『桜の季節に』作者:りる / AE - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約3.37枚
私と彼が出会ったのは、私が高校に入学した4月。桜が満開な頃だった。そして、しばらくの別れを告げられたのも、4月―― 
「絶対また会いに戻ってくる」
私はその言葉を信じて、彼の背中を見送った――
 私には2つ年上の彼氏がいた。彼は高校卒業後、アメリカへ留学してしまった。留学した彼は、定期的に手紙を送ってくれた。もちろん、私も返事を出した。手紙がくるのが毎日楽しみで、彼の不器用な文字を見る度に笑みがこぼれる。国を越えて今は遠くにいるし、留学前と違って毎日会えなくても、私は手紙を読むだけで幸せだった。
 そんな彼からの手紙が急に途絶えた。月に1度は来ていた手紙が、全く来なくなった。郵便受けを見ても、入っているのはカタログばかり。それでも、私は「彼はただ忙しいんだ」と自分に言い聞かせていた。
 そしてあっという間に1年が過ぎた――
 彼からの手紙は未だに届かない。流石に心配になってきた私は、彼の両親に聞いてみた。どうやら、両親にも手紙が届いていないらしい。私はますます不安になった。
 いつもは彼から来た手紙に返事を書いていたのだが、今度は私から出すことにした。1年もあの不器用な文字を見ていなかったから、聞きたいことは山ほどあった。
 何枚にも及ぶ手紙をポストに入れ、それから月日が流れた――
 更に一年が経とうとしたが、彼からの手紙は全く来なかった。アメリカで何かあったのだろうか。不安が脳裏をかすめた。
「どうして手紙くれないの…?」
私はただ、寂しさに涙するしかできなかった。
 月日が流れ、彼が留学して4年が経った。結局手紙の返事はなく、彼がいるアメリカの現状は、テレビから流れてくる事件の数々だった。もしかしたら、彼は何かの事件に巻き込まれたのかもしれない。いてもたってもいられなくなった私は、彼と出会い、そして別れた桜の木の下に行った。あの頃と同じように、今は桜が満開の春。思い出す彼の笑顔。私の頬を一筋の涙が伝った。その時、遠くから私の名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。慌てて振り返った私の目に映ったのは、紛れもなく彼だった――
 4年間姿を見ていなかったのに、彼は全く変わっていなかった。私は涙がポロポロとこぼれた。言いたい事は山ほどあった。なぜ手紙をくれなかったのか。どうして連絡一つよこさなかったのか。
「どうして手紙の返事くれなかったの?」
とりあえず、一番気になったことを聞いてみた。彼は困ったような表情で、
「アメリカの方でバイトしてたんだ。留学してバイトまでしたから暇がなくて…別にお前のこと忘れてたわけじゃないんだ」
そう言って、彼はポケットから小さな箱を取り出し、私に渡した。箱を開けると、その中には…
「指輪…?」
(まさか…これのために…?)
「あんまりいい物じゃないけどさ、お前が喜ぶと思って」
彼は照れくさそうに頭をかいた。そんなはにかむような彼を見て、私は嬉しさと悲しさとが同時に込み上げてきた。もうどうしていいのか分からない感情だった。
そんな私を見て、彼は私の頭を撫でた。
「言っただろ? 絶対また会いに戻ってくる、って」
いつまでも泣き止まない私の手を彼は優しく握った。彼の手は大きくて、そして暖かかった。
2005-08-24 12:55:54公開 / 作者:りる
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■作者からのメッセージ
こんばんは、初投稿させて頂きました。
初投稿の作品ということもあって、あまり長々としたものだと読むのも大変だと思ったため、短めにまとめたものとなっています。
自分的に、この作品の反省点は、オリジナル性がないところです。内容がありがちになりすぎました;私がこの作品で目標にしたのは、内容ではなく、読み手が心に描写しやすい作品にまとめられているか、ということです。読んだ皆さんに、この作品の内容が分かりやすいと思っていただければ幸いです。
 感想を読ませていただいて、「どうして手紙がこなかったのか、というのが気になる」という意見があったため、1シーン加えてみました。どうでしょうか?
 もっとこうした方がいいというアドバイスもどんどんお願いします。
この作品に対する感想 - 昇順
こんにちは、はじめまして。おんもうじといいます。
読ませていただきました(^○^)うんうん、話自体はオリジナル性がないとおっしゃっていますが、何分分量が少なすぎて、オリジナル性の欠落、という面でも不足はしていましたが、それ以上に白い靄がかかっていて、表面だけをなぞっている、という感じが否めませんでした。てか、なんで手紙くれなかったのかとかが語られてないのは読者に不満を残す大きな要因であると思います。
文章自体は小奇麗にまとまっててよかったとおもいますよ(^○^)内容も(語られてる分は)分かりやすかったです。もっと分量を多くしてかつ読者の心にすんなり入るようにすると良いと思いますよ(^○^)
偉そうに批評すいませんでした(>_<)では、次回作お待ちしております!
2005-08-23 11:15:01【☆☆☆☆☆】おんもうじ
>>おんもうじ様
読んでいただきありがとうございましたw
確かに内容的にもうちょっと深追いした方がよかったですね。”簡潔に”というのに囚われすぎたのが欠点です;
「まとまっていてよかった」と聞いて安心ですw
今度投稿するときはもっと内容が濃いものにしたいと思いますwアドバイスありがとうございました^^
また至らない点がありましたらどんどん言ってやってくださいw
2005-08-23 12:21:43【☆☆☆☆☆】りる
こんばんは。初めまして。
暖かな感動をありがとうございます。主人公の子の心理描写が共感できました。短編小説は大好きです。それと、私もなぜ、手紙をくれなかったのか…っていうのが疑問に残りました。被ってすいません。でも、あったかいお話でよかったです。もっとこの物語を深く知りたくなりました。
2005-08-23 22:00:13【☆☆☆☆☆】マイケル
初めまして、上下です。
心温まるストーリーですね。ダークネタが好きな自分がほんわか気分で読んでしまいました。くそ〜、やるな!!よかったですね〜。約束が守られて。てっきり新しい女を作ってしまったのかと思っていましたが。いや〜、ハッピーエンドでよかったよかった。それでは、次回も楽しみにしています
2005-08-24 16:50:15【☆☆☆☆☆】上下 左右
初めまして、恋羽(ここは)と申します。作品を読ませていただきました。
思ったことを端的に述べさせていただくと、「文章は軍艦みたいなものだ」みたいなことです(意味がわからないですね(笑 艦の大きさ、これは想像力やオリジナリティといった概念で、推進力、これが文章力なのだと思います。そして搭載した武器の数、これが語彙の広さかと。この作品には優れた推進力があるのだと思いますよ。小説は軍艦と違って攻撃性が主体である必要なんてどこにもありませんし、ひたすらに速い船があってもいいじゃありませんか。落ち着いているな、そう純粋に思いました。この纏まり具合を文章量が増した場合でも保つことが出来れば、それはきっと大きな力になるだろうと思います。
つまらない感想を長々と書き連ねてしまいすみません。今後もがんばってください。それでは。
2005-08-24 21:18:38【☆☆☆☆☆】恋羽
初めまして、京雅と申します。拝読しました。文量もあまりなく、うねるような展開もなく、しかし文章そのものは丁寧に書かれてあるなぁと思います。簡潔に纏めたせいか、物語の端と端を魅せられたような印象もありますね。彼によせる想いを、何かしらのシーンによって提示する事も出来得たかな。その過程を省いてしまっていることがオリジナリティどうこうであり、想像力から繋がるものじゃなくても、書き方切り口、そういうものもオリジナル性で御座いましょう。読み易く纏めるという意図は顕現されておりました、これから先書いてゆくものにどういう色がつくのか、期待して御待ちしております。
2005-08-24 22:58:06【☆☆☆☆☆】京雅
初めまして甘木と申します。作品を読ませていただきました。大きなヤマ場があるわけではないですが、丁寧に書かれていることで綺麗に纏まっていますね。ただ、文章量が少なすぎて感動の骨子だけを読んでいるような感じです。物語の肉をそぎ落としすぎたようですね。この丁寧さを維持したまま文章量を増やせばさらに素晴らしい作品になると思います。では、次回作品を期待しています。
2005-08-25 09:36:33【☆☆☆☆☆】甘木
計:0点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。