『カラスの姫君』作者:ヒツ / t@^W[ - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
井小田真里は、普通の高校3年生だが、人の死には敏感だった。ある日、真里の見た夢は、一羽のカラスに出会う夢。それが、真里のいつもと変わらない世界をがらりと変える。「人が死ぬのは運命だ。決して逆らえない。ならば、私は自分の望む死を受け入れよう」
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原稿用紙約6.5枚

世界で一番暗いところで、一羽のカラスが鳴いた。
悲しげで、すぐに掻き消えてしまいそうな声だった……


カラスの姫君 一



人は、誰かのために本当に死ねるのだろうか?実際、殺人事件などで稀に、「彼氏が望んだから、代わりに私が殺した」という言葉を残し、自殺した人が居る。
最愛の人間が望むのなら、何でも出来るというのか?実際彼女はこの世から消え去ったが、彼氏は本当に望んだのか?
どんなに残酷な人間でも、本気で人の死を喜ぶことがあり得るのか?
少なくとも、彼女は間違った死に方をした。死ぬ理由はおかしかったと思う。
何があっても、同じ人間のために死んではならないのだろう。どうせ他人のために死ぬのならば、その人と一緒に死ねばいい。
多分、その思いが重なった結果が、「無理心中」だと思われる。
そう、私はテレビを見ながらふと思った。
こういったニュースを見るたび、いつも私の頭をよぎる。別に人一倍人の死を気にするというわけではないが、ほんの少し「馬鹿だな」と思えば、次々と色んなことが浮かんできて、結果また人の死を考えている。

人の死の心理とはどういうことなのだろう?一時期、私は考えたことがある。ばかばかしいが、なかなか本気で考えたため、ノートに書き写すため動いていた手が止まったこともあった。
私には関係ない。でも、関係するときが来るかもしれない。
きっと、いつか私は誰かを愛す時が来る。その時、私はその人のために死ねる?

また、変なことを思い浮かべ、私はいつもの通り道の坂道をゆっくり下った。
飽きないのだろうか、いつもこんなことを考えている。そんな自分がおかしく感じるが、また嫌いではなかった。
日ごろ何かに一生懸命考えたことはない、呆けた脳。それを働かせたのが、一つのサスペンスドラマ。
最愛の人が自分の死を望み、死んだというバッドエンドで終わったものだった。他に見るものがなかったため、何気なく見てみただけ。
それから全てが始まったといえよう。とにかく私はそれに衝撃を受けたのだと思われる。
暇さえあれば考えるから、飽きた生活は多分無くなった。おかしな性格だと思うけど、別に誰かが迷惑するわけでもないし、私も考えるのが嫌じゃない。
自分で考えようとしている。それはきっと、いつの日か考えることが好きだったあの年少時代以来のことで、今ではもう考えることが嫌であったのに、またよみがえった。
誰かに話したことはないが、ずっと頭の中で考えている。何故、人は死ぬことを望んでしまうことがあるのか。

苦しみの先には、快楽がある。快楽の先に、同じ快楽があることはありえない。また苦しみがあり、それが繰り返される。
どうせなら、快楽で終わらせたい。人は最後必ず思うに違いないだろう。
私はまだ死なない。だから、自分の死に方を今考えたい。最高のエンドにするため、私は今考えているというなら、きっと何よりも楽しいことであろう。
私だけだと思う。だが、誰も考えていないからこそ、楽しみがまたあるのだと思った。
自分は誰のために死ぬ?それとも、自分は自分のために死ぬ?
とにかく、今決めていることは、他人の勝手な都合で死ぬのは真っ平だ、ということ。

気が付けば坂道を下り終えていて、ふいに後ろを見た。黄色に輝いた太陽で少し視界が眩んだが、真っ直ぐ。
視線の先にあったのは、電柱と電柱の間にある黒く細い線にとまった一羽のカラス。
黒く、あまり目立たないカラスで、夕焼けいつもの帰り道必ず見かける。鳥はそんなに好きじゃない。だが、カラスはなんとなく好きだった。
不吉で、真っ黒。見るたび背筋に嫌な汗が流れて、ほんの少し寒気を感じる。それは勘違いであろうと、私は気にも留めず、体をさすりながら少しだけ早めに歩き出す。
今日も、またあのカラスは居た。必ず、私の目の前に居る。私は坂道を下り終えると、必ずゆっくり振り向いて、視線にあの鳥をのせる。そして必ず、目が合う。小さく、遠くてよく見えないが、直感で感じる。私はその時、いつも目をすぐに逸らすのだ。
あわせてはいけない。何故かそう思うから、思ったから。あの鳥はどこか闇がある。私は、関わってはいけない存在なのだろう。
そして今日もタタタと小刻みに歩き出し、井小田真里は、夕焼けを背に、そっとドアノブに手をかけた。


何で、こんなに人の死にこだわるかな?ひょっとしたら、私は性根が悪いのかもね、と私はフッと笑った。
外はもう真っ暗だった。私は自分の部屋のベットに座り、ぼうっと窓から外を眺めていた。
何も無い。でも、視線はどこかを向いている。
私の部屋は二階にあるが、そうそう高い位置にあるわけではないので、高く聳え立つ木が空への視界を邪魔する。
ヒョイと身を乗り出せばやっと見える夜空だが、別に私は空を見たいわけではないので、大して気にはしない。それに、空はもう見飽きているから。
結局、私が変わっても世界は変わらないのだと思うと、少し「生」という言葉に魅力を感じなくなる。
せめて、自分は誰かを愛したい。そうすれば、世界はがらりと変わってくれる。その考えだけは、決して違わないという自信があった。
そう、この人のためなら、死ぬことすら喜びだという気持ちを持ってみたい。
それが、きっと私の考えの答えなのだから。

しばらくして、私は重くなった目蓋を抵抗なく閉じた。一気に広がる静寂と暗闇は、じきに私の意識を遠ざけて、ふと消えた。
夢の中の私は、これが現実だと思い込んでいる。大抵の人間は、そうだ。
でもその内夢だという少ない意識が芽生え、簡単に崖から飛び降りたりする。
だが私は、瞬間すぐに夢だと分かる。匂いも何も感じない、不思議な世界だからだ。なのに自分の意思関係なく歩き出して、変なことをやっていたりする。
でも不思議と、夢の中の出来事はあまり覚えていなくて、多分これ幸い。思い出すだけで赤面するような夢を見たような気がするから。
今日は、どんな夢を見てしまうのだろうか。どうせ、覚えていないから関係はないが。
目覚めの悪い夢は勘弁してほしい。そう思う意識さえも消え、私は深い眠りについた。

「……ん」



2005-10-24 19:03:31公開 / 作者:ヒツ
■この作品の著作権はヒツさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めまして、ヒツと申します。オリジナル小説なんてどれだけ久しぶりか・・・。
先ほど(ていうか二日前)時間がなく、かなり中途半端に終わっていたことをお詫び申し上げます・・lllorzlll

ぅわあ、誤字見つけちゃったよ(馬鹿
ご指摘本当にありがとうございました・・。
以後気をつけなければ。(何
今回、かなり修正してみました。気づきますかー?
しかも微妙に続きを描いていたり・・。
最初の言葉も変えてます。
背景が、淡々としているのは、私ももう分かっていることなんです。
そこを何とかしないと、と今日も努力中(ぁ
こんな私ですが、最後までお付き合いいただければまたコレ幸い。ァハハ(黙れ
ていうか本当に何とかしないと・・・ヤバイぞ私w
この作品に対する感想 - 昇順
はじめまして

小説を読ませて頂きましたが、井小田真理の思考が自分と同じような考えだったという事に驚いていたりします。

一人称ならではの人物の思考を巧く表現した作品だと思います。
私はこういう小説が好きなので、続きがあるのならぜひ読みたいと思います。

一つ気になった事といえば
日ごろ何かに一生懸命考えたことはない、呆けた能。
の呆けた能は脳ではないかな?と思った事ですが誤字ではないでしょうか?
違ってたらすいません。

では
2005-10-22 18:53:54【★★★★☆】七誌
拝読しました。語り部の思考に終始してしまったがために情景は見えず、外界からの影響を受ける余地が無いので一方的に想いを送られたように感じられましたが、導入としては特に不快感も無くスムーズに読み進められました。精神世界の持論は何だか既に帰結しているように思えたのですが、これからどう展開してゆくのか期待して、次回更新御待ちしております。
2005-10-23 14:13:33【☆☆☆☆☆】京雅
初めまして甘木と申します。作品を読ませていただきました。真理の思考はある時期の人間にはありがちの感情ではあると思いますが、そのありがちの感情・思考が素直に伝わってくる書き方は良かったです。ただ、真理が「生」に対してどれだけの感情を持ち、「死」に対してもどれだけの感情を持っているか掴めなかったですねぇ。もう少し真理というキャラクターに肉付けが欲しかったです。京雅さんも書いていますが、背景が不明瞭なためモノローグだけで動きがなかった印象がありました。では、次回更新を期待しています。
2005-10-23 21:44:10【☆☆☆☆☆】甘木
 こーゆー書き物って思考だけじゃ伝わらないと思うんだよね。何らかのアクションを起こして、その結果に何がしかの『答』に辿り着いたって構図にならないと。
 体験を伴わない思考は頭でっかちで独りよがり、と受け止められやすい。ストーリーになってないんだよね。エッセー的。
2005-10-25 19:31:24【☆☆☆☆☆】clown-crown
読ませていただきました。?な点、読みづらい点が多々、「人一倍人の死を気にする」「ノートに書き写すため(考えた事を書く?写すは不適当かと)」「いつもの通り道の坂道(いつもの通り/通り道?)」「感じるが、また嫌いではなかった(また?)」「何かに一生懸命考えたことはない(〜に/〜を?)」「最愛の人が自分の死を望み、死んだというバッドエンド(?)」、、などなど。あくまで小説を目指すのであり、不特定多数の人々に読んでもらいたい!というのでありましたら、「読みやすさ」を考慮なさったほうが良いかもしれません。
本文に関しましては、皆様も仰っていますとおり、「エッセー」「ワタクシ的」「想ったことノート」みたいだなあ、と。同じ年代の方は共感できるのでしょうね。たぶん
2005-10-26 00:53:41【☆☆☆☆☆】一読者
初めまして、ミノタウロスと申します。SSかと思って読んでいたのですが、これから色々?展開していくのですね? タイトルが気になって読んだので、未だ不明なこのタイトルの意味が気になります。いきなり自己の思考を連ねて見せ付けられたのですが、胸に迫る勢いと言うか、切迫したものが無い為か、物足りなさを感じました。しかし、何か惹かれるものを感じるのは、冒頭と、タイトルの良さでしょう。次回更新楽しみにしています。
2005-10-28 15:52:30【☆☆☆☆☆】ミノタウロス
計:4点
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