『無題』作者:一徹 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
全角1545文字
容量3090 bytes
原稿用紙約3.86枚
――――――――――――――――落ちていったそれは湿った大地に花を咲かせた。


 見よ、縁側から見る世界の美しさ、誰もいない静寂を。
 喧騒はかすみのようにかなたで木霊するだけ、この調和を侵すものはいない。
 地に立つ草木は、何人にも妨げられることなくすっくと背伸びする。
 極微の蟲を喰らう虫、さらに彼等をついばむ鳥に、あるいは地に墜ちた獣にたかる蟲。
 絶対調和、世界の在るべく真実の。
 美しい。
 ただ一言で足りるだろう。




 みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん、と。
 うるさいほどの、日中だ。

 やがて日が沈み、夜がきた。
 夜行性の循環が始まる。
 蒸し暑げな森林に揺れる影。
 涼しげな清流を渡るのは銀ぎつね。青鈍色の道に沿って、獲物を探す。
 ほうほう、と鳴いている。
 大きく根を下ろす楠の枝に、梟が留まっている。丸いビーダマのような眼差しを闇の帳に向けて、羽ばたき、無音、滑空。




 虫の鳴き声に耳を傾けるのもいいだろう。
 今の季節、ちょうどスズムシが鳴いているはずだ。
 りいんりいん。
 遠く、あるいは近く。
 りいんりいん。

 月が出た。
 真ん丸いお月様。
 暗闇にうずくまる山々を、そうっと光のカーテンで照らしていく。
 何もかもが、深く、しかし鮮やかに色放ち、自らを誇示する見せ付ける。
 こんな日には、杯で、ぐいっといっぱいやれればいい。




 銀世界へと踏み出そう。
 足跡を残すのは、快感だ。
 いまだ平原に立ち入ったものは無く。
 雪が結晶の姿で、迎えてくれるはずだ。
 誰かと一緒に雪だるまでも作ればいい。
 息白く、頬を赤らめ、紅に染まった銀世界を、かじかんだ手でもつないで、家に帰ればいいだろう。
 きっと晩御飯はシチュー。
 ほっくほくのジャガイモを、たっぷり食らえばいい。
 熱い風呂に身を沈め、明日のことを、考えればいい。




 春は無い。




 みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん、と。


 また、鳴き出した。


 夏秋冬夏秋冬夏秋冬夏秋冬……
 たまに夏が二度続き
 夏秋冬夏秋冬夏秋冬夏秋冬……
 たまに秋が二度続き
 夏秋冬夏秋冬夏秋冬夏秋冬……
 たまに冬が二度続き
 夏秋冬夏秋冬夏秋冬夏秋冬……


 やがて家が老朽化して自壊した。
 正面の道路は緑の絨毯と化し。


 ほうほう、と鳴いている。


 みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん みぃんみぃん。




 誰もいない。


 やがて、日が沈む。
2005-09-14 22:08:50公開 / 作者:一徹
■この作品の著作権は一徹さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 ども、一徹です。
 なんか段々と訳分からなくなってまいりました。
 伝えたいものも散漫な気がしてなりませんね。
 こういう作者からのメッセージで意訳するのもなんなので、毎度のことながら、読んでくださった皆さんの、ご意見ご感想ご指導お願いしたします。
 
この作品に対する感想 - 昇順
私と考えた似てるなぁ。うーん、作者さんが訳わからない作品は
私にはさっぱりでした。今回は個人的にはイマイチでしたね。
ていうか作品UP早い!昔の私のようだ!次回作頑張って下さい。
2005-09-14 22:59:37【☆☆☆☆☆】猫舌ソーセージ
 この書き物で書き手の思いを受け取ろうとしても、これが小説に分類されるものだという認識の下では無為に等しいです。
2005-09-14 23:47:06【☆☆☆☆☆】clown-crown
拝読しました。言葉に詩的なものは感じますけれど、物語性に欠けており、何を見せられたのか解らないまま閉じてしまったように思います。他人の心は異世界なのだと再認識させられました。
2005-09-15 04:49:54【☆☆☆☆☆】京雅
拝読させていただきました。時貞です。それにしても一徹様の執筆ペースはとても早いですね。遅筆な自分としましてはすごく羨ましいです。今作ですが、やはり小説というよりも散文詩に近い印象を受けました。言葉の美しさは感じられるのですが、もっとストーリー性が欲しかったように思えます。次回作を楽しみにお待ちいたします。
2005-09-15 11:39:24【☆☆☆☆☆】時貞
拝読させていただきました。時貞です。それにしても一徹様の執筆ペースはとても早いですね。遅筆な自分としましてはすごく羨ましいです。今作ですが、やはり小説というよりも散文詩に近い印象を受けました。言葉の美しさは感じられるのですが、もっとストーリー性が欲しかったように思えます。次回作を楽しみにお待ちいたします。
2005-09-15 11:39:30【☆☆☆☆☆】時貞
こんばんわ、菖蒲です。拝読させていただきました。詩的な表現や文体になるということは、作品にかける思惑に帯びる物語性よりも情緒的感情のほうが強いということだと思います。理解するには分量や補足が必要だとしても、直接うったえる感情面を重要視されたならば、今回はこれでいいのかもしれません。けれど、読み手の方が物足りなさを感じるということは、相手側から求められているのはあくまでも物語性を重視したものということですから、それらの食い違いは仕方がないことかもしれませんね。春が存在しないという不成立な循環ゆえに滅びた世界という設定は、少なくとも私には強いメッセージがありましたよ。次回作も期待しております。
2005-09-15 18:22:11【☆☆☆☆☆】菖蒲
作品を読ませていただきました。文章の表現は詩的で美しいと思いますが、作者が何を意図して何を書こうとしているのかが理解できませんでした。私的には小説の範囲には入れづらい作品ですねぇ。辛口の感想失礼しました。では、次回の小説を期待しています。
2005-09-17 11:17:08【☆☆☆☆☆】甘木
こんにちは。一徹様の表現する言葉とそれを構成する文体は美しい輝きを持っており、今回は、【泥人形】の時よりも更にそれを上回る。しかしこの書き物は小説とは言いません。詩的小説にすらなりえません。美しく崩壊していく世界を情感豊に綴った詩集の一遍を見せられた感じです。かなり訴えたき物事がおありの様で、詩集と言う物はそう言った心の叫びの具現化させた塊と常々思っておりますし、小説よりダイレクトに叫びを表現できると考えます。しかし、一徹様は敢えて、この小説登竜門にて叫ぼうと言うのであれば小説で勝負しなければなりません。衣を脱ぎ、肉をそぎとり、血と骨とで綴られた物では小説として読む事は出来ません。この前の【氷姫〜】もそうですが、いろいろな物を取り除きすぎです。
前にもあなた様の文章は昔読んだエッセイに似ていると言いましたが、今回の文を読んで改めて、私はこの文体が好みだなあと思いました。詩集のように読めて私はとても好きな文章でした。色々想いを巡らす事が出来るので面白い書き物ではありました。辛口が過ぎたかもしてませんが、この文体と、小説が融合できたなら、素晴らしいなと思い、嫌われるの覚悟で意見しました。訴えたい事を私なりには解釈できたつもりです。大変なる無礼、お許し下さい。何だかんだ言って、いつも読ませて頂いていますので、頑張って下さい。
2005-09-17 16:03:34【☆☆☆☆☆】ミノタウロス
計:0点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。