『黒の大陸 ?章 「最初の別れ」』作者:Rue / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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『総員、中央ドームへ集合せよ!繰り返す・・・』

突然、神戸防衛本部が慌しくなる。
寝ていた光慈も飛び起き、
急いで中央ドームへと走っていった。
途中で聖香と合流した。

「何だろう?突然。」
「わからない。でも、ただ事じゃないことは確かだな。」

中央ドームは瞬く間に、
200人を超える兵士で埋め尽くされた。
神戸防衛本部長、
李 雲星が壇上にあがる・・・。

「急に呼び出してすまない。だが、時は一刻を争う。
 先刻、東京本部で最終作戦が決定された。」

ドーム内が一瞬静まり返った。
しかし、すぐにどよめきが起きる。

「静粛に!今からその内容を説明する・・・。」

人類保全政策最終作戦。
それは、ウィルスの発生源と思われる南極へ上陸し、
原因を究明するというものだ。
防衛本部としても、最後の賭けだった・・・。

その場は解散となった。
5人は休憩室でさっきの作戦について話している。

「・・・どう思う?」
「どう思うってなぁ。あれは作戦て言えんのか?」
「どっちかっていうと特攻だよネ。」
「同感。」
「・・・でも、やっぱりそれしかないよね。」
「同感。」
「・・・梨絵。お前どっちなんや?」
「やぁね、少しは場を和ませようかと・・・。」
「和めるか!第一、和んでどうする!」
「まぁまぁ、仁もおさえて。」
「・・・どうして、この5人で喋るとコントになるんだ?」
「鋭い指摘だネ、光慈。」
「それはそうと、一体誰が南極まで行くの?」
「それだよな。さっきは『追って報告する。』
 なんて言ってたけど・・・。」

梨絵が答えようとしたが、
シオンの同僚の声がそれを遮った。

「おーい、シオン、加納。李本部長がお呼びだぞ。」

シオンと梨絵は急いで司令室へと向かった。
光慈たちも後に続いた。
このタイミングでの呼び出し・・・。
5人の脳裏には同じことが描かれていた。

2人は司令室に入り、
光慈達は外で聞き耳をたてていた。
予想は的中した・・・。

「シオン ハーティス隊員、加納 梨絵隊員。
 君たちを呼び出したのは他でもない、
 南極へ行ってもらいたい。」

分かっていたことだが、
それでもいざ告げられると動揺は隠せない。
李本部長は続けた。

「しかし、これは強制ではない。
 他の隊員にも何人か声をかけるつもりだ。
 明日、13時までに結論を出してくれ。」

2人が出てきた。
シオンはうつむいたまま何も喋らない。
梨絵も同じだ。
だが、急に梨絵は廊下の向こうへと走り出した。
聖香が後を追う。

光慈と仁は、
黙ったままのシオンに恐る恐る聞いた。

「・・・行くのか?」
「・・・ああ。」
「なんでや!?行ったら間違いなく死ぬで!」
「それでもイイ・・・。
 もう、故郷を失うのはイヤなんダ。」

シオンの故郷、アメリカはもう『無い』。
核兵器の暴発で何もかも無くなってしまった。
もう生物は棲めないだろう。

「もう、失うのはイヤなんダ・・・。」

シオンは第2の故郷を命がけで救う覚悟を決めていた。
光慈達に言えることは何もなかった・・・。


翌日、シオン達は港へ向かった。
そこには李本部長の他、数名の船乗しかいない。
李本部長が言った。

「結局、行ってくれるのは、
 君たち2人だけだったよ・・・。」

2人・・・。
そう、梨絵も行く決意をしたのだ。

「私はどこまでもシオンについていくよ!」

昨日、梨絵は聖香にそう言った・・・。

2人を乗せた船が港を出る。
5人は皆、大きく手を振り別れを告げた。

「あいつらなら、きっと帰ってくる・・・。」

光慈達はそう信じた。
しかし・・・、


2人が帰ってくることはなかった・・・。

2003-11-04 18:58:23公開 / 作者:Rue
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■作者からのメッセージ
なんか、いきなり長くなっちゃいました・・・(当者比)
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