『奥地にて』作者:おんもうじ / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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 えらい所に来てしまったもんだ。どうしてこうなったかなんていちいち覚えてない。事の発端は……何だっけ?てか何しにきたんだったか???もうそれさえ虚ろだ。とにかく今はこのうっそうと茂るジャングルを抜け出したくてたまらん。俺の今持つ全ての欲求はそれに向かってる気がする。これが生への執着心、本能ってやつか?もうこの世に何の未練もなかったはずなのに……ああ、そうそう。そうだよ。何の未練もないからここへ来たんだ。死ぬために来たんだった。当初の目的忘れちゃいけないよな。って、何で俺ってば助かりたいとか思ってんの??
 まだやり残したことあったっけか???と、本気で考える。
 つい一ヶ月ほど前、仕事はくびになったし、妻には逃げられた。その際なんか難しくて良く分からなかったが、賠償金とかいうやつまではらわされて俺のなけなしの財産も底を着いちまった。おまけに子供もあいつが育てるって……、親だってとっくにこの世を去ってるってのに……。これから先一人で生きてく気がうせたからいちいちこんなところまできたっていうのに、こんな俺にまだなんか残っているんかね?ええ?俺の大脳さんよ。教えてくれよ。

 周りには、ただ緑が広がる。薄暗く、不気味なこの場所をただただ延々とさ迷いつづける俺に、何だかよくわからん正体不明の動物の鳴き声が届いて、それが更に俺に不安をつきつける。
っていうか、何で俺はこんな回りくどい死に方を選んだんだ?こんなジャングルの奥地でひっそりと死ぬなんて……まあ、誰にも干渉されなくて良いってことは良いけどよぉ……。はあ……腹減ったなあ。もっと楽に死ぬ方法もあったんじゃねえのか?と今更ながら後悔したりする。なんかこんな回りくどい死にかた選んだせいで、また生きたいな、とか想いはじめちゃったんじゃねぇのか?ああ、あいつ、元気してるかな――??

 おっと、想い出は、しまっといたはずなのにな。

 それにしても段段暗くなってきたな。時間の感覚がもうねえ。昼も夜もあまり暗さが変わらないとは不思議なものだな。そうとう奥に入り込んでるようだ。ぐぅっと俺の腹がなった。
 はあ、腹減った……あ、歩きつづけてるからいけないのか……だから辛いんだな。よし、止まろう。ここで死のう。そうだよ、意味もなくこんなに歩いてるから辛いんだ。おいしょっと。
 だが、予想だにしないことが起きた。俺が座った気でいてるのに、俺の足のやつ動くのをやめないんだ。
 ん?あれ?何で止まらねぇ?俺の足。もう疲れたっていってるだろ!どこいくんだよ!!
 何で俺の意思と俺の体が背反してる訳???何?これも本能ってやつか??俺ってそんな生きたいとか思ってるのか?
 俺は必死に自分の足をたたく。しかし止まらない。
――なんだよ!! ちくしょう。疲れたよぉ。なんで歩く? 疲れるだけだろぉ!
 
 その時、俺の脳裏に、数々の映像がよぎった。

 それは、他愛のないものではあるが、幸せと呼ぶには充分すぎる代物であった。
 妻と出会った夏、最初はあいつ俺のこと正直好きじゃなかったんだっけなあ。ていうか、俺も好きじゃありませんでしたから!!!
 付き合ったのは冬、何でかな???話してるうちに、楽しくなってきやがったんだ。こう、俺となんでこうも性格あわないかな?って思うんだけどさ、でもなんだか、話しやすくて、悪口言い合ってるのに楽しくって。俺、いつのまにあいつのこと好きになってたみたいで……想い打ち明けてしまったんだ。
 結婚も早かったなあ……あれからすぐに――子供も……――遊園――どうぶ――


「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」


 俺は無意識のうちに叫んでいた。誰にともなく。死を垣間見たとき、想いでが走馬灯のように振り返ってくるというのはこれのことか。今になって、あの頃の幸せを実感する。もう想いでは閉じ込めたはずなのに、行き場を失った想い出が俺の頭からどんどん溢れてくる。
 足だって止まらない。そうか、本能(おまえ)は、まだ、死にたくないんだな。だから歩くのか、でももう遅いよ。もうずいぶん深くまできちまった。もう、戻れないんだ。もうあの頃は帰ってこない。もう俺に、今はない。もう、オレハドコニモイナイ――
 気づかないうちに俺は、泣いていた。
 どれくらいぶりだろうか、涙を流すのは、どれくらいぶりだろうか……




 ――人は多分、日常のどこかに必ず幸せを携えているもんなんかな


   
      はあ――生きたいな。




Fin




2005-07-26 14:19:23公開 / 作者:おんもうじ
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■作者からのメッセージ
こんにちは。SSが書きたくなって、30分くらいで書こうと思ったら暴走してしまいました。何だこの突拍子な終わり方は。
 はあ。
  まあ、許していただけますでしょうか???(;_;)
自分の文章力のなさに今ごろになって落ち込むおんもうじでした。小説難しい!語彙がないのは痛いなあ。でもせっかく書いたからのせちゃうふがいないおんもうじなのです^_^;
この作品に対する感想 - 昇順
はじめまして。時貞と申します。よろしくお願い致します。拝読させていただきました。こういったタイプのSS、好きです。淡々としてある種超然とした主人公の語り口が前半では可笑しく、後半ではそこはかとない憐れを誘うような。すらすらと読み進んでしまいましたが、けっこう奥深いものが御座いますね。最後の一行は、個人的にはとても好きな終わり方でした。勉強させていただきました。
2005-07-26 14:53:34【★★★★☆】時貞
はじめまして。読みました。自分はこういった作品に感想をつけるのは苦手であります。なので、ろくな物には(どの作品につけてもそうかもしれませんが)ならないと思われます。まず、読み始めてすぐに主人公の語り口調に慣れていけました。それゆえ、読み進めるペースも滑らかになり、情景を想像させる情報が安易に読み取れました。しかしながら、話自体には余り感じる物が無かったと思われます。こういった、無駄を省いて一番濃い部分だけで構成される話は好きですが、どこか未完成な感じがしました。話の中核である本能の強さが、主人公の叫びと歩く足を止めない事と、制御できない記憶の独り走りで高められていますが、もう一押し足りない気がします。失礼なことを書きました。申し訳ありません。では、次回作品を楽しみにしております。
2005-07-26 17:29:01【☆☆☆☆☆】戮煦
♪時貞様:はじめましてえぇ。こういうSSが好きなんていってもらえて至福でございます。
最後の一行あまりにもてきとう、っていうか作品じたいかなり適当だったんでお気に召していただいたならとても嬉しいです。ありがとうございますー
♪戮煦様:始めまして。ご感想ありがとうございますー。参考になります。
おお、やはり一押しですかあ。ありがとうございます。自分も何がかきたかったのか良くわからなかったんで^^;実際何が何だか書きたいことまとめられなかったです(;_;)そうかあ、この本能の強さをもう少し強くえがけばいいのかあ。もう一押しといいますと、どういうことを描けばいいでしょうか?難しいです!
でもそういうのも上手く描けるようにがんばります!
2005-07-26 19:20:41【☆☆☆☆☆】おんもうじ
後半は主人公が最高に哀れで僕の作品も主人公の不幸さをだすという似たような作風なんでかなり共感しました。かなりよかったっす
2005-07-26 23:42:58【☆☆☆☆☆】buchiM
拝読しました。最後の二行は余韻も含めてよいですね。しかしメッセージ性が高いのか物語性に欠けている感が最後まで拭えませんでした。唐突に物語が始まるのはよいのですが、流れに沿ってあとづけしていった様な説明に些か感情移入を削がれていますね。何故そんな印象を受けたかと言うと、例えば想い出を引っ張ってくる場面は簡素に書かれ過ぎています。すぐ傍にあった幸せをここで実感するには速過ぎるのですよ。前設定、この場面に至る遣り取りを中間にもってきていればまた違ったのでしょうが。偉そうに書き込んで申し訳御座いません。次回作と連載の続き期待しております。
2005-07-27 08:43:31【☆☆☆☆☆】京雅
♪buchiM様:共感していただけたなら幸いでございます!
かなりよいなんて言ってもらえるとは思ってなかったです(@_@)ああ、めまいが……(死 ありがとうございました!!!
♪京雅様:為になる感想ありがとうございます!そうですかあー、確かに、全て跡付けしてしまったからなあ、申し訳ないです!(>_<)そうですかあ、やっぱり回想の部分は少なすぎましたか、なんせ書いてる途中でもうなんじゃこりゃいみわから……ボッギャッ(壊)みたいになってしまってましたから苦笑 そうかあ、この場面に至るやりとりがないと、幸せが抽象的過ぎてあまり伝わらないということですね!?分かれる場面などを描けば感情移入もしやすくなるということかーふーむなるほど!これからそういう技法も使わせていただきます!ありがとうございますー
いつか京雅様のような人にも認めていただけるような小説を書けるようにがんばります!
2005-07-27 15:17:57【☆☆☆☆☆】おんもうじ
作品読ませていただきました。読後の感想は「勿体ない!」でした。物語は流れも題材もいいのに、回想シーンを簡素に書きすぎていて、せっかくのラストが弱くなってしまっていた感じです。私としては回想シーンは、生の執着に繋がるべき重要なシーンだと思うのです。主人公の思い出をもう少し書き込んで欲しかったです。主人公の足が意志に反して動き続けると言う描写は凄く良いです。それを生かし切れていなかったのはやはり残念でした。長々と戯れ言を書いてすみませんでした。では、次回作品を期待しています。
2005-07-27 23:51:05【☆☆☆☆☆】甘木
♪甘木様:おお、ありがとうございます!勿体ない!なんてモッタイナイ!お言葉でございます(;_;)(なんでそこで満足してんねん笑)いやいや、設定を誉めていただいただけでも嬉しくて(おいおい^^;)やはり回想部分は痛かったかぁ!!
回想部分はもう、書いてる途中で「何かいてるんだろう、オレ?」ってなってきて、もうこれギャグか?って感じで笑えてきて「まぁ良いやこれで終わらせちゃえ!(笑」←(死ね)っていう意味わからんテンションで書いてしまったのがまずかったか!(そりゃまずいだろ笑 まぁつまるところこの回想部分書く意味ない気がしてきて、途中で諦めてしまったという愚か者でした。そうかあ、ここを諦めないでちゃんと書いておけばよかったのですね。参考になりました!!!次回作の参考にいたします。ありがとうございました!
2005-07-28 00:03:42【☆☆☆☆☆】おんもうじ
このように気軽に読めるのが短篇小説の良さですよね♪そういった意味では充分に楽しめましたし、おんもうじさんが伝えたいことがストレートにこちらにも伝わってきました。ただみなさんの仰っているとおり、物語をもっと深くすることも可能だったと思います。そこらへんを次回のおんもうじさんに期待しつつ、このへんで失礼させていただきます^^
2005-07-29 01:00:50【☆☆☆☆☆】律
♪律様:感想ありがとうございます!そうですね、、、物語があさすぎて説得力たりないですね!きをつけて、もっとたのしめるようにしたいとおもいます!
2005-08-03 19:03:35【☆☆☆☆☆】おんもうじ
計:4点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。