『キミへのタップダンス【読みきり】』作者:チェリー / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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     【キミへのタップダンス】 


 今夜はタップダンスのコンサートが行われる。人数は約20人。昔はあまりはやっていなかったタップダンス。しかし現在は注目を浴びている。ふと、一人の新人タップダンサー明人は控え室でリーダーのテーブルにおいてあったチケットを見つけた。日付は今日だ。
「どうしたんですかこのチケット。もう始まってしまいますよ?」
 そう、あと40分もすればコンサートが始まる。すでに受付は行っており、控え室を出ることは無理なのでこれでは友人に渡すのもできない。リーダー由浦はあぁ、これかい?とチケットを手にもつ。時計に目をやり、リーダーは言う。
「30分もあれば話せるな。時間つぶしに聞いてくれるかい?」
 明人はうなずいた。そして由浦はしずかにこのチケットについて話し始めた。

 それは2年前までさかのぼる。プロのタップダンサーを目指す一人の青年だった由浦はある女性と付き合っていた。彼女はよく由浦のタップダンスを見てくれてプロを目指すのも応援してくれていた。
「俺、絶対プロのタップダンサーになるから!」
「えぇ、応援してるわ」
 体が弱く、病気により入退院を繰り返していた美しい女性瑞希。由浦は瑞希がとても好きだった。しかし、彼女は病気が悪化し、ベッドから起き上がるにも苦労するような状態になってしまった。
「瑞希、キレイな花を持ってきたよ」
 毎日病院へ行き、退屈しないようにと花を毎日いろんなのを持っていった。キレイな花とは裏腹に徐々に弱っていく瑞希。一時はプロのタップダンサーになる夢を瑞希の世話をするために断念しようと考えたこともあった。
 しかし、そのことを話すと瑞希は由浦のその言葉を否定した。
「そんなこと駄目!絶対あなたは絶対プロにならなきゃ駄目!」
 無理をして声を出す瑞希。あの時はとても心に響いた。思わず瑞希の腕を掴んで誓って見せた。
「俺、絶対にプロのタップダンサーになってみせるよ!お前に最高のダンスを絶対見せてやる!」
 瑞希も目に涙をためてうなずいた。それからしばしの時が過ぎ、約3ヵ月後。由浦はプロに実力を認められ、プロ直々の指導をうけてもらえることができるのが決定した。
 由浦は走った。――――どこへ?それは病院だ。瑞希がいる病室へ。看護婦の注意など耳に入らず、声を上げて由裏は瑞希のいる病室へ行った。
「だめだ!」
 ドアを開けると由浦の耳に飛び込んできたのは医者の大声。何だ?由裏はべッドのほうへめをやるとそこには苦しそうな瑞希がいた。汗をびっしょりと流し、苦痛に顔をゆがませる。
「瑞希!」
 由浦は瑞希のもとへ駆けていった。
「さがって!邪魔になる!」
 しかし医者が由浦を止めた。医者は数人の看護婦と共に忙しそうに手を動かす。よく見れば部屋の隅に瑞希の家族がいた。誰もが不安そうに瑞希を見ている。
「瑞希はどうしたんですか!?」
「わ、わからないの・・・・・・。瑞希が苦しいっていうから医者を呼んだら・・・・・・」
 
 懸命な処置が行われ、瑞希は何とか落ち着きを取り戻し、家族は医者に呼ばれた。由浦も家族と共に同行した。
「余命はおそらく1週間かと・・・・・・」
 前回の診断では確認できなかったその病気はとてもおもい物らしく、予想以上に瑞希の体を蝕んでいた。そして瑞希の強い要望から瑞希にも余命が宣告された・・・・・・。

 その夜、由浦は瑞希を車椅子に乗せて屋上へ向かった。
「・・・・・・はやく、見たいなぁ・・・・・・」
 瑞希はわずかに笑みを見せる。本当はもうベッドからは動かさないほうがいい。しかし瑞希は由浦に言ったのだ。

「由浦のタップダンス見たいなぁ」

 由浦はなにも考えず、車椅子へ瑞希を乗せて屋上に行った。屋上の中央に行き、由浦は板を置いた。タップダンスのタップを響かせるためだ。そして専用の靴に履き替え、瑞希に映画のような挨拶をして見せた。

 パチパチパチ

 瑞希はこの“開演”を祝福する。ライトは月光、そして客は瑞希ひとり。初のコンサートはこれで十分だ。そして由浦はタップダンスをする。

カカッカカッカカッタタ!
タタカッカカカカカッカ!

 まだタップダンスはプロのように踊れない。だが由浦は一生懸命やって見せた。

カカッカッカッタタタタッカ!

 そしてあれから1週間。瑞希は家族と由浦に見守られながら静かに息を引き取った。瑞希が最後に由浦に言った言葉。

「私の席のチケット取っておいてね」


 そう、このチケットは瑞希のために取ったものだ。あれから2年。由浦は日本のタップダンサーの五本指にはいるまでのプロに成長した。

「このチケットの指定席には瑞希のために取ってあるんだ」

 今宵もタップダンスのコンサートが始まる。多くの観客が席を埋める。およそ500人はいる。その中でひとつだけ開いた空席。由浦はコンサートを無事に終え、礼をする。正面へ、右側へ、左側へ、そして最後に空席へ。


 今日も最高のタップダンスだったろ・・・・・・瑞希



2005-05-15 02:01:52公開 / 作者:チェリー
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■作者からのメッセージ
はぁ、また読みきりかいてみました。なんか微妙でしょ?ははは・・・・・・ははは。なんちゃって!(何 またご指摘・アドバイス等よろしくお願いします。結構今回も感動?を書いてみたつもりです。自信はよくわかりません!(え? 
修正してみました〜
この作品に対する感想 - 昇順
よかった、と思います素直に。欲求をぶつけるなら舞う様を鮮やかに(詩的若しくは情熱的に)描いてほしかったかな。短くまとめていますが、もっと長編にしてこういう物語にしたほうが感動出来たかなと個人的な推測。あと文章的な事で。「俺のその言葉を否定した。」ここだけ一人称になってます。「べ度のほうへめをやると」ベッド、ですね。「数人に看護婦と共に」数人の、です。失礼な事も書き込んだと思います、申し訳御座いません。描写、うん描写だなぁと独り言を漏らす京雅でした。
2005-05-15 00:36:17【☆☆☆☆☆】京雅
作品拝読させて頂きました。状況描写だけでここまで話を描ききったチェリーさんに敬意を表します。しかし、感情描写がないため音のない美しい映像を見せられた感じがしました。自分の頭の中である程度は心情を想像できるのですが、作者の描く心情が欲しかったです。例えば、由浦はどんな気持ちで瑞希にタップを見せたのか(私の頭の中では悲しみよりも、二人で成し遂げた達成感で誇らしい感情があるだろうなぁなどと考えていました)。やはり状況描写だけでは作者の術中にはまりづらい甘木です。辛口の感想になってすみませんでした。では、次回作品及び連載を楽しみに待っています。
2005-05-15 01:11:29【☆☆☆☆☆】甘木
う〜ん、やはりまだまだでしたねぇ。やっぱり読みきりは難しいなぁ。長編ですかぁ。う〜ん、さすがに両立が難しいのでやはり何か他の作品を出している時は読みきりしか書けないかと。しかし誤字脱字すごいことになってましたね。慌てて修正しましたwさて、そういえば読み返してみれば感情描写も少なかったですねぇ。作者の書く描写・・・・・・私ですか!? あぁどんな気持ちで、とかかぁ・・・・・・私の書く描写・・・・・う〜ん、これは勉強になる。次回からはきちんとこういうのもいろいろ工夫して書いてみます。ではでは〜
ネ、ネムリュ・・・(´ω` *)(´ω:;.:... (´:;....::;.:. :::;..::;.:
2005-05-15 12:12:53【☆☆☆☆☆】チェリー
読ませてもらっちゃいました〜。
ラストが非常にいいですね。死んだ彼女のためにとった席。うう〜、涙です。近頃涙腺が脆くて脆くて……。
瑞希にダンスを見せている所をもう少し長くしてもいいと思いますね(甘木さんとかぶってしまいますが)言い場面ですのでけっこう気になりました。
それでは失礼します〜。
2005-05-15 16:07:40【☆☆☆☆☆】上下 左右
拝読させていただきました。長いドラマのハイライトをドンドンドンと見せられている感じでした。物語としては、はかなく良い話であったと思うのですが短すぎたためかそれが薄っぺらに感じられるところも。心情描写や情景描写をもっと増やして(特にタップを見せるシーンですね)いけば、もっといい作品になったと思います。読みきり作品なのに無理言うなって感じの感想ですいません。次回作も頑張って下さい。
2005-05-15 16:31:04【☆☆☆☆☆】影舞踊
おもしろかったです。 (簡易感想)
2005-05-15 18:38:06【☆☆☆☆☆】clown-crown
計:0点
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