『赤いネイルをいますぐはがせ』作者:るり / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約3.3枚
赤いネイルをいますぐはがせよ
おまえの、その手の先にある目に悪い赤いネイルをいますぐはがせよ。

あなたの、その目の先にいる知らない女をいますぐ見えなくしてちょうだい。




          赤 い ネ イ ル を い ま す ぐ は が せ
                   はやくしろ 空が燃え尽きる前に、だ







空 は 二 酸 化 炭 素 で   ど す 黒 く 燃 え る。

知っているか。その燃えた煙が立ち昇って空の青をつくるということを?



だから今日も空はどす黒く燃えるあなたと車が出す二酸化炭素でそして青を作るの空の青を。




「この次、アヤになんかしたら おれ、おまえを許さないから」

 アヤに当たるんだったらおれに当たれよ。 とか言い出すものだから
ああ わたしは、

そこまでその後ろにいる女をかばうあなたを見たくなくて。 


あなたの細い指がわたしの首に回ってあなたはすこしだけ力を入れた。
息が苦しい、 これはきっと彼がわたしの首を絞めてるだけが理由じゃないはずだ。


だから思わず目を閉じた。 どす黒く燃える空が風をわたしに吹き込む。
ぬるりとした生暖かい風と風と風と風と風と風と風と風と、

ああ 気持ち悪くて 吐きそう。


「わたしも、」


わたしはよろよろする脳をふりしぼってあなたを見る。

そしてあなたは後ろにいる女を心配そうに見ながらもわたしの言葉に耳を貸す。



「わたしも、あなたを許さないよ」



体は心よりも正直で、
わたしの指は彼の首を絞めていた。


至 近 距 離 。 ほら あなたの息がかかるぐらい。
あなたの赤いネクタイが見える。白い制服も見える。
ネクタイに示唆してわたしのネイルも見えた。



赤いネイルはまるで血かと思うほどの色合いで、


彼の首から血が出たんじゃないかとわたしは本気で心配した。




「わたしは、あなたがわたしを好きだと思ってたよ」
彼は今日初めてわたしの目を見る。彼の黒い目が、そう、カラスのように黒い目が。


「いまはおまえを好きじゃない 」


あなたの率直な言葉にわたしは戸惑って心臓が跳ね上がった。

好き、だの、嫌い、だの、嫉妬、だの、元カノ、だの、思春期だよね、ホント、定番って感じ、とわたしの耳の横で心のわたしがささやいた。



それでもあなたの黒い目はかわらずわたしを見ていて、
そしてあなたごしに見えるあなたの現在の彼女は心配そうにあなたを見ているよ。



悲しくてどうしようかと思った。目からしょっぱい水が出そうになった。

目の奥が熱くてどうしようもなくて、
あなたの目はどうしようもなく真っ黒だし、
後ろにいる彼女はどうしようもなく美人だったし、
あなたの首を絞めてるわたしはどうしようもなく



穢 れ て る   まるで空を燃やす 二 酸 化 炭 素 みたいに
2005-08-07 13:59:24公開 / 作者:るり
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■作者からのメッセージ
赤いネイルはうそつきの象徴だそうですね。
つられて書いてしまいました。

文のスジがなんとなく曖昧なので、ご指摘ありましたらお願いします。
この作品に対する感想 - 昇順
拝読しました。文章は次から次へと視覚領域から頭へ入り込んでくるテンポのよさをもっておりますね。しかしそのせいか場面を魅せるには曖昧模糊とし、小説と言うよりは歌詞の如きかたちとなっております。詩的な表現は巧くつかえば効果的に抒情を伝えると思いますから、それだけにならないよう書き物に於る舞台を描写という力をつかって読者側へ提示してみてください。このままだと物語性(起承転結)に欠けるのではないかなぁ。軽く読む分にはよかったです。偉そうに語って申し訳御座いません、次回作御待ちしております。
2005-08-07 20:51:20【☆☆☆☆☆】京雅
赤いネイルを今すぐはがせ。
はやくしろ、空が燃え尽きる前に

この言語センスはバツグンだと思うのですね。いや、7・7・5・3・5・3のリズムといい、ちっとプロのキャッチコピーっぽい。だけれどもむしろこのことばが支配的でありすぎて、小説というフォーマットとしてのイマジネーションが芳醇ではなく、むしろ足かせ受けているように思えるのですよ。
コレは個人的な思いなのですが、何ら確信的でない曖昧模糊とした何かをそのままに建造していって、その中にあるただ一つの確信的なこたえを見出すというのが、どうも小説じゃないのかと思うのです。そこからするとこの作品は全く逆だと思うのですよ。確信的なことばがあって、それにストーリーが付随されている。確信的なことばから全てのイマジネーションが発し、それも、申し訳ないけれど、ことばに比して必ずしも斬新であるとはいえない。それで小説というより詩に見えてしまうんですね。ただ詩と小説の境界線というのは、明確なようで、そうでもないようで、これが詩であるか小説であるかという議論は不毛になりそうなので出来れば回避したいのですが(汗) しかしアレですね、アタシも何ら明確な回答は出ませんが、小説を書く場合に立つ位相というのは、詩的なそれとは違う場所に立つべきなのでしょうかねえ。いや難しいことです。
2005-08-08 21:23:12【☆☆☆☆☆】タカハシジュン
作品読ませていただきました。詩のようでもあり、ちょっとギクシャクとしたテンポと共に印象的な言葉が綴られていく。興味深いと同時に頭の中に映像を浮かばせることができないですねぇ。言葉だけ(単語だけ)が妙に脳裏に残るような不思議な味がありました。ただ、映像が浮かばないからストーリーとなるとちょっとわかりづらいものがありました。物語として作品を成立させるには何かひとつ足りない感じですねぇ……ま、読解力のない人間の戯れ言ですから聞き流して下さい。では、次回作品を期待しています。
2005-08-09 21:43:26【☆☆☆☆☆】甘木
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