平和推進機構軍』が、長年にわたる死闘に終止符を打とうとしていた。
『日本平和推進機構軍の諸君。諸君らがここまで来たのは褒めてやろう。だが、もう三人しか残っていない諸君らに、この私が倒せるかな』
『黙れ総統ブラッディーファルコン! たとえ最後の一人になろうとも、俺たちに正義の心がある限り貴様を倒す!』
『愚か者めが。だったらその身で己の無力さを知るがよい。いでよ四天王、この愚か者どもを倒すのだ』
『行くぞみんな! 今こそ正義の力を見せるんだ!』
 双方とも組織は壊滅状態。互いの信念を掛けた最後の闘いが始まった。
『観念しろ総統ブラッディーファルコン。四天王は倒したぞ、残るはお前だけだ!』
『本部を失った貴様ら日本平和推進機構軍に何ができる』
『俺たちには一蓮托生KAMIKAZEアタックがある!』
『なにぃ! その技を使えばおまえらも死ぬことになるのだぞ』
『正義のために死ぬのなら本望だ! ゆくぞ必殺の一蓮托生KAMIKAZEアタック!』
『うぉぉぉぉぉっ!』
 大地を揺るがす爆炎が上がった。
 眩い光と土煙が消えたあとには巨大なクレーターがあるだけ。
 これで終わり――日本の暗部で繰り広げられてきた巨大な悪と正義の闘いの終末――そう思われた。


 しかし、それがすべての始まりであった。
 大日本BF団と日本平和推進機構軍という二つの組織の消滅は、わずかに均衡を保っていたと悪と正義のバランスを崩し、幾多の悪と正義の組織が乱立する無法状態を生む結果となったのである。
 ある時は悪の組織が連衡合従して正義の味方と闘い、またある時は正義の味方が悪の組織と協力してライバル組織を潰しにかかる。力無きものは容赦なく叩き潰され、力有るもの同士が豺狼のように喰らい合う――まさに今の日本は正義と悪が入り乱れる混乱の世。
 そう。正義も悪も理念を失って、戦いのための戦いを繰り広げる外道の時代であった。


 *  *  *


 月光原市のほぼ中央にある月光原駅前広場から、南に向かって五〇〇メートルほど月光原商店街が続く。商店街は――落ち着いた色合いのタイルが綺麗に敷き詰められた歩道、圧迫感を避け開放感を出すために採光部を大きく取ったアーケード、耳障りにならない程度に流れるBGM――食料品や雑貨からオシャレなブティックまで揃っていて、平日の昼間でも人通りが途切れることはない。
 月光原商店街のほぼ中央に喫茶店〈れっどどらごん〉がある。温かい茶色の外壁と下品にならない程度の少女趣味の内装。気分が落ち込んでいるときでも〈れっどどらごん〉に来ると癒される柔らかい空気が満ちている。お店の雰囲気と、どんなお客さんでも思わず美味いと頷くオリジナルブレンドコーヒーで繁盛していた。加えて店を切り盛りするマスター代理の存在も大きい。マスター代理の卯兎よし野(うと・よしの)は、美人ではないが温かい笑顔と、小動物的なかわいらしさを有している女性だった。よし野の魅力に惹かれてやってくる客も多い。


 が、五月のある土曜日の午後。〈れっどどらごん〉はいつもとは違う様相を呈していた。店の前には目つきの悪い男達が入店を拒むように無言で立っている。もっともドアには『本日貸し切り』の札がかかっているし、この男達の圧迫感を無視して店に入ろうとするものもないだろう。もし店内に入ったら、店の外の状況などかわいいものに思えるだろう。店内には鋭い寒気のような空気が充満している。
 それは、
 頭を剃りあげた巨漢、ムカデのような傷が顔じゅうに走る中年男、表情のない整った顔を長い髪で半分隠した美人、ゴーグルのようなサングラスをかけた老人、ニコニコと笑顔なのだが目だけは冷たい光をたたえている美青年、包帯で顔を巻かれた性別不明の人物……日常生活ではあまりお目にかかれないタイプの人間が三〇人ほど集まっている。
 四人掛けテーブルをくっつけて、急遽作った会席に座った客たちが醸し出している空気だった。さらには窓にはブラインドが降ろされ、いつもは風景画が掛けられている壁には、墨色も鮮やかに「天照皇大神」「八幡大菩薩」「春日大明神」と書かれた掛け軸、さらには大きな和紙に「御芳名 ○○○○ ■■■■ △△△△ 皆同順」などと書かれたものも貼ってある。
 共通しているのは揃いも揃って黒ずくめの服を着ていること。それにもうひとつ。研ぎ澄まされた刃みたいな、触れれば身が裂かれてしまいそうな殺気を発している。
 客たちはひと言も発することなく、上座の人物を値踏みするような目で見つめている。上座の人物は――この場にはあまりにもそぐわない雰囲気の少年。平均的な背丈はあるのだが、身体が細すぎて華奢を通り越してみすぼらしく見える。草食動物的な表情がそれに拍車をかけている――この場の唯一の共通点である真っ黒な学生服を着て、おびえた目で周りを見わたしている。
「みっともないからキョロキョロするんじゃない」
 上座の少年の横に座っていた男が小声で注意する。
「でも……儀武オジサン、いったい何が始まるんです? ボク、わけがわかんなくって。このおっかない人たちは誰なんですか? もう帰りましょうよ」
 上座の少年は今にも泣き出しそうな声で、儀武(よしたけ)と呼んだ男の腕を握る。
「ここまできたら、泣きごとは言うんじゃない。どっしりと構えていればいいんだよ。あとは世話人たちがうまくやってくれるからさ」
 不安丸出しの少年とは対照的に、儀武は状況を楽しんでいるようだった。この場にそぐわない白いジャケットを着ていながらも臆する風もなく、ちょっと険はあるがハンサムと呼べる顔に生えた無精髭をなでている。
「そろそろ頃合いだな」儀武は皆の視線が少年に集まっているのを確認すると、正面の人物に向って小さく頷いた。
「御一党様」恰幅のいい白髪の老人が立ち上がり、居並ぶ面々に向って頭を下げる。「本日は御多忙な中、初代赤龍会二代目総長襲名式に御越し頂けましたこと、二代目総長月護龍太に代わりまして御礼申し上げます」


 ボクが二代目総長? はいぃぃぃぃぃぃぃ!


 ボクは月護龍太(つきもり・りゅうた)。
 今年、高校に入学したばかりの一五歳。
 学力、体力、容姿もすべて中の下。特技、賞罰なし。
 趣味は音楽鑑賞、映画鑑賞、読書(マンガが多いけど)。
 父親は中堅どころのサラリーマン。母親は専業主婦。東京で独り暮らしをしている大学生の姉。家は郊外にある建て売りの一戸建て(ローン残りは二〇年)。
 つまり平凡というデーターをコンピュータに入力したらボクになる。学校には必ず一人はいる空気のような、休んでも誰も気づかない存在。それがボク。
 みんなに注目されたいワケじゃないけど、少しは誰かがボクのことを必要としてくれる存在になりたい。と、思っていた。
 が、いまはそれを懐かしく思っている。
 だって……、
 今日からボクは、日本征服を狙う秘密結社『大日本ブラッディーファルコン連合会』傘下『初代赤龍会』の二代目総長。



 【1】 災厄の日



 例年、ボクの家の正月は静かに過ぎ去っていくのだが、今年は少し違っていた。
「龍太、受験勉強はちゃんとやっているか?」
 一升びんを握りしめた儀武オジサンが、ボクの肩にもたれかかるように腕を回してきた。
 風来坊で日頃は連絡も取れない儀武オジサンが、ふらっとやってきたのは大晦日の夜。それから五日間、連日朝から宴会状態。
「どうなんだ、第一志望の高校に入れそうかい?」
 この質問を聞かされるのはこれで二五度目だ。朝から晩までお酒を飲んでいる儀武オジサンは、酔っぱらい特有のしつこさで何度も聞いてくる。
「たぶん……」
 最後の追い込みの時期なのに、毎日宴会に引きずれ出されて勉強どころではない。
「『たぶん』とは情けない。今から気弱になってどうするんだ! この八角儀武(やすみ・よしたけ)のたった一人の甥なんだぞ。もう少しは俺の甥というプライドを持てよ」
 儀武オジサンはお母さんの弟――と言っても、お母さんと歳が一三歳もはなれているからまだ二七歳。ボクにとっては兄貴みたいな存在。けれど、高校卒業と同時に海外放浪の旅に出ちゃうし、日本に戻ってきてからもフラフラとしている。仕事だってなにをやっているのか解らない。少なくてもボクの知っているまともなオトナの範疇には入らない。
 そんな人の甥っていうプライドって何?
「第一志望の高校に入学できないでどうするんだよ」
「でも、弓野学園はレベルが高いし。ボク、成績あんまりよくないし」
「龍太、お前には覇気ってヤツがないのかよ。相手を完膚無きまでに叩きのめすぐらいの気迫じゃないと受験には勝てないぞ」
「他人と争うのって好きじゃないから」
「あぁぁぁ!」儀武オジサンは両手で自分の頭を抱えた。「龍太、お前は本当にいいヤツだよ。でもな、いいヤツすぎるのもある意味で醜悪だぞ」
「わかってるよ。ボクだって受かりたいから勉強はしているよ。それに、弓野学園に合格したら、お父さんが入学祝いに新しいパソコンを買ってくれるから、がんばるよ」
 ボクの顔をじっと見ていた儀武オジサンは、「入学祝いかぁ。よし、決めた。弓野学園に合格したら、俺からも凄い入学祝いをやるよ」にぃっと笑った。
「凄い入学祝いって何?」
「それは、合格してからのお楽しみだ。それより龍太も飲め、正月ぐらいは羽目を外すものだぞ」
 儀武オジサンはボクのコップに『大吟醸 大魔王殺し』をドプドプと注いだ。飲みかけのオレンジジュースが入っていたのに……。
「ぐーっといけ。それを飲んだら合格間違いなしだぞ。俺が保証してやる」
 おぼつかない手つきでコップをボクの鼻先に突きつける。
「飲めませんよ。ボク、未成年だし」
 未成年じゃなくたって日本酒のオレンジジュース割りなんて飲みたくないけど。
「龍太、男なら一気に飲みなさいよ。日本酒が苦手ならウオッカはどう?」
 さっきからボクと儀武オジサンとのやりとりを、ニヤニヤと見ていたお姉ちゃんが自分が飲んでいたウオッカをボクのコップにさらに注ぎ足す。
「飲め、飲め。酒ぐらい飲めなきゃ高校に合格なんておぼつかないぞ。父さんだって龍太と同じ年の頃は親の酒を盗んでは飲んでいたんだ。そのおかげもあって志望高校に入学できたんだぞ」
 酔っぱらった父さんは根拠のない経験談を言ってるし。
「龍太、飲んであげなさいよ。酔っぱらい相手に正論述べても無駄よ。ここは運命だと諦めたら」
 母さんが苦笑い浮かべて耳打ちした。
 う゛。みんな勝手なこと言って……。
「わかったよ。飲めばいいんでしょう!」
 ボクは淡いオレンジ色に染まった日本酒プラスウオッカを一気に喉に流し込んだ。
 ――その甲斐があってか、ボクは弓野学園に合格した。


 高校入学から一カ月。正月以来、音沙汰のなかった儀武オジサンから電話があった。
『龍太、おめでとう。見事に第一志望校に合格とは、やっぱり俺の甥だけはあるな』
「ありがとうございます」
『憧れの高校生活はどうだ?』
「ボチボチかな。最近やっと自分が高校生なんだって感じられるようになったけど」
『せっかく第一志望の高校に入学できたのに元気がないな。勉強はどうだ? 親友はできたか? クラブには入ったのか? 彼女はできたか?』
 儀武オジサンは矢継ぎ早に聞いてくる。
 勉強は大変なこと、親友どころか友達もできていないこと、クラブには入っていないこと、残念ながら彼女はいないこと――正確に言うならば、入学してから今日までクラスの女の子と口をきいたことすらない――ボクは包み隠さず白状した。
『俺が高校生の時は、入学式の日には彼女をつくっていたぞ。それなのにおまえときたら、友達はいない、彼女はいない、クラブには入っていない、おまけに落ちこぼれ予備軍かよ。かぁぁ情けない』
「う、うん。情けないと思う……」
 周囲は勉強も運動もできる凄い人ばっかりで、勉強も運動もダメなボクなんか誰も見向きもしない。みんな勉強や運動や趣味に一生懸命になって高校生活を楽しんでいるのに、ボクは何もしないうちに一カ月が過ぎてしまっていた。
「ボク……弓野学園に入学したのが間違いだったかな……」
『落ちこんでいてもしょうがないさ、これからが大切なんだぞ。おまえの高校生活をバラ色にする素晴らしいプレゼントをやろう。明日の土曜日は午後はヒマか?』
「うん。用事はないけど」
『だったら、学校が終わったら校門の前で待っていろ』


 気がついたら初代赤龍会二代目総長襲名式などという、悪夢のような出来事に巻きこまれていた。



 【2】 世界の理



 襲名式は滞りなく終わり――ボクは何がなんだか解らなくて、なすがままになっていただけなんだけど――強面の人たちは粛々と帰途についた。〈れっどどらごん〉に残っているのはボクと儀武オジサンとお店の人らしいお姉さんだけ。
 人のいなくなった客席に座ったまま、ボクはテーブルに置かれた龍をかたどった金色のバッチを見つめていた。
 初代赤龍会二代目総長って何? 初代赤龍会って何? あの怖い人たちは何? ボクは何? 脳がストライキを起こし、まともに思考が働かない。
「どうした龍太。呆けているヒマなんてないぞ」
 儀武オジサンに頭をこづかれて、やっと金バッチから視線を離すことができた。
「ボクはこれからどうなるんです? いや、なんでこんなことに?」
 ニヤニヤしてボクを見下ろす儀武オジサンを見ていたら、クラクラするような苛立ちと不安で鼻の奥が痛くなってきた。もしかしたら涙が浮かんでいるかもしれない。
「驚いたのは解るが、落ち着け龍太」
「落ち着けるわけないじゃないですか!」大きな声を出していないと自分を保てないような不安に襲われる。
「そんなに興奮しているって言うことは喜んでくれているんだな。そっかぁ、俺のプレゼントをそんなに気に入ってくれたのか。俺も嬉しいぞ」
 ボクの言葉を曲解した儀武オジサンは――たぶんわざとだけど――ボクの正面に座って、さも満足とばかりに煙草を吸いだす。
「気に入っていません。当惑しているんです! おっかない人たちに囲まれて……みんなの視線がボクに集まって……ボクがどれだけ心細かったか解らないでしょう! 寿命が縮まる思いだったんですよ!」突然目の前にケーキが現れた。「へ? なにこれ?」怒りの気勢をそがれてしまった。
「イライラしている時は甘い物がいいですよ。よろしければ召し上がってください」
 ほんわかとした空気をまとわらせたお店のお姉さんが、ことりとチョコレートケーキを置き、「お飲物は何がいいですか?」優しく微笑んでくれた。
「あ、ありがとうございます。そ、それじゃコーヒーをお願いします」
 お姉さんは一瞬キョトンとした表情を浮かべ、すぐに真顔になる。
「部下に敬語を使わなくって結構ですよ。遠慮なく命令してください。龍太さんは今日から総長になられたのですから」
「部下? え? お姉さんは初代赤龍会の人間なんですか?」
 お姉さんは背筋を伸ばして、「自己紹介が遅くなってすみませんでした。私は初代赤龍会若衆頭代理補佐見習いの卯兎よし野です」軍人のように敬礼した。仕事用のフリルで縁取られたエプロンを付けているし、ほんわりとした柔らかい雰囲気のせいで、真面目に敬礼している姿が妙に可愛い。
 でも、いまなんて言った?
「初代赤龍会若衆頭……代理補佐…………見習い?」
 若衆頭と言うことは初代赤龍会ってヤクザ? 任侠、極道、暴力、抗争、覚醒剤、指つめ、仁義なき戦い、死……脳裏には不吉な単語が鮮血ような赤い文字で浮かび上がる。ボ、ボク、ヤクザなんてなりたくない!
 ところで若衆頭の代理の補佐の見習いって偉いの? いや、そんなことはどうでもいいんだよ。ヤクザだよ、ヤクザ! どうしよう、どうしよう……。
 混乱した頭はどうでもいいことまで考えてしまう。


「龍太ぁ、おまえ初代赤龍会をヤクザだと思ったろう」煙草をくわえた儀武オジサンは、心持ち顔を上に向け煙を吐き出す。「俺が可愛い甥っ子をヤクザにするとでも思うか」
「違うの?」
 儀武オジサンはボクの顔を見つめる。じっっと、じっっっと――居心地が悪いんですけど。あんまり見ないで――そして、灰皿に煙草を押しつけ立ち上がった。ゆっくりと壁際に寄り、金糸で初代赤龍会と刺繍された旗の前に立つ。
「聞いて驚けよ。初代赤龍会はヤクザなんてちんけなものじゃない。日本征服を目指す悪の組織だ!」
「あ、悪の組織………………って、儀武オジサン頭は大丈夫ですか? 何か悩み事でもあるんですか? オジサンって、ちゃんと仕事もしてないみたいだし、いい歳して結婚もしてないし……お母さんも、いつもフラフラして落ち着きないって心配してたし……」
 驚きより呆れて、思わず突っこんでしまった。
「うるせぇ! 大きなお世話だ!」
 儀武オジサンの怒声とともに、後頭部に言葉では表現できない衝撃が走り――ボクの意識はチカチカと光りあふれる世界に飛んでいった。



「面倒だから一回しか説明しないからな。それじゃよく聞けよ」
 何事もなかったように儀武オジサンは口を開く。
「う、うん」ボクは卯兎さんがくれた氷嚢を後頭部に当てながら頷き、「痛ぁ」ぷっくり腫れたこぶに鋭い刺激が走る。
「大丈夫ですか総長。まだ休んでいた方がよろしいのでは?」
 卯兎さんは綺麗にそろえた眉をハの字にし、心配そうにのぞき込んでくる。
「よし野君、龍太のことは心配しなくていいよ。こいつは見かけによらず打たれ強いんだ。たぶん二階や三階ぐらいから落ちたって死なないよ。これぐらいならすぐ治る」
「そうなんですか? さすがは総長。お強いんですね」
 感動したように卯兎さんはボクを見つめる。
「う、うん。まぁ……」
 いくらなんでもビルの三階はちょっときついかも。でも、ボクが打たれ強いのは事実だ。事実というか、結果的にそうなったというか――格闘技全般が好きなお姉ちゃんに小さい頃から〈遊び〉と言っては色々な技をかけられたり、儀武オジサンに振り回されているうちに身体だけは丈夫になっちゃった。でも、運動神経とかは全然だけど。
「んじゃ、説明するぞ。まずは悪の組織の歴史からだ……」
 儀武オジサンの話を要約すると――。
 悪の組織の歴史は古く、南北朝時代までさかのぼり、〈悪党〉と呼ばれる権力に対抗する組織が始まりだそうだ。時代時代に時の権力者と戦っていたらしい。楠木正成や由井正雪など、歴史上に現れる著名人も悪の組織の人間だった。あの織田信長や西郷隆盛も悪の組織の人間だそうだ。ちょっと信じられないけど。
 国盗りを目指す大組織から、一地方の権力簒奪を目指す弱小組織まで、複雑に入り交じって悪の組織は正義(権力)と戦い続けてきた。ところが第二次世界大戦以後に悪と正義に世界に変化が起こった。敗戦による社会構造の変化を受け、組織の集約化が始まったと言う。合併・吸収・併呑――紆余曲折の末、『大日本BF団』と『日本平和推進機構軍』と言う二大組織ができあがった。
 二つの組織は大きくなり過ぎたが故、小競り合いは起こしても、全面的抗争には至らない。なぜなら、本気でぶつかり合えば互いの壊滅が待っているのだ。二大組織は奇妙な緊張を保ちながら対立を続けていた。
 一九九九年七月までは……。
 今となってはきっかけは何だったのかはもう解らない。いや、きっかけなど些末な事柄。二大組織の全面抗争が勃発し、共に壊滅した。それが終わりの始まりだった。
「……ま、こんなかんじで今は悪も正義もぐちゃぐちゃの状態だ。解ったか」
「う、うん。なんとなくだけど。でも、こんな凄い状態になっているのに、ボクなんかを総長にしたら……」
 ボクの言葉に儀武オジサンは口の端をゆがませるようにして笑い、
「ばーか、なに情けない顔してるんだ。混乱した状況だから楽しいんじゃないかよ」
 ボクのおでこをぺしっと指で弾く。
「よし野君、この情けない総長に初代赤龍会について教えてやってよ」
「あ、はい。え?」卯兎さんはウサギみたいに椅子の上で跳ね、儀武オジサンとボクの間を何度も視線をさまよわせる。「わたしなんかが説明するなんて」
「俺は部外者だしさ、やっぱり当事者が説明した方がいいだろう」
「そうですか。では、僭越ながら説明させていただきますね」
 卯兎さんは学芸会の小学生みたいに、ガチガチに緊張して直立不動の姿勢をとる。
「しょ、初代赤龍会は大日本BF団四天王の一人、ブラッディードラゴン元帥の右腕と言われたレッドドラゴン大佐がつくった組織です。ブラッディードラゴン元帥配下の組織の中では武闘派として名をはせ、正義の組織からは〈殺しの軍団〉と言われて恐れられていました」
「殺しの軍団ですか? や、やっぱり悪の組織は怖いんですね」
 目の前にいる卯兎さんも初代赤龍会の人間だ……あんな優しい顔しているけど人を殺したことがあるんだろうか?
「養父(ちち)は、いえ、レッドドラゴン大佐は人殺しはしません。たくさんの正義の味方の組織を潰しましたが、一人の命も奪ったことがないことが自慢でした」
 卯兎さんは誇らしげに胸を張る。
「えっ! レッドドラゴン大佐って卯兎さんのお父さんなんですか?」
「ですから総長、わたしのことは呼び捨てでかまいませんよ」
「でも、卯兎さんはボクより年上ですよね。たとえボクが総長でも、年上の人を呼び捨てにはできません。これは譲れません。それに総長になったばかりで、右も左も解らない素人のボクが威張っても格好もつかないし」
 卯兎さんはしばらくボクの顔を見ていたけど、小さくため息を漏らした。
「では、よし野と名前の方を読んでいただけますか。ここにはいませんが、わたしには弟もいますから、名字だと紛らわしいので」
「そ、それじゃ……あ。よ、よし野さん。これでいいですか?」
「はい。総長」
 よし野さんは温かく微笑む。
「話が逸れてしまいましたね。総長の先ほどの質問ですが、正確にはレッドドラゴン大佐は、わたしの実の父親ではありません。わたしの本当の父は悪の秘密結社〈卯兎組〉の首領でサンダーラビットと言います。僅か一〇人ばかりの小さな組織でしたけど、みんな家族のように仲がよくって良い組織でした。父は首領と言っても温厚でとても優しくて、周りの堅気の衆に迷惑をかけないよう無用な抗争は避け、いつも堅気の人たちに気遣っているような人でした。でも…………五年前の下北沢抗争の時に母と共に亡くなりま……した」
 よし野さんは俯いて何かを堪えるように背中を丸める。
 泣いているのだろうか。ボクがデリカシーのない質問をしたから。どうしよう、女の人を泣かせたなんて――頭の中が真っ白になって、苦い感情だけが次々とわいてくる。助けて欲しいのに、儀武オジサンは我関せずみたいな顔をしてコーヒーを飲んでいる。どうしよう……。
「あ、あのぉ、よし野さん、ごめんなさい。ボクが馬鹿なこと聞いたから」
「いえ、総長が悪いわけではありません」よし野さんは顔を上げた。目の周りを赤い。「嫌ですねぇ、歳をとると涙もろくなって……ははは」無理矢理笑っている表情が痛々しい。
「歳だなんて……よし野さんはじゅうぶん若いですよ」
 そう、よし野さんはまだ若い。本当の歳は解らないけど、制服を着ていたら高校生でも通用するぐらい。
「お世辞でも嬉しいです。ありがとうございます総長。でも、わたしもう二二歳なんですよ。総長から見ればおばさんですよね」
「んにゃ、俺から見ればよし野君なんてまだまだ小娘さ。もっと恋して女を磨かなきゃだめだぜ。なんなら今から俺の彼女になるかい?」
 今まで黙っていた儀武オジサンがニヤニヤしながらちゃかすように言う。場の雰囲気を変えようとした気遣いだろうか。
「八角さんのような根無し草は遠慮します」
 よし野さんも察したらしく、にっこり笑って毒を吐く。
 でも、さっきまでの重い雰囲気はなくなった。やっぱり儀武オジサンって凄い。
「何度も話が逸れてすみませんでした。もう大丈夫ですから続けますね」
 最初の会ったときの柔らかい雰囲気を取り戻し、よし野さんはまた背筋を伸ばして話を続ける。
「卯兎組が支配する下北沢を正義の組織〈友愛平和党〉が狙ってきたんです。友愛平和党は大手建設会社と手を組み、住民を追い出して下北沢を再開発をしようとしていました。当然父は住民の意思を無視した再開発には反対でした。温厚な父でしたが、下北沢の人々を守るため戦うことを決めたんです。数を頼んで乗り込んできた友愛平和党に屈することなく、父も組員の皆さんも必死に戦いました。一進一退の抗争が続き……業を煮やした友愛平和党は、卑劣にも私の母を人質に取ったんです。卯兎組組員全員が無条件降伏すれば母を解放するって言ってきました」
「正義の組織が人質ですか? なんだか悪党みたいな感じですね」
「ええ、もうその頃は正義も悪も名前だけで、実態はヤクザとかわりありません。実際、友愛平和党は卯兎組組員を殺すため、関西からヒットマンを連れてきていました。それを知った父は、組員に累が及ばないよう全員を破門しました。そして私と弟を五分の兄弟分であるレッドドラゴン大佐に預け、単身で友愛平和党に乗り込みました」
 よし野さんは呼吸を落ち着けるかのように小さく深呼吸する。
「友愛平和党に行った父は帰ってきませんでした。父が出かけた日に下北沢は大火災に遭い、街の半分が焼失しました。火事が収まって三日後、父と母の死体が発見されたんです。父は母をかばうように母の身体に覆い被さって」
「火事に巻き込まれたんですか?」
「いいえ。父の身体には三〇発以上の銃弾が撃ち込まれていました。母の身体にも……父も母も友愛平和党に殺されたんです。友愛平和党は両親を殺し、下北沢の街に放火したんです。さらには放火したのは卯兎組だと噂も流して」
「………………」
 あまりのむごさにボクはなにも言えなかった。だって、ボクには両親もお姉ちゃんもいる。よし野さんに比べれば幸せなボクになにが言えるんだろう……情けない。ましてや上辺だけの慰めの言葉なんて、これまでがんばってきたよし野さんに失礼な事だろう。ボクができることと言えば、よし野さんの両親の冥福を祈るぐらいだ。
 テーブルの下で手を合わせ黙祷のまねごとをしてみた。
「総長お気遣い、ありがとうございます」
 ぺこっと頭を下げたよし野さんは、何事もなかったように話し出す。
「両親を失った私たちはレッドドラゴン大佐に育てていただくことになりました。レッドドラゴン大佐は父と同じように温厚で優しくて、私たちを自分の子供のように面倒見てくれました。本当に良くしてくれたんです。そして、わたしは高校卒業と同時に初代赤龍会に入りました」
「それって、両親の敵討ちを……」
 優しそうな人なのに悪の組織に入るなんて――やっぱりそうだろうなぁ。
「その感情がなかったと言ったら嘘になります」よし野さんは寂しそうな表情を浮かべ、「でも友愛平和党は下北沢抗争から二年後に、他の正義の組織に潰されてしまいました。フィリピンで幹部全員が殺されたようです。それで友愛平和党も消滅してしまいました。両親の敵も討てないうちに……」声が小さくなる。
「よし野君も話し続けて喉が渇いたろう、これでも飲んでひと休みしたらいい。続きは俺が話すよ」
 よし野さんに紅茶を渡すと、儀武オジサンはボクを見ながら首をコキコキ鳴らす。
「いい加減疲れてきたから簡潔に話すからな」
 儀武オジサンはよし野さん姉弟を引き取ってからの初代赤龍会の動きを説明しだした。本当に簡潔な説明だったけど、僅か三年の間に起こった出来事が信じられないほど色々あったことを伝えるには十分だった。
 それは――三年前にレッドドラゴン大佐が暗殺されたこと。レッドドラゴン大佐の跡目を巡って内紛が起きたこと。跡目は親戚筋である大日本ブラッディーファルコン連合会の預かりになったこと。初代赤龍会の抑えがなくなったため、月光原市は正義と悪の組織の草刈り場になっていること。よし野さんが若衆頭代理補佐見習いとなって初代赤龍会を守っていること。そして、今の初代赤龍会には構成員がボクを含めて三人しかいないこと。


「えぇぇぇっ! 三人しかいないんですか!!」
「す、すみません。若衆頭代理補佐見習いのわたしがだらしないから……レッドドラゴン大佐が亡くなってから、総長代理のコブラヴェルデさんは新平和推進機構に転職しちゃうし、幹部や平組員の皆さんも廃業したり他の組織に移籍したりしちゃって……気がついたら、わたしと代貸のブラックソードさんしか残っていなくって」
 顔を赤らめたよし野さんは、フリルで縁取られたエプロンの裾を握っている。
「そのうえブラックソードさんは別荘送りだし」
 よし野さんはため息混じりにつぶやく。
 別荘って……刑務所だよね。
「車二台全損に雑居ビル半壊だろう、自業自得だ。ありゃ当分シャバには出てこられないぜ。ま、当分別荘で頭を冷やした方がブラックソードのためさ」
 儀武オジサンは楽しいとばかり声を弾ませる。
 実質、ボクとよし野さんの二人だけ? 二人でなにができるんだよぉ。よし野さんは強そうに見えないし、ボクだって運動神経はないし。これじゃすぐに他の組織に蹂躙されて、ボクもよし野さんのお父さんみたいに…………嫌だぁ。死にたくないよ。
「よ、儀武オジサン。ボク引退します。今すぐ総長を引退します」
「あ? 馬鹿なこと言うなよ。さっき総長になったばかりだろう。子供の遊びじゃないんだから、勝手に辞めたりできないんだよ」
「で、でも、このままじゃボクが死んで、ボクが殺されて、ボクが蜂の巣で、ボクが総長だから、ボクが狙われて、ボクはなりたくなかったのに、ボクは嫌なのに……だから、だから引退、引退しないと命が殺されて、引退するから殺さないでぇ」
「ワケ解らねぇよ。龍太、まずはこれでも飲んで落ち着け」
 ボクは儀武オジサンが差し出したコップを一気にあおっ……た。でっ! 何これ? 口の中が、喉が、胃袋が焼ける。
 あれっ? 目の前がグニャグニャになって〜
 足に力が入らないや。周囲の音も大きくなったり小さくなったりして……ほっぺたが冷たくて気持ちいいな。どうして冷たいんだろう? 変だな、いつの間に床に寝ころんだんだろう? なんかどうでもよくなってきたなぁ。
 ――総長! 八角さん、何を飲ませたんです。
 よし野さんが心配そうな顔で近寄ってきたなぁ。だいじょうぶ、ボクはゼンゼン平気だよぉ。
 ――スピリタスさ。さすがは世界最強の酒だな、龍太も大人しくなったぜ。
 スピリタスって何だっけ? えっとぉ……あっ、ポーランドのウォッカだ。確かアルコール度数は九六度だっけ。
 ――よし野君、俺は疲れたからもう帰るよ。龍太の酔いが醒めたらこの手紙を渡しておいて。それじゃ龍太のことよろしく。
 儀武オジサンお声がどこか遠いところで聞こえるなぁ。
 世界が回っているのかなぁ、それともボクが回っているのかなぁ。ゆらゆら、ぐらぐらして周りがもう解らない………………。


 酔いが醒めたボクを待っていたのは、猛烈な吐き気と頭痛。たった三人だけの初代赤龍会。そして儀武オジサンの手紙。
 手紙には、
『初代赤龍会二代目総長襲名おめでとう。ま、色々と大変だろうけど頑張ってくれ。とは言え三人だけじゃ心許ないだろうから、俺からもう一つプレゼントがある。月曜日学校に行ったら二年二組の緋色正義(ひしき・まさよし)と言う男に会え。きっと良い事があるはずだ。
             俺は所用でこの街を離れるから、後は適当にやってくれ。八角儀武』



 【3】 船出のち沈没



 月曜日の登校は辛い。ただでさえ学校に拘束される一週間の始まりなのに、土曜・日曜日とよし野さんに初代赤龍会の現状を説明されて――構成員がいない。組織は貧乏。ライバルが多い――責任が重い塊となってのしかかっていた。
 総長になったけど、ボクは何をすればいいんだろう。よし野さんに聞いても『総長の思うようにされてください。わたしはついて行きますから』としか言ってくれないし。もう頭の中がグチャグチャ。
 はぁ、どうしよう…………。
「月護、じゃまだ。入り口で立ち止まってるんじゃねぇよ」
「あっ、ごめん」
 えっ? もう教室? どうやって学校まで来たんだっけ?
「おはよう」
 騒がしかった教室が一瞬静まり、クラスメイトたちは誰が入ってきたかと教室のドアに注目する。でも、入ってきたのがボクだと解ると「おう」とか「ああ」って、返事とも嘆息ともとれる反応をして、クラスメイトとの会話に戻っていく。
 ボクはみんなの会話をぼぉっと聞きながら授業が始まるの待つ。楽しそうなみんなが羨ましくて、所在ない気持ちでいたたまれなくなる――のは、先週まで。今日はそれどころじゃない。
『緋色正義』儀武オジサンはどんなつもりで会えって言ったんだろう。

 *  *

 昼休みになると同時に教室を出て、二年生の教室がある二階に向かった。
 二階でボクの足は止まってしまった――一年生は一階だし、特別教室や職員室は別棟だから、二階に来たのは初めてだった――同じ校舎にあるとは思えないほど雰囲気が違う。一階の廊下に比べて歩いている人達が大人びている。儀武オジサンよりも老けて見える人、スタイル抜群で〈色気〉って言葉が具現化されたような人。ボクが言うのも変かもしれないけれど、一年生は中学生と区別が付かない感じで、二年生ははっきり言って大人の世界って感じ。たった一年の違いなのにこの差はなんだろう。
 二年生でこれだけ大人びているなら、三年生の廊下はどんな感じなんだろう。まさか所帯じみた雰囲気じゃないよね。
 通り過ぎる人達がボクに視線を投げかけてくる。やっぱり一年生って分かるんだろうか。
 居づらい。凄く落ち着かない。職員室に入るときよりも緊張する。でもここにいても見せ物だし、う゛ぅぅぅ…………。


「あのぉ、すみません。ひ、緋色先輩はいらっしゃいますか」
「ん、あなた誰?」
 二年二組の教室から出てきた女の先輩は、まるでボクが珍獣でもあるかのようにボクをじろじろと見る。
「一年四組の月護龍太って言います。それで、緋色先輩は?」
「ふーん。正義の味方に会いに来るなんて、あなたも物好きねぇ」
「はぁ。えっ、正義の味方?」
「緋色くんのあだ名よ。ひいろ、正義でしょう。だからヒーロー正義で正義の味方。ぜんぜん正義の味方じゃないけれどね。どちらかというと変人よ。いい男なのになぁ、もったいないなぁ」
 女の先輩は苦笑のような表情を浮かべ小さく息を漏らす。
「はぁ」
 ボクはどう答えていいか解らず、女の先輩と視線が合わないように視線を落とした。
「あなたに愚痴っても仕方ないわよね。で、正義の味方だけど、朝から見ていないわよ。今日は来てないんじゃないかな。あいつ成績がいいけど、よく学校をサボるのよ」
「はぁ」
 なんかボクって間抜け。さっきから「はぁ」ばっか。
 でも、いまの「はぁ」はちょっと意味が違う――知らない人に会わなくてすむ安堵感から思わず漏れたため息だ――朝からのしかかっていた不安感がすーっと肩から消えていく。
「二日連続して休むことは滅多にないから、たぶん明日は来ると思うよ。なんなら伝言でもしてあげようか」
 ボクのため息を落胆と思ったのか、女の先輩はちょっと首をかしげるような仕草で聞いてくる。
「いえ、結構です。どうもお邪魔しました」
 ボクは頭を下げ、居心地の悪いこの場所から逃れるべく、少し早足で階段に向かった。
 ……自分の教室に戻っても居心地がいいわけじゃないけど、少なくてもじろじろ見られないだけでもマシ。いや単に相手にしてもらえないだけかもしれないけど。

 *  *

 気が付いたら教室には誰もいなかった。
 一瞬、移動教室でボクだけ置いて行かれたのかとも思ったけれど、教室の窓から忍びこんでくる光は橙色。教室の外から流れてくる音も、運動部のかけ声になっている。そう言えばボクの記憶は五時間目の途中までしかない。昨日の夜から緋色先輩に会うことばかり考えて、緊張と不安でゆっくり眠られなかったから……居眠りしちゃったんだな。クラスメイトはボクのことなんか気にしていないから、下校時間になってもボクを起こそうなんて人もいないし。でも、先生も気が付かないなんて、
「ボクって本当に存在感がないなぁ」
 つい思っていたことが口から出てしまった。どうせ誰もいないから聞かれる心配もないけれどね。
「素晴らしい! そのもって生まれた存在感の無さ、悪の組織のトップにふさわしい!」
 えっ? 誰? 見回しても教室には誰もいない。でも、しっかり聞こえた。あれは絶対に空耳じゃない。
「一般人にその気配すら感じさせない隠蔽性、まさに闇に生きる人間の資質。その資質、しっかりと確認させてもらった」
「誰です? 何処にいるんですか?」
「失礼……」
 声はボクのお尻の下から聞こえる。座っていた椅子を覗きこむと、小さなマイクとスピーカーが貼りつけてあった。
 なんでこんな所にスピーカーが?
「……自己紹介が遅れた。私は緋色正義」
 緋色先輩? だって今日は休んでいたんじゃ。
「本当に緋色先輩なんですか? どこから話してきているんです?」
「私が本当の緋色正義であるかは難しい質問だな。私が緋色正義である証明は認識論や哲学の分野であり、一言ではこたえかねる。が、私は私が緋色正義であると信じて一七年生きてきた。これが答えにはならないだろうか。それともう一つの質問だが、私がいるのは第二クラブ棟のSFクラブの部室だ。用があるのならここで待っているが」
「今すぐ行きます!」
「だったら、黒板上と掃除道具入れの上にCCDカメラを仕掛けているので、手数だが回収してきて欲しい」
 教室を飛び出そうとしたボクにスピーカーが命令する――緋色先輩って偉そうな感じの人だなぁ。まさか、会った途端に怒られたりしないよね……なんか、胃が痛くなってきた。


 第二クラブ棟は昔使っていた木造の旧校舎を再利用したもので、渡り廊下を挟んで別棟と平行して立っている。ちなみに第一クラブ棟は新校舎の建て替えの時に一緒に建てた鉄筋コンクリートの建物で、学校が認めた正式な部が入っている。同好会や研究会のような学校から予算を貰っていない集まりは、すべて第二クラブ棟に押し込められている。学校からの予算という束縛がない分、みんな気ままにやっているとは聞いているけれど。どんな場所なんだろう。
 ……人気もない不気味な場所じゃなくって第二クラブ棟は活気あふれる場所だった。建物こそぼろいけど、各部室からは音楽や笑い声が響き、廊下もひっきりなしに人が歩いている。ボクが想像していた暗い雰囲気はみじんもない。
 一つの教室を壁で仕切って、二つのクラブが部室にしているようだ――前後の入り口には意匠を凝らしたネームプレートが張られている。トライアスロン同好会、鉄道模型研究会、ライトノベル愛好会、メイド研究会、実践萌え同好会……いったいどんな活動をしているんだろう。
 一つひとつのネームプレートを確認しながらボクは歩き続けた…………ないんですけど。三階建ての旧校舎を回ってみたけど、どこにもSFクラブの文字はない。緋色先輩は確かに第二クラブ棟って言ったのに。
 三階まで二往復してもSFクラブは見あたらない。回収したマイクに向かって尋ねてみても、スイッチを切っているのか全く反応がない。部室は見あたらないし、緋色先輩とは連絡とれないし、諦めて今日は帰ろうかな……いや、緋色先輩は待っている。でも、このままじゃ埒があかない。
「あのぉ、すみません。SFクラブの部室ってどこにあるか知りませんか?」
 知らない人と話すのは苦手だけど、意を決してアニメ同好会と書かれた部室から出てきた人に声をかけてみた――太っていて学生服がパンパン。おまけに脂ぎった長髪を後ろで縛っている変な人だったけど。
「ん、SFクラブぅ? そんなクラブあったけ? 知らないなぁ」変な人は妙に甲高い声でそう言うと、いま出てきた部室に向かって「部長ぉ、SFクラブってありましたっけ?」さらに声のトーンを高めて質問する。
「ある」の声と共に、背は高いけど痩せて貧相な男が、ゆぅらりと言う感じで出てきた。
 部長と呼ばれた人は、枯れ枝のように細くて長い指で廊下の奥を指さす。
「廊下の突き当たり右」
 部長はほとんど口を開けず、くぐもって聞きづらい声でボソボソと言う。
「さっき見ましたけど、荷物がいっぱい積んであって通れなかったです」
 使っていない机や椅子や段ボール箱が積まれていて、まるで人の立ち入りを拒んでいるように見えたんだけど。
「通れる。左端の段ボール。あれ動くから。奥に廊下続いてる。廊下の先にSFクラブ。でも、気をつけた方がいい。緋色、変なヤツだから」
 と言うと、部長はボクがお礼を言うよりも早く、ゆぅらりと部室に吸いこまれていった。廊下の奥を指さしたまま。
「あ、ありがとうございます」
 なんか変な人だなぁ……あの部長が変な人って言う緋色先輩って…………考えるのはよそう。場所も解ったし、とりあえず行こう。

 *  *

 段ボール箱の向こうには、思った以上に綺麗な廊下が続いていた。色々と荷物は置いてあるけれどホコリもチリもない。廊下を少し歩くと昔の化学実験室のドアに『SFクラブ』と書かれた金属プレートと、一メートルほどの長い板がかけられている。板には墨色も鮮やかに毛筆で『大日本ブラッディーファルコン連合会 初代赤龍会弓野学園支部』と書かれている。
 なにこの看板。いくら人通りがないとは言え、初代赤龍会は悪の組織なんだから、大ぴらに看板を出したらマズイよ。昨日だってよし野さんに『私たちはあくまで秘密結社なんです。一般の人には存在を知られず、日常の影で暗躍するのが本質なんですよ。ですから、総長も初代赤龍会二代目総長になったことを言いふらさないでくださいね』と、いつもの笑顔からは想像もできないほど、真面目な顔で真剣に言われたばっかりだ。
 急いで外した看板を抱きかかえるようにして、SFクラブの部室に飛びこんだ。
「緋色先輩、これなんですか! えっ?」
 部室のドアを閉めると同時に室内の照明が落ちた。
 真っ暗――窓はふさがれているようで光は入ってきていない。突然の闇にボクは一瞬自分がどこにいるかすら解らなくなって、看板を抱きしめたまま立ちすくんでしまった。
 と、突然、
「わははははははははは。ようこそ我がSFクラブに。初代赤龍会総長月護龍太くん、君の来訪を心より歓迎しよう」
 部室の奥にスポットライトが当たり、大柄の人物の姿が浮かび上がる。
 真っ赤で爆発したように乱雑に跳ねている髪、一八〇センチを超えている身体に真っ黒なマント、顔は……大きな口だけしかなかった。ローリングストーンズのロゴマークをリアルにしたような絵を描いた仮面をかぶっている。大きな口からでろりと出ている舌の絵が肉感的で、仮面とはいえけっこう不気味。
 そして、マントから出ている仮面男の右手には一輪のバラが握られていた。
 でもボクは妙に落ち着いて仮面男を眺めていた。人間って突飛すぎる事態だと驚くよりも、逆に冷静に――呆れるとも言うけど――なれるんだなぁ。
「君が世界を欲するなら、このバラに口づけしたまえ」
 バラをボクの方へと差し出す。
「どうしたのだ。世界は欲しくないのかね?」
「あのぉ、仮面にマントって暑くないですか?」
 バラを差し出した手が止まり、ボクもどうしていいか解らず、ただそのバラを眺めていた。
 ………………。
 ………………………………。
 膠着状態を破ったのは仮面男の方だった。
「せっかくの総長の来訪故、趣向を凝らしたのだが、いまひとつウケが悪かったようだな。少々残念ではあるが、その冷静な態度。さすがは総長になる人間だけはある」
 いや、冷静じゃなくって呆れていただけなんです。
「改めて自己紹介しよう。私が緋色正義だ」
 仮面男は仮面をゆっくりと外す。
 えっ!
「どうしたかね。いまさら驚いた真似の気遣いは無用」
「…………」
 ボクは心の底から驚いていた。だって仮面の下の顔は凄く整っていて――欧米人のように彫りが深くって、心なしか目も青味ががった濃灰色に見える――ボーイズラブのマンガに出てくる登場人物みたいで(いや、ボクにそんな趣味があるワケじゃない。お姉ちゃんが好きで無理矢理読まされたから)、ハンサムと言うより綺麗の割合が大きい。
 ちょっときつめの目に冷たい光が帯びていて、薄い唇に冷笑のような笑みが浮かんでいるけど、綺麗さを損なうものじゃない。真っ赤に染めた髪は似合わないけど……。
 こんな人が本当にいるんだぁ。
「ん、その手にしているのもは?」
「あっ、そ、そうですよ。この看板、この文字は何ですか」
「三条流で書いたが総長には気にいらなかったかな。やはり青蓮院流で書くべきであったか。それにしても総長に書のたしなみがあるとは、なかなかの教養」
 緋色先輩は腕を組んで満足そうに頷く。
 三条流? 青蓮院流? なにそれ?
「昨今は印刷文字でも書流を模倣したものがあるが、やはり直に書いてこそ墨字の醍醐味。そうは思わんかね? 伝統である書をないがしろにするような風潮は嘆かわしいものがある…………」
 それから一〇分、緋色先輩による現代教育と書道についての講義が続いた。ボクは緋色先輩の勢いに圧されて、「はぁ」とか「そうですね」としかこたえられなかった。
 さらに緋色先輩に看板がマズイことを理解させるのに一〇分。
 凄く疲れる時間だけが流れていった。

「……残念だが、総長の希望とあれば看板は外そう」
 緋色先輩は端正な顔に本当に残念そうな表情を浮かべる。まだ未練があるのか横に置かれた看板の方に視線を送っている。
「さて、私に用があるようだが、用とはなにかね?」
 緋色先輩はまっすぐにボクを見つめる。凄く綺麗で……恥ずかしいんですけど。真っ直ぐに見ていられなくって、視線を外してしまう。
「あ、あのぉ、ぼ、ボクもよく分からないんですけど、儀武オジサンが……あっ、儀武オジサンというのはボクの母方のオジサンで。その儀武オジサンに緋色先輩に会えって言われて……」
「みなまで言う必要はない」
 緋色先輩はボクの言葉を制した。
「八角氏から詳細はすべて聞いている。君が初代赤龍会の総長になったことも、初代赤龍会がおかれている状況も」
「儀武オジサンを知っているんですか?」
「知っているとも。八角氏は私の人脈の中でも最重要に位置している。八角氏がもたらしてくれる情報は有益で貴重なものが多い。そして今回は非常に特殊な情報の提供の代償に、初代赤龍会総長月護龍太の補佐と初代赤龍会の再興を命じられたのだ。私としては喉から手がでるほど欲しい情報だが、私は君という人間を知らない。故にCCDカメラとマイクを仕掛けて今日一日君と言う人物を観察させてもらった」
 CCDカメラを持ち上げて、口の端を歪めるようにして小さく笑う。
「合格だ。君の存在感の無さは見所がある。いまから私は君の補佐役となって初代赤龍会再興に協力しよう」
 存在感の無さって褒め言葉じゃないよね。やっぱりボクって存在感ないし、誰にも相手にされないし……えっ、えっ! ボクの補佐? 初代赤龍会の再興? 協力?
「ひ、緋色先輩、初代赤龍会に入ってくれるんですか?」
 緋色先輩はマントを跳ね上げると、
「私が初代赤龍会に入った以上、この月光原市一、いや日本一、もとい宇宙一の組織にしてみせよう! 大船に乗ったつもりで任せたまえ。わはははははははははは」
 ひとしきり高笑した後、急に真顔になった。
「初代赤龍会再興に課題は山積しているが、最大の課題は資金の問題だ。資金がなければ組織の維持、人員の雇用、作戦の遂行などに支障をきたす。故に我らがなさねばならない第一は」
 緋色先輩は言葉を止め、ボクを指さす。
「アルバイトだ!」
 こうして初代赤龍会再興の第一歩は始まった。

 *  *

「ところで緋色先輩。儀武オジサン提供の特殊な情報って何ですか?」
「こたえるのは簡単だ。が、それを聞いてしまったら世界各国の諜報機関に命を狙われる危険もあるが、それでもかまわないかね?」
 緋色先輩は昨日の夕飯の献立でもこたえるように、さらりと言う。
「冗談ですよね」
「冗談? 私は冗談は好まないが」何を言うのだとばかり、眉毛の片方だけ上げボクを一瞥する。「で、聞くかね? それとも聞かないかね?」
「け、結構です」
「賢明な判断だ。世の中には知らなくてもいいことは多いからな」
 にやりと笑った緋色先輩の笑顔が、ボクの判断が正しかったことを証明してくれている。
 こんな危なそうな人と一緒に、ボクはやっていけるのかなぁ……儀武オジサン、ボク凄く不安なんですけど。



【4】 初代赤龍会の旗の下に



 地方都市の商店街は閉店時間が早い。飲み屋やコンビニを除けば、たいていの店は午後九時までにはシャッターを下ろしてしまう。喫茶店〈れっどどらごん〉も午後八時には店を閉め、店内の電気も消えるのが日常だった。けど、今日は八時半を過ぎてもブラインドの隙間から明かりが漏れていた。
「えぇぇぇぇっ!」
 〈れっどどらごん〉の窓を震わすような女性の叫び声が上がった――幸いなことに〈れっどどらごん〉の窓は二重になっていて、叫び声が外に漏れることはない。


「あのぉ……本当に、本当に、本当ぉぉぉに、初代赤龍会に入ってくれるんですか?」
 よし野さんは細い眉毛を何度も上下させ、にじるようにして緋色先輩に近づいてゆく。
「いかにも」
「う、嘘や冗談じゃないですよね」
「私は自己の利益に結びつかない嘘はつかない。ここで嘘をついても何も利益はないからな、私の言葉は真実であると受け取って欲しい」
 噛みつかんばかりに顔を寄せてくるよし野さんが見えないかのように、緋色先輩は表情を変えることなく平然とコーヒーカップに口をつける。
「あ、ありがどぅうございまず……えっぐ、えっぐ、えっぐ…………」
 よし野さんは腰から下を失ったかのように身体がスッと垂直に降下し、トンッと床に座りこんでポロポロと涙をこぼしはじめた。
 よし野さんの広がったスカートの裾がボクの足にかかっている。なんだか足を動かしちゃいけない気がして、動けないまま妙に味が感じられないコーヒーをすすっているしかなかった。
「総長に質問があるのだが。いいかな?」
 緋色先輩はコーヒーを飲み干すと、動けないでいるボクを見て悪戯じみた笑みを浮かべる。
「はい」
「この女性は初対面の人間に対して、泣いて歓待の意を示すようなエキセントリックな性格をしているのかね?」
 言葉の割に、緋色先輩の顔には驚きの色はない。
「違います……たぶん」
「そうか。ならよいのだ。同僚がエキセントリックな性格では、常識人の私としては対応に困るのでな」
「はぁ、そうですねぇ」
 先輩の方が何倍もエキセントリックな性格だと思うんですけど――ボクは喉まで出かかった言葉を飲みこんで笑顔でこたえた。笑顔にしてみたつもりだけど、ひょっとしたら引きつった顔になっているかもしれない。だって、頬がピクピクしているもん。
「おどうさぁぁん、組員の方が増えたんでずよぉ……嬉じいでずよぉ……えっぐ、えっぐ……きっど昔みだいな初代赤龍会にしてみぜまずからぁ……えっぐ……見守っでいでくだざぁぁい…………」
 どこから出してきたのか分からないけど、よし野さんは写真を胸に当て泣き続けている。
「ぎっど、ぎっど……えっぐ……初代赤龍会を月光原市一の組織にじまずがら……えっぐ、えっぐ、えっぐ…………」



 よし野さんが泣きやみ、落ち着きを取り戻した頃には、壁に掛かった時計は九時を指していた。
「緋色さん、コードネームはどうしますか?」
 よし野さんはイタリアンハンバーグが載ったお皿を――泣いたらお腹が空きましたねぇ。なんて言って、よし野さんは料理を作っていた――緋色先輩の前に置く。
「コードネーム? そんなものが必要なのかね?」
「はい。秘密組織と言っても、作戦遂行時には自分の名前を名乗らなければならないことがあります。しかし、本名を名乗るわけにはいきませんから」
「確かに本名を名乗れない状況もあるな」
「そうですよ。それにコードネームは幹部だけの特権なんですよ。普通は戦闘員Aから始まって、手柄を立てて初めてコードネームが貰えるんです。けれど緋色さんは総長のお知り合いですし、八角さんの推薦もありますから特別待遇なんですよ」
「コードネームは幹部の証か。ところで卯兎さんも若衆頭代理補佐見習いと言う役職なのだから、コードネームはあるのだろう。コードネームは何かね?」
 緋色先輩は咀嚼のテンポを狂わすことなく質問する。
「本当はコードネームなんて貰えるようなことはしていないんですけど、いちおうイエローラビットという名前を貰っています」
 よし野さんは顔を赤らめて消え入るような声でこたえる。
 ちょっと背中を丸めて顔を赤らめるよし野さんはとても年上には見えない。ふてぶてしい態度だけ見れば、緋色先輩の方がずっと年上に見える。
 イエローラビットか。ふわふわと柔らかそうなイメージで、よし野さんに似合ってるな。
「イエローラビットね。初代総長はレッドドラゴン、別荘送りになっている組員は確かブラックソードだな」緋色先輩は三人の名前を口の中で何度か繰り返し、「では、総長のコードネームは?」ボクを見る。
「シルバードラゴンと言います。儀武オジサンがつけてくれたんです。名字が月護だから月の色と言うことでシルバー、名前が龍太だからドラゴンでシルバードラゴンす。こんなかっこいいコードネームはボクには似合わないですよね……」
 よし野さんは「凄く似合ってますよ」なんて言ってくれてるけど、無理して言っているのが分かるよ。何よりボク自身が似合っていないと自覚しているしさ。本当はバイオレット船虫とか、土留め色ホオジロタマリンなんて冴えないコードネームがお似合いなんだ。
 ボクに比べて、よし野さんは似合っていていいなぁ。ん?
「ねえ、よし野さん。イエローラビットのラビットは名字からとったんですよね。じゃあ、イエローはどんな理由でつけたんですか?」
「初代赤龍会に入ると義父に告げた時、着ていたセーターがヒヨコ色だったんです……だからイエローなんです。安直ですみません」
「可愛くていいです。凄く、本当に似合っています!」
「ありがとうございます。総長にそう言っていただけると、この名前にちょっとだけ自信がもてました」
 よし野さんは照れくささそうに手をスカートの前ですりあわせる。
「要するにだ」イタリアンハンバーグを綺麗に食べ終えた緋色先輩は、ボクとよし野さんを交互に見てから話しだす。「要するにコードネームは色を表す言葉と名詞の組み合わせであればいいのだな」
「はい。あ、でも、名詞じゃなくって動詞や形容詞でもかまいませんよ。ご希望とあれば接続詞とかでもいいですけど」
 接続詞? それって〈しかし緋色〉とか〈緋色、そして〉と言うこと? なんだか売れない演歌歌手の歌みたいだなぁ。
「命名方法は分かったが、咄嗟にコードネームなど思いつかないな。ましてや自分自身の名となると尚更のことだ」
 緋色先輩は端正な顔を少しだけ曇らせて腕を組む。
「あのぉ、緋色さんはお綺麗ですし髪の毛が赤いから、ビューティーレッドなんてどうですか。それともカーマインハンサムの方がいいかしら。そうですよ、カーマインハンサムがいいですよ」
 よし野さんはこれで決まりとばかりに胸を張る。もう少し胸があると決まるんだろうけど、ちょっとボリューム不足なのが悲しい。
「ちょっと待ちたまえ。なぜ私が笑いを誘うコードネームを付けなければならないのかね。残念ながら卯兎さんの提案は辞退させていただこう。総長には何か妙案はないかな?」
「えっ、あっ、緋色先輩の名前が正義だからジャスティスレッドなんてどうですか」
「悪の組織の一員が正義とはシャレにもなっていないな。ん? でも、それはそれで諧謔的でいいかもしれないな」
 緋色先輩は目を細めてうっすらと笑みを浮かべる――顔が整っているから、仮面じみた表情になって怖いんですけど。
「ならば、名前をもじって〈偽りの朱〉と言うコードネームにしよう。総長これでかまわないかね?」
 ボクに反論するべきところもなく、緋色先輩のコードネームは〈偽りの朱〉に決まった。でも、よし野さんは「カーマインハンサムの方が格好いいのにぃ」なんて愚痴っていたけど。
「で、私のコードネームも決まったことだし、初代赤龍会の今後について話そうではないか」
 緋色先輩は真っ赤な髪を手ぐしで掻き上げ、さも楽しい話を語り聞かせるがごとく、ずぅぃと身を乗り出す。

 *  *

 平日の月光原商店街は人通りが多い。ましてや夕方となれば夕飯の買い物や学校帰りの人たちでごった返している。そのなかでボクと緋色先輩は商店街の側溝の金蓋を外しては、溜まった落ち葉や泥を掻きだしていた。
「緋色先輩、ひっ!」
 緋色先輩の突き刺すような視線を受け、ボクは後ずさってしまった。
「総長。今なんと言ったのかね? 私の本名が聞こえた気がするが、まさか初代赤龍会の公務中に本名を呼ぶようなマネはしていないだろうな」
「も、もちろんです。偽りの朱さんと呼んだんです」
「ならいいが。で、用事は何かな」
「ボクたち、一体何をしているんでしょう?」
 緋色先輩は伸びでもするような姿勢で上体を起こし、スコップを差し出す。
「商店街の排水溝に溜まったゴミの掃除だが、総長は分からずにやっていたのかね?」
「掃除は分かるんですけど、どうしてボクらが掃除をしなきゃならないんです。」
「愚問だな」
 緋色先輩は教壇上の教師のように腕を組んだ。上下とも学校指定の濃紺のジャージに足下は長靴って格好なのに、緋色先輩が着ているとびしっと決まって見える。まるで上等のスーツを着ているみたい。ボクは……ジャージがだぶだぶで長靴ががふがふで、畑仕事を手伝う中学生みたいにしか見えないと思う。
「我々の最終目的は何かね?」
「一応、日本征服です。できるかどうか分からないけど……」
「ちゃんと理解しているではないか。ならば、理由は自ずと分かるだろう」
「すみません。本当に分からないんですけど」
「仕方がない、まだ早いが休憩にしよう。では、こちらに来たまえ」
 緋色先輩は露骨に失望の表情を浮かべ、路地の奥へ入っていく。小さな公園に着くと、ベンチに座るようアゴで示す。
「絶対的な武力をもっての支配、経済による支配など、日本征服にはいくつかの方法があることは、総長も理解していると思う」
 前置きもなしに緋色先輩は話しだす。
「しかし現状を顧みれば、これらの方法の実行が無理であることは理解できるだろう。我々は人的にも、経済的にも矮小な存在だ。人員の補完策としてアルバイトを雇用したとしよう。時給は最低八〇〇円は必要だし、危険手当や交通費など諸経費がかかってくる。仮に人員問題が解決して征服作業に着手できたとして、今度は支配地域に対する慰撫問題が発生するのだ。支配地域人民の支持を得られなければどうなるかは、フランス革命やロシア革命など世界の歴史が証明している」
「はぁ。凄すぎて実感はないですけど、日本征服が大変なことは分かりました。でも、それが排水溝掃除と繋がるんですか?」
 緋色先輩はにぃと嫌な笑みを浮かべ、
「資金と人民の支持を同時に獲得するためだ」
 空になったコーヒー缶をべっこんと握りつぶす。スチール缶なのに……。
「いいかね、我々の拠点である〈れっどどらごん〉は商店街に位置している。卯兎さんの自宅も同位置にある。もし我々の征服作業の際、商店街の人々から反感を買ったらどうなる」
「〈れっどどらごん〉が襲われ、よし野さんが危険にさらされる……ですか?」
「その通り」
 そうかなぁ、商店街の人って親切な人が多いし……。
「故に、我々は初代赤龍会の名前でこの仕事を受けたのだ。合法的な資金調達によって組織の立て直しを図ると同時に、他人が嫌がる仕事を率先して行う初代赤龍会を『良い組織』と思わせる一石二鳥の作戦なのだよ。鬼神をも欺く知謀とは、正にこのことだろう」
 緋色先輩は満足げに頷く。
「でも、アルバイト代って全部掃除して五〇〇〇円ですよね。これだけ広い商店街を掃除するのって、あと三日はかかりますよ。割が合わないんじゃ」
「総長、大局的に物事を見ていただきたい。我々が得る資金の多寡よりも、我々が得る民衆の支持という無形の利益の方が大きい。それに、商店街会長から排水溝から出てきた金に関しては我々が取得してよいとの承諾も得ているのだ」
「それって猫ババ……やっぱ、まずいですよ」
「日本征服と言う大逆を企む人間が、猫ババごとき恐れてどうするのだ。さぁ、休憩はおしまいにして作業を続けよう。のんびりやっていたら三日では終わらなくなる」


 結局、ボク達が三日間も放課後を潰して得た利益は、商店街からの正当報酬五〇〇〇円と排水溝に落ちていた非合法報酬二一〇六円、人目を盗んで自動販売機の返却口を調べて手に入れた三一〇円の合計七四一六円。それにどこから迷い込んできたのか、ワニガメ一匹とアンゴラウサギ二匹も捕まえた(カメとウサギは緋色先輩がペットショップに売りに行って五〇〇円になった)。

 *  *

「龍太さんも緋色さんも、排水溝掃除ご苦労様でした」
 アルバイト最終日に〈れっどどらごん〉に行くと、よし野さんが笑顔で出迎えてくれた。本名を呼ばれ緋色先輩は一瞬目を細めたけど、初代赤龍会の公務以外は普通に名前を呼ぶことを思い出したようで表情をゆるめる――ボクの提案で公務以外では本名を呼ぶことにしたんだ。だって総長と呼ばれるのって結構恥ずかしいしね。だから、緋色先輩はボクのことを月護君と呼ぶし、よし野さんを卯兎さんと呼ぶ。
「お二人ともお疲れでしょう、疲れた時には甘い物が一番。ホットケーキを作りましたから食べてくださいね」
 テーブルの上には八段重ねのホットケーキと、甘みある柔らかい匂いを漂わすコーヒーが置かれている。
「わたしも龍太さんのお手伝いができればよかったんですけど、お店を勝手に休むわけにもいかなくって、すみませんでした」
「よし野さんが謝る必要ないですよ。お店もあるし、なにより結構肉体労働でしたから、女の人には無理ですよ。それに凶暴なワニガメやアンゴラウサギがいたし」
 ボクはワニガメに食いちぎられたジャージの裾と、アンゴラウサギによる腕に残った痣がよく見えるよう袖をまくる。
「私も月護君と同じ意見だ。〈れっどどらごん〉からの安定収入は、初代赤龍会維持には欠かせないからな」
「そうですか。じゃあ、わたしはお店を頑張りますね」
 よし野さんは、力こぶをつくるポーズをする。でも、よし野さんの力こぶは初代赤龍会の現状を示すみたいに小さなものだった。
「卯兎さんには引き続き店をやってもらうとして、問題は我々だな。高校生である以上、そうそう学校を休むわけにもいかない。かと言って単発のバイトがそうあるわけでもないし、あったとしても金銭的には芳しいものではないだろう。これから諸機材の購入、人員の確保など課題は山積しているのだが、さすがの私も打つ手がない状態なのだ」
 緋色先輩は軽やかに腕を動かし、優雅にホットケーキを食べながら、難しい表情を作る。
「よし野さん、なにかいいアルバイト知りませんか?」
「そう言う情報は詳しくないんです。排水溝掃除のアルバイトだって、緋色さんに聞くまであることを知らなかったんです」
「うまい話なんてないですよねぇ」
 ボクとよし野さんが同時にため息をついた時、
「お困りのようだな諸君」
 厨房の奥から声が響き、儀武オジサンがぬっと現れる。
「儀武オジサン!」
「八角さん。いつのまに?」
 今度はボクとよし野さんは同時に声を上げる。
 緋色先輩も驚いたようで「むぅ」と鼻を鳴らす。
「儀武オジサンは用事があって街を出て行ったんじゃないですか?」
 儀武オジサンは大きなバッグの中から煙草をとりだし、火をつけゆっくりと吸い込む。
「ん、そうだぜ。だけど用事が済んだから帰ってきたんだよ」
 もわぁと白煙を立ち上らせこたえる。
「そうだ。土産があるんだ。北海道名産〈木彫りの熊の置物〉と、長野名産〈ハチの子の缶詰〉、それに鹿児島の〈桜島大根〉。みんなで仲良く分けてくれ」
 バッグから取り出し、ボクの目の前に置く。
「なんです、このお土産。用事があったんじゃないんですか?」
「あったよ。日本縦断温泉巡りパートワンって用事がな。今回は登別温泉と白骨温泉と指宿温泉に行って来た。やっぱ温泉はいい。日本人は温泉だな。そうだ龍太、月光原なんて征服しないで、別府温泉あたり征服しに行かないか」
「初代赤龍会には大分まで行くお金なんてないです。総長のボクですらアルバイトしなきゃならない状況なんです」
 ボクを総長にしながら、勝手にいなくなった儀武オジサンに対する怒りがわいてきて、言葉がきつくなってしまう。
「怒るなよ、いい社会体験ができてよかったじゃねぇか。でだ、龍太たちは次のアルバイトがなくて困っているんだろう。俺がいいアルバイトを紹介してやるよ」
 椅子に座った儀武オジサンは映画の悪役のように、膝に乗せた木彫りの熊を撫でながら善意とも悪意ともつかない笑みを浮かべる。



 【5】 日本の伝統



 儀武オジサンが帰ってきてから一週間。放課後になると、ボクと緋色先輩は〈れっどどらごん〉に寄るのが日課になっていた。なぜって、アルバイトを紹介してくれるはずの儀武オジサンが〈れっどどらごん〉に入り浸っているから――もったいぶっているのか、別の理由があるのか分からないけど、『例のアルバイトだけどな、今日はまだ教えられないんだ。また、明日来てくれよ』と言うばかり――仕方なく日参しているんだ。でもボクとしては、よし野さん特製のチーズケーキが食べられるし、早く帰ったってすることもないから不満はない。緋色先輩の気持ちは分からないけど、初代赤龍会のためと割り切っているみたい。
 今日も授業が終わると同時にボクと緋色先輩は〈れっどどらごん〉に向かった。


「学業に励んできたか」
 カウンターの隅に陣取った儀武オジサンは、大盛りのピラフから顔を上げると、毎日言っているセリフでボクらを迎えてくれた。
 いつもと同じセリフと言うことは、今日もアルバイトの紹介はなしかな……ボク的にはその方が嬉しい。だって儀武オジサン絡みの仕事じゃ、なにがあるか分からないし、嫌なことが起きそうな予感がして……。
「例のアルバイトだけどな」
 儀武オジサンはまたピラフに顔を戻し、
「今日紹介できると思うぜ。ちょっと待っていろ」
 満足げに頬張った。


 ボクと緋色先輩が席に着くや、セーラー服姿の女の子がすすっと寄ってきた。身長は一五〇センチそこそこの小柄で、気の強そうな顔をしている。日焼けした褐色の肌、猛禽類じみた鋭い眼差し、意志の強そうな太い眉毛、真っ黒な長い髪の毛を無造作に後ろで縛っている。膝上一〇センチのスカートを穿いているけれど、可愛らしいと言うよりは、凛々しいと言った感じがする女の子だ。
 その女の子がぐっと腰を割って中腰になる。上目遣いにボクらを見つめる目には力強い色が浮かんでいた。膝の前に置いた両掌を見せ、親指を包むようにして人差し指から順番に折ってゆく。
 何をするつもりなんだろう?
 と、緋色先輩が椅子に座ったまま少女に向き直った。凄く真面目な表情をしている。
 えっ? 何がどうなっているの? 何をするつもりなの?
 二人の尋常ならざる雰囲気に、店内にいたお客さんがちらちらと眺めている。けど、女の子は気にする風もなく、睨めるように緋色先輩の目を真っ直ぐ見る。
 女の子は中腰のまま握った拳を返して手の背を見せる。
「これにてお引き合い願います」
 甲高い声が店内に響き渡る。
「まずは、お座りなさい」
 背筋を伸ばした緋色先輩がきちんと両手を膝に置いてこたえる。
「これにてお引き合い願います」
「まずは、お座りなさい」
「これにてお引き合い願います」
「まずは、お座りなさい」
 二人とも表情を崩すことなく、同じやりとりを繰り返す。
「再三の御言葉に従いまして、ご免を被ります」
 少女は中腰のままで床に片膝をついて左手を突き出す――拳は握ったまま仰向けにして。
「さあ、お控え下さいますうよう」
 女の子を諭すように緋色先輩がこたえる。
「御言葉ながら、未熟者でございます」
「手前とて未熟者でございます。さあ、お控え下さいますよう」
 緋色先輩はいつもより声のトーンを落としている。
「お控え下さい」
「さあ、お控え下さいますよう」
「お控え下さい」
「さあ、お控え下さいますよう」
 またも互いに譲り合う。
「さように言われましては仁義になりません。是非ともお控えお願いいたします」
 女の子は緋色先輩を真っ直ぐ見上げ、声を強める。
「逆意とは存じますが、再三の御言葉に従いまして控えさせていただきます」
 女の子の勢いに押し切られるよう、緋色先輩は小さく頭を下げる。
「早速お控え下さいましてありがとうございます。向かいまするうえさんとはお初にございます。手前、いたって口不調法、あげます言葉、前後間違いありましたら御免お許し被ります。手前、縁もちましての親分と発しますは、大日本BF団四天王の一人がブラッディードラゴン元帥の右腕、初代赤龍会一代目総長レッドドラゴン大佐、従います若い者にございます。未熟者の身をもちまして、姓名の儀、声高に発しまするは失礼さんにございます。姓は純鈎(じゅんこう)、名は麗魅(れみ)、通称ブラックソード。聖リチャード女子高校一年A組に籍を置きます、御視見通りの駆け出しにございます。恐惶、御見知りおかれまして、行く末、万端よろしく御頼み申し上げます」
 立て板に水というか、朗々と流れるように口上を述べ、女の子は頭を深々と下げた。
 何言ったんですか? あまりにも独特の節回しと早口で、よく分からなかったんですけど……なんだか重要なことを言っていたような気もするんだけど。
 と、緋色先輩は少し前屈みになって、
「御念の入った御言葉に申し遅れました。例の通りうえさんとは初めて御意かないます。自分、初代赤龍会二代目総長シルバードラゴンの若い者で、名は緋色正義、通称偽りの朱と申します。弓野学園二年二組に籍を置きます、お見かけ通りのしがない者でございます。どうぞ御見知りおき下さいまして、御同様お引き立て願います」
 女の子にも負けることなく、よどみなく口上を返し、お辞儀する。
 ボクはと言うと何をどうして良いのか分からず、
「緋色先輩、先輩たちは何していたんですか?」
 小声で尋ねた。
「総長でありながら、仁義が分からないとは情けない」
 緋色先輩は呆れたと言うよりは、小馬鹿にしたような表情を浮かべ肩をすくめる。
「いいかね、今のは仁義と言って渡世人の挨拶のようなものだ。そもそも渡世人というものはだな……」
「えぇっ! このボクちゃんみたいな人が新しい総長なの!」
 素っ頓狂な声が緋色先輩の説明を遮る。
「まだ子供じゃん。なんでレッドドラゴン大佐の跡目がこんなガキなんだよ。弱そうだし、頭も悪そうな顔してるじゃん」
 両腕を腰に当て睨むようにしてボクに顔を近付けてきた――ジロジロと、ねぶるように、ボクの周りをぐるぐる回りながら、ふんっと鼻を鳴らす。はっきり言って態度悪いんですけど――さっきまでの腰の低さからは想像もつかない豹変ぶり。
「あたしがいない間に勝手に跡目を決めやがって。それもこんなに弱っちそうなガキだぜ。草葉の陰でレッドドラゴン大佐も泣いているんじゃねえのかよ。あぁ、なに見てるんだ、言いたいことかるのかよ」
 女の子はボクの前で仁王立ちし、ボクの目を突くような勢いで人差し指を突きつけてきた。
「あたしが仁義を切ったのに、テメエは挨拶もなしかよ。あぁ、なにか言ったらどうだよ。なんだ、テメエには口がないのか」
「え、あっ、えぇと……ボ、ボク、二代目総長で弓野学園一年生の月護龍太って言います」
「は? 龍太? 覇気のねぇツラしてやがくるせに、いっちょ前に龍なんて名乗りやがってよ。テメエのどこが龍なんだよ。龍を名のるんなら男気とか覇気とかみせやがれ。あたしはな、レッドドラゴン大佐の男気に惚れて初代赤龍会に入ったんだ。なのにこんなに覇気のないガキが新総長だぜ。やってられねぇよ。なにが龍だ。せいぜいがヘビぐらいじゃないか。今日からテメエは蛇太と名乗れ」
「すみません」
 女の子の剣幕におされて、ボクの口は無意識のうちに謝罪の言葉を告げてしまった。でも、なんでボクが謝らなきゃいけないの? 龍太なんてどこにもある名前じゃないか。逆に蛇太なんて名前があったらおかしいと思うんだけど。
「なんで、そこで謝るんだ。男だったらがつんと言い返してこいよ。本当に情けねぇヤツだな。蛇なんて勿体ない、ミミズやゴカイで十分だ」
 女の子がボクに変な名前を付けるたびに、緋色先輩が紙ナプキンに〈蛇太〉〈蚯蚓太〉〈沙蚕太〉と書いて文字を教えてくれる。
「蚯蚓太は……名前じゃないような…………」
「ああぁ、声が小さくて聞こえねぇな。はっ! ミミズじゃ仕方ないか」
 小さい体をめいっぱい反らした女の子は、うっすらと笑みを浮かべて――これが嘲笑という表情なんだろうけど――顔を横に向け、わざとらしく耳に手を当てる。
「純鈎君、そのへんで勘弁してやってよ。これでも龍太は俺の可愛い甥っ子なんだからさ」
「八角の叔父貴! こいつが叔父貴の甥っ子?」
 純鈎と呼ばれた女の子は心底驚いた風に、ボクと儀武オジサンを何度も見る。
「冗談。全然似てないじゃんか」
 確かに儀武オジサンとボクはあんまり似てない。儀武オジサンはいい加減なところはあるけれどワイルドでカッコイイし、物知りだし、どこにいても生きていくような生命力のようなものが表情に出ている。かたやボクは勉強もスポーツもできないし、顔だって平凡だし……。
「いやいや似てるぜ。ほら、繊細で感受性豊かなところなんかそっくりだろう」
 儀武オジサンはボクの肩を抱いて顔を並べる。
「…………」
 純鈎さんは口を小さく開けたままボクたちを見ている。
 緋色先輩はボクと儀武オジサンを一瞥して「戯れ言を」と小声でつぶやく。
 ボクも違うと思います。儀武オジサンの〈センサイ〉は〈繊細〉じゃなくって〈戦災〉だと思う。儀武オジサンが関わるとロクな目に遭わないし、何もかもグチャグチャになるし。
「反論がないところをみると納得してくれたようだな。さて……」
 儀武オジサンはボクたちのテーブルにつき、呆けている純鈎さんにも座るよう声をかける。
「君たちはさっきから大声で初代赤龍会のことを話しているだろう。一応は秘密組織なんだから、大声で世間様に喧伝する必要もないだろう。ま、俺はかまわないんだけどな、よし野君がハラハラしっぱなしで仕事にならないんだ。いや、仕事が変にはかどっているというべきかな」
 儀武オジサンはため息混じりにカウンターを指差す。
 カウンターじゃよし野さんが、雨に濡れた子犬のような目でボクたちを見ていた。心配を誤魔化すために無意識で作ったのか、カウンターの上には色とりどりのパフェが並べられている。そしていま新たなストロベリーパフェが完成したところだった。
「今日は店を早じまいするそうだから、話はそれからにしてくれよ。でな、おまえらが責任とってアレ食えよ」
 儀武オジサンが火のついていないタバコで指し示した先には、合わせて一二個のパフェが並んでいた。



 早じまいした店内に残ったボクたちは、カウンターに陣取ってまったりとした雰囲気に包まれていた。
「ところで純鈎君、いつ出てきたんだ? まさか食い物がまずくて逃げ出してきたんじゃないだろうな?」
「逃げちゃいない。今日出てきたんだよ」
 純鈎さんは儀武オジサンの問いかけに大儀そうにこたえると、椅子の背にもたれかかるようにして座り直し、苦しげな息を吐く。
 苦しそうなのも無理はない。純鈎さんはパフェを四個も食べたのだ――いくら甘い物が好きでも、四個も食べれば気持ちも悪いだろう。ちなみに緋色先輩は「甘い物はあまり得意ではないのだが」と言いながらも六個、ボクは二個が限界だった。
「そう言えば八角氏は『器物破損で君が別荘送り云々』と言っていたが、少年院とはそんなに簡単に出てこれるものなのかね。差し支えがなければ後学のために少年院での生活というものを教えてくれないかな。それとよし野さん、クリーム系で舌がなずんでしまったから、口直しにあんみつか羊羹でも貰えないだろうか」
 緋色先輩の注文を聞いた途端、純鈎さんは顔をしかめ、
「あたしは少年院なんか行ってねぇ。別荘に押し込められていたんだ」
 口を押さえるようにしてこたえる。
「緋色君、俺は純鈎君が少年院に入っていたなんて言ってないぜ。純鈎君はああ見えてもいいところのお嬢様なんだ。ご両親はいくつもの会社を経営しているし、別荘も国内外に幾つも持っているんだぜ。ま、当人は単純な乱暴者だけどな。なにせクラスメイトがヤクザに因縁つけられたと聞いた途端、単身でヤクザの事務所に乗りこんで暴れたあげく、ビルや車を壊してよ。ご両親が事件をもみ消したから警察沙汰にはならなかったけど、こいつは軽井沢の別荘で謹慎よ」
 儀武オジサンはニヤニヤしながら、ポケットから出したウィスキーのミニチュアボトルに口をつける。
「あたしは間違ったことはしてない」
 儀武オジサンに背を向けた純鈎さんは怒鳴るように言う。
「分かってるさ、確かに間違ったことはしていない。ただ、物事には限度と言うものがあるだろう」
 儀武オジサンは頭を掻き、フケでもついたか指先をふっと吹く。
「悪いのはあいつらだ。あたしは悪くない! クラスメイトがヤクザに脅されたんだぜ、それをとっちめてなにが悪いんだよ! よし野さん、あたしに昆布茶お願い」
 純鈎さんは苛立たしげに立ち上がり、大股でトイレに行ってしまった。
「ま、純鈎麗魅がどんなヤツか分かったろう。単純で短気で暴力的だけど、悪いヤツじゃねぇよ。同じ初代赤龍会の仲間なんだから仲良くやれよな。苦労するだろうけどよ」
 儀武オジサンは不吉な言葉をさらりと言って、タバコに火をつける。
「麗魅ちゃんは、ちょっとがさつで、猪突猛進で、近所の不良も一目置くほどの乱暴者ですけど、根は良い子です……たぶん……だったらいいけど……はぁ」
 よし野さんは嫌な思い出でもあるのか、表情を曇らせて大きなため息をつく。
 なんか、儀武オジサンやよし野さんの言葉を聞いていると、凄く不安になるんですけど。
「よし野さん、便座にカバーつけてよ。お尻が冷たくて風邪ひきそうだよ。ほら、鳥肌が」
 純鈎さんはスカートの裾を持ち上げて太股を見せる。
 ――緋色先輩と違うタイプだけど難儀そうな人だなぁ……少なくても恥じらいはないみたい。


「ところで純鈎君。君は二代目総長である月護龍太君に力を貸してくれるのかね?」
 二皿目の羊羹を食べ終わったところで、緋色先輩は唐突に切り出した。
「あたしにこいつを総長として仰げと言うのか。頭は悪そうだし、運動神経はなさそうだし、根性もなさそうだし。嫌なこった!」
「月護君の学力、運動能力、根性に関しては、純鈎君の予見を否定するつもりはない。が、純鈎君は先代のレッドドラゴン大佐には恩義があるのではないかね?」
「あるさ。恩義はあるけど、こいつにじゃない。レッドドラゴン大佐にだ」
 緋色先輩に顔を向けたまま、純鈎さんはボクに指を突きつける。
「それは承知しているとも。が、現在の初代赤龍会の構成員は私を含め三人。うち二人は戦闘戦力とは言い難い。この幾多の組織が互いを潰し合う状況下で、戦力の乏しい初代赤龍会が生き残れる確率は非常に低いと言わざるを得ない。情けない話だが、その時期はそう遠いことではないと断言できる。君は恩義あるレッドドラゴン大佐が作り上げた、この組織が消滅してもかまわないと言うわけだな。義理も人情もない部下を持って、レッドドラゴン大佐も草葉の陰でさぞ嘆いていることであろう。新参者ながら回向の一つでも」
 整った顔に苦渋の表情を浮かべ、緋色先輩は「観自在菩薩……」と般若心経を唱えはじめる。
「ボクが総長じゃ心許ないのは分かっていますけど、根性も体力も鍛えますから仲間になって下さい」
「麗魅ちゃん、わたしに懐いてくれていたじゃない。いまになってわたしを見捨てて余所に行ってしまうの? やっと二代目総長が決まったのよ。これからが大変なの、お願い手伝って」
 よし野さんは大粒の涙をボロボロ零しながら、純鈎さんの左手を握る。
 緋色先輩の読経と、よし野さんの泣き声が唱和して一つの波となる。その波が大きく小さく、うねるように店内を震わしている。
「行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空……」
「お願い麗魅ちゃん、わたしたちを見捨てないで……」
「……掲諦 掲諦 波羅掲諦 波羅僧掲諦」
「……義父さんのためだと思って、お願いよぉ」
 熱気というのか、念というのか、重苦しい空気が純鈎さんの周りに渦巻いている。少し離れたところに座っている、ボクでさえなんとも言えない重圧を感じていた。
「菩提娑婆訶……」
「お願いよぉ……」
 純鈎さんは右手で髪の毛を掻きむしると、
「だぁぁぁあ! わかったよ。入るよ。入ればいいんだろう! だけどな、あたしはレッドドラゴン大佐のために入るんだ。テメエのことを認めたワケじゃないからな!」
 ボクの顔を見て、ふんっと鼻を鳴らした。


「万事丸く収まってなにより。さて、お待ちかねのアルバイトの話をしようか」
 カウンターから立ち上がった儀武オジサンは、純鈎さんの横に立ち純鈎さんの肩に手を置く。
「今回のアルバイトの依頼主は、この純鈎君の父親で聖リチャード女子高校の理事長でもある純鈎聡一郎氏からの依頼だ」
「親父からの依頼だと。八角の叔父貴に意見するのは気が引けるけど、それだけはやめた方がいい。あの男が絡むとろくなことにならない」
 純鈎さんは嫌そうな表情を浮かべ、儀武オジサンの手を振り払いレモンスカッシュを一気に飲み干す。
「純鈎君が父親を苦手にしているのは知っているが、割がいいんだ。それにもう前金を貰っているしな」
「前金なんか返してしまえよ。と言うか、親父絡みならあたしはやらない」
「悪いが純鈎君に辞退はできない。前金は君が壊した自動車の弁済に使い切っている。まあ、後金だけでも五〇万円にはなるから悪い話じゃないだろう」
 五〇万円!
 五〇万円の言葉はボクの理解を超える金額だった。だってお年玉を集めても見たことないお金だし、お父さんたちがボーナス時に支払うローン代金よりも多いんだもん。
 よし野さんも「凄いですねぇ。このお店の何日分の売り上げかしら」なんて感心している。
「私達には選択の余地はないということですか。しかし金銭的には問題はない。いいでしょう」
「さすがに緋色君は世の中がよく分かっている。なんやかや言っても、ものを言うのは銭だよな」
 緋色先輩の同意に気をよくしたのか、儀武オジサンはニコニコと笑みを浮かべる。
「龍太もいいだろう」
 キラリとばかり歯を煌めかせた笑顔をボクに向ける。
「う、うん」
 儀武オジサンの笑顔が気になるけど、緋色先輩も反対していないし――純鈎さんは不機嫌そうな表情で頬杖ついているけど――ボクは頷いた。
「報酬は分かりましたが、我々は何をすればいいのです?」
 緋色先輩にも不安があるのか、目を細めて儀武オジサンをじっと見る。
「期間はこんどの三連休。場所は聖リチャード女子高校。で、仕事は」
 わざとらしく言葉を止め、儀武オジサンはタバコに火をつけ、深呼吸するように煙を吸い込む。
「仕事はオバケ退治だ」
 煙と一緒に吐きだした「いい話だろう」と言う言葉は、すぐに消えていった。



 【6】 Arbeit Macht Frei 1



 聖リチャード女子高校――純鈎財閥の教育部門・純鈎教育財団によって、月光原大学の付属高校として五年前に開学。国際社会に通じる人間形成を目指し、各種語学教育に力を入れている。また、クラブ活動に手厚い補助を与え、文系理系クラブとも全国大会に出場する力をつけてきている。生徒数四六一人――新設校ながら人気の高い学校として有名になってきている。
 その聖リチャード女子高校の正門に、一台のマイクロバスが着いたのは、土曜日の午前九時過ぎのことだった。



「総長、早く降りてきたまえ」
「テメエは本当にグズだな」
「龍太さん、いえ、総長。用意はできたんですよね。お早く」
 みんなはボクの気持ちなんかお構いなし。好き勝手なことを言っている。
「嫌だぁ!」
 冗談じゃない。誰が降りるもんか。ボクはマイクロバスの後部座席にうずくまって、みんなの声を無視するべく両手で耳をふさぐ。
 けど、耳をふさげたのは僅か数秒だけ。乱暴に手を引きはがされてしまった。
「龍太ぁ、遊んでいるんじゃねぇよ。時間がもったいないから早くしろ」
 儀武オジサンはボクの手を握ったまま、怒気を抑えるように一言一言区切るようにして言う。真っ赤な地に白いハイビスカスが染め抜かれたアロハシャツ、細身のサングラス、うっすらと伸びた無精髭。どう見たってカタギには思えない出で立ちの儀武オジサンが、苛ついた声をだしている。本当は怖くてたまらないけど、こればっかりは譲れない。
「オジサンがなんと言っても、ボクは出ません!」
「しゃあねぇな……」
 ちっと舌打ちと共に、ボクの右腕はねじられるようにして引き上げられた。
「痛、痛い! オジサン……手、手を離して」
「いいからバスから降りろ。降りたら手を離してやるよ」
 儀武オジサンの手に力が入り、肩の関節がねじれてぎゅりと嫌な音をたてる。もう座ってなんかいられない。ボクの身体は歪に反り返ったまま、一歩一歩とマイクロバスの昇降口へと押しやられる。
「降りるから。でも、ちょっと待って。心……心の準備が」
「総長のおまえが出渋っていたら話にならないだろう。いつまでも未練たらしくしやがって。四の五の言わずに観念しろ!」
「わぁ!」
 右腕が自由になった途端、ボクの足は僅かな時間だけど空中を駆け――足に風を感じたのは一秒にも満たないかもしれないけど――転ぶように地面に手をついてだらしなく着地した。
「白か。総長は清純路線なのだな」
「うわぁ! そんなもの見せるんじゃねぇよ!」
「総長、あのぉ……」
 みんなの視線がボクの下半身に集まっている。なんで……って、スカートがまくれている。
「わぁぁぁぁぁあ! 見ないで、見ないで!」
 顔中の血が沸騰したかのように熱くなる――スカートがこんなに簡単にまくれることも、まくれたら凄く恥ずかしいことも初めて知った。恥ずかしくって、じっとなんかしてられなくって、ボクはお尻を押さえて後ずさる。
「『わぁぁぁぁぁあ』じゃねぇだろう。おまえはいま女子高生なんだから、女の子らしく『きゃあ』とか言えよ」
 儀武オジサンは頭をガシガシ掻きながらマイクロバスから降りてくる。
 そう、ボクたちは――初代赤龍会の全メンバー――アルバイトのために変装していた。最初は私服で行くことになっていたんだけど、儀武オジサンが「女子高に潜入するのに男の姿、ましてや部外者の格好はマズイだろう。三連休とはいえクラブ活動や寮生もいるんだからよ」正論なんだか、嫌がらせで言ったんだか、アヤをつけて……結局、ボクたちは聖リチャード女子高校の制服姿で行くことになった。
 でも、女装なんて恥ずかしくって……。
「総長。もっと堂々とできないのかね。我々はなんらやましいところはない。なのにオドオドされると、我らまで怪しい目で見られるではないか。先程から衆人の視線を感じないかね」
 確かに視線は集まっている。休日だけど結構な数の生徒が登校しているようで、何人もの女の子が校門を出入りしている。その生徒たちがさっきから訝しげな視線を送っているのは気づいている。でも、それはボクに対する視線じゃなくって、緋色先輩に対する視線だと思うんだけど。
 だって、細身とはいえ一八〇センチの長身がセーラー服を身にまとっているんだ。膝上二〇センチのスカートに黒のオーバーニーソックス――緋色先輩にあうセーラー服やオーバーニーソックスがよくあったな――それに真っ赤な髪の毛を左右で束ねてツインテール。緋色先輩は端整な顔立ちだから似合っていると言えば、似合ってはいるけど目立ちすぎ。なのに緋色先輩には自覚がないようで、腰に手を当ててボクを見ながらヤレヤレとばかり首を振る。
「大丈夫です、凄くお似合いです。全然違和感ありません。勉強も運動もできないし、生まれてこのかた男の子とつき合ったこともないような、地味な女子高生そのものですよ。誰が見ても冴えない女の子です。このわたしが保証します」
 よし野さんはオーバーに胸を叩く。
 褒め言葉じゃない気がするんですけど……ニコニコしているよし野さんの顔を見ていると、そんな言葉も言えずに、ありがとうございますなんて言ってしまう。
 似合っていると言えば、聖リチャード女子高の現役生徒である純鈎さんは当然としても、よし野さんのセーラー服姿は全然違和感がなかった。
「わたしみたいなオバサンが、いまさらセーラー服ですか……恥ずかしいです。でも初代赤龍会のためですものね、恥ずかしいのは我慢します。似合っていなくても笑わないでくださいね」
 今回の作戦は金額が大きいから、よし野さんもお店を臨時休業して参加することになった。で、マイクロバスの中で着替える前は恥ずかしそうに言っていたのに、ボクたちの中じゃ一番まともな女子高生に見える。
 さすがに儀武オジサンが女子高生に変装するのは無理だから、純鈎さんのお父さん、つまり理事長に言って、保健医代理の肩書きを貰って学校内に入ることになった。自分だけセーラー服が着られないせいか、朝から儀武オジサンの機嫌が悪い。
「ところでよ龍太、ヘソまで隠れる白のブリーフはないだろう。いまどき中学生だって穿かないぞ。下着にもっと気を遣わないと、いざ本番の時に女の子に笑われるぞ。その点、俺はいつ何時コトに及んでもいいように黒のビキニパンツだ。本当のオシャレというものを見せてやる」
 アロハシャツの裾を払うと、儀武オジサンはジーパンのチャックに手を……。
「きゃぁぁぁ!」
 こんどはちゃんと言えた。なんて思いながら儀武オジサンの手を押さえる。ボクだけじゃない、緋色先輩も、よし野さんも儀武オジサンの腕を押さえている。
「変なもの見せるんじゃねぇ!」
 トドメに純鈎さんが見事な後ろ回し蹴りを儀武オジサンのアゴに。
 さすがの儀武オジサンも、糸が切れたマリオネットのように崩れ落ちた。チャックに手をやったまま。
 ――なに、あの人たち。
 ――露出狂が出たみたいよ。
 ――あんな赤い髪の毛の女の子ってウチの学校にいたっけ?
 隠密裏にオバケ退治をするため、わざわざセーラー服まで着たというのに、みんなの視線が集まっているんですけど。
「ここにいたら人が集まっちまう。とりあえず理事長室に行くぞ」
 純鈎さんは校門をくぐって大股でズンズンと歩いていく。
「早くついてこいよ。この学校は広いから迷っても知らないぞ」
「ちょ、ちょっと待ってよ純鈎さん。お、重っ……」
 ボクは気絶している儀武オジサンを引きずって後を追った。
 ――あれって純鈎さんじゃない。理事長の娘のさ。
 ――暴力女って噂の純鈎?
 ――純鈎と一緒にいるんだもん、あいつらも変なヤツだよきっと。
 ――だったら関わらないようにしなきゃ。触らぬ神に祟りなしだよ。
 なんか色々な意味で注目度一〇〇パーセントなんですけど。

 *  *

「社会資料室の動く鎧。第二棟三階の入ってはいけないトイレ。更衣室の鏡に映る白い影。グラウンドを走る幽霊ランナー。武道場にでる幻の剣士。寮の風呂場の怪……以上が聖リチャード女子高校の七不思議と言われるものです。皆さんにお願いしたいのは、この七不思議が真実か単なる噂なのかの確認。もし本当に怪異現象があるのならば、その早急な解消です」
 理事長室に案内されたボクたちは、依頼主である純鈎さんのお父さんには会えなかった。代わりに事務長の肩書きを持つ女の人が――ドラマに出てくる有能秘書って感じ。背も高いし、高そうなスーツを着てるし、黒フレームのメガネをかけてるし、なにより委員長がそのまま大人になったような堅苦しさがある――感情のない声で用件を簡潔に言う。
「皆さんも校内で拠点がないと不自由でしょうから、保健医控え室を提供いたします。あそこならばガスも水道もトイレもあります。夜は寮の来客用を二部屋用意してありますので、そこにお泊まり下さい。なお、入浴は寮生たちが使いますから午前零時以降にお願いします。それと……」
 事務長さんは後ろのドアを開け、一人の女の子を招き入れる。
 動く……日本人形?
 これはボクの頭に浮かんだイメージ。でもたぶん他の人も同じだと思う。だって烏の濡れ羽というのだろうか、背中の中程まで伸ばした真っ黒で艶のある髪、眉の上で真っ直ぐに切りそろえている。色白で丸みを帯びた顔に一重の切れ長の目と、朱を入れたみたいに赤い唇。硬質というか表情がないように見える顔。
 そうして人形のように、背筋を伸ばした姿勢を崩すことなく入ってきた。
「紹介します。彼女は三年生の常居雪南(とこい・ゆきな)さん。民俗学クラブの部長でもあります。常居さんには今回の件をすべて話してあります。七不思議についても詳しいので、皆さんのお手伝いをしてもらうことにしました」
「常居です。解らないことも多いでしょうから、何でも気軽に聞いてください」
 事務長さんに促されるように挨拶した常居さんの声は、ちょっと掠れた感じのする低い声だった。
 常居さんは首を動かさず、体を動かしてボクたち一人一人の顔をじーっと眺め、
「よろしければ皆さんのお名前を教えていただけますか」
 日本人形のような表情を崩すことなく尋ねる。
 この常居さんという人はちょっと変わっているかも。だって、よし野さんや純鈎さんはともかく、緋色先輩の女装やヤクザテイスト満載の儀武オジサンを見ても眉一つ動かさないんだもん。
「七不思議についての詳細は保健医控え室でします。では、そろそろ行きましょうか」
 ボクたちの自己紹介が終わると、常居さんはスカートのひだをほとんど揺らすことなく、静かな足取りで理事長室を出ていく。本当に人形みたい――この学校の七不思議って動く鎧だよね……動く日本人形じゃないよね。



「この学校の七不思議はもうお聞きでしょう。よくある学校の七不思議と思われているかもしれませんが、私の調査によれば、この学校で起こる怪異現象はすべて事実と思われます。ただし七不思議ではなく、怪異現象は六つしか確認されていません。未確認の事象はいくつかありますが、事務長からも何も言われてはいないので今回の件からは省きました。なお確認の定義は、怪異現象が複数回発生していること。複数人数による視覚など五感で認識。この両方の条件を満たしたものを確認としています。具体的には動く鎧は去年だけで三回、今年に入っても一回の目撃報告がありますし……」
 保健医控え室に着くや、常居さんは唐突に話しだした。
 六畳ほどの室内には使い古されたソファーとテーブルの応接セット、壁際には折り畳まれたパイプ椅子が数脚、トイレとおぼしきドアの横には小さな台所。がらんとしていて、応接セットがなければ倉庫のようにも見える部屋。その部屋の真ん中を常居さんが陣取り、ボクらは常居さんを取り巻くようにしていた。
「なお七不思議の七つ目に関しては、音楽室のひとりでに鳴るピアノとか、屋上に現れる血まみれの老婆とか、いくつか未確認事象が報告されていますが……」
 ボクらの存在をまるで無視したように、常居さんは蕩々と語り続ける。
 ボクはどうリアクションしていいのか解らず、椅子に座ることもできずにただ聞いているしかなかった。よし野さんも「はあ」と呟いたきり黙って聞いている。緋色先輩は冷笑するかのように、口の端を少し歪めている。純鈎さんは聞く気がまるでないように、頭の後ろで両手を組んで室内を見回している。儀武オジサンは保健医にでもなったつもりか、アロハの上に白衣を引っかけて、くわえタバコでニヤニヤしている。なんだかマンガに出てくるモグリの医者みたいなんですけど。
「そのあたりで戯れ言は止めてもらおう。この学校の怪異現象というものが真実か、それとも錯覚誤認の類かは我々が決める。ま、怪異現象などは単なる錯覚や思いこみ。すなわち世迷い言と相場は決まっているがな」
 緋色先輩が拒絶の色を滲ませた声で、常居さんの話を遮る。
「世迷い言ですか」
 いままで表情がなかった常居さんの顔に表情が浮かんだ。それは笑みとも、渋面ともつかない複雑な表情――でも、好意的ではないことだけは確か。
「物事の真実を知ろうとしない人には、言葉を連ねても無駄なだけですね。いいでしょう、怪異現象を身をもって経験すれば、例え猿以下の感受性しか持ち合わせていない人間でも納得できるでしょう」
 常居さんはこんどははっきりと笑みを浮かべ、ついてきなさい、と有無を言わせない口調でボクたちに命じる。
「俺は部外者みたいなものだから、ここに残るからな。じゃあ、おまえらがんばれよ」と、真心の入っていない儀武オジサンの声援をもらって、ボクたちは保健医控え室を出た。

 *  *

「このトイレは入ってはいけないトイレと言われています」
 常居さんがボクらを連れてきた場所は、図書室や調理室、会議室など特別教室が入っている第二棟の三階の女子トイレ――左右五つずつ向かい合わせに並んだ個室。その一番左奥を指差し、当たり前のことのようにさらりと言う。
 感情を見せない常居さんに比べて、ボクはさっきから落ち着けないでいた。だって女子トイレだよ。いくら女装しているとはいえ、男のボクが男子禁制の場所にいるんだ、こんな場所で落ち着いていられる男なんているはずがない……すみません。いました。緋色先輩は堂々と仁王立ちして、怪異現象が起こるというトイレを見ている。
 ボクらの調査のため『使用禁止』の立て看板をトイレ前に出しているとはいえ、見慣れた小便器がない空間は男子を拒む雰囲気を持っている。誰かが間違えて入ってこないだろうか……気になって、つい振り返ってしまう。
「さっきからキョロキョロしやがって。イヤらしいことでも考えているんじゃないだろうな」
 純鈎さんは呆れたように半眼にした目で冷たい視線を送ってくる。
「ち、違うよ。落ち着かないんだよ。だってここ女子トイレだし……」
「女子だろうが、男子だろうが、トイレなんて大して違いはないだろう。気の小せぇ野郎だな」
「そんなこと言ったって」
「あーぁ、レッドドラゴン大佐が生きていたらなぁ。こんな場合でもどーんと構えていたから、あたしたちも安心できたのによ。なのに、こんなのが総長だし……あたしは運がないよ」
 純鈎さんはわざとらしくため息をついて横を向く。
 ボクにだって言い分はあるんだ――総長なんてなりたかったワケじゃないし、儀武オジサンが勝手に決めたことだし。それに純鈎さんだって男子高校のトイレに入ることがあれば、ボクと同じ気持ちになるはず。純鈎さんみたいな人には、はっきりと言わなきゃ気持ちや考えは伝わらないのかな。だったら……。
「あのぉ、純鈎さん」
「あ? なんだよ、うるせぇな。今は初代赤龍会としての公務中なんだぞ、テメエも総長なんだから、常居先輩の話をちゃんと聞けよ」
「はい」
 最初に話しかけてきたのは純鈎さんの方なのに……。
 いけない。どんな形であれボクは総長なんだ。するべきコトはちゃんとしなきゃ。気を取り直して、怪異現象が起こるという便器を見た。
 どこにでもありそうな、ありふれた和式便器。個室の中には落書き一つあるわけでなく、綺麗なものだ。ただ、そのドアにはスライド式の鍵が三つもついていて、そこだけが異質さ醸し出している感じがする。でも、女子トイレだと安全面を考慮して、幾つも鍵をつけているのが普通なのかもしれない。今まで女子トイレに入ったことがないから、ボクにはそれが思い過ごしなのかどうか判断がつかない。
 ボクの後ろから頭越しに覗くようにして、緋色先輩も便器や個室の中を観察している。
「それでこのトイレになにが起こるというのだね。おおかた、入ったらドアが開かなくなるとか、便器から血まみれの手が出てくるとか、人が覗けないはずのドアの下の隙間から覗く目があるとかの馬鹿げた話だろうがな。ま、使用中に本当に手が出てきたら、恐ろしさのあまり、小心の私などはショック死をしてしまうかもな」
 緋色先輩は大袈裟に身体をふるわせる。さっきから緋色先輩は常居さんに突っかかるような物言いをしているけど、緋色先輩ってオカルトとか不思議とか嫌いなんだろうか。そう言えば以前、テレビで心霊特番をやっている時「科学を理解し得ぬ無知蒙昧な輩の戯れ言だな」って呟いていたっけ。
「ふん」常居さんは緋色先輩を無視してボクたちに、「このトイレで起こる怪異現象は、想像力が欠如したウドの大木が言うようなものではありません」さっきと同じように無表情なままで語り出す。
 抑揚のない声のせいか、心なしかトイレ内の温度が下がったように感じられる。
「このトイレは閉まらずのトイレなのです」
「閉まらずのトイレ?」
 ボクとよし野さんと純鈎さんの声がハモった。
「ちゃんと鍵を掛けたのを確認しても、使用中にドアが勝手に開いてしまうのです」
「使用中にドアが開くんですか。怖いですね。でもそれは、鍵の故障や構造的なことじゃなくって、怪異現象が原因なんですか」
 よし野さんは個室から逃げるように腰を退いている。
「はい。最初は鍵の掛け忘れや、鍵の故障も考えられ、ドアの交換や鍵の増設を行いました。なのにしっかり鍵を掛けていてもドアは開いてしまうのです。物理的理由は一切ありません。となれば考えられる原因はただ一つ霊障です」
「ドアが開くのが霊障ならば、そこいらにある自動ドアの動力源も幽霊かね。いやぁ、クリーンなエネルギーだ」
 緋色先輩の揶揄に常居さんはちょっとだけ表情を歪めたけれど、何事もなかったかのように話し続ける。
「この霊障は時間も相手も選びません。このトイレを使えば必ず起こるのです。毎年それを知らずに使ってしまう新入生が後を絶たず、そのたびに騒ぎになり、泥縄的に鍵を増設していった結果がこれです」
 三つの鍵を一つずつ指し示す。
「下らない。自分の鍵の掛け忘れを棚に上げて騒ぐとは……小児と女人は救いがたしとは、まさにこのことだな」
「だったら自分で確かめてみてはいかがです。その勇気があるならばですが」
 冷たい笑みを浮かべて、常居さんは緋色先輩を見上げる。
「よかろう。調べなければならない事案は多いのだ、ちゃっちゃと済ませてしまおう。では、総長、トイレに入りたまえ」
「えっ!」
 ボクが入るの? だって、いま『よかろう』って緋色先輩が言ったじゃないですか。
「時間がもったいない。男らしく……おっと、いまは女人に化けているのだったな。だったら女らしく早く入りたまえ」
 えっ、えっ! 緋色先輩に背中を押されて個室に押し込まれてしまった。
「鍵をちゃんと掛けるのだぞ」
「は、はい。それより、みんなちゃんと外にいますよね?」
 暗くもないし、綺麗な個室なんだけど、僅か一枚のドアが閉まるだけで言いしれぬ不安がわいてくる。
「いるから安心したまえ。で、どうだ? 鍵が勝手に動くとか、何らかの異常現象はないかね」
「変化はありません」
 ドアの前に立って鍵を注視しているけど、鍵が勝手に動き出すような気配はない。ドアを動かしてみても鍵がしっかりかかっていて開くこともない。おかしいな……ドアは必ず開くんじゃなかったのかな。
「さて、五分経ったがドアは開かないぞ。これは閉まらずのトイレだったのではないのかね」
 ドアの向こうから緋色先輩の勝ち誇ったような声が聞こえる。
「月護くん」少し間をおいて常居さんの声が聞こえてきた。「あなたはいまどのような状況ですか?」
「え? あ。ドアの前に立っていますけど」
「では、便器にまたがって腰を落としてみてください。それとドアは気にせず前を見ていてください」
 ボクは言われるままに腰を落として、クリーム色の個室の壁を見る――便意もないのに便器にまたがっているのって、なんだか馬鹿なことをしている感じがする。いつまでこうしていればいいんだろう……。
 !!
 息をのむ気配がして横を見ると、
「えっ!」
 よし野さんが両手で口を押さえてボクを見ている。
「総長……ドア開いています」
「わ、わ! 見ないで!」
 パンツを下ろしているワケじゃないけど、便器にしゃがんでいる姿を他人に見られるのは凄く居心地が悪い。
「ほら、ドアは開いたでしょう」
 勝ち誇ったような常居さんの声と同時に、純鈎さんが個室に飛びこんできた。
「あたしたちを脅かそうとして、テメエが開けたんじゃねぇんだろうな」
「違う、違うよ」
「本当かよ」
 純鈎さんはボクを個室の隅に押しやると、ドアを叩いたり床をつま先で蹴ったりしている。
「怪しいところはないようだな」ちっ、と舌打ちしてボクを睨みつける。「もう一度だ。もう一度やれ」
「純鈎さんが信じられない気持ちは解りますが、何度やっても結果は同じですよ」
 苛ついた純鈎さんとは対照的に、常居さんはなんだか楽しそう。
「いや、ぜひとももう一度やりたまえ。何らかの偶然が重なってドアは開いたのかもしれない」
「おや、自分の目で見たことも信じられないとは。まあいいでしょう。月護君もう一度お願いね」
 苦々しい表情の緋色先輩を一瞥して、常居さんは微笑みの表情を浮かべる。
「はい」
 ボクに選択肢はないようだ。諦めてドアを閉め、緋色先輩の忠告通り何度も鍵がかかっていることを確認して…………ドアは開いた。
「ふふふふふ……納得していただけたかしら」
 日本人形のような顔が笑むとなんとも言えない凄味が出るんだなぁ。
 表情がないと思えた常居さんが表情を浮かべるのに対して、緋色先輩は目をちょっと細めただけの硬質な顔つきで閉まらずのトイレのドアを睨んでいる。
「あら、真実を知ったショックで言葉も出ないのかしら。可哀想にねぇ。でも真実は変えられないものなのよ。これでボクちゃんにも解ったでしょう」
 常居さんは緋色先輩に顔を近付け、猫なで声でゆっくりと言う。
「ああ、よく解ったとも。この下らない事柄の解決方法がな」
 緋色先輩は閉まらずのトイレのドアを拳で軽く叩いた。
「あら、どうするんですか? 主旨を変えて、生け贄でも捧げて祈祷するとか、お札でも貼るんですか?」
「冗談。科学の力で解決してみせるとも。ま、指をくわえて結果を待っていたまえ」
 振り返った緋色先輩は、笑顔の常居さんに冷たい笑顔でこたえる。


 緋色先輩は『五分ほど廊下で待機していて欲しい』と言うと、残るように指示した純鈎さんを除いたボクたちをトイレから追い出した。
 と、トイレの前で待つボクの耳に、べぇぎ、ばぁぎ、と不穏な音が聞こえてくる。
「いいぞ。入ってきたまえ」
 緋色先輩の声に入ってみると……ドアがなかった。すべての個室のドアは無惨にも割られて床に積み上げられている。
「これは……」
 常居さんは口を開いたまま硬直している。
「どうだ。すっきりしたろう」純鈎さんが制服の袖で額の汗をぬぐう。「いやぁ、合板って割りづらいんだよな。一撃じゃ割れなくって二撃三撃と入れちまったぜ。それにしてもアンタもやるな。ほとんど一撃で破壊していたじゃねぇかよ。なにか武道をやっているのか?」
「たしなみ程度にな」
 汗一つかいてない緋色先輩はスカートについたホコリを払うと、呆けている常居さんの肩に手を置く。
「物理学と破壊工学の力によって問題は解決だ。これでいかがかな」
「な、なにをしたんです。こ、これのどこが解決なんです!」
 我に返った常居さんは、顔を紅潮させて緋色先輩の胸ぐらを掴んだ。
「笑止。問題は解決しているではないか」
 緋色先輩は常居さんの手を払いのけ、セーラー服のスカーフを直す。
「この事象の問題点は、隠れている場所が不意に露呈されることに起因する。ならば、初めからすべてをオープンにしていれば問題はなくなる。しかし、一つだけドアが無ければ、それを怪しむ人も出てくるだろう。ならばすべてのドアをなくせば違和感はなくなる。もとより人間が排泄行為を行うのは自然の摂理。当たり前の事柄が、なぜ恥ずかしいのだ。それを隠そうとする行為自体が愚かしいのだ。これで仮に霊障なる馬鹿げたことがあったとしても、ドアがなければ勝手に開くなどと言うこともできまい。すなわち使用中にドアが開くという現象は解消されたのだ」
「よく解らないんですけど、これでいいんですかねぇ」
 よし野さんが緋色先輩と床に積み上げられたドアの残骸を見比べながら呟く。
「我々が受けた依頼は問題の解消。問題を解消したのだから疑念は無用。それより、少し早いが昼食にしましょう。久しぶりに身体を動かしたら腹がへってきた」
 緋色先輩はトイレから出ていく。その後を「あたしも腹へったよ。学食に行こうぜ」と言いながら純鈎さんがついて行く。
「本当にこれでよかったんですかねぇ」
 よし野さんが小首をかしげながらトイレから出て行く。
 トイレから出るときボクが振り返ると、ドアの残骸の前で常居さんがブツブツとなにか呟きながら肩をふるわしている姿が映った。
 廊下に出た時。
「私はこんなやり方は認めないわよ!」
 叫び声がトイレから響いてきた。



 【7】 Arbeit Macht Frei 2



 聖リチャード女子高校の学生食堂は、やっぱり女子高の食堂だなと感じさせる、明るい内装の施設だった。仄かに桃色がかった壁、落ち着いた木目調の八人掛けのテーブル。汚れが目立つ壁、実用本位の飾り気の無いテーブルが並んだ、弓野学園の学生食堂とは大違い。
「怪異現象には発生時間が決まっているものもあります」
 常居さんはマーボー丼セットを――マーボー丼、ミニサラダ、牛乳プリン付き。サラダとデザートが付いてくるあたりが女子高らしいと思うけど、マーボー丼と牛乳プリンって合うんだろうか――食べ終わると、前置きなしに話しだす。
「社会資料室の動く鎧は深夜しか確認されていませんし、寮のお風呂場で起こる怪異現象ももっぱら夜に発生しています。逆に更衣室の鏡に映る白い影や、武道場の幻の剣士は確認された時間もさまざまで、発生に固有の時間はないようです」
 休みの日とはいえ、学生食堂には寮生や部活の生徒が結構来ている。楽しそうに食事したり、談笑したり、華やかな雰囲気が伝わってくる。でも、ボクたちのテーブルの周りだけは誰も近寄らずがらんとしていた。それは無理もないかもしれない。だって目つきの悪い儀武オジサン、真っ赤な髪の緋色先輩、椅子の上であぐらを組む純鈎さん、むっつりと眉間にしわを寄せたままの常居さんが陣取るテーブル。ボクだって赤の他人だったら、こんな怪しげな集まりの近くには近寄らない。でも、残念ながらボクは当事者なんだよね。だったら少しでも早く依頼を片づけないと。ボクが口火を切るしかないかぁ。
「じゃあ、次は更衣室と武道場の怪異現象を解決すれば良いんですね」
「時間があまりないのは解っていますが、残念ながら更衣室も武道場も終日使用しているため、今日は調査はできません」
 常居さんはすまなそうな声でボクに頭を下げる。
「だったら夜までは何もできないわけですか?」
「いえ、陸上部の練習は三時までですから、夕方にはグラウンドを走る幽霊ランナーに取り掛かれます」
「幽霊ランナーってどんなものなんですか?」
 食べるのが遅いよし野さんはやっとウドン定食を食べ終え、のんびりとした口調で聞いてきた。
「幽霊ランナーの正体は分かっているんです」
 常居さんはクリアファイルから一枚の紙を取り出しテーブルに置く。
 それは新聞のコピーだった。


「……幽霊ランナーの正体は一〇年前に死んだ相原英司という名前の高校生です。相原さんは優秀なランナーで、高校二年生の時から色々な大学の関係者が見に来ていたぐらいです。しかし三年生の春、陸上部の練習中にこのグラウンドで倒れ、そのまま帰らぬ人となりました」
 常居さんは新聞のコピーを指差す。新聞には『陸上練習中の高校生死亡。生徒の体調管理に落ち度か』と、小さな記事が載っていた。記事を読むと――私立鳳ケ原高校三年生の相原英司さんが陸上部の練習中に心筋梗塞で死亡したこと。相原さんは体調不良のまま練習しており、学校側の健康管理に落ち度があるのではないか。と、書かれていた――人が一人死んだのに、あまりにも簡潔に書かれていて、なんとなく寂しい気分にさせられた。
「あのぉ、学校の名前が私立鳳ケ原高校となっていますけど、この学校とどう関係しているんですか?」
 よし野さんは小首をかしげる。
「疑問はもっともです。聖リチャード女子高は開学してまだ五年ですが、前身の学校があったんです。私立鳳ケ原高校と言って、林田財団が運営する三〇年の歴史を持つ学校でした。しかし一〇年前ぐらいから林田財団の本体である林田産業が経営不振に陥り、その影響でしょうか、生徒の数も減っていきました。そして相原さんの事件もあり、学校経営が立ちゆかなくなりました。その時、今の理事長が鳳ケ原高校を買い取り、新たに女子高として再出発したのです」
「そうなんですか。なんとなく建物の作りが古い感じはしていたんですけど、そう言う理由があったんですね」
 よし野さんは納得とばかり頷いている。
「ええ、建物そのものは古いですが、再出発に当たり色々と改装したそうです」
 常居さんはそう言うと、思い出したように手を叩いて、
「そうそう、純鈎グループが学校経営に乗り出したのは、なんだかお姉様に事情があったみたいです。そのあたりのことは純鈎さんから聞いて下さいね」
 純鈎さんに揶揄ががった笑みを送る。
「姉の事情?」
 緋色先輩はお茶の入ったカップを手の中でゆるゆる回しながら言う。
「ああ、この学校は親父が瑠魅(るみ)姉ちゃんのために買ったんだよ」
 純鈎さんは椅子の上であぐらを組んだまま、つまらなさそうに言うと、窓の方に顔を向けてしまう。
「姉のために学校を買うとは剛毅だな。何故かね?」
 緋色先輩の質問にすぐにはこたえず、純鈎さんは無言のまま窓を眺めていた。そして緋色先輩の方に振り返ると、大きなため息をひとつついた。
「あたしの家にも色々あるんだよ」
「家庭の事情というやつかね。それならば詮索はすまい」
「すまないな」
 純鈎さんは睨むような目で常居さんを一瞥すると、また窓の方を向いてしまう。
「では、皆さんには三時からグラウンドで幽霊ランナーを退治してもらいます。私は所用がありますので、いったん失礼させていただきます。後ほどグラウンドで会いましょう」
 睨まれた常居さんは気にする風もなく、テーブルのコピーをクリアファイルに仕舞う。
「ちょ、ちょっと待って下さい。退治って何をすればいいんですか?」
 席を立とうとした常居さんに、ボクは慌てて声を掛けた。
「ああ、それなら簡単です。グラウンドを走っていれば、相原さんは現れ、走者を追い抜いていくはずですから、更にそれを追い抜けばいいだけです。ただし、相原さんは現れる時間が決まっているわけではありませんから、何周かグラウンドを走っていただかなければならないかもしれませんが」
 常居さんは事務的な言い方でこたえ、立ち上がる。
「待ちたまえ。なぜ、追い抜けば怪異現象が解決するのだ。確固たる理由があるのだろうな」
 緋色先輩は薄い笑いを浮かべ常居さんを引きとめる。
「相原さんは『僕を追い抜く人がいれば成仏できる』と言っていたそうです。その言葉は陸上部員が何人も聞いています。相原さんは陸上部の後輩たち面倒をよく見ていたらしいですから、後進の育成が気になって成仏できないのかもしれません」
「練習の疲労が生んだ幻聴が根拠とは、なんとも心強いことだ」
 常居さんは緋色先輩の皮肉に慣れたのか、相手にすることなく、それでは失礼しますと言って歩き出してしまった。


「皆さんはジャージを用意してきているんですか? あのぉ、私ジャージは持ってきていないんです。どうしましょう、取りに帰った方がいいんでしょうか?」
 学生食堂を出て行く常居さんの後ろ姿を見ていたら、よし野さんのすまなそうな声が聞こえてきた。
 ジャージ? そう言えばボクも用意してきていない。どうしよう。三時までは時間もあるし、儀武オジサンに車を出してもらおうかな。
「緋色先輩はジャージを持ってきているんですか?」
「持ってきていないが、別に問題はないだろう。どうせ幽霊ランナーなどは錯覚の類だろうし、グラウンドを走るくらいならこの格好でも問題はない」
 緋色先輩はにやりと笑ってスカートの裾をちょっと持ち上げてみせる。
 えっ、でも、緋色先輩のスカート短いし、走ったら問題があるんじゃ。
「あたしは寝間着代わりにTシャツとスパッツを持ってきているから問題ないぜ。走るのは得意だから、おまえらが走る前にあたしがこの黄金の足で追い抜いてやるよ」
 純鈎さんはあぐらを崩し、伸ばした右足を上げてみせる。
 日焼けしているけど、すらっとした純鈎さんの足は綺麗だった。
「なに嫌らしい目で見てるんだよ。テメエは足フェチの変態なのか? さっきから盗み見るようにチラチラ見やがって。男らしく堂々と見ろよ。ほら、見せてやるよ変態野郎!」
 純鈎さんはさらに高く足を上げる。スカートがめくれそうなくらいに。
「龍太さん。足がお好きなんですか。だったら私も及ばずながら、ご協力しますよ」
 よし野さんは顔を真っ赤にして、おずおずと足を上げる。
「ちが、違います!」
 ボクだって男だから女の子の綺麗な足が目の前にあれば、視線のひとつも行くし嬉しいよ。スカートがまくれて隠れていた真っ白い太股とか見えたらドキンとするし。でも、足よりは、やっぱり顔とか髪の毛とか……特にムネとか…………オシリとかの方が………………だぁあ! そんなことはどうでもいいんだ。なんか周りの視線が集まってきているし……なんとか、なんとかしなきゃ。
「よ、儀武オジサン。車出して下さい。ジャージがないから家に取りに帰りたいんです!」
 ボクは自分の顔が赤くなってきてることを誤魔化すためにも、精いっぱい大声を出して儀武オジサンの肩を揺さぶる。
 儀武オジサンはうるさいとばかりボクの手を払いのけ、
「大きな声を出すなよ。ま、調査期間は明後日まであるんだから、今日は様子見でいいんじゃないか。必要なら明日にでも車を出すしよ。気軽にいこうぜ、気軽によ」
 窓辺のテーブルにいる女の子たちに顔を向けたまま、どうでもいいという感じで言う。
「総長、他人の嗜好にとやかく言うのは良いことではないことは承知しているが、後学のためにも是非教えてもらいたいのだ。女性の象徴であるムネや、生殖器を内包した下半身に興味を示すのは理解できるが、それを上回って足に興味を示すとはどのような理由があるのかね?」
 緋色先輩は背筋を伸ばし真面目な表情でボクを見つめる。
「ボクは純鈎さんの足も、よし野さんの足も、興味ありません!」
「なんだと! あたしの足なんか見る必要もないってことか!」
「私みたいなオバサンの足じゃ満足できませんよね」
 純鈎さんは跳ね上がるように立ち上がり――スカートがめくれ、その奥にスカイブルーの何かが見えた気もするけど、そんなこと言ったら殺されちゃう――よし野さんはスカートの裾を握ったまま悲しげにため息をついている。
「違う、違う! 純鈎さんもよし野さんも凄く魅力的な足だよ……じゃあなくって……」
「やっぱり足フェチの変態なのか」
「本当ですか。ありがとうございます」
「大腿部の肌の張りや、色艶が性欲をそそるのかね?」
「恥ずかしがることはないぞ龍太。男なら多かれ少なかれフェチズムはあるんだ。俺だってバックシームのストッキングにハイヒールを履いた女の足が目の前にあれば、理性なんて簡単に吹っ飛ぶぞ」
 だから、だから……どうすりゃいいんだろう。

 *  *

 ボクらが保健医控え室に戻ると、応接セットの上に真新しいジャージが四着置かれていた。ひとつひとつに「卯兎よし野様」「緋色正義様」「麗魅ちゃん」と名前が書かれた和紙の短冊が貼られている。もちろんボクの名前が書かれた短冊もある。なんだか純鈎さんのやつだけノリが違っているけど。
「ほう準備がいいな。サイズもぴったりだ」
 緋色先輩はさっそく自分の名前が書かれたジャージを広げ袖を通している。
「常居さんが用意してくれたんでしょうか? それにしても綺麗な字ですね」
 よし野さんは『卯兎よし野様』と書かれた短冊をボクにも見せてくれる。黒々とした墨字がバランス良く紙の中央に描かれている。書道の流派は解らないけど綺麗な字だ。細身だけど生き生きとしている。
「常居さんって書道をやっているんですかね。ジャージも用意してくれて……」
「違う!」
 ボクの言葉は純鈎さんの言葉に遮られた。
「これ書いたのは瑠魅姉ちゃんだ」
 純鈎さんは自分の名前が書かれた短冊を握りしめると、ため息混じりでつぶやく。
「ということは純鈎君のお姉さんが、このジャージを用意してくれたのかね。しかし君は我々と一緒にいる間、携帯もメールもしていなかったではないか。それなのにどうしてお姉さんがジャージがないことを知っているのだ?」
 緋色先輩の疑問はボクの疑問でもあった。だってボクたちの周りには他の人はいなかったし、純鈎さんも電話も掛けてなければメールも打っていないんだもん。
 純鈎さんは腕組みして周りを見渡し、なにか納得したのか、ふっと肩の力を抜いた。
「隠してもしょうがないよな」
 苦笑いととも違う、諦めと恥ずかしさが混ざったような笑みを浮かべると、純鈎さんは小さく息を吐いた。
「瑠魅姉ちゃんは見えないんだ。いや、透明人間や幽霊ってワケじゃないよ。ちゃんと生きている。ただ、凄い恥ずかしがり屋でさ……忍者のように姿を隠しちゃうんだ。家族にだって姿を見せないんだよ。あたしだって瑠魅姉ちゃんの姿をはっきり見たのは小学校五年生の時が最後だもん。姿は見えないけど瑠魅姉ちゃんは、あたしのことを凄くかわいがってくれたんだ。いつも姿を隠してあたしを見守ってくれて、あたしが困った時には陰ながら助けてくれたんだ。で、いまもそれが続いているんだ」
「と言うことは、学生食堂に姿を隠した純鈎君のお姉さんがいたということかね?」
「たぶん。いや、確実にいた。いたからこそジャージを準備してくれたんだ」
「だが、我々以外の気配などは一切感じなかったが」
 緋色先輩は納得できないとばかり眉間にしわを寄せる。
「武道の達人ならともかく、普通の人には絶対見えないよ。赤外線センサーか感熱センサーを使えば別だろうけどね。たぶん今だってどこかに身を隠して、あたしたちの話を聞いていると思うよ」
「私とて武術の心得は人以上にはあるつもりだが、気配はまったく感じられないぞ。にわかには信じられない話だな」
 緋色先輩は腰に手を当て、何かを探るように目を細めて周囲を見回す。ボクも緋色先輩の視線を追って見回した。けど、ボクたちの他には人はいないし、人の気配なんて微塵も感じられない。
 と、背後から、カタッと小さな音。振り返ると入り口に大きなクーラーボックスが置かれていた。さっきまではなかったのに……。
 ジャージの時と同じくクーラーボックスの上には『これからも麗魅ちゃんと仲良くして下さい。走った後に皆さんで飲んで下さい。 純鈎瑠魅』と書かれた和紙の短冊が置かれている。開けると、色々な種類のスポーツドリンクがぎっちり詰まっていた。
「いつのまに!」
 緋色先輩は端正な顔を歪ませて、吐き捨てるように叫ぶと、もの凄い勢いで保健医控え室を出て行く――すぐに『どこにも人はいなかった』と放心したような表情で戻ってきたけど。
「おい、おい、なに騒いでるんだよ。純鈎君のお姉さんが見えようと見えまいと問題はないだろう。それより、せっかく瑠魅さんが差し入れしてくれたんだ、気合い入れて幽霊退治に行けよ」
 儀武オジサンは勝手にスポーツドリンクを飲みながら、正論を述べてくれる。
 そりゃぁオバケ退治はボクたちの仕事だけど、今はどちらかというと見えないお姉さんの方が気になるんですけど。
「ほら、そろそろ三時になるぞ。さっさと着替えてグラウンドに行け」
 儀武オジサンはジャージをボクに投げつけて、犬でも追い払うようにしっしっと手を振る。

 *  *

「も……う……は……し……れ……ま……せ…………ん」
 よし野さんは息も絶え絶え、今にも崩れ落ちそうになりながら戻ってきた。
「総……長……すみ……ま……せん」
 視点の定まらない目をボクの方に向けて頭を下げると、ぺたんっと地面に座りこんでしまう。肩を揺らしながら荒い呼吸を繰り返している。
「よし野さん、大丈夫ですか?」
「は……はい…………す、少し……休めば…………」
 よし野さんはボクに歪んだ笑みを向け、ちょっと休みますと言うと大の字にひっくり返ってしまった。
 本当に大丈夫だろうか。よし野さんって運動は苦手そうなのに、無理してグラウンドを五周もしてくれたし――凄く遅かったけど――初代赤龍会のことをおもって一生懸命走ってくれたんだよなぁ。
「ありがとうございます」
 ボクは小さな声で寝ているよし野さんに礼を述べた。
「総長、他人の心配をしている場合ではないぞ。次は総長の番だ、準備はいいのかね?」
「あ、はい」
 緋色先輩は心配そうに言うけれど、ジャージには着替えているし、準備体操もしたから大丈夫だと思う。
「卯兎さんが走っても幽霊とやらが出なかったことをみると、走る速度に関係があるのかもしれない。だから走るに当たって、周回ごとに速度を上げていって欲しいのだ」
「えぇっ! ボク走るの得意じゃないです。徐々にスピードを上げるなら、ボクなんかより、足の速い純鈎さんや緋色先輩の方がいいんじゃないですか」
「それはもっともだ。が、私と純鈎君はこの調査の切り札だ。はっきり言おう。走力に劣る総長と卯兎さんは捨て駒なのだよ。幽霊とやらが出るまでに体力を消耗するわけにはいかないのだ。だから調査段階では総長と卯兎さんに頑張ってもらいたいのだ。これもすべては初代赤龍会のため、喜んで人柱になってくれたまえ」
 緋色先輩はボクの肩に手を置いてにっこり笑う。
 人柱……そりゃあボクは走るのは速くないけど、面と向かってそこまで言わなくてもいいじゃないかと思うんだけど。
「と言うことだ。テメエは初代赤龍会のために死ぬ気で走ればいいんだよ。途中で倒れて死んでも、テメエの屍はちゃんと燃えるゴミの日に出しやるから安心しろよな」
 冗談にしてもひどいよ。


「スピードが落ちてきたぞ。もっとスピードを出したまえ!」
 はぁ、はぁ……ひゅぅ、ひゅぅ……。
「龍太さん、無理なさらないで下さいね」
 はぁ、はぁ……ひゅぅ、ひゅぅ……。
「テメエはカタツムリか、とろとろ走っているんじゃねぇよ! 死ぬ気で走れ!」
 はぁ、はぁ……ひゅぅ、ひゅぅ……。
 わ、わかっているよ。けど、足が思うように動いてくれないんだ。口をこれだけ大きく開けているのに、どうして空気が肺の中に入ってきてくれないんだろう。肺の中で一方的な燃焼が続いているのに、酸素という燃料が一向に供給されない。酸素……。
「遅い! そんな速度じゃ幽霊は出てこないぞ!」
「人柱らしく我が身を犠牲にして走りたまえ!」
「死なない程度に頑張ってくださーい」
 はぁ、はぁ……ひゅぅ、ひゅぅ……だから走ってるじゃないか。
 ボクがこれだけ苦しいおもいをしているのに、どうして相原さんは出てきてくれないんだ。ボクなりに精いっぱい走っているのに。走るのは苦手だって言ったのに。
「それでも男か。キンタマついてるのかよ!」
「麗魅ちゃん、はしたないですよ」
「男をやめるのならプーケットの病院を紹介するが……それが嫌ならば男らしく走りたまえ!」
 はぁ、はぁ……ひゅぅ、ひゅぅ……。
 ボ、ボクは男だ。それにボクのうちにはお姉ちゃんがいるから女の子は足りてるし、なによりボクは月護家の跡取り息子だから男をやめるワケにはいかないよ。
「グズ! 男をやめちまえ!」
「必要とあらば女性ホルモンを打ってくれる病院を教えるが」
「龍太さん、女の子になっちゃうんですか」
 はぁ、はぁ……ひゅぅ、ひゅぅ……好き勝手……言って……走るよ。
 死ぬ気で走ればいいんでしょう! もうどうにでもなれ!
 ただぶら下がっているだけのように重い腕に力を入れ、思い切り前後に振る。身体が前傾する。足がそれに追いつこうと必死に前に出てくる。走るって難しいことじゃない――でも、それは酸素があってのこと。ボクの肺には酸素が足りなくて凄く苦しい――腕を振るんだ、足を前に出すんだ、腕を、足を、腕、足……えっ!
 ボクの横を真っ黒なランニングシャツのランナーが追い抜いていった。
 あれが相原さん……?
「りゅ、龍太さん。出ました、出ましたよ!」
「総長、走るのだ。追い抜きたまえ!」
「早い。凄ぇ……」
 黒いランナーは凄いスピードでどんどんボクを引き離していく。必死に走っているけど、追い抜くどころか追いつくことだって無理。黒いランナーの姿が小さくなっていき、ふっと消えた。
『君も僕を超えられない。僕を追い抜く人がいれば成仏できるのに』
 消える寸前にボクの耳に確かに聞こえた。黒いランナーの悲しそうな声が。


「これで皆さんにも相原さんの存在を納得していただけたでしょう」
 常居さんは皆さんと言いながらも、得意げな顔で緋色先輩だけを見ている。
「いまの月護さんの力走でも解るように、相原さんはそれなりのスピードがないと現れません。それに相原さんを追い抜くには生半可な速度では無理です」
「あの存在、いや、あの現象が何であるかの詮索は今はおいて……」
「あら、詮索はしないのですか? それとも霊の存在を認めたくないから逃げているだけでしょうかね」
 常居さんは緋色先輩の言葉を遮って、カナリアを食べた猫のように満足そうな笑みを浮かべる。
「以前も言ったと思うが、我々の目的は怪異現象の解消だ。怪異現象の視覚的認知問題など些末なことなのだよ。我々の存在理由を勘違いしないでしてもらいたいな」
 緋色先輩は常居さんに冷たい笑みを返す。
「あら、そうだったんですか。私は自分の非を認められなくって、虚言を弄しているものと思っていましたわ。おほほほほほ」
「依頼の本質を忘れ、些細なことに拘泥するわけにはいかないからな。はははははは」
 常居さんと緋色先輩先輩は互いの顔を睨むような視線で見つめたまま、乾いた笑いを続けている。
 おほほほほほほほ。
 はははははははは。
 二人ともマジに怖いんですけど……。


「あと少しだ。抜け! 抜け!」
「緋色さん、抜けますよ。頑張って、頑張って!」
 純鈎さんも、よし野さんも声の限り応援している。
 そう、いまグラウンドでは緋色先輩と相原さんの激走が続いていた。相原さんが出現してからかれこれ八周、緋色先輩は相原さんのすぐ後ろを走り続けていた。相原さんを追い抜くのに、あと少しってところで引き離される――もどかしい戦い。
「緋色先輩、あと少しです、あと少し!」
 ボクだって喉の奥が痛くなるくらい大声を出し続けている。
「相原さんを抜かないと依頼は遂行できませんよ」
 常居さんの声援だか、冷やかしだか解らない声。
「ほら、そのコーナーでまくれ、まくれ」
 儀武オジサンは競輪場のオヤジみたいなヤジを飛ばしている。
 緋色先輩は色々な応援を受けながら必死に走って…………ない。走るのをやめ、ボクたちの方に向かって歩いてくる。
 浮かない表情の顔にうっすら汗を滲ませた緋色先輩は、どうして走るのをやめたんですかの問いに答えることなく、走路横に置かれたベンチに座りこんで、いま自分が走っていたグラウンドを睨んでいる。
「具合が悪いんですか?」
 よし野さんがスポーツドリンクを差し出しながら、緋色先輩に声をかける。
「いや、身体は問題ないです。ただ……」
 緋色先輩は言葉を濁らし、前に落ちてきた真っ赤な髪を鬱陶しげに掻き上げる。
 スポーツドリンクに口をつけることなく、ボトルを握りしめたままグラウンドを睨み続け、首を一回コキっと鳴らして立ち上がった。
「純鈎君、こんどは君が走ってくれたまえ」
「かまわないけどさ、アンタまだ走れるんじゃないの? ぜんぜん元気そうじゃん」
 純鈎さんは緋色先輩を見上げながら、入念に手足の柔軟をしている。
「疲れてはいない。ちょっと思うところがあってな」
「そうかい。ま、あたしが相原を追い抜いてやるから見てなよ」
「ああ、楽しみにしている」
 緋色先輩は爽やかと言うべき笑みを浮かべてこたえる。
「じゃあ、行ってくるぜ」
 純鈎さんは親指をぐっと突き立て、にぃぱっと笑ってグラウンドに走り出した。


 自慢するだけあって純鈎さんは早かった。僅か半周したところで相原さんが現れたぐらいだ。でも、純鈎さんの足をもってしても相原さんを抜けずにいる。
「あぁ惜しい。あと少しなのに」
 よし野さんの言葉じゃないけど、あと二、三歩で追い抜けそうなのに、その数歩が足りていない。
「純鈎君でも無理か……やはり奥の手を使うしかないか」
 緋色先輩は嘆息混じりでつぶやくと、儀武オジサンと何やら小声で話しはじめる。何を話しているのかははっきり聞き取れないけど、『ほう、そんなものが』とか『ならば必要なのは』という緋色先輩の言葉がとぎれとぎれに聞こえてくる。
 儀武オジサンの「俺が喋ったなんて絶対に言うなよ」の言葉に、緋色先輩は軽く頷き、グラウンドの反対側――すなわち灌木の生える敷地の先、校舎の方に向かって独り言を言い出した。
「麗魅さんを含む我々の目的は、この学校の怪異現象の解消です…………私はあなたに…………を用意してもらいたい…………麗魅さんが嫌がることは重々承知しています。しかし、ここで我々が契約を履行できなければ嘘つきと呼ばれるでしょう」
 緋色先輩の声は体育館から流れてくる運動部のざわめきで、はっきりとは聞き取れない。
「…………瑠魅さんを除く我々はこの学校の部外者だから汚名は一時的なもの…………が、瑠魅さんはこの学校の生徒であり汚名はこれから三年間も続くのです…………私の要望が瑠魅さんの機嫌を損ね、あなたにも累が及ぶかもしれませんが…………すべては瑠魅さんの名誉の為なのです…………なにとぞ協力して下さい」
 誰もいない方向に向かって、緋色先輩は深々と頭を下げた。
「あら、先程まで否定していた霊の存在を目の当たりにして、自我が崩壊しておかしくなったのかしら」
 常居さんはなかば怪しみ、なかば呆れるように、少し腰を引きながら頭を下げる緋色先輩を覗き込む。
「大望を成さんと志せば、小人の誹りを受けるは世の常か。ま、小人がいくらわめこうが気にはならないがな」
 頭を上げた緋色先輩は常居さんに視線を向けず、肩をすくめる。
「あなたが錯乱したようだから、哀れんで声をかけてあげたのに、その言い方はなによ!」
「錯乱? 私は極めて冷静だ。冷静だからこそ勝利の女神にお願いしていたのだ」
「なに言っているのよ。どこに勝利の女神がいるのよ。誰もいないじゃない。それに霊的な存在である神様に縋るのは、あなたのポリシーに反するのじゃないの」
「は? 私は神などという弱者の幻想に縋るつもりはない。私が協力を求めた相手は現実の人間だ」
「はあ? 誰もいないのに? 本当におかしくなったんじゃないでしょうね」
 常居さんは誰もいない敷地を訝しげに眺め、思いっきり大きなため息をついて肩をすくめる。
「きゃっ!」
 女の子らしい叫び声と同時に派手に転ぶ音が聞こえた。
「痛ぁ、なによこれ。こんな所に段ボール箱なんか置かないで……えっ? さっきまで、こんな物なかったわよ!」
 常居さんは突然出現した段ボール箱を前に凍り付いている。その凍り付く常居さんを助け起こすでなく、緋色先輩は段ボール箱を開け中身を確認している。
 ――みゃぁう。段ボール箱の中から可愛らしい鳴き声が響いてくる。
 みゃぁう? なにが入っているの?
「早速の御手配、誠に感謝に堪えません。これを活用して見事に依頼を完遂してみせます」
 緋色先輩は段ボール箱を抱えたまま校舎に向かって頭を下げ、ニコニコと楽しそうな表情をしてボクの方に歩いてくる。
「さあ総長、道具は揃った。さっさとこの馬鹿げた鬼ごっこを終わらせようではないか」
「えっ?」
 緋色先輩に腕を掴まれ、取調室に連行される犯罪者のように、強引にグラウンド横の用具室に連れ込まれてしまった。



「龍太さんカワイイですよ」
 よし野さんは笑い堪えながら、顔を真っ赤にして褒めてくれる。
「緋色先輩、これはいったいなんですか?」
 ボクの頭には猫耳がついたカチューシャ。ジャージのズボンのお尻には黒くて長い尻尾が縫いつけられている。両手にはマンガチックな猫の手グローブ。顔は白と茶色の二色に塗り分けられ、鼻の横にはヒゲも描かれている。
「猫のコスプレだ。見れば解るだろう」
 緋色先輩は段ボール箱から取り出した、猫コスプレグッズを手際良くボクに装着すると満足げに頷く。
 ――みゃぁう。
 緋色先輩の頷きと同期するかのように、ボクのお腹に縛られ貼りつけられている虎猫が鳴いた。
「コスプレは我慢するとしても、この猫はなんなんですか?」
 ボクはグローブをはめた右手でお腹の虎猫を指差した。よほど暢気な性格の猫なのか、縛られボクのお腹に貼りつけられても嫌がりもせず、鼻先に来たグローブの匂いなんかかいでいる。
「良いことを教えよう。八角氏に教えてもらったのだが、実は純鈎君は猫が弱点なのだよ。子供の頃に酷い目に遭ったらしく、猫に恐怖心を抱いているのだ。それで解るだろう」
「はあ」
 なにが言いたいのだろう? 緋色先輩の言葉の意味が分からず、ボクは間抜けな返事をしてしまった。
「『はあ』ではない。いいかね。人間は自分が怖れる物に出会えば、それから逃れようとして思いもかけぬ力を発揮することがままある。すなわち火事場の馬鹿力というやつだ。しかし人間は意識して火事場の馬鹿力を出すことはできない。だが、恐怖の対象さえあれば」
「で、ボクの猫の格好なんですか?」
「その通り。総長が猫の格好をして純鈎君を追いかければ、純鈎君は恐怖から火事場の馬鹿力を発揮し、逃げようとするあまり目前の相原を追い抜くことも可能だろう」
「でも、ボクの足じゃ純鈎さんには追いつけないですよ」
 いくら純鈎さんが猫が嫌いでも、ボクの足が遅くて近寄れなかったら、効果がなくて意味がない。
「案ずる必要はない。総長にも火事場の馬鹿力を発揮してもらえば良いだけだからな」
 目を細めた緋色先輩は段ボール箱に両手を突っこみ、ゆっくりと鈍色の物体を引っ張り出す。太い握り、握りの先には僅かに内側に湾曲した肉厚の鋼の刃。それは鉈――正確には腰鉈と呼ばれる物だった。
「鉈なんて出してどうする気ですか」
「軍艦の艦長は自分の船が沈む時、艦と運命を共にするそうだ。今我々が置かれている立場は、それによく似ている。この依頼が失敗すれば、初代赤龍会は汚名を被ることになるのだ。軍艦で言えば沈没だ。そんな時、組織の長として総長はどうするかね?」
「え、あ……」
 咄嗟に答えが見つからず、ボクは莫迦な声しか出せない。
「みなまで言わなくても結構。責任をとるため自決は当然のこと。しかし自決など、そう簡単にはできない。自決もできず己の責務が遂行できなかった後悔に苦しむ総長を見るのは、部下としては腸が断ち切られるように辛い。ならば総長の苦しみを取り除くため、涙をのんで介錯するのは部下の務め。すなわち総長が火事場の馬鹿力を出せず、依頼を遂行できない時は、私がこの鉈で総長を斬ります。すべては初代赤龍会の名誉のため故の決断」
 緋色先輩は暗い笑みを浮かべて、ボクの顔をじっと見つめる。
「じょ、冗談ですよね」
「私は冗談は嫌いだ」
 緋色先輩の目の中で昏い炎が踊っている。
「さあ、走ってもらいましょう。初代赤龍会の名誉のためにも、今すぐ逝きたまえ!」
 緋色先輩は両手の鉈を握りなおし、鉈をゆらりと振り上げた。
 せ、先輩。字が違ってる。それじゃ天国に行っちゃうよ……。
「わぁぁぁぁぁっ!」
 ――みゃぁぁぁぁぁっ!
 ボクは用具室を飛び出しグラウンドを、純鈎さんを目指して、地面を思いっきり蹴った。


「遅い! それが総長の限界ではあるまい。もっと、もっと速く走りたまえ! それともここで散華するかね」
 真っ赤な髪に鉈――まるで現代のなまはげ――目に殺意を込めた緋色先輩がぐんぐん迫ってくる。
 嫌だ、嫌だ、こんな所で死にたくない。こんな莫迦げた格好で死にたくない! こんな格好で死んだらみんなの笑いものだ。
 ボクだって彼女は欲しいし、エッチもしたいし、バイクの免許も欲しいし、秋葉原にあるメイドカフェにも一回ぐらい行きたい。だからまだ死ぬわけにはいかないんだ。
 それに死んだら、本棚の奥に隠してあるエッチな写真集が見つかっちゃうし、パソコンのフォルダの中のせぇくしーなお姉さんたちの画像も――高校受験の最中にも巡回して集めたボクのお宝だ――見つかっちゃうかもしれない。
 し、死ねない。絶対死ねない。
「それが総長の限界なのかね。そんな速度では純鈎君に追いつくことなど永遠に無理だぞ」
 緋色先輩は走りながら両手の鉈を交互に振り下ろして、鉈の手触り、重さの感触を確かめている。
 ボクの視線に気づいた緋色先輩は、不快感をそのまま表情に出し、
「振り返るとは、たいした余裕だな。さっさと火事場の馬鹿力を発揮したまえ」
 と言うや、鉈を振り上げて地面を蹴った。
 飛び上がった緋色先輩はボクめがけて鉈を振り下ろす。
「わぁぁぁぁぁっ!」
 間一髪。本当に髪の毛一本の差で鉈がボクの横を通過していった。
「せ、先輩。シャレになってないです。当たったら本当に死にますよぉ」
「私が単なる脅しで鉈を持っていると思っているのかね。私は殺人罪の汚名を甘んじる覚悟で総長を殺るつもりなのだよ。観念したまえ!」
 緋色先輩の声がすぐ後ろで聞こえた。
 ひゅん! 風を切るような音。背中が急に涼しくなり、パタパタと軽い音がする。
 えっ? 振り返ると斬られたジャージがたなびいていた。
「ちっ。目測を誤ったか。が、次こそ」
 緋色先輩は本当に残念そうに独りごちる。
 マジだ。この人は本当にボクを殺るつもりだ。
 殺される! 嫌だ! 死にたくない! 助けて! 助けて!
 ボクは必死に腕を振り、足を前に動かす。ボクの人生があと何十年あるのかは解らないけど、たぶん今ボクが出している以上のスピードは出せないだろう。ボクの足はボクの体力なんてお構いなしに、メチャクチャに加速している。緋色先輩の気配が僅かずつだけど離れていくのが解る。
「助けてーーーっ!」
 いつの間にか大きくなってきていた純鈎さんの背中に向かって、ボクは肺の中に残っていた空気を絞り出すようにして助けを求めた。
「ゴチャゴチャうるせぇ! あたしが真面目に走っているのに、テメエらなに遊んでいるんだ……」
 苦しそうに口を少し開け、険しい表情で純鈎さんは振り返る。
「純鈎さん、助けて……ボク殺される……緋色先輩が……」
「猫!」
 振り返った純鈎さんの表情が一瞬のうちに変化した。険を含んで細くなっていた目が見開かれ、紅潮していた頬が見る間に血の気を失っていく。
「ね、猫! ば、馬鹿、来るな、来るな!」
 純鈎さんの声は裏返っている。
「助けて……緋色先輩に殺される」
「来るな、来るな、来る……きゃぁぁぁっ!」
 いつもの純鈎さんからは想像もできない女の子らしい悲鳴を上げて逃げ出した。
「待って……純鈎さん、緋色先輩が……待って」
「猫嫌、猫嫌! きゃぁぁあああぁぁぁっ!」
 凄い加速だ、悲鳴にドップラー効果がかかっている。もしタイムを計っていたら、オリンピック記録を塗り替えたかもしれない。
「きゃぁぁあああぁぁぁっ!」
 純鈎さんは加速を続け――相原さんを追い越した。
 その瞬間、相原さんは走るのをやめ、ゆっくりと空を見上げるた。そしてボクの方を向いてニッコリ笑い…………消えた。『ありがとう』の言葉を残して。
「やったぁ! 純鈎さん、緋色先輩。相原さんが成仏しました……よ?」
 依頼遂行の喜びを分かち合うはずの純鈎さんの姿は遙か彼方に――悲鳴を上げたままグラウンドを飛び出して行っちゃった。
「あのまま住宅地に行っちゃったら、凄くマズイような気がするんだけど」
「にゃうん」
 ボクの独り言にお腹の虎猫が同意するように鳴く。
「ついに観念したかね」
 と、背後からとっても冷たい声が響いてきた。
「チョロチョロと逃げ回って往生際の悪い。が、ついに我が刃の露と消える覚悟ができたようだな」
 振り返ると髪の毛と同じぐらい、真っ赤な殺意の炎を瞳に燃やした緋色先輩が、鉈をぶらんと下げたまま立っている。
「あのぉ、依頼は遂行できたんですけど」
「依頼? 遂行? そんなのは関係ない。私とて少しは武術の心得はあるつもりだった。が、総長、あなたはずぶの素人なのになぜ私の刃をことごとくかわすのだ。ずぶの素人にかわされっぱなしなど、この私のプライドが許さない。私のプライドのためにも黄泉路に逝ってくれたまえ!」
 あ、あの。手段と目的が入れ替わっているんですけど。
 鉈を振り上げるとボクの脳天めがけ、躊躇なく振り下ろしてくる。
「またもかわすとは……この私を愚弄するつもりか。大人しく死にたまえ!」
 わ、わ、わ。緋色先輩、完全に頭に血が上っているよ。
「逝けぇぇっ!」
「わぁぁぁぁ!」


 緋色先輩が冷静さを取り戻すまで約一五分。猫コスプレ男(プラス虎猫)と赤髪鉈男の命をかけたレースがグラウンドで続いた。



 つづく
   
2006-03-14 21:03:40公開 / 作者:甘木
■この作品の著作権は甘木さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
覗きに来てビックリ。データが飛んでいたんですね。
皆さんからいただいた感想が消えたのは悲しいですが、残念がっても詮無きこと。改めて投稿させていただきます。

文学性も、あっと驚くような展開もない拙い作品ですが、読んで頂ければ幸いです。もし宜しければ甘口・辛口・中辛・罵詈雑言でもかまいませんので感想をいただけると幸いです。
この作品に対する感想 - 昇順
 あははは。おもしろい。おもしろいじゃないですか。
 ヒーロー物と、学園物と、極道物がごちゃごちゃに混ざったようなかんじで、なんとなく80年代的な懐かしさも感じさせますね(ほめてるんですよ、もちろん)。タイトルも、どっかで見たような…。
 漫画チックも、これだけ漫画チックに徹していれば立派なものです。十分容認されるはずだと僕は信じています。おもしろいんだから、いいんじゃないでしょうか。
 ところで、アマテラスの神号ですが、ふつうは「天照大皇神」じゃなくて「天照皇大神」が正しいと思います。どうでもいいような細かいことで恐縮ですが、よかったらちょっとお調べになって見てください。それでは失礼いたします。
2005-10-23 16:15:07【☆☆☆☆☆】中村ケイタロウ
いやあ、冒頭の「ノストラダムス」って言葉、懐かしいですねぇ。六年前の夏休み、友人と二人で「世界終っちゃうから夏休みの宿題ほっぽって遊んじまうぜ、ひゃっほー」とか言って、結局十月の終わりくらいまで課題を居残りで片付けていた豆腐です。作品拝読いたしました。
 私見ですがギャグ系では、読者を笑わせるような文章は普通の文章を作るよりもかなり難易度が高いように思えます(はずしても、空回りしても読者に見切りをつけられそうで)。それ故に、甘木さんの試行錯誤の結晶、これからも興味深く拝見させていただきます。どうぞ頑張ってください。


 「一蓮托生KAMIKAZEアタック」が、頭から離れない……。
2005-10-23 16:53:58【☆☆☆☆☆】豆腐
読ませていただきました。ノストラダムスは信じる派だったあの頃が懐かしいです(かといって何かリアクションしたわけではないですが)地球滅亡するんだー。いつするんだろーとか思ってました。(まぁ知り合いの預言者の話だとあと数百年前後は人類は安泰だそうで)で、ブラッディーファルコン!!特撮みたいだ!!こういうのは大好きです!!最近見て無いですが、小さいころは特撮大好きでした(デヘヘ このお話マンガで読んでみたいですねぇ。義武おじさんのキャラが好きです。このなんでもアリだぜコンチクショウみたいな感じが。支離滅裂感想ですがこれにて。次回も楽しみにしております。
2005-10-23 21:55:25【☆☆☆☆☆】水芭蕉猫
ども、読ませてもらいました。事態が分からず、周りに振り回される主人公……まぁ、典型と言えば典型ですが嫌いじゃ御座いません。ギャグらしいギャグ展開で、ある意味落ち着きますね。まだ導入部分なので何とも言えませんが、規模がでかいようでちっちゃいですなぁ(笑 いろんな意味で今後の展開に期待です。

ではでは〜
2005-10-23 23:33:02【☆☆☆☆☆】rathi
おぉ、久々の甘木様の作品。面白おかしく読ませて頂きました。
登竜門にふさわしくないとは、とんでもない。登竜門は明らかにふざけた作品、規定を守っていない作品以外ならばどんな作品でも大歓迎でしょう! 私は今までの甘木さんの作品で一番この作品が好きになりそうですねー。ノストラダムス、私は全く信じていませんでしたよ。どのようにも取れるような言葉を大量に残し、そのうちいくつか当たってる(これも無理矢理そう解釈したとも取れるのがいくつもある)だけで大預言者扱いですもんね。笑ってしまいますよ。次回も期待してます。
2005-10-24 16:56:36【☆☆☆☆☆】猫舌ソーセージ
あれですね、いつだって一般人のあずかり知らぬ場所で正義と悪の戦いは起こっているってやつですね。いやぁ始まりがノストラダムスの話がこう展開するなんて、夢にも思いませんでしたよ(笑 今後の展開予想、日本平和推進機構軍側の組織にも若い頭が現れた。しかもそいつはクラスメイトで、竜太と彼はお互いそのことを知らずに仲良くなる……なぁんてオヤクソクな展開はおいといて、続き期待しています。頑張ってください。
2005-10-24 17:30:52【☆☆☆☆☆】月海
マジですか。こんなに読んでもらえるなんて。だってノリはマンガだし、オリジナリティはないし……こんなに感想をいただけるとは、本当に嬉しいです。この作品だけは怖くて作者コメントに「辛口でも罵詈雑言でもかまいませんから感想をいただけると幸いです」と書く勇気もなかったぐらいですから。

 >中村ケイタロウさん、ありがとうございます。その通りです。この作品はヒーロー物、学園物、極道物の定型を組み合わせてどこまで物語として成立するのかが狙いです。タイトルも解ってくれる人がいて嬉しいです。80年代ですか……以前、知り合いに私のギャグは「昔の少年サンデー的だ」と言われたことがあります。きっと中村さんと同じ意味なんだろうなぁ。間違いの指摘ありがとうございます。すぐに直させていただきます。
 >豆腐さん、ありがとうございます。いつもは暗い作品を書いていますが、本当はギャグ系が好きなんです。ギャグは書いているとき辛いけど、同時に楽しいんです。どこまでギャグを続けられるか見当もつきませんが、もしお時間があればお付き合いしていただけると幸いです。ノストラダムスって、詩の形で予言を発表したんですよね。詩人としての評価はどうだったんでしょうね?
 >水芭蕉猫さん、ありがとうございます。世紀末というイベントは色々な評価はあるだろうけど、ワクワクして結構面白かった記憶があります。特撮のお馬鹿なノリは好きです。ああ言うノリと任侠物のノリを組み合わせたらどうなるだろう? 答えがこれです。儀武おじさんは私も一番気に入っています。これからもトラブルメーカーとして登場する予定です。
 >rathiさん、ありがとうございます。典型! そのお言葉待っていました。この作品はヒーロー物、学園物、極道物の典型をどう組み合わせれば面白くなるかの試作ですので、約束事や決まり事を読者の方が理解していてくれると助かるんです。とは言え、典型が典型のまま進んでくれるのかどうかは私にも解らないのですが……。
 >猫舌ソーセージさん、ありがとうございます。たぶんこんな作風が一番私らしい作風だと思います。お馬鹿な物語が好きなんですよ。読者が読み終わった後に「馬鹿みてぇ。下らねぇ。けど、暇つぶしになった」と感じてくれる肩の凝らない作品を書くことが私の理想の一つなんです。
 >月海さん、ありがとうございます。惜しい! 当然そのような展開はお約束として予定していますが、まだ先なんです。でも、東京からハンサムで文武両道の転校生。龍太との友情。そして……お約束でどこまでギャグにしていけるか、結構課題は多いですががんばってみます。転校生よりも、まずは状況を書かないと。それから登場人物も増やさないと……まだまだ書かなきゃいけないことが多いです。
 改めて、皆様ありがとうございます。
2005-10-24 22:23:37【☆☆☆☆☆】甘木
拝読しました。甘木様のギャグ系は読み易いです。マンガ的って実は相当に難解な題材だと思うのです。根本的に、地の文章と科白の比率も制御に困るし、情景は見せないとギャグが上滑になるし、かと言って説明的過ぎるとどうも――まあ、私はギャグセンスが無いので何が如何とは判りませんが、此度投稿分は何の支障もなく受け入れられたと思います。語り部が薄い所為か儀武オジサンばかりが際立っているように感じました。儀武、よいキャラだなぁ。次回更新御待ちしております。
2005-10-25 06:05:55【☆☆☆☆☆】京雅
お久しぶりです。いつかのチェリーです。いやはや連絡おくれました。とりあえず体のほうはえっちらほっちらえっちらほっちらでまぁまぁなところです。しばらくは読み手としていきますのでどうか忘れないでください(笑) しかし最近かなり時間がないおかげで読むこともあまりできないのですがね(爆) あ、時間がない・・・・・・。ではでは、またきますので〜今日はこのへんで。
2005-10-25 17:25:29【☆☆☆☆☆】チェリー
 >京雅さん、ありがとうございます。マンガ的な作品って描いていてめちゃくちゃ楽しいんですよ。書いていて顔がにやけてくるんですよね。すなわち、バランスなんか考えないで感性だけで書いているから……どこかでほころびが出るかもしれないなぁ。儀武おじさんは裏の主人公ですからこれからもどんどん出てくると思います。
 >チェリーさん、ありがとうございます。お久しぶりです。身体の方は大丈夫ですか。この作品はマンガみたいな作品ですから、肩に力を入れずに気軽に読んでいただけると嬉しいです。ともかくチェリーさんの復帰を嬉しく思っています。また、お時間があれば覗いてやってください。
 改めてありがとうございます。
 中村ケイタロウさん、誤字の指摘ありがとうございます。しかし当方のパスワードミスかログインできないため、いま紅堂さんのお手を煩わせています。ログインできしだい修正します。
2005-10-25 22:35:31【☆☆☆☆☆】甘木
甘木様の新連載が始まっていたとは迂闊でした(汗)久々に登場の時貞です。遅ればせながら拝読させていただいたわけですが、初回ながら予想以上に面白い内容でした。やはり甘木様のコメディは読みやすく、ワードのひとつひとつに独自のセンスを感じさせられます。今作は様々なジャンルのミクスチャーといった世界の中に、ドラッグ的な癖になるギャグが散りばめられているといった印象で、思わず圧倒されるものがありました。まったく見当外れな感想かもしれませんが、タランティーノ映画に一昔前のコミックの要素をぶち込んだような痛快さを感じます。あまり参考にならない、意味不明な感想で誠に申し訳ございません(汗)それでは、今後の更新を楽しみにお待ち申し上げます。
2005-10-26 13:31:00【☆☆☆☆☆】時貞
いやぁ、甘木さんの作品で「クルツ」以外を読むのは随分と久しぶりではないだろうか(ていうか題名違うだろ)何だかもう、本当に「ギャグ漫画の典型的なストーリー展開」という感じでなかなかに入り込みやすいです。最初の五レンジャーの戦闘風味のところが普通に読者間で勝手に想像できるのがすごい。何だこれ、とは思うのですがそれよりも先にこの物語の終焉がどのように流れるのかが楽しみになってしまう不思議な力を持っているような気がする。しかし、なぜ神夜が最近に読む作品は「ちゃんとした批判」をさせてくれないのだろう。批判をするもなにも、その前に毒気を抜かれてしまう。不思議だなぁ、なんてことを思いつつも、次回更新をお待ちします。
2005-10-26 22:17:30【☆☆☆☆☆】神夜
 >時貞さん、ありがとうございます。タランティーノや深作欣二の映画やマンガの影響はばっちり受けています。この作品は奇をてらわず、入りやすさや定番の楽しさを前面に打ち出そうと思っていましたから、時貞さんのお言葉嬉しいです。
 >神夜さん、ありがとうございます。戦隊物のお約束とか、マンガや極道物のお約束は全て読者任せという、作者には優しい作品なので書きやすいです。はっきり言って着地点は全然考えていませんが、とにかく龍太のへたれぶりを書き続けていくつもりです。
 改めて読んでくださった皆様ありがとうございます。
2005-10-26 23:24:09【☆☆☆☆☆】甘木
読んでいたのに感想を書いていなかったことに気づきました…(滝汗)だめだめ君が力あるおじさんと出会うことで変化していく。漫画だ漫画だわーいと楽しんで読ませていただきました。スラスラスラーって感じです。冒頭の戦隊ものっぽいところが個人的に爆発的ヒットだったので、その後の展開では、なかなか「うぉっ」とおもう笑いどころはなかったですが、それでもにんまりという感じ(師匠に対して偉そうだ…)続きも楽しみにしておりますぅ。
p.s 義武おじさんと僕の関係が、かなり今の自分の状況に似ているものがあるので「あぁぁあ」と僕の気持ちがわかりました(苦笑)いや、レッドファルコンとかそういうのは関係ないんですけどねw
2005-10-27 00:43:31【☆☆☆☆☆】影舞踊
今晩は。遅ればせながら、拝読致しました。甘木様の作品ですからね、読ませて頂きました。うーん。正直、私には今のところこの世界観は上手く飲み込めない。これはギャグなんですね? ギャグ一辺倒なのか、それとも……。まだ、書き出しであるし、この先にどんな展開があるのか、甘木様の作品ですから、やっぱり期待してしまいますね。私はギャグ漫画を読んでいてほろっとさせられるエピソードがあると非常に感動したりします。この作品の方向性はまだまだわかりませんが、楽しみにしています。巻き込まれ型の主人公って【OUR HOUSE】の主人公もその傾向が強かったように思いますが。では、次回更新お待ちしております。
2005-10-27 02:15:26【☆☆☆☆☆】ミノタウロス
冒頭採石場跡地の戦隊物パロは、もうちょっと書き込んで欲しかった気もします。パロという奴は、オリジナルを彷彿とさせといて微妙に(あるいは壮絶に)ハズれているのがキモではないかと。双方のいでたちやらアクションなど、笑わせてもらえるネタはなんぼでも仕込めそうな。その冒頭が「あれよあれよ」とあっさり感覚で流れてしまったので、本編龍太君も、今のところ「あれよあれよ」と、笑う間もなくただ異様な状況に投げ込まれてしまった感じが。クルツの日常的ボケの笑いたっぷりな世界から、今回狂騒的ツッコミの世界へと方向性が一八〇度違う転進となるのか、あるいはやはり龍太君のボケっぷりに比重が置かれるのか、次回からの展開やいかに。
2005-10-27 02:37:31【☆☆☆☆☆】バニラダヌキ
 >影舞踊さん、ありがとうございます。冒頭だけという感じですよね。今回と次回が状況説明の予定ですから、物語が動き出すのは第3話以降になりそうです。ギャグと言っていながら、まだ、ギャグの部分が弱いですよね。反省しています。ところで、影舞踊さんはどんな状況に置かれているんですか(笑。
 >ミノタウロスさん、ありがとうございます。ギャグ一辺倒にはならないと思います。極道物のノリの学園物になると思いますが、進めば進むほど主人公の影は薄くなる作品になりそうです。巻き込まれと言うより物語の観察者という立場になりそうです。現在のところ、方向的には短編の連作という形を考えています(そうなればいいなぁ)。
 >バニラダヌキさん、ありがとうございます。おっしゃるとおりです。初めはもっと長く書いていたのですが、冗長な感じがしたのと、ワケあって細部を書けない部分がありまして、そこのバランスが上手くとれていない感じがして削除しました。今目指しているのは身近な狂騒ですので、何とかそれを描けるようにがんばります。
 本当に、こんなに読んでいただけるなんて……どう、感謝と感激の気持ちを言葉にすればよいのか解らないぐらい喜んでいます。読んでくださった皆様ありがとうございます。
2005-10-27 23:39:12【☆☆☆☆☆】甘木
久々にここに来て、読ませていただきました。
また凄いジャンルのものを書かれましたね。描写が細かくあって読みやすいです(単に僕に想像力がないだけかも)。
巻き込まれ型の主人公。ここに乗せられないような、僕の未熟な小説はそんな奴ばかりです(もっと熱い主人公を書いてみたいなぁ)。
さて、龍太君を待ち構えているのは一体どんな世界なのか?
……では、また近いうちに読みに来させていただきます。
2005-10-28 17:24:27【☆☆☆☆☆】サラ玉
 >サラ玉さん、ありがとうございます。サラ玉さんと同じで、私も試行錯誤していますよ。はっきり言ってオリジナリティなんてどこにもないことは自覚しています。この作品も有り物を組み合わせて、どこまで作品が作れるかの試作のような物です。サラ玉さんもどんどん発表してくださいよ。他人の意見というのは凄く勉強になりますよ。改めて読んでくださってありがとうございます。
2005-10-28 23:32:56【☆☆☆☆☆】甘木
おお、《ゲドセン》だ!朝から興奮気味の時貞です(笑)さっそく続きを拝読させていただきました。前半のシーン、興奮してまくし立てながらもケーキを出されて飲み物をたずねられた龍太が、ごく自然に返事をかえしたところでまず笑ってしまいました(笑)相変わらず甘木様のコメディーは読みやすく、さり気ない笑いと通好みの笑いとのミクスチャーが興味深いです。個人的には儀武のキャラクターが好きなのですが、やはり特筆すべきは龍太の心情描写の面白さでしょうね。まんまと一杯食わされた龍太が気付いた、何やら意味深な置手紙。これはこの後、ストーリーが大きく動き出す予感をヒシヒシと感じさせますッ。余談ですが、僕もスピリタスで殺されかけた事があります(笑)それでは、次回の更新を楽しみにお待ち申し上げます。乱文失礼致しました。
2005-11-11 10:33:11【☆☆☆☆☆】時貞
 悪の秘密結社、それは現代における日本男児の魂を揺さぶる蠱惑の響きである。僕はこれと対にするに、「究極超人あーる」中のセリフ、「自爆は男のロマン」を捧げたい(笑) 僕ね、これもうもっともっとイッちゃっていいと思うのですよ。何ていうんだろう、ここを踏み外したら人としての道を外れるんじゃなかろうかというようなリミッターのようなものを、ちらりと感じてしまうのですね。いやあ、それはもう外しちゃわないと。
 オリジナリティというのは、僕は作品設定やストーリーじゃないと思うのですね。僕はもう書き手がどれぐらい作品に何かを捧げているかだと思う。あたりまえなのですが。今でもその欠落というものは感じないので、もうガンガン突っ込んでいってもらいたいと思います(笑) 
2005-11-11 19:31:09【☆☆☆☆☆】タカハシジュン
 ちらほらと任侠モノの香りが漂い始めた模様ですね。総統のブラッディーファルコンよりも、四天王のブラッディードラゴンの方が強そうだぜ(名前的に)! などという想いを巡らせながら読み進めてまいりました。えっとですね、よし野さんの科白の中で「おせいじ」という言葉がありましたが、「お世辞」の誤字ではないでしょうか? などと細かいことを言いながら、おさらばさせて頂きやす。
2005-11-11 20:04:42【☆☆☆☆☆】豆腐
あれ、なんか冒頭の「すでにキレてる感」が、徐々に落ち着いて行ってしまうなあ、と思いつつ今回分を読み終えて、タカハシジュン様や豆腐様のご感想を読み、ああ、だからか、と納得しました。まさに『任侠モノ』の『リミッター』の中に、設定がまんまはまっているからなのですね。パロのキモと思える、なぞっているようで微妙にハズしつつ、しまいにゃトンでしまう、そういったギャグ感が、状況設定の割にはあくまでも律儀な(?)登場人物たちによって、押さえられているのかも。今後はむしろ、異常世界における龍太君の凡人っぷりでハズして行くのか、あるいは彼もキレて行くのか――いずれにせよ、さらなるエスカレートに期待します。
2005-11-12 17:37:11【☆☆☆☆☆】バニラダヌキ
初めまして、凪風と申すものです。作品を読ませていただきました。
とにかく非常に面白い。面白くて先が知りたくてついつい手を出してしまう。良い作品です。卓越した文章力もさることながら、読者を飽きさせないところが素敵です。なにより世界観説明なのに飽きない。面白い。素直に素晴らしいと思います。これがアマチュア(じゃなかったりするのだろうか)のレベルか!? と驚愕する次第です。はい。よし野さんがかわいいなぁ……とか。キャラクターがイキキしてるのも魅力的ですね。
ながながと稚拙な感想をし連れしました。次回更新を心よりお待ちしています。
2005-11-13 05:02:45【★★★★★】凪風
いやはや、物語の説明はもっと適当でもよかったのではないか、そんな風に感じました。単に自分がこの物語をお笑いとして捉えすぎているのかも知れませんが、ちょっとそんな風に思っちゃいました。主人公の竜太君に好感が持てるあたりキャラクター作りはすごくいいなぁと実感。怒っている途中で、ケーキ出されて気勢をそがれるあたり大好きです。ゆっくり待ったり読みたい作品だわと残しつつ、次回をお待ちしまぁす。
p.s 別にたいした状況ではないのですよ(笑 ちょっとむかしやんちゃだったおじさんにバイト先でいつも「人として」の説教を食らっているという程度です。「お前はもっと悪いことをしろ」とかね(笑
2005-11-13 18:12:41【☆☆☆☆☆】影舞踊
遅ればせながら更新分読ませて頂きました。ハイ、物語の土台固めの第二話といったところでしょうかね。色々と説明がありましたね今回は。またよし野さんの語り。どっちが正義だか悪だか判らなくなってきて、とある作品中にある『この世に正義と悪の戦いなど存在しない。すべての戦いは愛と愛、正義と正義が戦うのだ』という言葉を想起しました。(ここから先は、独断と偏見に満ちた類推ですので気にしないでいて欲しいのですが)もし甘木さんがそういうテーマも含めてこの物語を書いているのだとすると、いざギャグに移行しようという時にすべりが悪くなるのではないでしょうか。この『ゲドウ戦記』という作品、かなりの難物に化けるやも知れませんね。――さて、乱文御失礼。なにやら学園モノの流れもでてきそうな第三話を期待しつつ、月海でした。
2005-11-13 21:56:18【☆☆☆☆☆】月海
ども、読ませてもらいました。まだまだ最初だけれど、いろいろと設定が固まってきた感じがしました。人数三人。普通に少っ! って画面につっこみを久々に入れました。雰囲気はやはり良いですね。相変わらず主人公が振り回されている感じがして。
一つ気になったのは、「初代赤龍会」という名前でしょうか。二代目総長が襲名したのに、そのまま初代とついているのは、何か設定があってそうなっているんでしょうか?
そうでなければ「赤龍会」となるのが普通かなーと思ったり。まぁ、細かい所ですけれどね。

ではでは〜
2005-11-14 21:44:29【☆☆☆☆☆】rathi
長野旅行から帰ってきました。ニホンカモシカやトンビにガンをつけられたり、風邪をひいたりと忙しい旅行でした。しかし風邪の具合悪さも、皆様のお言葉を読んで解消いたしました。ありがとうございます。

 >時貞さん、ありがとうございます。読みやすいのお言葉は何よりのクスリでございます。内容が薄くてマンガみたいな作品ですので、読みやすさだけには気を遣っていましたので素直に嬉しいです。これからも読みやすさと、さらには内容に気を遣っていこうと誓っております。
 >タカハシジュンさん、ありがとうございます。「自爆は男のロマン」何と素晴らしい言葉でしょう。良いです、メチャ気に入りました。作品の目標がいま決まりましたよ。この2回は説明に徹しましたので、これからアホな世界に突入です。そのときは自爆を目標にしよう。
 >豆腐さん、ありがとうございます。任侠物の香りはいかがでしたでしょうか? これを書くに当たって「仁義なき戦い」を見てしまいましたよ。任侠道はヒーロー物と相通ずるものがありますね。その雰囲気を作品に生かしていきたいです。誤字の指摘ありがとうございます。
 >バニラダヌキさん、ありがとうございます。実は今回は評判は悪いことを覚悟して書きました。世界の枠を提示して、そこからどこまで外れていけるかを書いてみたいものですから。ですから、次回以降は新キャラを含め暴走させたいと思っております。
 >凪風さん、ありがとうございます。任侠物+学園物+ヒーロー物と節操のない作品ですが、読む方に飽きがこないようにと試行錯誤の連続です。最後まで読んでいただける物になったと、感想を読んで驚喜しております。未熟な作品ですがお付き合いしていただけると幸いです。
 >影舞踊さん、ありがとうございます。長かったのは私の構成力のミスですね。反省しています。龍太って主人公でありながら、単なる傍観者なんですよね。翻弄される状況がギャグになるかなとの狙いなのですが、どうなることでしょう。「悪いこと」ですか? でしたら初代赤龍会に入ってくれませんか? 人数不足で困っているんですよ(笑。
 >月海さん、ありがとうございます。私にそんな高尚な物は書けませんよ(書けない自分の筆力に情けなくなりますが)。目標はあくまでお馬鹿な学園任侠ヒーロー物。日常の些細な出来事をオーバーに書き、読み手の肩が凝らせないことが理想です。何とか滑らないよう頑張ってみます。
 >rathiさん、ありがとうございます。雰囲気が伝わったとは嬉しい言葉です。難しさも、技巧(初めからありませんが)も排除した、お馬鹿小説ですから、雰囲気が伝わらないと読めた代物じゃなくなりますからね。「初代赤龍会」ですが、初代が付いて一つの名前です。実際にヤクザの組織だと「初代誠友会」など代が変わっても変化しない物が多いみたいです。

 早く風邪を治して次回を書きたいです。では、皆様本当にありがとうございました。
2005-11-14 23:17:53【☆☆☆☆☆】甘木
今晩は。最近流行の風邪を引いてしまたのですね。養生して年末に向けて忙しくなる仕事に備えて体力を温存して下さいませ。
更新分読ませて頂きました。さて、前回、飲み込めなかったお話が、徐々に飲み込めてきました。しかし若干説明が長くて話のテンポを悪くしているように感じました。所々軽快になる龍太のお馬鹿ぶりが楽しいだけに説明文が気になりました。今後の展開がどういった物になるのかにもよるとは思います。展開によっては、今の段階でここまでの説明が必要かも知れませんが、現段階で私は集注力を持続して読めませんでした。私だけの感覚かもしれません。ご容赦下さい。次回からは本格的に話が動き出すようですので、ギャグ漫画のような面白さ、期待しちゃってます。更新、楽しみにお待ちしております。
ところで、『在りし日のうた』少し前に読んだのですが、あの話、もう書かないのですか? 凄く興味深いのですが……。では、長々と失礼致しました。
2005-11-15 01:12:17【☆☆☆☆☆】ミノタウロス
続き拝読しました。敢えて抑えたのだろうか、此度はあまり突出した箇所が無いように思えました。落ち着いて読み進められる分、堅苦しさ(小説くささ)がありました。それでもまあ、舞台が漸く調った、ところでしょうか。これからがつんと突き上げてくれれば私的には何も問題は無いです。次回更新御待ちしております。
2005-11-15 13:00:45【☆☆☆☆☆】京雅
 風邪は一向に治らず、体力が落ちたせいか蕁麻疹まで出て、まさに弱り目に祟り目状態です。

 >ミノタウロスさん、ありがとうございます。窮屈な文章だったのは自覚しています。ただ物語の展開上、背景世界の枠のようなものを提示しておきたかったのです。今後その枠からどれだけ逸脱できるかを試してみたいので(できたらいいなぁ)。「在りし日のうた」は是非とも続きを書きたいのです。ストーリーも構成も頭の中ではできあがっているのですが……この作品を書いていれば、反動でまた書き出すかも知れません。
 >京雅さん、ありがとうございます。すみません、今回は見逃してください。今この展開の種のようなものですからギャグにし辛かったんです。今後はテンポを速めたお馬鹿な作品になっていく予定です。あくまで予定ですけど。今後は今回のような解説はないだろうと思っています。そうなって欲しいなぁ……。

 次回から頑張るぞ! と、意気込みの前に風邪をなんとかしなきゃな。改めて、読んでくださった皆様ありがとうございます。 
2005-11-15 23:32:46【☆☆☆☆☆】甘木
遅ればせながら拝読しました。名前が、名前が多すぎて覚えきれない!! コメディーなノリと義武おじさんは相変わらず良いですね。主人公の流されっぷりも見ていて楽しかったです。そうそう、ヤクザというのは頭が悪くて金も権力もないヒトがなるとうちの友人が言っておりました。とまぁ、そんなことはどうでも良くて、では、次回更新おまちしております。
2005-11-15 23:35:28【☆☆☆☆☆】水芭蕉猫
 風邪がやっと良くなってきた。でも蕁麻疹が……

 >水芭蕉猫さん、ありがとうございます。名前ですか? んー、はっきり言って龍太とよし野と緋色正義、儀武以外は覚える必要ないですよ。儀武は当分出てこない予定ですから、当分の間は3人だけ覚えていただければ十分です。物語のメインは龍太、正義、そしてまだ出てきていない2人の4人です。よろしければ今後もお付き合いしていただけると幸いです。

 改めて、読んでくださってありがとうございます。
2005-11-17 00:21:54【☆☆☆☆☆】甘木
本当は次読んだときに書き込めば良いとは思うのですが、どうしても気になったので書きます。
もしかして、タイトルの由来はゲド戦記から来ているのでしょうか?
読んだことはないのですが、この前ふとしたことで発見したので、気になってしょうがありません。

ではでは〜
2005-11-17 22:05:32【☆☆☆☆☆】rathi
rathiさんへ。
その通りです。題名の由来はアーシュラ・K・ル・グインのゲド戦記からとっています。それと外道を掛け合わせたダジャレみたいなものです。ゲド戦記は昨今のファンタジーと違って地味だけど、人間の成長を哲学を交え描いていて面白いですよ。ま、私の作品は哲学の部分はない駄文ですが。
嬉しいです。題名に気づいていただけて。rathiさん以外だと中村ケイタロウさんしか気づいてくれなかったみたいで……マイナーすぎたかな。
出羽出羽。
2005-11-17 22:44:08【☆☆☆☆☆】甘木
続きを読ませていただきました。
ゲド戦記の一巻は中2のときに読みました。図書館で後の巻を探したのですが見つけられなくて、この作品の題名を見たときに思い出しました。主人公がドラゴンに変身したところの描写が凄くて、今でもイメージ映像が頭の中に残っています。
ところで、ドラゴンがメインの小説の構想を練っています。その内、ここで発表させていただきたいと思います。
はてさて、2−2の緋色とは何者ぞや? また、読みに来ます!
2005-11-26 12:26:00【☆☆☆☆☆】サラ玉
 >サラ玉さん、ありがとうございます。返事が遅くなってすみませんでした。ゲド戦記を知っている人がいるとは嬉しいなぁ。あちらは哲学的で格調高いけど、こちらは脱力系のお馬鹿小説ですが、もしよろしければ、これからもお付き合いしていただけると嬉しいです。なお、今回の更新で緋色先輩の片鱗が少しだけ見えます。片鱗だけです。緋色先輩を書き出したらページが足りなくって(笑。では、改めて読んでくださってありがとうございました。
2005-12-05 01:27:21【☆☆☆☆☆】甘木
拝読しました。水芭蕉です。ボーイズラブという単語が出てきた辺りで滅茶苦茶ニタニタしてしまいました。お父さんに見られたら危ない危ない。緋色正義さん出てきましたね。彼の性格好みですよ。そして綺麗形……舌なめずりしてますよ(ぇえ)相変わらず龍太君は流され続けてますねぇ。そしてその存在感の無さ。アニメ同好会のヒトのオタオタしさが出てて頭の中でちゃんとアニメーションとして想像出来る辺りが流石だなぁと思いました。次回更新お待ちしております。
2005-12-05 22:39:50【☆☆☆☆☆】水芭蕉猫
御作品、読ませていただきました。はじめて感想を書きます。馬鹿らしくて阿呆らしくて、ごちゃごちゃした仕事の後には最高の清涼剤でした。もちろん賛辞です。色々な要素が詰め込まれているからでしょうか、懐かしい気分になりました。よし野さんの真面目可笑しさが良いですね。目に見えるようです。さらりと読んでしまいましたが、主人公以外のほとんどの登場人物がまともじゃないのですね。恐ろしい世界です。スピリタス、私も昔ビリヤードで負けて一気呑みをさせられました。コップではなくショットグラスでしたが。コップはきついでしょうね。ここで述べることではないのですが、以前お書きになられたロベスピエールの続きはご予定にないのでしょうか。佐藤賢一氏以来どうにも良い歴史小説の書き手に巡りあいません。まともな感想になっていませんね。馴れ馴れしく、いい加減な感想ですみません。乱文をお許しください。よし野さんが初代赤龍会を説明する件「目の周りを赤い」内「目の周りが赤い」でしょうか。
2005-12-05 23:40:27【☆☆☆☆☆】松家
今晩は、ミノタウロスです。急に動き出した物語、大変楽しませて頂きました。龍太の流されっぷり、おどおどした弱っちい性格、お見事なナンセンスギャグ。緋色正義――セイギノヒーローと言う……駄洒落かいっとクスリと笑いながら、この可笑しな先輩の怪しげな行動言動、今回、何処も彼処も面白さ満点でした。
私、この主人公、龍太、かなり好きです。可愛すぎヽ(*^^*)ノ ラブリーですよ。苛めたくなる(え?)からかって、どぎまぎしてる様子を観察してやりたくなります。ちょっと楽しみ方がおかしくなってるかもしれませんが、今後の主人公が巻き込まれる事件、騒動楽しみにさせて頂きますね。では、又の更新お待ちしてます。

2005-12-06 03:28:09【★★★★☆】ミノタウロス
続き拝読しました。緋色先輩のキャラクターが後半物語性をぶち壊さん勢いで存在感を発揮していました。そして対比的に龍太君は流れるまま流されて、存在感の有無ではなく、完全にフィルター化してしまったようですね。天真爛漫な緋色と接している間内面(モノローグ)はもっと右往左往させても良かったように思えますが、軽快なテンポと、緋色のキャラ性で充分に楽しめました。次回更新御待ちしております。
2005-12-06 04:36:14【★★★★☆】京雅
まだ見捨てられずに読んでいただけるとは……皆様が神様のように思え、涙と鼻水が止まりません。ん? 鼻水? ……風邪かなぁ。

 >水芭蕉猫さん、ありがとうございます。BLネタ……続くかもしれませんよ(笑。緋色先輩はハンサムです、頭良いです。でも変人です。これから緋色先輩を中心に物語は疾走していく予定です。イメージしやすかったとのお言葉、マジに嬉しいです。私自身はマンガのコマ割的なイメージで書いているので、なんとか伝わってようで嬉しかったです。
 >松家さん、ありがとうございます。馬鹿みたいな作品、でも暇つぶしになったと言われるのが私の理想ですから、最高の褒め言葉です。龍太がまともかどうか作者である私にも分かりませんが、登場人物は変人奇人ばかりになると思います。ロベスピエールの続きですか? 一応ネタはあります。ただ、フランス革命の話ではなく、プラハの春や2・26事件などです(フランス革命で書くと池田理代子のエロイカみたいになっちゃうんで)。あの作品はあくまで革命の終わりを描くつもりです。機会がありましたら読んでいただけると幸いです。
 >ミノタウロスさん、ありがとうございます。やっと物語が動き出しました。これからドンドン加速させたいです。龍太はこれからも流され続けますよ。だってこの作品のコンセプトは流され続ける主人公を書くことですから。ギャグと言うよりキャラクターで楽しませようと考えていますが……どこまでできることやら。とにかく頑張ります。
 >京雅さん、ありがとうございます。主役である龍太は主人公と言うより、読者の理性や常識の代弁者の役回りを考えています。本当は龍太の心情を極力排除して、客観視点にして状況をただ眺めるようにしたいのですが(怖いとか気持ち悪いという感情はすべて読者にゆだねる)、如何せんそんな筆力も構成力もなく中途半端な形になっていることをお詫びします。ですから、テンポとナンセンスギャグで突き進んでいこうと思います。

 改めて、読んでくださってありがとうございます。
2005-12-06 21:45:26【☆☆☆☆☆】甘木
毎度お世話になっております。読ませていただいておりますよ。私は、誰か1人でも大好きなキャラがいれば、もうとことん追いかける型の読者でありますが、今回この作品では緋色先輩が大ヒットでございます。かわいい〜(えっ)。かっこいい〜(えっ)。しかし、確かに魅力的な方ではありますが、お傍についていると大変そうな感じが……。……龍太君、大変でありましょうが、自分は読者として応援しておりますので、頑張って下さいませ。――などと言いつつ逃げの準備を(おい)。続きも楽しみにお待ちしております。
2005-12-06 21:56:09【☆☆☆☆☆】エテナ
ども、読ませてもらいました。最初、緋色さんが女だと勘違いしてました。名前……でしょうかね? 女性にありそうな名前だったもんで。意味調べたら「火のように明るい色」って出ました。つまり、名前通りのキャラってワケですか(笑
さてはて、展開的にはまだまだ下準備といったところでしょうか。今後どのように展開していくのか、楽しみのような不安なような……。

ではでは〜
2005-12-06 22:45:06【☆☆☆☆☆】rathi
たった1日で風邪が治りました。なんだったんだアレ? 

 >エテナさん、ありがとうございます。緋色先輩を気に入ってもらって嬉しいです。私も緋色先輩が好きなんですよ。動かしやすいし……というか、勝手に動いてくれて書き手としては楽です。そうです緋色先輩は私の理想型ですから……私は変態になりたいのか? 少しでも楽しんでいただけたとしたら嬉しいです。
 >rathiさん、ありがとうございます。緋色先輩の意味を分かってくれた人がいて嬉しいです。緋色先輩は名は体を表すで髪の毛も性格も緋色なんですよ。本当はもう一人出して初めて下準備が終わるんですが、展開の都合上下準備状態でまだ少し続けますが、宜しければお付き合いしていただけると嬉しいです。

 改めて、読んでくださった皆様に最大の感謝を遅らせていただきます。
2005-12-07 22:48:01【☆☆☆☆☆】甘木
読みました。悪の組織、世界征服をかかげてますが、何か皆良い人そうで、こーゆー人達に悪い事はできないのではないかと思ったりしました。27歳のオジサンが凄い気になるんですが………。主人公の龍太君は、主張しても潰されるような弱さを感じるのですが、総長としての自覚みたいなものは、話がすすむにつれ痛感してゆくのでしょうか?世界規模に留まらず、末は、宇宙まで飛び出して行きそうな感じですね。次回の更新お待ちしております。
2005-12-10 01:49:52【☆☆☆☆☆】赤月 葵
 >赤月 葵さん、ありがとうございます。登場人物は善人と言うよりは変人と小市民と言うところでしょうか(笑。儀武オジサンはまだまだ活躍してくれますよ。というか、儀武オジサンはトラブルメーカーだから、話にちょくちょく出てきて龍太を困らせてくれると思います。宇宙まで……そこまで行けるかなぁ(笑。ご期待に添えるように頑張ってみます。

 読んでくださってありがとうございます。駄文ですがこれからもお付き合いしていただけると幸いです。
2005-12-10 09:57:38【☆☆☆☆☆】甘木
以前拙作に感想をいただき、お世話になったものです。作品拝読いたしましたので、僭越ながら感想などを……。
描写がとても分かり易く、自分の堅苦しい文章と比べては、あぁさすがは、と感心しきりです。ストーリーも笑いを含めるのが下手な私にとってはうらやましい限りで、最後まで疲れずに読めました。
主人公の龍太君、いいですね。突然の災難(?)で混乱しながらも、云い付け通り緋色さんに会いにいく。随分責任感があって素直な子だなぁと思ったり。
なんか自分と比較してばっかりで申し訳ないです。では次回の更新、楽しみにしています。
2005-12-11 18:19:23【☆☆☆☆☆】天姚
 >天姚さん、ありがとうございます。最後まで疲れずに読めたとの言葉に、ほっと安堵しています。私の文章はいつもこんな感じですから、逆にかっちりとした文章が書ける人が羨ましいです。龍太は良い子と言うよりは、主体性に欠けているんじゃないかなぁ。きっと小学校の通知表には「もう少し自分の意見が言えるように頑張りましょう」なんて書かれるタイプですよ。もし、お時間がありましたら今後もお付き合いしていただけると幸いです。
改めて、読んでくださってありがとうございます。
2005-12-12 21:29:12【☆☆☆☆☆】甘木
拝読しました。水芭蕉です。ワニガメかぁ……懐かしいなぁ。たしか特定動物に入って今じゃ地域の許可が無きゃ飼えない動物になってしまったんだよね。しかし、龍太くんワニガメと戦ってジャージで済んだなんて幸運ですね。そして何故かよし野さんが可愛いと思ってしまいましたよ。よし野さん良いですね。良い味出してますね。めんこい。そして緋色先輩と龍太君のコードネームが素敵だ。緋色先輩大好きだ。ジャージがパリッと似合う先輩が大好きだ(笑)そして、義武おじさんが持ってきたアルバイトとは一体なんなのだろう? ワクワクしながら、次回更新お待ちしております。
2005-12-19 21:39:01【☆☆☆☆☆】水芭蕉猫
ども、読ませてもらいました。理論にかなっているけど地味な行動。そんなのが大好きです。緋色さんがやけに生き生きしている辺り、巧くキャラクターを動かせているなぁと感心です。こういう展開は良いなぁ。本人必死で真剣だけど、どこかぼのぼのしているのがまたグットです。
さて、つい先日驚きのニュースを聞きました。なんと、来年ジブリが制作するのはゲド戦記だという話です。マジで驚きです。作るのは長男だそうですが。
こんなシンクロニシティってあるんだなぁとしみじみ感じました。

ではでは〜
2005-12-20 18:58:43【★★★★☆】rathi
毎回、健康的に笑ったり、肩の力を抜いたりで、楽しませていただいております。さて、どんなバイトをするのかと楽しみにしておりましたが、お二人ともいいお仕事をしていらっしゃるではありませんか。しかもその裏には緋色先輩の緻密な思惑が。しかし、儀武オジサンはまたとんでもないことを言い出しそう。うーん。龍太君も毎回大変ですね。ですが、龍太君には気の毒とも思いつつ、実はもっとはちゃめちゃなトラブルなどもお待ちしているのですよ。トラブルメーカー、儀武オジサンに期待しております。
2005-12-20 22:30:20【☆☆☆☆☆】エテナ
また風邪ひきました。ちょっと油断すると風邪が……ひょっとして虚弱体質なんだろうか?

 >水芭蕉猫さん、ありがとうございます。ワニガメって許可がいるんだ、知らなかったです。で、懐かしい? 以前飼っていたんですか? よし野さんって善人として書いているけれど、実際にこんな人がいたら鬱陶しいだろうなぁ。すぐ泣くし(笑。緋色先輩はカッコイイです。私の中では緋色先輩と儀武オジサンが主人公になっているぐらいですから(笑。
 >rathiさん、ありがとうございます。千里の道も一歩から。日本征服は簡単にはできないのです。そうですこの作品は、日本征服を目指す心優しき人々(?)のけなげな努力を描く作品なんです……本当だろうか? ゲド戦記は驚きましたよ。でも、向こうは格調高い作品で、私の方は脱力系作品。比較になりません(笑。
 >エテナさん、ありがとうございます。肩の力どんどん抜いちゃってください。この作品はお馬鹿が売り物ですから、脱力していただければ本望でございます。儀武オジサンはいいですよ。動かしやすいし、トラブル(善意か悪意か分かりませんが)を持ち込んでくれるし。ありがたいキャラです。そして龍太も流されるままだから、とっても便利。こんな楽して書いてていいのかなぁ(笑。

改めて読んでくださった皆様、本当に感謝に堪えません。
2005-12-21 23:18:34【☆☆☆☆☆】甘木
今晩は。続き読ませて頂きました。えー、読後感想の前に、ジブリでゲド戦記をやると言うニュースを見て、妙な感覚がしましたね。タイムリーって感じで。そして、作者コメント――師走に向かって懐寒いのは辛いですね。まともなボーナスはやはり望めませんでしたか(笑)←って笑い事じゃねー!!(T_T)
さて、今回も相変わらずの龍太くん。かわいい(*^^*)ノ 緋色先輩は、益々怪しい。美形の男が好きな私ですが、この人はどうも苦手。きっといい顔してるのに酷く変人だからかも。と言うか、龍太くんが好きな私にはいじめっ子に見える。あぁー、龍太めんこいなぁ** 次回辺りに出てくると言う新メンバーが更に彼を悩ますんでしょうね。楽しみ〜☆ 儀式おじさんの紹介するアルバイトの怪しすぎるし。彼の苦難の日々は続く――( ̄▽ ̄‖  次回更新も楽しみにしております。
では最後に。メリークリスマス☆彡 そして良い年末を。かさこ地蔵が訪れるといいですね。来年も宜しくお願い致します。
2005-12-21 23:56:46【☆☆☆☆☆】ミノタウロス
 >ミノタウロスさん、ありがとうございます。誰かうちの社長に1とか2と言う数字を教えてやってください。0・8って何だよ……いかん、思わず愚痴がこぼれてしまった。緋色先輩を敬遠したくなるのは人間として正しい判断です(笑。緋色先輩のような人間は不必要に行動力と判断力があるから、周りにいる人間にとっては迷惑極まるとおもいますよ。描き手としては事件を起こしてくれるので書きやすいですが……暴走する恐れもあるけど。改めて、読んでくださってありがとうございます。ミノタウロスさんに、良い年末が訪れることを祈っています。
2005-12-24 11:36:21【☆☆☆☆☆】甘木
続き拝読しました。雰囲気や流れ、つまりノリのようなものが今回更新分は安定していたように思えました。これは抑止力云云ではなくて、軽やかにして緩やかな一連の遣り取りが退屈させずに読ませてくれた居心地の好さです。既に構成された人物像が予想を裏切らず確り行動してくれるので、くすくすと笑いながら微睡めました。キャラクターの位置付けが絶妙で良いです。ですから、私的には読者(私)の中にできた人物像からさらに一歩踏みこんだ言動若しくはイベントがこの先(急く必要は無いと思いますが)に待ち構えていれば猶良いですね。毎回云云しつつも充分に楽しんでいる京雅でした。次回更新御待ちしております。
2005-12-25 04:58:37【☆☆☆☆☆】京雅
 >京雅さん、ありがとうございます。読まれていますね。今回は小規模のイベントしか浮かばなかったんですよ。でも、困った時の儀武オジサン、彼がきっと予想を裏切るイベントを引き起こしてくれると思います。主要メンバーも追加されますから。と言うか、このもう一人を出さないと物語が動かしづらいんです(笑。次回こそは京雅さんの予想を裏切れるよう精進いたします。改めて、読んでくださってありがとうございます。
2005-12-25 18:53:27【☆☆☆☆☆】甘木
 こんばんは。甘木様。
 上野文です。
 ゲドウ戦記拝読しました。

 初っ端のKAMIKAZEアタックから爆笑の連続でお腹が痛いです。
 濃ゆっ。それに変っ。
 猫ババの許可とかスピリタスとか、はじけっぷりが最高です。
 とても面白かったです。
 それでは。
 
2006-01-02 21:21:55【★★★★☆】上野文
お久しぶりでございます。時貞です。随分遅ればせながら、第3話と第4話とを拝読させていただきました。うーん、読みやすい。やはりコメディはギャグだけでゴリゴリ押すのではなく、それを躍らせる舞台とも言うべきストーリー性こそが肝心なのであると実感させられました。緋色のキャラクターは(思わず絶句しつつも 笑)絶品ですね。彼の登場で一段と作風が華やいだように感じます。余談ではありますが、この作品を脚本化して舞台にしたらかなりウケそうですね。そう感じるのも、甘木様の手になる文章が僕の脳内で映像的に浮かび上がってくるからでしょう。ああ、僕の中にあるコメディの虫がむずむずと活動しはじめそうな(笑)今後の展開が実に楽しみです。それでは、次回の更新をおおいに期待してお待ち申し上げます。そして、今年もどうぞよろしくお願い致しますッ。
2006-01-06 17:51:33【☆☆☆☆☆】時貞
読んでくださる皆様に、なんと言葉を返して良いのやら。本当に嬉しいです。
 >上野文さん、ありがとうございます。マンガのようなノリですから、単純に楽しんでいただけたとしたら、これに勝る喜びはありません。この作品、難しい思想も、小難しい理屈もありません。ただ馬鹿げたノリの連続。読む方の肩の凝りが少しでもほぐれたらいいなあ、と想い書いているので面白かったのお言葉は本当に励みになります。
 >時貞さん、ありがとうございます。お久しぶりです。最近お姿が見えなかったので心配していたところでした。忙しいなか感想ありがとうございます。私自身はマンガのコマ割やアニメのシナリオを意識して書いているので、映像が浮かびやすいの言葉は嬉しいです。時貞さんのコメディは読みたいなぁ。是非とも期待していますよ。
 改めて、読んでくださった皆様に感謝を捧げます。ありがとうございました。
2006-01-06 23:58:47【☆☆☆☆☆】甘木
拝読しました水芭蕉です。新キャラですね。純鈎麗魅さん。暴走系暴力キャラは結構好みだったりします。気の強い子は特にね(笑)個人的に仁義が一番ツボに入りました。昔から任侠系の仁義のシーンは大好きだったので、まさかこんなところで見れるとは。そして龍太君は相変わらずですか。彼がこの先苦労する様子がなんだか目に見えて仕方がありません。で、緋色先輩は何故か妙にイリヤの水前寺部長が脳裏にチラつくのはきっと気のせいですよね。お経とよし野さんの泣きつきコラボ攻撃が何とも言えず顔がにやつく……。なぞな感想で申し訳ありません;赤龍会メンバーには是非ともこれから組を再興させていってほしいですね。過程がとても楽しみです。では次回更新心からお待ちしております。
2006-01-11 01:05:46【☆☆☆☆☆】水芭蕉猫
続きを拝読させていただきました。時貞です。出るキャラ出るキャラ、みんな飛び跳ねておりますね(笑)純鈎麗魅さん、すごくいい感じでございます。緋色との掛け合いには思わず笑いがこぼれたと同時に、シャキっとした爽快感をも感じました。威勢が良くていいです。これで主要メンバーが出揃って、今後はイベント盛りだくさんといったところでしょうか。この繋ぎからして、次回は爆笑必至の展開が待ち受けていそうで今から楽しみです。それにしても本当に読みやすいコメディですね。羨ましいです。甘木様のこのバランス感覚は僕としても非常に勉強になります。ああ、楽しかったぁ〜! それでは、次回の更新も楽しみにお待ち申し上げます。
2006-01-11 16:14:52【☆☆☆☆☆】時貞
おはよう御座います。【5】読ませて頂きました。今回は次回への繋ぎであり取り立てて動きが無いのですが、純鈎麗魅の生意気ぶりは今後炸裂して、きっと龍太をど突いたりするんじゃないかと心配(期待)をしています。緋色先輩は所々龍太を苛めるし、おじさんが持ってきたバイトはやっぱり怪しすぎだし、頑張れ龍太! 次回は更なる苦難を泣きながら乗り越える彼を期待して、更新お待ちしております。
2006-01-12 04:47:31【☆☆☆☆☆】ミノタウロス
ども、読ませてもらいました。なんというか、見ていてキャラクターのバランスが良いなぁと思いました。ボケとつっこみ、それとギャラリーがちゃんと揃っている。あと、プロデューサーも(笑
よくまぁここまで濃いキャラクター達を巧く操作出来るなぁとまたも感心。それと、ここまでの人数をちゃんとワンシーンで描いている辺りがまたグットです。結構技術居るんですよねぇ、この辺。
いやはや、今回も淀みなく楽しく読ませてもらいました。

ではでは〜
2006-01-12 14:17:54【☆☆☆☆☆】rathi
よ、ようやく追いつくことができた。この小説がまだ終わってなくてよかったよかった、というかむしろ、物語内部で言うなればここから始まったみたいな感じですね。読んでラスト辺りならばどうしようかと思いましたが、いい感じの所で再読できて何より。しかしあれだわな、どこかで「小説を書くには今までの経験が何よりの武器」とかいう言葉を見たことがありますが、この小説は甘木さんの経験が存分に具現化された小説であるような気がする。ヤクザ方面に詳し過ぎでしょうに(笑)文法や構成、登場人物についても批判するような所は見当たりません。が、ひとつ言うなれば【「〜〜」〜〜】と「」の次に接続がないまま描写が紡がれることが少し読み難かったかな、と。しかしまぁ、クルツのように笑わせてもらう小説だ。次回更新からリアルタイムで読ませてもらう気満々ですので、楽しみにしております。
2006-01-12 22:55:16【★★★★☆】神夜
身も財布も寒い昨今ですが、皆様から感想をいただいて心が温かくなっております。
 >水芭蕉猫さん、ありがとうございます。仁義がつぼにはまったの言葉嬉しいです。あのシーン書くためにDVD観たり、ヤクザ関係の本を読んだ甲斐がありました。緋色先輩ですが、水前寺部長の行動力とフルメタルパニックの林水会長の策士ぶりをイメージして書いています。初代赤龍会の再興はいつのことになるのでしょうね(笑。
 >時貞さん、ありがとうございます。登場人物の動きが少しは伝わったでしょうか。伝わったとしたら嬉しいです。やっと主要メンバーが揃いました。これで動き出せます。それにしてもメンバーが揃うのに原稿用紙100枚……長すぎですね。反省しています。読みやすいの御言葉を心に、もう少しテンポを上げるよう努力します。
 >ミノタウロスさん、ありがとうございます。今回は繋ぎと言いましょうか、単にまとめる構成力がないと言いましょうか……どうも上手くまとめられなくて恥ずかしいです。ええ、次回からは龍太君は苛められます(笑。なにせこの作品は龍太が苛められてなんぼのものですから。作者からして苛める気満々です。どうぞ楽しみにしていてください。
 >rathiさん、ありがとうございます。キャラクターを褒めていただいて嬉しい限りです。定型のキャラクターをどれだけ自分の物にできるかが、この作品での課題でしたので、ほんの少しだけ胸をなで下ろしています。キャラクターの操作はまだ事件が起こっていないから手中にありますが、これからどうなることやら少々不安でもあります。
 >神夜さん、ありがとうございます。甘木はヤクザではないですよ(笑。知り合いには組関係の人もいますが……それは置いて。批判するところが無いというというのは個性の欠落かも。神夜さんのようにしっかりとしたキャラ、物語構成ができるようになりたいです。文章表現は多用しすぎましたね。今後気をつけていきます。
 改めて、読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。
2006-01-13 21:30:41【☆☆☆☆☆】甘木
甘木様、お久しぶりです。えーと、人物も出揃い、これから話の本編が始まるところですか。次回から、新展開?!オバケ退治って?ゴーストバスターズみたいな?オジサンが主人公の龍太君をさしおいて前に出ている気もしたりして、実は本当の主人公なんじゃ???なんて思ったりしてしまう。私も書いていて結構不安になったりします。でも、書いて自分で読み直して、気に入らなければ、付け加えや削ったりして、向上させていくしかないんじゃないでしょうか。と、私が言うのもなんですが。次回楽しみにしております。
2006-01-14 23:17:27【☆☆☆☆☆】赤月 葵
続き拝読しました。パフェや説得の件が小ネタとして軽く打たれているのが若干味気なくも感じ、しかし一連の流れを乱さず、くどくなく、確りと読ませてくれたのが良かったです。純鈎麗魅の登場も特別遅くは思えませんでした。主人公のカメラ度(?)がクルツハウスよりも高く、テンポも変化球ではなく直球ですね、私もテンポの良い物が書きたいです(何)。次回更新御待ちしております。
2006-01-15 08:49:36【☆☆☆☆☆】京雅
 こんにちは、甘木様。
 続きを拝読いたしました。
 巧く次回への複線を振られたなあ、と。
 新しく登場された純鈎麗魅さんも魅力的ですし、これからどのようなドタバタが繰り広げられるのか期待で胸が高鳴ります。
 それにしても、儀武おじさん、繊細で感受性豊かって…
 子供の頃は気の弱い時分もあったのかしら。
 面白かったです。

 続きを楽しみにお待ちしています。
2006-01-15 13:53:06【☆☆☆☆☆】上野文
世の中上手くいきませんね。その際たるものがこの小説のような気がしています(笑。
 >赤月 葵さん、ありがとうございます。学校と言えば七不思議ですよね。次回からは学校の七不思議編になります。でもどんな話になるかなぁ。主人公でありながら主人公らしくないことが龍太の特長です。これからも儀武オジサンや緋色先輩、そして今回出てきた純鈎に翻弄されていくことでしょう。試行錯誤しながら足掻いてみようと思っています。
 >京雅さん、ありがとうございます。パフェネタですがワケあって省略しました(今後似たようなネタを使う予定があるので出し惜しみしてしまいました)。純鈎の登場ですが、普通のラノベ(350〜500枚)ならば問題ないと思いますが、更新速度の遅いこの作品だと読み手がだれてしまうんじゃないかと感じがあったものですから、その言葉に安堵いたしました。
 >上野文さん、ありがとうございます。これからはなんとかドタバタと勢いつけ、物語を進めていこうと思っています。儀武オジサンが感受性豊かな人間なら、世界中の人間は繊細すぎて自殺して全滅していたと思います(実は繊細な人間かもしれませんが、作者である私も儀武オジサンの正体は分かりません。笑)。
 読んでくださった皆様、ありがとうございます。
2006-01-15 23:05:03【☆☆☆☆☆】甘木
拝読させていただきました。
一見、軽いノリに見えるのですが、その物語性と世界観には壮大なものを感じました。独特なユーモアセンスもバランスよくちりばめられている気がします。
まだまだ話は続きそうですが、更新され次第、再び楽しく読ませていただきますね。
2006-01-21 13:35:25【☆☆☆☆☆】九宝七音
 >九宝七音さん、ありがとうございます。感想の返事が遅くなってしまいすみませんでした。物語の背景は壮大なのですが、なぜが現実は極めて矮小って感じでしょうか。気宇壮大な物語を書きたいのですが、如何せんそこまでの筆力も構成力もなく、目先の出来事を書くのだけで精一杯の情けなさです。でも、少しでも世界征服に向けて物語を進めていくつもりでですので、もしよろしければお付き合いしていただけると幸いです。改めて、読んでくださってありがとうございます。
2006-01-29 14:28:16【☆☆☆☆☆】甘木
拝読しました水芭蕉です。えぇと、ニヤケが止まりません(笑)これは私のために書かれた回だと勝手に解釈します(おい)緋色先輩と龍太君の女装と龍太のブリーフ。龍太君はブリーフ派ですか。これでもうニヤケが全然止まりません。えぇ全く止まりません(しつこい)常居さんは不思議キャラのようで不思議キャラじゃないウラのキャラなのかな。緋色先輩と純鈎さんの暴走っぷりが素敵だ。この二人とは遠くから眺めていたいけれど絶対係わり合いになりたくないなぁ。トイレのドアが勝手に開くのは怖いです。小学校低学年のとき、学校のトイレのドアがどうにかなっちゃうのが怖くて人が居ないときにトイレのドアを開けっ放しにして用を足してた記憶が思い起こされました。緋色先輩の理論は間違ってない。んーと、個人的に指摘するような箇所は見つけられませんでした。あぁでも猿は感受性高いよなぁと自分の価値観だけ伝えておきます。楽しかったです。次回更新楽しみにしてますね。龍太君に幸有れ☆
2006-01-29 21:58:53【★★★★☆】水芭蕉猫
今日は! ぶーっ。龍太ぁきみって奴は。かわいい、かわいい(*^_^*) メンバー全員にいいように使い倒され、翻弄され、色々想いを巡らせながらも言いたい事も言えず、されるがまま。ぴーぴー鳴いてるひよこのようです。←この感覚は私独自の感覚ですので、理解できないと思いますが、簡単に言うと、嫌がる相手を乱暴に抱き締めたい衝動。かわいさ余ってイジメたさ百万倍! さあさあ、次回は、もっと・・・。
ところで、緋色先輩の屁理屈的解決法は、多少の引っ掛かりが。科学を振りかざしていたのに、問題は解決してるけれど、彼は超常現象を少なからず受け入れたのか。それとも、何か次に思惑が? 大槻教授みたいに何か説明してくれるのかな、なんて思ってます。ちなみに私は韮沢派です。ポヘラっとしたイジメられっぷりが堪りません。ではまた次回楽しみにしております。
2006-01-30 12:19:50【☆☆☆☆☆】ミノタウロス
 こんばんは、作品拝読しました。任侠ギャグものかあ、任侠ものは映画とドラマでしか見たこと無いからなあとなんだか勘違いしながら足を踏み入れた紫煙突です。文体がなめらかで非常に読みやすく、3章あたりからぐっと作品に引き込まれていき、最初に思ったのは、ああ、このシナリオでSLG作ったら面白そうだなあ、なんてことでした。なのでどうやって世界征服していくんだろう、と興味を持ち、ああ資金とかは必要だよなあ、え、このままあと五つも怪奇現象に挑む? どこにいくんだこの話はー、なんて今後の展開にやたら様々な期待を持ちつつ読み終えました。感心させられたのは、キャラクターが立っていて、それぞれが彼ららしい動きをしているから、不条理な展開もどこか納得させられてしまう要因でしょうか。
 更新分については、個人的にはこの解決法はありかなあと。何か理由は分からないけど壊しとけば依頼された問題はもう起こらない。それによって他に問題が起こってもそれは別の仕事だ、なんてまさに不条理でこのコンビらしい展開ににやり。まあ、中国(インドでしたっけ?)とかのトイレはオープンですしね。まだ怪奇は残っていますし、常居さんのリアクションに期待してます。
 さて、気になったのは展開的にそろそろ対抗勢力のキャラとかでないのかなあという事。いや、あの仕事は(展開に関係しそうなので自粛)かなあとかも思いつつ、次回更新を楽しみに待ちたいと思います。

 最後に、関係ないですが、任侠ものといえば整髪剤べったりでオールバックなグラサン男、勿論白いスーツ……なんてものを連想してしまうのは古いんでしょうか(苦笑)
2006-01-30 22:00:05【☆☆☆☆☆】紫煙突
 え〜っと。面白かったです。特筆すべき事項はありません。すみません。
2006-01-30 23:50:55【☆☆☆☆☆】clown-crown
『閉まらずのトイレ』と言う発想…、笑っちゃいました。緋色先輩の解決方法は、ある意味すごく論理的かも(笑)。
2006-01-31 09:15:24【☆☆☆☆☆】九宝七音
ども、読ませてもらいました。予想の付かない展開というのは、こういうことをいうのだろうかとしみじみ思ってしまいました。緋色さん、想像以上に強引な方法で解決(?)導いたですねぇ……。
カラクリや思惑はさておき、今回の話もキャラクターが生き生きと行動してますなぁ。
女装して潜入というのはまぁパターンの一つではありますが、さして違和感(あと展開的に無理があるとか)を感じないのは、この世界観とキャラの濃さだからこそ成せるワザなんでしょうかね?
今回も楽しませてもらいました。

ではでは〜
2006-01-31 18:43:31【☆☆☆☆☆】rathi
作品を読んでくださって、感想まで書いてくださって感謝に堪えません。
 >水芭蕉猫さん、ありがとうございます。女装のオープニングを気に入って貰えて書いた甲斐がありました。龍太のブリーフの件では水芭蕉さんとゅぇさんの貴重なご意見を参照させていただきました。緋色と純鈎はすぐ暴走しますのでブレーキの掛け時が難しくて、書き手としては苦労するキャラです。でも、それを気に入っていただけたなら、苦労が報われた気分です。
 >ミノタウロスさん、ありがとうございます。龍太は愛すべきキャラです。気に入って貰えて嬉しいですよ。書き手としても龍太は、説明役にはなってくれるし、苛めても恨まれることはないし、突っこまれ役としては1級品だし、使い勝手のいいキャラです。ちなみに緋色は超常現象を受け入れてはいません。なぜなら緋色は自己中心(別名・身勝手)な科学万能主義者ですから(笑。
 >紫煙突さん、ありがとうございます。この作品は任侠道と学園物と戦隊物の合体を目指した壮大な……嘘です。すみません。矮小で家庭的な世界征服の物語です(世界征服はいつになるやら)。常居さんには大活躍の場を用意してありますので、もしよろしければまた読んでやってください。敵対勢力は追々出てくる予定です。
 >clown-crownさん、ありがとうございます。「面白かった」と言っていただくだけで感謝、感謝です。この作品は文学性が高いわけでも、読み手になにかを訴えるような物でもありませんから。雑誌のマンガのように読み流して暇つぶしになったと思っていただければ、それで十分なものです。肩が凝らないで読んで貰えたら万歳です。
 >九宝七音さん、ありがとうございました。「閉まらずのトイレ」を気に入って貰えて良かったぁ。このアイデアが思いついたから七不思議を書き始めたものですから本当に嬉しいです。使用中にトイレのドアが開いたら……マジ怖いですよね。緋色には迷いはありません。緋色の価値観は独自のものですが揺らぐことはないのです。
 >rathiさん、ありがとうございます。この作品に斬新さも新奇さもないです。有り物のパターンを組み合わせてどこまで物語を作っていけるか、これがこの作品の課題ですから。感想を読んで、今回はなんとか容認される範囲で纏まったようでひとまず安心しました。キャラが生き生きしているの言葉は本当に嬉しいです。パターンで作っている作品ですから、キャラで読者を惹きつけるしかないですからねぇ(笑。
私信・シングルライン掲載中止のお詫びを読ませていただきました。私が書いたことは軍事オタクの戯言ですから気にしないでくださいね。

皆様の貴重なお時間が無駄になっていないことを、そしてこれからも無駄にならない作品を書けるように精進いたします。改めて、読んで下さった皆様ありがとうございます。
2006-02-01 22:15:09【☆☆☆☆☆】甘木
続き拝読しました。楽しむことに吝かではないのですが、些か解決法が強引に思えました。私の緋色の認識と今回の件が若干ズレていたからだと思います。事象そのものは面白かったです。次回更新御待ちしております。
2006-02-03 02:48:25【☆☆☆☆☆】京雅
遅くなりましたが読ませてもらいました。しっかしまぁ、この物語は本当にどこへ向って加速しているのだろうか。ヤクザモノから七不思議モノに変更しつつあるのにも関わらず、その裏にある筋は曲がらない。……いや、すでに根っこから崩壊しているのだろうか(オイ)ですが面白いなぁ。この破天荒の緋色先輩の行動は実に愉快である。このままの調子で物語は流れていくのか、それともこれからの五つの不思議でそれぞれが活躍していくのか。楽しみに次回更新をお待ちします。
2006-02-05 13:48:10【☆☆☆☆☆】神夜
返事が遅くなって済みませんでした。
 >京雅さん、ありがとうございます。力業の解決法はお気に召しませんでしたか残念です。私にとってのコメディとは多分に力業と同意語の部分がありますので、ひょっとしたら今後もお気に召さないようなことがあるかもしれません。その際にはなにとぞ寛恕の心で見ていただけると幸いです。
 >神夜さん、ありがとうございます。物語の根っこなどはありません。面白そうな方向へと臨機応変がモットーでございます(笑。私としては週刊誌や月刊誌のシリーズマンガのような感覚で書いていますので、物語の終着点というのが自分自身でも想像できません。とりあえずは七不思議、そしてその次は弓野学園に戻って新たなゲストの登場みたいに考えております。読んでいただけた時、肩の凝りがほぐれるような作品でいたいとは思っていますので、これからもお付き合いしていただけると幸いです。
改めて、貴重なお時間を割いて読んで下さった皆様、感想を書いて下さった皆様、本当にありがとうございます。
2006-02-06 22:31:33【☆☆☆☆☆】甘木
 うわあ、すごいアホ。
 楽しく読ませていただきました。
2006-03-07 23:15:16【☆☆☆☆☆】clown-crown
 こんばんは、甘木さま。上野文です。
『ゲドウ戦記【7】』を拝読しました。
 今回もキャラののりがよく、お腹を抱えて笑ってしまいました。
 特に龍太くんの死ねない理由がかわい過ぎですw
 そりゃあ、まだ死ねないよねー。
 大変面白かったです。ではでは。
2006-03-08 22:07:12【☆☆☆☆☆】上野文
続きを読ませていただきました。相変わらずの赤龍会面々のハチャメチャ振りは面白かったです。もし、これを原作にした漫画が出来たなら是非読んでみたいものです(笑)。…ただ、私的には赤龍会のドタバタに幽霊の相原君をもう少し面白く絡ませてほしかったかなぁ、と思いました。何はともあれ今回も楽しく拝読させていただきました。次回更新お待ちしています。
2006-03-09 08:56:22【☆☆☆☆☆】九宝七音
今晩は。今回も龍太に笑わせて貰いました。死ね無い理由、龍太の可愛さを増すとても微笑ましい【少年】の理由です。突然死んだ時に家族に見られたくない物って沢山あります。私なんかは心残りで成仏できそうにありません。処分する為に幽霊になって出て来たいぐらいです。たまに交通事故で今死んだらカバンの中身を他人に見られるんだろうな、とか心配してます。ってどうでもいいですね。それより、龍太の特殊能力発揮じゃないですか。どんなに攻撃されてもダメージを受けないよう交わし、尚且つ打たれ強い。攻撃は最大の防御の正反対。龍太らしくて最高です。とても楽しい一時でした。ではまた。
2006-03-10 01:47:44【★★★★☆】ミノタウロス
 この作品、本当に日本征服はできるのでしょうか? なんとも言えない不安を抱えている甘木です。
 >clown-crownさん、ありがとうございます。分類上はコメディとなっていますが、私的にはギャグを書いているつもりですから『うわぁ、すごいアホ』は本望であり、褒め言葉としていただいております。難しく考えず、気軽に楽しんでいただけたとしたら嬉しいです。
 >上野文さん、ありがとうございます。お馬鹿な人間たちの活躍(?)を楽しんでいただけましたでしょうか。ノリがよいとの御言葉ありがとうございます。この作品は勢いだけですからね(勢いが無くなると救いがない作品だもんなぁ)。龍太の死ねない理由は切実です。私が同じ立場でも必死になるだろうなぁ(笑。
 >九宝七音さん、ありがとうございます。私はマンガのコマ割りをイメージして書いていますから、そんな感じがするのかなぁ。上手くイメージが伝わるような書き方になっていればいいのですが……。私もこの作品をマンガにして欲しいですよ。誰か描いてくれないかなぁ(笑。相原との絡みを深めるとシリアスな感じになりそうで、あえて簡潔に書きましたが、もうちょっと絡みを書くべきだったかもしれませんね。アドバイスありがとうございます。
 >ミノタウロスさん、ありがとうございます。この位の年頃の男の子には切実な問題だろうなぁ(私はもう純粋さなど綺麗さっぱり無くなっていますから、エロ本が見つかろうが、エロい画像がPCから流失しようと気にならなくなっています。大人って汚いを実践しております)。そうです、龍太は運動神経とか無いクセに、生存力だけはあるキャラですから(笑。作品を読んで楽しんでいただけたとしたら、凄く嬉しいです。
 皆様が貴重なお時間を割いて、この作品を読んで下さったことに感謝申し上げます。これからも初代赤龍会の面々は、お馬鹿な騒ぎを起こしていく予定です。もし宜しければ、これからもお付き合いしていただけると幸いです。
2006-03-10 21:54:37【☆☆☆☆☆】甘木
すごいですね、ストーリーの展開が。はじめのころは正直違和感があったのですが、馴染むにつれてこのテンポが心地好くなりました。画を見せるというのか、所々の映像の提示が巧いなと思いました。主人公の総長たる片鱗(?)が見えましたね。今後、ほろりとする感動のシーンがあるのでしょうか。日本征服までの道程は長いですね。そのぶん楽しめますが。
2006-03-10 22:25:14【☆☆☆☆☆】松家
 世界征服、日本征服どころか、町内征服すら怪しい初代赤龍会の面々ですが、千里の道も一歩から。この例えのように、地道な活動を続けていくようです。
 >松家さん、ありがとうございます。所詮お馬鹿な面々がドタバタするだけのギャグですので、お気軽に読んでいただければ幸いです。マンガをイメージして書いていますので、映像の提示がなんとか上手くいったようでコメントを読んで狂喜乱舞しています。この作品は中・短編の連続という形をとっていくつもりですので、感動するようなお話も出てくるかもしれません(私がそれを書けるかどうかも問題がありますが……)。
 改めて、貴重なお時間を割いて、読んで下さってありがとうございます。これからもお付き合いしていただけると幸いです。
2006-03-12 11:29:16【☆☆☆☆☆】甘木
続き拝読しました。面白かったです。小気味の良い遣り取りやテンポの良さを終始楽しみました。相原があれで満足したのかと思うと、成仏というのも若干形骸化した感じがしてほくそ笑みます。物語全体としては、もっと引っ張る感が欲しいところです。「初代赤龍会」云云の目標は漠然とし過ぎていますし、主人公が強く何かを求めているわけでもないように思えるので、ドタバタというより冗長に思えます。前半部にて、もっと小規模(?)の道標がうまれれば、このあたりの事象も良い意味で味になるように感じました。次回更新御待ちしております。
2006-03-13 10:36:06【☆☆☆☆☆】京雅
ああ――癒される作品だ、と素直に思う。いやこのコメディ感が見事である。そりゃないだろう、と普通なら思えることを綺麗に笑いで誤魔化して流してくれる。この流れは実に素晴らしいものである。たぶん、漫画になっても十分に楽しめるのではないだろうか。むしろどっちかっていうとこれ、漫画の原作のような雰囲気があるんですけどね(笑)しかし本当に癒される。ものすごく面白い。のんびりほのぼのと笑いを追及できることがこれほどまでに幸せと感じるとは自分でも意外だ。たぶんまだまだ終わらないであろうこの物語がこれからどのような方向に向っていくのかを、毎度のことながら楽しみにお待ちしております。
2006-03-15 02:45:44【★★★★☆】神夜
おはようございます。ようやく【ゲドセン】の続きを拝読させていただくことが出来ました。久しぶりに読むコメディ小説、こういった作品を読むと、ああ、やはり僕はお笑いが大好きなんだなぁとあらためて思い知らされます。ショートx2や短編ならいざ知らず、お笑い系を長編小説として読者を飽きさせずに持続させていくのはかなり難しい作業のようにも思われますが、甘木様の手になる今作は、今のところそういった問題とは無縁ですね。それは恐らく、文章にメリハリが効いているからなのでしょう。ガンガン笑いで飛ばして、「おいおい、こりゃどこまでイクんだ?」と読者を焦らせる寸でのところで抑える、この辺りが技だなぁと実感です。何と言いますか、しっかり笑えながらもなおかつ安定感があるコメディ作品(実にクールな部分も感じるんです)という、ある意味離れ技ですよ。これは、キャラクター造型が成功しているという部分も大きいんでしょうね。毎回楽しませていただいております。それでは、次回の更新も楽しみにお待ちしております。
2006-03-15 10:10:41【★★★★☆】時貞
とっくに読んでいたのに感想かけなくて済みません。遅ればせながらこんにちは。読んで早々思ったことは緋色先輩ナイス!!龍太君は私のイメージする限りでは男を捨てても問題なしだと思いますね。それにしても緋色先輩はプーケットの病院まで知ってるのか。凄いな。純鈎さんは猫嫌いだったのはすこし意外かもしれない。皆可愛いなぁ可愛いなぁという感じで読んでおりました。龍太君の流されっぷりというかいぢめられっぷりというかそういうのもナイスです。楽しく読ませていただきました。ありがとう御座います。次回も楽しみにしておりますね。
2006-03-17 17:56:23【★★★★☆】水芭蕉猫
制空権を触れ合わせたくなる。もう一歩踏み込んで甘木さんを破壊したくなる。何故だろう。他人の目を気にせず感想を語ろうと思います。ちょっとクセのあるラブコール。
自己陶酔の境地、だと思いました。フェチズム。ナルシシズム。そんなものが巧みに隠蔽されている。その想いに自らが気付いていないのか、とにかく言葉に臭気は無い。臭気が無いゆえの臭気がある。真摯であるがゆえのいやらしさがある。多分貴方は自分が大嫌いだが、大好きだ。緋色正義という人間、彼がこんなにも前面に出てくるのは、一見すればサービス精神なのだが、よく見ると貴方自身の内に根付いた自己陶酔の暗示であろうと思う。それを知ってか知らずか、自分の欲求を満たすために脚色してみせる。それゆえ、技術のみが駆け抜ける。クセが無いことがクセになっている。フィクションとフィクションの狭間でもがく貴方が見える。幻想と幻想の間に絶望する貴方が見える。その姿を鼻で笑いたくなる。リアルな貴方の姿が垣間見えてしまう。不思議だ。そして、その度に物語から覚める自分が滑稽でたまらない。不思議だ。うふふ。フィクションではなくリアルの側面に笑う嫌な読者でした。普通の感想を書こうと思えば書けるのですが、素晴らしいと感じるところはたくさんあるのですが、とりあえず今回はここまで。自分が書けないからといって他人の足を引っ張る恋羽からのラブコールでした。
2006-03-18 00:58:01【★★★★☆】恋羽
 キャラの中では、ブラックソードさんの性格が図りかねるところがありますね。難しいですね。
2006-03-18 02:38:42【☆☆☆☆☆】clown-crown
道が見えない……どこに向かっているんだろう。もはや作者である私が一番不安です。
 >京雅さん、ありがとうございます。もう少し引っ張った方がよかったですか。ちょっと長くなってしまって巻きをかけたのが失敗でしょうか。確かに龍太の目標が不在ですよね。いくら巻き込まれ型主人公とはいえ、もう少し安寧を求めるような姿を書いた方がよかったかもしれません。アドバイスを次回に活かしていきたいとおもいます。初代赤龍会の目標自体はこれから作中で提示できると思います。その中で小道程も描けるように努力します。
貴重なお時間を割いて拙作を読んでいただいてありがとうございます。
2006-03-19 11:12:01【☆☆☆☆☆】甘木
 感想の返事が遅くなってすみませんでした。
 >神夜さん、ありがとうございます。癒し系ではないと思いますが、肩の凝りがなく読めたとしたら嬉しい限りです。マンガの様とは嬉しいです。私はマンガを意識して書いていますから、ギャグマンガを読むように適当にリラックスして、『馬鹿みたい』と笑っていただけたら本望です。この作品は第1部の終わりみたいな形はあっても、基本的にどこまでものばせる作品ですので、笑いのテンションが落ちない限り続けていこうと思っています。
 >時貞さん、ありがとうございます。笑いはいいですよね。私も笑いが好きです。綺麗な作品、手に汗握る作品、心躍る作品などは他の方が色々書かれていますから、私はその隙間を狙って長編コメディを書いていきたいと思っています。と言うか、このキャラクターたちをどこまで動かせるか挑戦してみたいと思っています。ですから、場合によってはコメディではなく、シリアスな話しになるかもしれません(当分はありそうにないですが)。クールに感じられるのは、私の一人称の描き方が真っ当な一人称ではなく、俯瞰的な立場をとる一人称(エセ一人称)だからでしょう。
 >水芭蕉猫さん、ありがとうございます。楽しく読んでもらいたいが私の希望ですから、感想などは気にせず、お気軽に読んでいただけると幸いです。作者から見ても、緋色先輩は動かしやすくっていいですよ。龍太が巻き込まれ型だけに、誰かが動かないと話しは成立しない。そこで困った時の緋色先輩(笑。一家に一人、一作品に一人、緋色先輩がいると便利です(本当か?)。
 >恋羽さん、ありがとうございます。制空権ですか? 私はいま成層圏のお話なら書いていますが(笑。戯れ言はおいて。自己陶酔がなくて小説は書けない。読者のニーズは考えますが、それを具現化させる行為は自己陶酔でしょう。他人に読んでもらうために作品を書く、聞いてもらために演奏するなど、創作というのもは、結局は自己陶酔の結果ではないでしょうか。しかし、自己陶酔を露骨に見せたくないという気持ちもある(あからさまな自己陶酔は嫌悪しか得られませんからね)。故に自己臭を隠すように書く。それが技術・技法というものではないですか(それが完璧にできていないことは私も気がついています)。確かに、私は私が嫌いで、同時に好きです。私は私の作品が嫌いで、同時に大好きです。でも、二律背反は人間の定めでしょう。きっと誰かがこの作品を楽しく読んでくれているだろう、という自己陶酔に浸って書いていますよ。同時に苦悶の表情を浮かべて書いてはいますがね。フィクションの狭間でもがくのも、幻想というヤツに吐き気を覚えるのも、自己陶酔の中の欣喜。小説を書いていなければ、殷とした自己の中を覗こうとなんかしませんから。それだけでも楽しい。よく分からない返事になってしまいましたね。最後に。恋羽さん、あなたは本当に面白い。
 >clown-crownさん、ありがとうございます。他の登場人物が濃くて、埋没している感がありますね。次の次ぐらいでは、もう少し性格をはっきり提示できればと目論んでいます。
 皆様の貴重なお時間を割いて読んで下さったことに感謝いたします。
2006-03-19 23:20:53【☆☆☆☆☆】甘木
計:49点
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