『soldier of kingroad』作者:蒼眼 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約10.14枚
 Prologue

 
 此処は誰でも普通に魔法が使える世界。
 誰もが学校で魔法を学び、誰もが普通に日常生活に利用している。
 町の施設などにも、魔力が使われているぐらいだ。
 そんな平和な世界、「ヴォルファム」のお話。

 彗星暦 25xx年。

 誰も知らぬような、とある森。
 緑褐色の輝く木々。
 まるでエメラルドやメノウとかいう宝石のような材質。
 その森の奥の奥、1番奥に浮かぶ不思議な物体。
 
 『ソレ』を求めてやまない1人の男がいた。

 闇よりも黒いマントとフードで体を覆い隠し、ひたすら走り続ける。
 彼は、闇の帝王。
 『ソレ』を求める理由は何か?
 答は簡単、野望を達成するため。
 野望とは、『世界征服』。
 言い方は古いが、ソレを我が物にしてしまえば簡単なのだ。
 
 そして今まさに、ソレがある場所に辿り着く。
 ここまで来るのに3日も走り続け、伝説と謳われる2匹の聖獣とも、魔力を駆使して戦い、ようやくココまで辿り着いたのだ。
 自身の体には相当な疲れが溜まっている筈であったが、彼の心は完全に『ソレ』に向けられていて、疲れなど、微塵も感じていなかった。

 目の前までソレに近づいた彼は微笑した。
 カツ、カツ、と小さな足音をたて、ソレに歩み寄る。
 
 ソレ、とは。
 宙に浮いている、六角形の水晶。
 殆ど透明で、ほぼ空気と同化して見えるだろう。
 中から放たれる、淡い輝きがなければ。

 彼はソレに両手でそっと触れ、少しずつ、自分の闇と化した魔力を注ぎ込み始めた。
 人間の2倍以上の大きさはあろうかと思われる水晶は、彼の手の部分から、暗黒の紫色に染まっていく。
 これを全て闇に染めれば、野望は叶う。――手に力が入る。
 光以外、空気と同化していたはずのソレは、1番上の僅かな部分を残して、闇と化していた。
 彼はその最後の部分を染めるため、より一層強く、魔力を注ごうとした。
 
 しようとした、だけだ。

 彼がそうしようと思った瞬間、その僅かな、5cm角ぐらいの部分が割りとられ、落ちた。
 そしてそれは光となり、天へと昇り・・・・・・消えた。
 彼はその瞬間を呆然として見つめた。
 ――アレは1mmの欠片でも失えば、全く効力を無くす――
 かつて自身を創り、今や完全に相対する者が過去に口にした言葉が彼の頭をよぎる。
 その場には、彼と、残りの闇の色に染まったソレが残る。
 彼の膝がガクン、と落ちた。
 無理もない。元々疲れている筈の彼を支えていた『野望達成』が、目前にして打ち砕かれたのだから。
 
 彼は。
 声に為らない絶叫を上げるしかなかった。

 その時。
 ある場所で、1人の少女が目覚めた。



 
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1 quest


 変な夢。
 少女の体は汗だくだったが、見た夢の記憶は曖昧であまり思い出せない。
 男の人、水晶、森。
 内容までは・・・・・・全く思い出せない。
 考えていてもしょうがない、と少女は寝室がある2階から1階へおりた。

 少女――スイ=ルーシェアは15歳。深い海のような青色の髪に、右は水色、左は紫のオッドアイ。両親は居なく、気付いたら生きてました状態だ。
 1人で町を彷徨っていたころに拾われ、13歳まで育ててくれた人が2年前に他界してからアパートに1人暮らし。なんとか今日から高校に通えることになった。学校は全寮制なので、アパートの家賃はもう心配することはない。スイが通っていた中学は隣の町だったが、その町には高校もなく、生徒数も少ないため、卒業生はバラバラになって、色んな高校へ通う事になった。これから行く高校は、スイだけだが。

「あーあ、今日は入学式だっけ」
 スイは少しため息交じりで呟いた。冷蔵庫の中の菓子パンと牛乳を引っつかみ、適当に口に運ぶ。そしてチラと時計を見た。
「・・・・・・!」
 もう既に7時半を回っていた。学校からは8時までに登校しろといわれていた。
「やばっ!」
 急いで食べ終わらせ、洗顔を済ませ、鞄を背負い、家から飛び出した。さっさと大家さんに鍵を返すと、ダッシュで学校に向かった。全力疾走ならギリギリ間に合うか。

「間に合った・・・・・・」
 ハアハアあえいではいたが、なんとか校門まで辿り着いた。初日から遅刻ではかなりやばい状況となっていたが、ちょうど今は他の生徒も登校してくる時間帯のようで、校門は生徒でにぎわっていた。
「それにしてもでっかい学校だなー」
 建物の方もかなり大きいが、校庭の面積もかなり広い。でかい温室も2、3個あるらしい。
 スイが歩き出そうとすると、ポンと肩を叩かれた。振り向くとそこには男の子が1人、笑顔で立っている。
「君、見たこと無い子だね。新入生?」
「う、うん・・・・・・」
「そっか! 僕もなんだ。僕はルガ=サティーン。ヨロシク!」
「あ、わ、私はスイ=ルーシェア」
「スイって呼んでいい?」
「うん」
 ドンドンと話が進み、ルガは色んな事を教えてくれた。ここの高校に入学してくる生徒の殆どは、付属中学校からくる生徒で、スイのように他の中学からくる生徒はあまりいないらしい、ということ。ここの寮は、男女関係なく、3人ずつ1つの寮で暮らすこと。その他、色々。
 ちなみにスイは、ルガに自分の今までを簡潔に話した。すると、
「じゃあ君、教育費も殆どないのに、この名門校どころか、中学にもどうやって入ったの?」
「え・・・・・・!?」
 言えない。
(12歳の時たまたま山で拾ったピカピカしている石ころが、実は物凄く珍しい鉱物で、一生暮らしていけるだけに十分なお金が手に入った、なんて言えない!)
「まあ、人生色々ありまして・・・・・・」
「え〜! 教えてくれたってい〜じゃ〜ん」
「う、あああぁぁ、ダメ!」
 ルガがたくさん『知りたいオーラ』を出しながら迫って来たので、スイはのけぞりながら断った。
 そんなこんなで学校内に入った2人は、宙に浮く青いモニターの様な物を目の当たりにした。
「これは?ルガ」
「これは連絡掲示板らしいよ。付属校を卒業する前に、『ここの学校について』みたいなもんをやったから知ってるんだけど。1週間の予定とかが表示されるんだって。ちなみに今は、ホラ」
 掲示板にはたくさんの人の名前が表示されている。
「クラスわけ表示。僕は・・・・・・あ、あった!」
 ルガが指差す先には、『ルガ=サティーン』と表示されている。1年B組だ。
「ホラ、スイもあったよ。同じクラスだ」
「ホントだー・・・・・・」
 2人は一通り見た後、クラスへ向かった。廊下は清潔感が漂い、壁にはいろんな写真や絵が飾られている。(動いているような感じがしたのは気のせいか)
 クラスには30個ほど机が綺麗に並べ揃えてあった。スイは自分の名前があるところを探し、見つけるとそこの窓際の席に座った。
 生徒は既に10人ぐらい来ていて、それぞれ仲良しグループになって話をしている。
「ねぇ、スイ。戦士(ソルジャー)って知ってる?」
「え、ああ。魔物(オウグス)を退治したり、犯罪者を捕まえる、ってやつ? 詳しくは知らないけど」
「そう、そのソルジャーになる為の試験が、1ヵ月後にあるんだ」
「ふーん。・・・・・・って」

 ・・・・・・・・・・・・

「はあああぁぁぁ!? なんで入学1ヶ月早々!?」
「しかも1年生だけね。なんでこんな早いのかよくわからないけど。多分・・・・・・」
「何々? 何の話?」
 2人の話に割り込んできた男の子がいた。茶色味がかった色の髪に、黄色い眼。活発そうな顔立ちに、背は少し高め。
「ああ、ライ。今、他の中学から来たこの子に色々と教えてるんだ」
「へぇー。名前は?」
「スイ=ルーシェアです」
「敬語は使わなくったっていいよ。まあ、いつも敬語の奴もいるけどな。オレはライ=クウァトル。ヨロシク」
 にっ、と白い歯を見せてライは笑った。そこで「んで・・・・・・」とルガが話しを戻す。
「で、ソルジャー試験が早い理由なんだけど」
「皆は『素質ある者を、早いうちに見つけて、早いうちにソルジャー用の訓練、仕事を始めるから』と考えている奴が大多数だな」
 と、ライがルガの(多分)言おうとしてた事を先に言ってしまう。
「ああっ! ライ、おいしいとこどりしないでよっ!」
「お前は今までスイにたくさん教えたからいーじゃねーか」
「ソルジャーについてが1番よかったの!」
「ああー悪い悪い」
 スイはこんな2人のようすを笑顔で見つめていた。なんだかとても楽しそうで。
「ところでさー、合格する人は誰が決めるの? 先生?」
「ああー、違う違う、『ホウ=フェニック』って人。ソルジャーで1番偉い人なんだってよ」
「僕、あの人苦手だなぁ。なんかこう・・・・・・ゾクゾクしちゃって」
「そうか?」
 スイは、ホウという人の名前を聞いてから、2人の話を聞いていなかった。『ホウ=フェニック』。初めて知った筈なのに、何故か聞き覚えがある。
「あ、ライ。もう直ぐ先生来るよ。席に座ろう?」
「ん? ああ、そうだな。んじゃな、スイ」
「え! あ、うん」
 スイはライに呼びかけられ、フッ、と我に返った。同時に、学校に着いてから、結構時間の余裕があったんだな、とも思う。
「ホウ=フェニック、かあ・・・・・・」
 スイは窓の外を見つめながら、先生が来るのを待った。
2005-06-17 04:58:51公開 / 作者:蒼眼
■この作品の著作権は蒼眼さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
更新遅れてしまいました・・・・・・。すみません・・・・・・。
小説を書くのはとても難しい、ということを痛感しています。

まだまだ未熟なので、辛口アドバイス、お待ちしております。また、誤字脱字などもありましたら、ご報告お願い致します。

この作品に対する感想 - 昇順
読ませて頂きました。感想としてはキレイな文面で読みやすかったです。
まだプロローグなのでまだ世界観等は分かりませんが、これからの魔王の行動や少女との関係が楽しみです。
では次回作も頑張って下さい。
2005-06-11 16:15:00【☆☆☆☆☆】太田
拝読しました。プロローグという事で、これは先を読まなければ何とも言えませんけれど、情報の無い中読み進めるにはやたらと抽象的ではなかったかと(人の事は言えない私ですが)。それと冒頭の「そんな平和な世界」は違和感を覚えました。失礼をお許しください。次回更新をお待ちしております。
2005-06-11 17:00:11【☆☆☆☆☆】京雅
羽堕です(o*。_。)o読ませて頂きました♪ふむふむ、ラスボス?からのスタートかは解りませんが、『ソレ』の凄さは伝わってきました(*¨)(*・・)文書は重過ぎる事もなくて良かったです(≧∇≦)ノ今後、世界観などが解れば嬉しいなと思いますm(._.*)mでは続き頑張ってください(。・_・。)ノ
2005-06-11 20:32:19【☆☆☆☆☆】羽堕
羽堕ですm(._.*)m続き読ませて頂きました♪ちょっぴり世界観が掴めない感じでしたが楽し読めました(*゜ー゜)(*。_。)普通は、寮に入る場合、入学式の前だと思うんですが、それは、この世界では違うの!と言われたらそれまでですが(^^;;あとスイの容姿について特徴は描写されているのですが、綺麗なのか可愛いのか綺麗ならどう綺麗なのか等、ルガとライの反応からすると相当可愛いような気がします( ̄∇ ̄*)ゞあと、初めてあった人に自分の生い立ちとか、そんなに簡単に話すのかな?と思ってみたり(^^;)細かい所ですが「3人ずつ1つの寮」「寮」ではなく「部屋」じゃないかなと(・_・;世界観がまだこれから語られると思うので何ともいえないのですが、男女が一緒の部屋と言うのも何となく納得できないような感じでした(・・;)辛口でとの事だったので気になった所を書かせて頂きました。失礼をごめんなさい<(_ _)>では今後の展開が楽しみなので続き頑張ってください(。・_・。)ノ
2005-06-17 22:13:54【☆☆☆☆☆】羽堕
すいません。返事遅れました。
太田さん、京雅さん、羽堕さん、感想ありがとうございます。今後にできるだけ生かしていきたいと思います。世界観の書き方が私は苦手で・・・・・・。この小説をノートにも書いているのですが(メモ程度に)、世界観の書き方がよくわかりません。もっと学んでいこうと思います。
2005-06-18 04:53:07【☆☆☆☆☆】蒼眼
作品読ませていただきました。文章は読みやすいですね。スイが住むこの世界そのものがどのような世界か分からないのが少々不満ですが、すーっと最後まで読めました。感情描写が少ないですね。入学式に臨んでの期待と不安とか些細なことで構いません、もう少し描いた方が読者がスイに感情移入しやすくなると思います。感情面が弱いのでストーリーがやや唐突に感じてしまいました。なんだか辛口の感想になってしまいすみませんでした。では、次回更新を期待しています。
2005-06-18 08:10:53【☆☆☆☆☆】甘木
計:0点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。