『黒電話』作者:月夜野 / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約1.35枚
「もう君と喫茶店には絶対行かないから」
 電話ごしで君はそう言って、ガチャンと切った。未だに黒電話の君の家に電話をすると、僕は小学校のときの連絡網を思い出すんだ。普段電話しない女の子にかけるときのような緊張感を、君にも感じてしまう。
 今日は風も穏やかで心地の良い秋晴れだったから、君を誘って散歩したかった。そして僕が頻繁に通っているお気に入りの喫茶店でコーヒーを飲みたいと思ったんだ。以前にも君と行ったことあったけれど、黙って煙草をくわえて新聞を読んでいる僕に愛想をつかして、君は盛んに薄い青色の髪留めの具合を気にし、レモンティーの二杯目を頼んでいたっけ。
 電話が苦手な僕はまた言い訳ができなかった。またしても、「ガチャン」、だ。僕という存在のメインスイッチを押されて、電源を切られた気分になったんだ。今日は一言二言、用意してきたというのに。
 仕方なく外出する。鉄の扉がガチャンと音をたてる。リスタート。電源がまたはいる。買い換えたばかりの靴を履き、一人であの喫茶店に行く。一人の、時間。君のことを懐かしい思い出のように遠くへ追いやってしまう時間。
 ・・・別に頑固に守ってるわけでもないんだよ。黒電話が置いてある君の家に行く勇気が、まだ僕には無いだけなんだ。
2005-05-10 05:09:52公開 / 作者:月夜野
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■作者からのメッセージ
電話で話すことは好きですか? 私は携帯電話で長時間話すことがいまいち好きになれません。お金もかかるし、なによりも自分の内側にある大事な領域を侵食される感じがあるためかもしれません。
 ストーリーのほうは「不器用な男」がテーマです。小気味良い会話や劇的な物語展開がいかんせん上手く書けないので、こういったSS以下のごく短い文章になってしまいます・・・。ご指摘を受けたのにまた短い物語です・・・。これまでに書き留めた物語はごくわずかですが、次回は膨らませて愛されるキャラクターを作り上げたいと思います。
この作品に対する感想 - 昇順
確か前作でもふとした瞬間を短く切り取って書かれていましたよね?しかしそれよりもさらに短く、SSって事はこれで終わりですか?うーん、小説と言うかポエムなり日記なり、そういう類のものを読んだ感じがしました。うまく書けなくても、とりあえずもっと長く書くようにしましょう。不器用な男ってのは解りましたが、オチのない小説としては魅せられませんでした。長長と失礼な事を語ってしまい申し訳ありません。次回作は長く、愛されるキャラクターが現れる物語を期待しております。
2005-05-10 12:17:40【☆☆☆☆☆】京雅
読んでみました。
なかなか文章は良いです。こういう作品は僕は好きで。
次回作楽しみにしてます。
2005-05-10 17:36:59【☆☆☆☆☆】トロサーモン
作品読ませて頂きました。一瞬を切り取ったような作風は私にとっては斬新で面白かったです。作品自体が音楽の1小節のようで、その先を考えさせてくれる余韻も良いですね。でも、これだけ書けるのにここまで短くしなくても良いのに勿体ないなと感じましました。次回はもう少し長い作品を読みたいと願うのは失礼でしょうか? ともかく、次回作品を期待しています。
2005-05-10 22:13:06【☆☆☆☆☆】甘木
ここの投稿掲示板としては珍しい書き方をされていて、一瞬目をひきました。ポエムっぽいと言われてしまったら、私も何もいえないのですが(苦笑)、個人的に私はこういうのも好きです。できれば月夜野さんの個性を崩さないまま、もっとのめりこめる作品を期待しています。端的に、凄く興味深くて楽しかったです。
2005-05-11 00:25:44【☆☆☆☆☆】泉水雄矢
初めまして、猫舌ソーセージという新米です。よろしくしお願いします。
では、感想を若輩ながら書かせて頂きます。始まりが台詞で始まっていますね。
その台詞の内容がまずこのときは、まだなんの意味があるのかは解りません。例えがとてもいいですね。連絡網で普段あまり話さない子に電話をかけるドキドキ感。わかりやすいです。いやですよねー、しかも異性だったら尚更ですよね。相手側もなんか、しどろもどろだし。かなり緊張しますね。親が出てくれたらありがたいんですけど、本人が出た時は気恥ずかしいし、学校で会ったらまたそれはそこで気恥ずかしくなる。この例えを選んだ月夜野さんにセンスを感じましたよ。黒電話なんてもう、十数年も見てないなぁ。家は黒電話は私がまだ小さい頃にあった記憶がありますね。ほんと物心つくかつかないかの頃にです。好きな子と喫茶店に行って、黙って煙草を吸っていたのは、やはり恥ずかしくてどう話をしたらいいのか、解らなかったからなんでしょうね。本当に、なんというか不器用な人ですね。彼女も彼女で、自分から離すことができず、また彼が無愛想と感じて、それですねてしまったんでしょう。彼女もまた不器用なのだと思います。鉄の扉という表現が、何かを比喩している気がします。なんだろう、鉄だから冷たい感じ?かな。鉄の扉が開く音「ガチャン」と電話が切れる音「ガチャン」同じ音というところも何か意味があるような気がしますね。たぶん「ガチャン」は彼の心のスイッチを切り替えるモノ? だからこそのリスタート。なのかな。買い換えたばかりの靴。これは、新しい自分、新しい道を示唆しているのでしょうか。また彼の新しい気持ちをも。だけど、未だに捨てきれない彼女へと想い。きっと彼の靴箱には、古い靴が今でもひっそりと入り込んでいるような気がします。以上猫舌ソーセージでした。
2005-05-11 15:04:54【★★★★☆】猫舌ソーセージ
計:4点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。