『時を越えて  【読み切り】』作者:勿桍筑ィ / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
全角1784文字
容量3568 bytes
原稿用紙約4.46枚
 


 私は、今休暇を取ってハワイに行く途中で、国際便の飛行機に乗っている。近くには家族連れやカップル、何かの団体までもいる。団体といっても十二、三人である。
「お父さん?南の島ってみんな言うけど、なんで?」っとある家族の少年が、父親に質問しているのが聞こえてきた。
 あの父親にとってかなり困る質問だろう。
「そ、それは……南の方角にあるからだ!」
 やっぱり。ちゃんとした答えになっていない。
「え〜!答えになってないよ〜!」
 少年が駄々をこねるように、父親に文句を言っている。
「そんなに気になるのだったら、自分で調べなさい!」
 困りかねた父親は、最後の手段を使ったようだ。
(そうかぁ、南の島かぁ)
 南の島と聞くとある話を思い出す。昔、子供の時に親の友人の外国人から聞いた話だ。
 それは、南の島に住む人々に昔から伝わる話だそうだ。


 南の島、そこは遠く、そして夢の島。楽園。でも、その向こうには、南の島よりも、更に皆が夢見る島がある。その島の名前は、‘Everydream’。皆が夢を抱く、夢の島。っという意味の造語。しかし、そこは、‘夢’っという表側の表情だけではなく、また別の裏側の顔も持つ。それは南の島に住む者だけが知る。
 ――苦しみを味わうという意味の造語の名の島。その名は、‘Infernoway’(インファーノウェイ)。その苦しみは、想像を遙かに超えているという。
 苦しみは人々に付きまとう。それを避ける者は、唯夢の島に行くだけ、避けない者は地獄を見る。だが、地獄を見ただけ報われる。それが一般論。
 でも、そのような一般論はこの島では通用しないという。この島で報われるには、“地獄”をどのように乗り切るかが問題ではない。どのように、この地獄で生きていくかが問題なのだそうだ。
 しかし、どのように地獄で生きていけば良いかなんて、全く分からない。分からないが、最後に言いたいのは、‘夢’はもしかしたら、〔叶えるためにある〕のではなく、〔散るためにある〕のかもしれない。だが、やはり前者を信じたい。

 ――ポン! ポン!
『お客様に申し上げます。間もなく当機は、着陸態勢に入りますので、シートベルトをお締め下さい』
 ――ポン! ポン!

「それで、それからどうなるっていうの?」
 あれ?いつの間にか私は、あの少年の所まで行ってこの話をしていた。
「お客様!申し訳ありませんが、席にお戻り下さい」
「あっ!すいません!」
 後味の悪い終わり方をしてしまった。あの少年に悪いことをしたかもしれない。


――空港――

 さっ!この休暇を有意義に過ごそう。
「あ、あのう……」
「ん!?あっ、はい?」
 そこには先程の父親の姿があった。隣には少年の姿もあった。
 さっきの話の文句でもしに来たかな?そう思い、身構えていた。
「先程は……ありがとうございました」
 なんとあの後味の悪い話に感謝してきたのだった。
「いやいやとんでもない!あんな話を突然してしまって!こちらこそ……」
 私とその父親は、子供の前で深々と頭を下げ合った。
「おっちゃん!」
(何!?おっちゃん!?)
 私が父親に別れを告げようとしたとき、少年が私のことを突然おっちゃん呼ばわりしてきた。一瞬ムッときたが、抑えた。
「こら!失礼だろ!」
 父親が少年を叱り、頭を叩こうとしていた。
「いやいや、良いんですよ」
 少年がホッとした顔で私の顔を見上げた。それを見て、私はまたもやムッとしてしまった。理由は自分にも分からない。
「おっちゃん!それで聞きたいことがあるんだけど、ね?」
「良いよ。なんだい?」
 あの話のことだと思い、了解した。
「あのね、さっきお父さんにも聞いたんだけど……」
「え!?」
 なんだかとても嫌な予感がしたので、自然に立ち去ろうとした。しかし、動けない。ふと下を見ると、父親の手が、「独りにしないで」っと言っているように私の服を掴んでいた。
「……南の島ってなんで南の島って言うの?」
 やられた。
「い、いやそれは……ね〜」
 私は父親と顔を見合わせ、少しの間そこに立ったままだった。




――――完


2005-04-22 23:16:02公開 / 作者:勿桍筑ィ
■この作品の著作権は勿桍筑ィ さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
どうも、勿桍筑ィ です。
誠に勝手ながら、前回の作品の続きが書けなくなり、放棄することにしました。面目ないです……。
今回は、ショートショートとして書かせていただきました。
やはり作品を書くのは難しいなっとつくづく感じました。まぁ、前回よりは小説らしくなったかと思います。
また、この物語に出てくることは、言うまでもなく、フィクションです。

感想・辛口コメントいただけたら光栄です。
では失礼いたします。
この作品に対する感想 - 昇順
作品を拝読させていただきました。主人公らしき人物の話す南の島が子供の「南の島ってなんで南の島って言うの?」の難しい疑問(確かに子供の質問には困ることがありますね)への暗喩だと思うのですが、感覚的にこの二つを結びづけづらかったです。そのせいでオチが弱く感じられてしまいました。ま、読解力のない私の戯れ言ですので気になさらないでください。
連載放棄ですか……残念です。では、次回更新を期待しています。
2005-04-22 23:29:07【☆☆☆☆☆】甘木
読ませていただきました。南の島って南にあるから南の島でいいんじゃない、と勝手に判断してます。(マテコラ つかみ所の無い、突き放された感じのショートでした。(読解力なし 子供の疑問には困ることがある程度しか読み取れなかった自分を許してください。次回作も頑張ってください。
2005-04-23 00:42:44【☆☆☆☆☆】影舞踊
拝読しました。うーん、何だか纏まりのない話です。途中の外国人から聞いたらしき話は細かく書かれているのに、それが他の部分にあまり絡んでいない様な印象を受けます。個人的に「南の島」は聞かれても答えられると思うのですが……。では次回作も頑張って下さい。
2005-04-23 03:52:34【☆☆☆☆☆】京雅
えーなかなかの酷評が飛び交っておりますね【苦笑 確かにこの作品はちょっぴし作者のご都合主義がとんでる気がします。それが俺達読者(ともいえないアマチュアか)になんとも釈然としない……というか頭の中???という印象を与えているのだと思います。
なんとも味のある文章を見ているとわかるのですが、突き放している感じがありながら、実は微妙な距離をとって文章を構成しているのがわかります。なんだかんだで理解できるギリギリの線を保っているわけです。
このさくひんを見ると、どうもそれが上手くできていない気がします。
難しいですが、(いっしょに、と言うのは好かんのですが)頑張りましょう。
ではノ
2005-04-23 21:02:28【☆☆☆☆☆】貴志川
あぁぁ……。どうも皆様。
このような作品でも読んでいただきありがとうございました。尚かつ、感想までいただき感激しております。

辛口意見。心にしみます。

甘木さん
>前回作に引き続き読んでいただきましてありがとうございました。
オチが弱い。ん〜……確かに。やはり、自分以外の方に読んでもらって感想をいただかないと、こういうことが分かりませんね。

影舞踊さん
>読解力なし。――いえいえ、読解力がないのではなく、私が未熟なのです。
‘南の島って南にあるから南の島でいいんじゃない’、そう思っていただいてかまいません。この作品を読んで、そのようなことでも、思っていただいたのならうれしく思います。

京雅さん
>そうです。外国人から聞いた話は細かく書いていますが……。他の所は、分かるんじゃないかと勝手に思ってしまいました。
小説を書くことではあってはならないことですね。面目ないです。

貴志川さん
>それでも理解していただいて感謝しております。
ぜひ、頑張りましょう。

皆様本当に読んでいただきありがとうございました。
次回作も頑張ります!では失礼いたします。
2005-04-24 23:24:13【☆☆☆☆☆】勿桍筑ィ
計:0点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。