『カウントダウン第一話』作者:囲来優美 / AE - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
死にたい。いつもそう思っていた。だが、今 死ぬのは早すぎる気がする。だから今は死ねない。何かが起こるのを期待している。だから一年待とう。一年たっても「死にたい」と思うなら、睡眠薬でも飲んで死ぬ。そう、一年後、私は死ぬつもりだった。あいつに会うまでは。
全角2756文字
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原稿用紙約6.89枚


<プロローグ>

 「つまらない日々」が変わり、つまらなくならないなら「死へのカウントダウン」を止めよう。
 「つまらない日々」が続くなら「カウントダウン」は止まらず、ゼロへと近づく。今から一年経ち、「ゼロ」となった時、私は死のうと思う。

 「死へのカウントダウン」を今から始めよう……





<決意>

 すべてがつまらない日々だった。
 そう思ったのは小学校の卒業式の後だった。


――――死んでしまおうか――――


 この中学への準備期間―――つまり春休み―――ずっと考えていた。毎日つらい新聞配達をして、数少ない友達と適当な会話をして、家に帰り、寝る。つまらない。もう死んでもいいと思っている。

 四月一日、エイプリルフール。
 仕事も終わったわけで、今、午前六時。空を眺めた。雲は意外に早く流れていく。
 自分のアパートの階段に腰を降ろした。そして、いつもと同じ事を問いかけてみる。
 ―――今日 死んでみるか―――
 そこでふと、「死へのカウントダウン」という言葉を思い出した。何かの本で、読んで覚えた言葉だった。「死へのカウントダウン」……頭の中で思考がうずまいた。

 腕時計は七時を指していた。
 頭の中の思考の速度は止まった。長い長い、「今日 死ぬか」という疑問の道から、答えへとたどり着いたのだ。
 カウントダウンを今から始める―――そう心に決めたのだ。
 
 しかし、中学校で出会う、ある人物によって、カウントダウンは狂い始めることとなるだろうということは、私はこの時は予想もせず、空をしばらく眺めていたのだ。
 空の色は、少しずつ明るくなっていき、雲は前よりも、早く流れていった。





<そいつと会った>

 そいつの名前は「黒川 真心」。クロカワ シンジ。
 突然、しかも入学式が終わって一週間という中途半端な時期に、学校の教室にやってきたヤツ。転校生だ。
 初めて、黒川を見た時、私を含めて大半の女子は「カッコイイ」と内心で呟いた。ルックスが良かったのだ。
 黒川が初めて教室に入り―――私と目が合った―――そう、あの時から不思議に思っていた。アイツは私のことを凝視したんだ。何? 私は思った。
 黒川はしばらく私をじろじろ見ていたが、やがて目をそらした。
 私はしばらく、ソイツを見ていた。


 私の席は、一番前だった。転校生は普通、一番後ろの席に座るはず―――だった。
 「今日の帰りの会で、席替えをします」
 クラスの担任がこう言ったのだ。理由は多分、今の席が出席番号順だから替えよう、ということであろう。周りは騒ぎ出していた。女子は、おそらく半分以上の人が黒川に興味があったと思う。「隣になりたい」―――そう思っていただろう。
 私は他人にさほど、興味を持たない方だった。芸能人など、ほとんど覚えていない。だが、黒川という転校生には興味があった。ソイツが、さっき、私のことを見た目は「信じられない」といっていたのだ。私が存在することが、信じられないという目だった。だから不思議に思った。そして興味を持った。それだけだった。
 ふと、彼を横目で見た。彼は男子に囲まれていた。ほんの少しだけ、隣の席になりたい。そう思った。





<会話>

 何と、席替えの結果、私は見事に黒川の隣の席になった。自分でも、つくづく変わった運の巡り合わせだと思う。
 黒川を見ると、彼も私を見ていた。彼は口を開きかけたが、同時に、帰りの会での先生の話が始まった。


 放課後、黒川は男子や女子に囲まれていた。あれだけ顔が良ければ、すぐにクラスから慕われる存在になるだろう。心の中では黒い影のようなものが沸き上がってくる。軽い妬み。すぐに抑えた。自分が、すぐに誰かを軽く妬んだり、恨んだりすることがいやだった。それは人間、誰でもあることだとも分かっていた。それでも、いやだった。黒い影が沸き上がってくるだびに思う。自分がきらい。もやもやしていて、どうにもできない。


 次の朝、ホームルームが終わった後だった。
 「名前、なんていうの?」
 黒川が話しかけてきた。
 「上川」
 名字で答えた。彼は机の上に、肘をつきながら聞いてきた。
 「いくつ?」
 心の中で小さな舌打ちをした。中学一年なんだから、十二か十三に決まっているだろう。むだな質問を、なぜ、こいつはする。そう思いながらも答えた。
 「十二」ほとんど、ため息まじりで言った。
 「へぇ、それにしては」 
 黒川の目は、私の容姿全体をとらえた。
 「十二に見えない」
 苦笑した。確かに身長百四十センチピッタリという小さな体だった。顔は童顔で、よく「かわいい」と言われる。
 黒川を見ると、クックッと笑い声をあげながら笑っていた。
 「さっきからラブラブだなぁ」
 不快な、からかい声が割り込んできた。同時に笑い声が止まった。
 振り向けば、うるさい男子共。佐藤涼とその他男子。
 「おい、黒川。コイツはお前のこと大好きだってさ」 
 佐藤が顔をニヤニヤさせて言う。くだらない。そう思いながらも言い返した。
 「んなこと、誰も言ってないじゃん」
 「お前、さっき顔がにやけてたぞ」 
 佐藤の横にいた矢口が口を出す。
 「にやけていない」 
 無表情でまた、言い返した。からかいに来たやつには、無表情で対応するにかぎる。案の定、佐藤達は、つまらないという顔を残して、去っていった。
 「男子の扱いに慣れているのか」
 黒川が話しかけてくる。大人びた口調だった。落ち着いた声。好感を持った。まぁね、と返事を返す。
 「さっきの男子っていつも、あんな感じなのか」
 黒川は教室から出ていこうとする、佐藤達を指さして聞く。
 「そう。いつもバカ騒ぎしている。そして頭も悪い」
 彼らのテストの点は、一教科五十点以下だと聞いていた。
 「へぇ。ところで次、移動教室?」
 教室には、いつの間にか私と黒川の二人だけとなっていた。そうだけど、と返事をすると、そいつは立ち上がった。
 「理科室、どこ?」
 仕方がない。
 「ついてきて」
 そう言い、理科室へと歩き出す。
 彼はついてくるというより、私の横へと歩いてきた。まるで、「一緒に行こう」とでも言うように。
 思わず、フッと笑う。誰かと一緒に歩くなんて、久しぶりだ。まして、男子と横に並んで、歩くなんて初めてだった。







2005-10-29 20:11:57公開 / 作者:囲来優美
■この作品の著作権は囲来優美さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
前回失礼致しました。
改めてかきます。初投稿の囲来 優美です。
できる限り、よい作品を書きたいと思います。
よろしくお願いします。
この作品に対する感想 - 昇順
 面白いかどうかってのは私の場合、『物語世界に入り込めるかどうか』で、そういった意味では入り込めませんでした。諸行無常の雰囲気を出そうとするにしても過去形ばかりの文体では世界に移入できません。
 よけいなお世話ですが、カウントダウンが正面きっての題材であるのなら、そこから意識を外させず、読み手を常に興奮させるといいかと思いました。
2005-10-16 21:07:07【☆☆☆☆☆】clown-crown
拝読しました。あくまで淡淡と紡がれてゆくのは悲観的(傍観的な)心情を醸しているのでしょうか、それにしてはモノローグ(の描写)が質素過ぎて単調に見えてしまうと思います。物事の事象も大切で御座いますけれど、冒頭のみで済まさず随時挿してゆくのも良好かと。面白さの裁量は、導入部分では判断出来得ませんでした。
2005-10-17 16:18:33【☆☆☆☆☆】京雅
作品を読ませていただきました。面白い、つまらない、という判断はこれだけでは付きません。物語のプロローグですから。ただ、文章が淡泊な印象ですね。死へのカウントダウンのモノローグがやたらと目立ち、主人公のその他の感情や描写が少ないためヤマ場や波風がないまま今回は終わってしまったという物足りなさを感じています。では、次回更新を期待しています。
2005-10-18 20:58:58【☆☆☆☆☆】甘木
今晩は、ミノタウロスと申します。作者のコメントに、少し挑戦的な感じを覚えて、かえってコメントし辛いです。導入には、惹き付けが余りないと私は感じたので、この時点で面白いとは言えません。が、小説とは一部分だけ切り取って全てを語れる物ではないと考えます。確かに、歴代の文学小説など、秀作であるなら、教科書で取り上げるように一部分だけ切り取っても、かなりの物を想像しえますが、通常そうはいきませんから、今の段階で、この作品が面白いか面白くないかを判断する事は出来ません。今作品が、どの程度の長さになる予定なのか存じませんが、どう展開させるのか、登場人物にどの程度魅力を持たせる事ができるのかで、今後面白い、面白くないが決まると思います。
では、ここで投げ出さず、続きを書かれる事をお待ちしております。
2005-10-20 23:08:08【☆☆☆☆☆】ミノタウロス
感想をありがとうございます。
作者のコメント、あれは本当に失礼しました。つい、短く簡潔にかこうとしてしまったんです。

皆さんの感想を参考にして、もっと考えて、文章を組み立てていこうと思います。
2005-10-21 18:31:56【☆☆☆☆☆】囲来 優美
計:0点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。