『死神の嘔』作者:瑠華 / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約3.03枚

―誰かが謳っている?―

―それは誰の嘔?―

―何を謳ったモノ?―



『ばっかだなぁ、本当バカだよ人間って』
「バカって何よ!」
とっさのことについ反応してしまった。
でも誰だって自分の悪口を言われれば文句の一つは言いたくなるだろう。
それに本当にバカにしたような声だったから。
「てかあなた誰!ここどこ!」
私はついさっきまでマンションの屋上にいたのだ。
それなのに私は真っ白な場所に立っている。

そして私の前に立つのはこの空間に不釣合いな少年。

少年の印象は真っ黒。
纏っているローブがそうさせた。
でも髪は綺麗な銀だし肌は真っ白。
羨ましいとも思う。
何しろ私は普通の日本人の黒だったから。
でもやっぱりおぞましかった。

血の色に似た赤い眼が。

「本当にここどこよ?あぁ!もしかして天国!?」
『ふざけんな、ボケ』
「だぁぁぁ!ボケもダメでしょ!」
……いつからツッコミになったのだろう、私は。
『お前さぁ、自殺って痛くない?』

自殺。

そうだ、私は死んだハズだ。

マンションの屋上から飛び降りて。

「……やっぱり天国の入り口じゃん」
『救いようのないヤツだ』
少年はやれやれと大げさにため息をつく。
『自殺しても、天国行けるって思ってた?』
「当たり前でしょ!死んだってことには変わりないし!」
今思うとやっぱり死んだ方が楽だった・・・と思う。

あいつらの顔を見るくらいなら、死んだ方がましだ。

『可愛そうなヤツ、いじめくらいでさぁ……』
「いじめくらいって何よ!……あれ?」
なんでこの少年は私の自殺した理由をしっているの?
「それより君、誰?」
『死神』

……はぁ?……

「私悪いことしてないわよ!なんで天使じゃなくて死神なの!?」
『お前、お前の魂殺したろ?』
「え……」
『その時点で地獄行き決定ってワケ』
地獄って……鬼とかがたくさんいる……地獄!?
「嫌よ!私なんかよりあいつらの方が地獄行きなんだから!」
『いじめなんてどこでもあるだろ』
「私の前で陰口ばっかり!笑って……笑って!」

―あんたって本当にトロイし、キモいよ―

ぺたり。
立ちたくない、吐き気がする。
悲しい、悲しい。

『でもさぁ、あんたのことを信用してくれてたヤツもいるだろ?』
親友。部活の友達。幼馴染。
『そいつらを、悲しませていいってのか?違うだろ』
手が伸びてきて私の頬を撫ぜる。
とても冷たかった。


でも温かかった。


『でも、終わり。さようならってヤツ』
「……謳ってよ」
『は?』
「謳って」
『……聞こえてたのかよ』


真っ白な空間には。
真っ黒な少年が。
嘔を謳っていた。



2005-07-10 02:20:48公開 / 作者:瑠華
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■作者からのメッセージ
やっぱり自殺した人って地獄行きなんですかね?
でも天国とか地獄がある時点で私は幸せだと思います。
死んだらどうなるか。
そのまま何も考えられなくなって消えてしまうのか。
そのまま天国が地獄へ行くのか。
行けるならまだ幸せですよね。
この作品に対する感想 - 昇順
初めまして、菖蒲と申します。
優しくて素敵なお話ですね。物語として長く読むには描写が少ないのですが、SSとして簡潔に上手くまとめられているので、読んでいて心地が良かったです。そうですね…天国か地獄があるのなら、私はそのどちらかにでもたどり着けることが幸せだと思います。作中での、二人の会話がやはり好きでした。では、次回の作品にも期待を寄せております。
2005-07-10 08:20:56【★★★★☆】菖蒲
初めまして、雨津といいます。
この話に少し衝撃を受けました。
自殺、私もこの事について、考えましたが
こんな風には考えませんでしたので、続きが楽しみです。
私としてはとても読みやすく、表現も綺麗だなと思いました。
次の作品をお待ちしております。
2005-07-10 11:19:16【★★★★☆】雨津
拝読しました。人は死んだらどうなるのだろう、人の生み出した概念地獄やら天国は在るのだろうか。京雅としましては在ると思います。最早人という種が創り出してしまったと。戯言は置いておきましょう。全体に渡ってテンポがよく読み易かったです。死神と少女(予測)の掛け合いも何だかズレていて楽しめまして。「お前、お前の魂殺したろ?」なんて科白はいいなぁと思いました。しかし読み易かった理由の一つに描写欠如があります。余計な文章を極端なまでに削ってしまったがゆえに、読み易さと共に物語の不明瞭さもつくっているんじゃないのかと。頭の硬い私にとっては想像する糧をもう一寸だけ書き込んでほしかったですね。それと話の根底にある嘔で御座います。これが一体何なのだろうと。何やら前設定というか裏設定的なものがあるように感じました。読みきりならばそれも解消してほしかったです。長長と失礼な事を綴って申し訳御座いません。次回作期待しております。
2005-07-10 17:41:18【☆☆☆☆☆】京雅
題名に弾かれてやってきました、上下です。近頃死神という名前に敏感になってしまっていて(うるさい!)たまに思うんですよね。自殺をした人はどうして地獄行きになってしまうのでしょうかね。確かに自分で自分の命を奪うことはいけませんが、それは本人の意思。なんて、自分の意味のわからない考えをいってしまって、すみません。それでは、次回作も楽しみにしています
2005-07-10 21:35:44【☆☆☆☆☆】上下 左右
羽堕です(o*。_。)o読ませて頂きました♪死神と少女の会話などをしっくりと言った感じで書かれており、内容もしんみりと読めました(〃⌒∇⌒)ゞ自殺した場合かぁ〜、悩むけど、私は理由次第かなと思ったりもします(^-^;自殺は良くないと思いますが、そうしようとした人に正面きって言えるかって問われると正直悩むと思うので(ーー;)では次回作、楽しみしています(。・_・。)ノ
2005-07-10 22:34:24【☆☆☆☆☆】羽堕
作品読ませていただきました。人間は寿命を全うする義務がある。と、甘木は思っています。でも、自殺しようが寿命を迎えようが行き着く先は同じ、Fe56(鉄の同位体56)になるだけでしょう。みんな鉄に変化するだけ、だからこそ炭素で構成されている今を精いっぱい使った方がいい。ワケの分からない戯れ言はおいて、作品は簡潔にしすぎたためちょっと感情面が弱く、女の子に感情移入がしづらいです。でも、このあたりは後々書かれるのかな? 今後の展開に期待しています。
2005-07-10 23:55:21【☆☆☆☆☆】甘木
人が死ぬと、私的にそれぞれの思う天国に行くのではないでしょうか?それぞれ個が思う神がいて、と変なことはココまでにして、読ませていただきました。初めまして〜。ここですここ!シャーペンの中です!とチェリー登場です(何 最後部分のとても冷たかった。  でも温かかった。という文がとても印象的に心に残りました。内容もよかったです〜♪死神、最近死神をテーマとした処す悦が多いですが、これは一風変わった(いい意味で 小説でよかったですね♪とりあえず力不足の私には指摘はできないので、すみません。ではでは、次回期待しています〜♪
2005-07-11 11:18:30【★★★★☆】チェリー
計:12点
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