『雨』作者:翠にゃん / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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雨が降り続く。
今日でもう一週間。

会社には しばらく休む と連絡をし、
何か怒鳴っていた部長の言葉を聞かずに電話を切った。
誰とも連絡を取りたくないから、
携帯電話の電源を切り、ゴミ箱に捨てた。

何もせず、ずっと同じことばかりをぐるぐる考える私。
何もせず、ずっとベッドに座っている私。


思い出すのは 優しくて淋しい水色の瞳。


わたしと過ごした日々は幸せだった?
わたしに出会えてよかったと思ってくれてる?

もういないあの子に、心の中で問いかけて1日が終わる。

日付けが変わる頃、わたしはお線香を一本あげ、
1日座っていたベッドに横になる。

目をつぶると、さっきよりも大きな音が窓を叩く。

あの子に出会った日も雨が降っていた。




わたしがあの子に出会ったのは3年前。
田舎から就職の為に上京して3ケ月たった、
ある雨の日の夜だった。
慣れない都会での生活と仕事、満員電車で
毎日くたくたになっていたわたしの元に、
あの子は現れた。

傘が役にたたないほどの大雨に、
いらつきを通り越して諦めたわたしは
傘を閉じ、雨に打たれながらのんびりと歩いていた。

いつも通る公園の出口。
しゃがみこんで見なければわからないくらい、
深い木の影に、あの子はひとりぽっちで震えていた。
泣いてたわけじゃない。
なぜそんな所をのぞいてみたのかもわからない。
でも確かにあの子はわたしを選び、呼んだのだ。
わたしと一緒に生きていきたかったんだ。

それなのにわたしはあの子を裏切ったんだ。




どうして気づかなかったんだろう。
あの子はずっと、わたしに伝えていたのに。

毎週決まった曜日・決まった時間になると
決まってわたしを困らせるんだ。

自分よりも「あの人」を選ぶんじゃないか、
自分が「あの人」によって滅ぼされるんじゃないかって。
あの子はずっと不安で、
だからこそいつもいい子にしてたあの子は、
「あの人」が家族の為じゃなく、わたしのためにつくってくれる、
二人だけの時間が近づくと、
狂ったように悪い子になって、
わたしにうったえかけていたんじゃないのか。

あの子のことばかり話すわたしに腹を立て、
あの子をこの世から連れ去った、動物嫌いの「あの人」。
あの子は本能で気づいていたのかもしれない。

気づかなかったのは、「あの人」との時間に夢中だった
愚かなわたし。
口先ばかりであの子のことを本当に考えられなかった、
浅はかなわたし。
自分だけの幸せを追いかけて、あの子を幸せにしてあげられなかった、
馬鹿なわたし。
恋してたわけじゃない。
でも今思えば、確実に「あの人」よりあの子を
愛してたわたし。
『愛してるつもり』だった「あの人」に、
『本当は愛してた』あの子を奪われたわたし。



ねぇ、神様。
この降り続く雨は
何を洗い流そうとしてくれているの?

あの子がこの世からいなくなったこと?
「あの人」があの子を殺してしまったこと?
「あの人」がこの世からいなくなったこと?

それとも
わたしが「あの人」をあの子と同じ世界に連れていったこと?


わたしの罪を神様は許してくれますか?
あの子は私の罪を許してくれるよね?



血だらけの自分の体と
もう動かないあの子を
抱き締めながら
わたしは今日も眠りにつく。


雨はいつまで降り続くんだろう。
2005-08-07 19:31:48公開 / 作者:翠にゃん
■この作品の著作権は翠にゃんさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
相方とお題を出し合い、そのお題に沿って小説を書く というバトル?をやっています。
自分のHPには知り合いしか来ないので、率直な意見がまったく聞けません。

ここで厳しかったり優しかったりする意見がいただければ、今後小説を書いていく糧になると思うので、どうかよろしくお願いいたします。
この作品に対する感想 - 昇順
初めまして、京雅と申します。拝読しました。この書き物は未だ書き手であるあなたの心から読者側へ解き放たれていないと思うのですね。頭の中で描いた物語がそのままあなたの内側に籠ったままになっておられる。今ここに書いてある内容を、人物の行動や心情・背景を組み合わせてつくった場面として送り出してくれたなら、きっと感じ入る事の出来得るものになったのではないかなぁ。ストーリーを生み出す力があるのですから、それを私達に伝えてください。そうしないと、あなたのもつ想像力が勿体ないですよ。失礼な事を語りました、申し訳御座いません。次回作御待ちしております。
2005-08-07 21:09:24【☆☆☆☆☆】京雅
初めまして、菖蒲と申します。
まず印象としては、失礼ながらも小説というより詩的文面であると感じました。京雅さんも書かれているのですが、翠にゃんさんがご自分の頭の中で想像している世界観や物語の、ほんの断片部分しかここに表れて(現れて)いないのですね。ですから、正直なところ読み手としましては、一体どんなことがどんな人にあったのか、事柄の内容をつかめないのです。せっかく組み立てたストーリーをきちんとした物語として語られたいのであれば、あなた様の心をこちらにもっと開いてくださると良いでしょう。描写にも様々な種類が御座いますが、おおまかに場面展開を済ませてしまうのではなくて、背景や雰囲気にももっと観点を置かれれば足りないものは少しずつではありますが補われていくと思うのです。あの人やあの子という呼称は、どうして生まれたのか。そういった核心めいたこともお忘れずに。長々ととんでもなく偉そうなことを申しましてすみませんでした。次回作もがんばって下さい。
2005-08-07 22:16:40【☆☆☆☆☆】菖蒲
 初めまして、座席です。
 小説の全体としては主人公の独白のような内容なのですが、逆にいえば全てが独白のため、状況が掴めずに、読者としては遠巻きから歌を聞いた感じかな、と。
 文字の一つ一つに力はありましたし、ここに主人公の描写が入り込めば、もっと良い作品になるような気がします。
それだけに、独白だけだったのが少し残念でした。 きっとこの描写がそういった文中で次々と出てきたら出たらぐっとくると思います。私にゃこういうの書けません(苦笑)
 次回の投稿をお待ちしております。
2005-08-08 06:59:36【☆☆☆☆☆】座席
感想ありがとうございました。
初めて書いたといっても過言ではない文章なのですが、こんな風に感想がいただけると非常に嬉しいです。
今後とも精進していきたいと、本気で思いました。


京雅さま:
初めまして。感想ありがとうございました。
頭の中で描いた物語がそのまま私の内側に籠ったままになっている…つまり、伝わっていないのでしょうね。
というか、3人の方全員が言ってますけど(笑)
心情や背景と組み合わせて送りだす…それが小説なのですよね。
その力がまだ足りていないということなんですね…精進いたします。
次回はその辺りに気をつけて書いてみます。
失礼な事なんて、全くないです!むしろ、あまあまな意見しか頂けないので、とても刺激になります。
どうもありがとうございました。

菖蒲さま:
初めまして。感想ありがとうございました。
自分では詩というイメージではなかったのですが…見る方によってはそうもとれるのですね。
確かに断片的というか、一部分だけの描写を切り取った感じなのかもしれません。
心を開く…もう少しその辺に気をつけて頑張ってみたいと思います。
是非次回も感想を頂けたら嬉しいです。
ありがとうございました。

座席さま:
はじめまして、感想ありがとうございました。
やはり歌とか詩のような感じなのでしょうか?
独白ではなく文章中にこのような描写を入れる…なかなか難しそうです。
でも精進して、いつか「ぐっとくる小説」が書けるように頑張っていきたいと思います。
感想ありがとうございました。


相方との小説バトル、次回の締め切りは8月17日なのですが、
それも書け次第こちらに投稿させて頂きたいと思っています。
その前に書いたのもあるのですが…
自分的にあまり納得できていないのでちょっと恥ずかしいかも…。
でも多分載せてしまう(笑)

よんでくださったみなさま、ありがとうございました。
そして今後ともよろしくお願いいたします。
2005-08-08 11:15:09【☆☆☆☆☆】翠にゃん
初めまして甘木と申します。作品読ませていただきました。物語として物語の背景や世界が見えてこないのが残念です。感性というのか、感情というのか、作者の思念のようなものは仄かに伝わってくるのですが、読み手としては作者からの情報提供が少ないと作者の思いをすべて読みとることはできません。頭の中で作品が完成してしまい、描写を省略しすぎている感じがしますねぇ。ただ、一文一文には心惹かれるものがあるので、描写を丁寧に書かれるともっと素晴らしい作品になったと思います。では、次回作品を期待しています。
2005-08-09 22:16:32【☆☆☆☆☆】甘木
今晩は。ミノタウロスと申します。先ず初めに、皆様の感想にもあるように、状況とか背景描写とか、もっと加えるべきと思います。が、全体を流れる雰囲気や文章が訴えかける哀しみがダイレクトに伝わってきたのでとてもいい文章力を持っていると感じたので、惜しいなと思いました。ただ、【あの子】が動物だったのにはちょっとガクっとしてしまいました。私の勝手な感覚かもしれませんが、あれは人間の誰かだった方が此方の感情の昂ぶりを増してくれたように思います。決して動物に深い愛情を持つのがおかしいと言う訳ではなく、中盤まで動物だと分からせないような書き方を故意にされているので、この内容は人間の方がよりリアルに伝わると思いましたので。
今後も新たなお話を此方で発表されるのでしょうか? そうであるなら、期待していますのでお待ちしております。では!
2005-08-10 20:13:41【☆☆☆☆☆】ミノタウロス
皆様が意見を書いてくださるのが、次の小説を書く糧になる…ということに、
改めて気づかされます。
感想をもらえるのって、嬉しいですね。
私もなるべく時間を作って、皆様の小説を拝読したいと思います。

甘木さま
初めまして。感想ありがとうございます。
読み返してみても、やはり情景描写が足りないですよね。
自分の中で情景があっても他の人には伝わらないのは当り前の話です。
精進致します。
次回も頑張りますので、是非よろしくお願いいたします。

ミノタウロスさま
初めまして。感想ありがとうございました。
5人もの方に同じ指摘をされてる翠にゃんです(笑)

例えば「あの子」が自分の子供(人間)だったら…と考えてみたのですが
私にはまだそこまでの話を書ける技量がなさそうです…。

というか、ミノタウロスさまのご意見を良く読んで
今気づいたのですが…私、この話のどこにも「猫」って書いてない………(激汗

わゎゎゎゎゎゎゎ………

次回頑張ろうと思いますので、よろしくお願いいたします。
2005-08-11 13:43:15【☆☆☆☆☆】翠にゃん
計:0点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。