『Liebes Lied von dir』作者:liz / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約4.28枚
「あなたから送られてきたこの手紙に返事を書かせてください。
 長いことあなたに会えませんでしたね。
 だけど、ようやくあなたに会う勇気ができたんです。
 どうしても、あなたに会いたくて。
 でも、会いたくても会いに行くことが今までできませんでした。
 あなたと離れてから色々なことを考えました。
 あなたが何も言わずに私から離れなければならなかった理由について。
 行き先を告げたにもかかわらず金輪際目の前に現れないでくれと言ったわけを。
 考えても分かるはずはなかったのに。
 私は考えすぎてしまったようです。
 でも無駄ではなかったと信じたいんです。
 あなたと会わずにいたこの10年という歳月を無駄だとは思いたくないんです。
 愛する君へという私の手に握られたこの手紙を胸に抱いて私はあなたに会いに行きます。
 あなたと再び会えることをどれだけ私は願っていたのでしょう。
 あなたにはきっと分かるはずです。
 あなたがこの手紙に書いている通り、私を愛し続けていたとしたら。
 この手紙が届いた頃、私はあなたの目の前に現れると思います。

 愛しきあなたへ思いを込めて

 橘 京(たちばな けい)                                    」




この手紙に目を通した僕は、ふと、扉の向こうに人の気配を感じて身をこわばらせた。


「聡。」

扉が開けられた。鍵がかかってないことを最初から知っていたかのようだ。目の前に愛しい人の姿が見えた。僕の手から飲みかけの水が入ったガラスのコップがすり抜けて音を立てて割れた。でも、僕は気付けなかった。


2人の時が15年前にさかのぼってしまったから。


今から15年前。

僕らに起こった奇跡。

今から10年前。

僕らに降りかかってしまった悲劇。

そして今。

僕らは、僕らを1本の見えない糸がつないでいたことを知った。




京が一歩ずつ僕に近づいてきた。僕は、今、目の前に彼女がいることを信じられずにいる。
「聡!」
僕の胸に飛び込んできた彼女の温もりは15年前も10年前も変わっていなかった。あまりにも温かすぎて抱きしめたら壊れそうで僕は何もできないでいる。
「ぎゅってして!ぎゅってしてよ聡。お願いだからあなたを感じさせてよ。お願いだから!聡!ねえ、聡!」
彼女の甘く震える悲痛な叫びに、僕は…。こみあげる涙をこらえながら彼女を優しく抱きしめることしかできなかった。


時をさかのぼること15年前。僕は、無邪気な高校1年生だった。


僕の通う光陵高等学校は、都内でも有名な私立の進学校。僕は毎朝胸を躍らせて校舎に足を踏み入れる。毎朝9時から授業が始まる。5時間授業で、1時間30分単位で授業が行われている。1学年5クラス、30人の少人数制。男女比率は半々だ。優秀なクラスメートはいつも僕に少なくとも勉強に対しての刺激を与えてくれる。だが、毎日が退屈だ。部活に入っている生徒は少なく、皆勉強にしか興味がない。そんな僕らの学校に1年の2学期からとっぴな女子生徒が転入してきた。

「高山咲です。よろしくお願いします。」
彼女はとても美しい少女だった。僕のクラスに転入してきたことは、学校中の話題に上った。
「高山さんって綺麗だよね。」
「うん。でも、誰も寄せ付けないっていうかさ。」
クラスメートの女子がひそひそと話している。当の本人は窓際の自分の席について、外を眺めている。片手に本を抱えている。彼女の髪はつやつやの黒髪で、肩につく一歩手前で切りそろえられている。色白の肌は、透き通っていて、本当にきれいだった。そして、彼女の目は、本当に魅力的だった。長いまつ毛に彩られている漆黒の瞳。ナチュラルな彼女はこぎれいだが、一切メイクをしていないらしかった。それは、かなりのメイクをほどこしているクラスの女子にはあまりよく映らなかったらしい。彼女は一ヶ月も過ぎれば、クラスで孤立していた。







2005-02-16 21:31:07公開 / 作者:liz
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■作者からのメッセージ
ドロドロにはならなそうです…。次回もよろしくお願いします。
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