『甦り』作者:リストバンダー / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
自殺しようとした女の子との淡い恋物語です
全角2332文字
容量4664 bytes
原稿用紙約5.83枚
僕の名前は鈴森夾。一人暮らしをしている十五歳。なぜ一人暮らしをしているかというと、両親が交通事故で昇天そてしまったからだ。だから自分で生活費を稼ぎ、一人暮らしをしている。
 今日、バイトから休みをもらっている。大体三週間ぶりの休みなので、家でゴロゴロしていようと思っていた。けど、体を動かしたくなったので家を出ることにした。
 町では平日にもかかわらず、高校生や中学生を結構見かけた。ほぼ間違いなくサボりだろう。どいつもこいつも友達と何かを話しながらゲラゲラ笑っている。僕は見ていないふりをして、町の外れへと向かった。
 外れは町とは正反対の世界が広がっていた。町は鮮やかな色を使った看板や人でごちゃごちゃしてにぎやかなのに対し、外れはほとんど灰色ばかりの暗い色になった廃墟の建物ばかりで人などまったくいない。
 この廃墟の町は不気味の象徴といってもいいほどだ。僕は何かに導かれるように廃墟と化した建物の中に入っていった。
 まだ昼だというのに、中は薄闇の状態でよく見えない。もう、本当に幽霊とかが出そうな感じだ。
ガシャアアァァァァァァァン……――!
 いきなり、金属やガラスの割れ落ちるような音が廃墟の静寂を破った。僕はそれを聞いた瞬間、恐怖が込みあがり、即座に逃げ出した。が、
「ケホッ」
 そんな声が聞こえたので、僕は立ち止まった。今の声はどこから?
「ケホッケホッ」
 右後方の部屋から聞こえてきた逃げ出したかったけど、好奇心がそれを許さない。
 僕の足は声が聞こえてきた部屋へと進んでいった。そして、音を立てないように部屋を覗いて見ると、髪の長い女の子が一人、部屋の中央で座り込んでいた。よく見ると、天井に吊るされていたはずの蛍光灯が女の子の前に転がっている。さっきの音の正体はこれみたいだ。
「あの……すいません」
話かけると同時に女の子は振り向いてきた。
「何をして――」
 僕の言葉は、それ以上続かなかった。あるものに気づいてしまったからだ。そのあるものとは、一本のロープ。ロープの端のひとつは蛍光灯に絡められ、もうひとつは輪になって女の子の首にかかっていた。近くに土台のようなものがある。つまり、この子は自殺を図っていたのだ。僕は彼女の隣に座り込んだ。顔を見ると、だいたい僕と同じ歳ほど。薄暗い上に悲し
そうな顔をしていたが、間違いなく美人だ。
「これ、外そう?」
 首に掛けられているロープを指して言った。けど、返事どころか反応すらしなかっ
た、。輪を外そうとしても抵抗もしない。そして、外しても何もしない。
「大丈夫?」
 反応しない。
「名前は?」
 やっぱり彼女は反応しなかった。まるで悲しい顔をした人形と離してるみたいだ。
「肯くだけでもいいからさ、返事くらいしよう?」
 そう言うと、小さく肯いてきた。
 この後、いろんな事を言って僕は家に帰った。それからあの子のことが心配になっ
たので、バイトの後、あの場所に通うことにした。けど、彼女は肯くか首を横に振る
だけで話してこない。さらに、日に日に彼女は痩せていく。食べ物や飲み物を持って
いったが、飲み物が少しずつ減るだけで、食べ物はまったく食べなかった。
「病院に行く?食欲がないのだったら点滴だけでもしようよ」
 そういうと、初めてしゃべってきた。
「ヤダ!行きたくない!」
 かわいらしい声で拒否し、腕にしがみついてきた。彼女は力一杯しがみついたのだ
ろう。けど、その手は震えており、力は入っていないに等しかった。
 次の日、とうとう彼女は倒れた。救急車を呼ぼうとしても必死に止めてくる。だか
ら、パンを食べるようにと口の前にパンを近付けた。
 けれど、ダメだった。噛めなかったのだ。かなり衰弱しており、噛む力が残ってい
ないみたいだった。僕を引き止めているのは、執念の力なのだろう。
 いろいろ考えた末、口付けで食べさせた。僕がよく噛んで彼女の口へ。そのまま彼
女は飲み込む。彼女は嫌がらずに、これを何回も繰り返し
こんなキスは不本意だけど、人命救助のためだ。
 食べ終わってから彼女の顔を見てみると、赤く、そして笑った顔をしていた。
「ありがとう。それと、ごめんね……」
 彼女はそう言うと、ゆっくり目を閉ざした。数秒後、僕は呼びかけてみた。でも返事をしない身体を揺すってみた。それでも反応しない。ただ赤くなった顔のまま、目を閉じているだけ。本当に眠っているようだった。

 あれから、一年の時が流れた。僕は今、墓参りに来ている。もう供え終えたお供え物を、もう一回みた。
 線香、花、飲み物、そしてパン。
「久しぶり、元気ににしている?」
 そう墓に呼びかける。こうしていると、本当に話しているような気がするのだ。いろいろ話していると、
「夾! 水持ってきたよ」
 かわいらしい声のする女の子が水を持ってきた。彼女の名前は青山千秋。僕の彼女だ。髪が長くて身長も高い。気が強いがとても優しく、可愛い子だ。「あれ?そのパンって、あの時のと同じやつだ」
 そう、あの死にそうだった女の子。あの後回復して、それから一緒に暮らしている
のだ。なぜ自殺しようとしたかというと、両親に捨てられてしまったからみたいだ。
 千秋は僕から目線を外し、こう言った。
「ねえ、家に帰ったら、あの時の……やってくれる?」
「え!……えーと……いいよ」
 青空の下で赤く染まる僕と千秋の顔。
「帰ろう、千秋」
 僕は言った。
「僕たちの家に」
2005-09-28 12:36:58公開 / 作者:リストバンダー
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■作者からのメッセージ
自信作です。感想などよろしくお願いします。
この作品に対する感想 - 昇順
 こんばんは、座席です。
 自信作とのことで、率直な感想を申し上げますと、詰まらないです。面白くない、ではなく単に満足感がありませんでした。
 作者の中で、物語が光の速さまで加速してしまい、読者である私には一年の間に何があったのかを認識することはできませんでした。人物の描写も少なく、主人公の紹介もやっつけ程度で感情移入できません。私的にはショートショート向きの作品ではなく、もっと深くやるべきものだったかなと。完全な語り不足だと思われますので、もっと多くの物語、場面などの描写が欲しかったです。
 それから、文末でないところで改行がなされていたり、文頭に空白があったりなかったりと少々読み難い部分が目立ちました。少し読み返せばわかる程度のケアレスですので、お気をつけください。
 全体的に、もっとボリュームがあれば良い作品になると思いました(いやSSなので実は後数枚しかラインが無いわけですが)。
 こんなのが手始めで申し訳ないです、乱文失礼しました。
2005-09-28 17:31:57【★★☆☆☆】座席
拝読しました。オチ手前のトリック部のみに目を遣ってしまい、本来の恋愛部が疎かになった感が拭えなかったがために、ラストが不完全燃焼に感じました。多面的に、側面を丁寧に書き込んでゆけば感情移入も出来得たかなと思います。ロープで自殺しようとしている少女のヴィジュアルが想像出来得なかったのも要因かと。次回作御待ちしております。
2005-09-29 13:44:24【☆☆☆☆☆】京雅
作品を読ませていただきました。物語の意図はわかりますが、全体的に描写や心情など物語を肉付けする部分が少なく、骨組みのまま一気にラストに行ったしまった感がありました。このラストの場合、映像だと生きてくるとは思いますが、文章だとその前段階の主人公の心情をもっと強く描いた方が良いと思います。辛口の感想になって済みませんでした。では、次回作品を期待しています。
2005-09-30 23:31:48【☆☆☆☆☆】甘木
結局、ラストのお墓は誰のお墓なんすかね。ちと疑問でした。
誤字やあとは座席さんの言ってるようなことが幾つか在ったので、読み直すことを強くお勧めします。ですが、良い表現方法とかがいっぱいあったので、次回作に期待が持てるなぁと思います。上からの物言いで誠に申し訳ないです。
ええと、みなさんが言ってる、肉付けの方法ですが、それはいまいち俺には分かりません。しかし、思ったことですが。一人称での文というのは、基本的に主人公の心理描写が生きてくるものなのですが、作品を通してあまり無かったのが、うけなかった原因ではないかなと思いました。答えを書かなくて、ただ取り敢えず、主人公がこの状況に置かれたと仮定しての、思いそうなことをいっぱい書き連ねてみたりとかすると、良いかなぁと思いました。
2005-10-01 01:01:10【☆☆☆☆☆】むぅ
計:2点
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