『空虚なこの手に、愛の言葉を』作者:貴志川 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
全角8623.5文字
容量17247 bytes
原稿用紙約21.56枚




『モルヒネを打ちましょう。これを打てば、もう苦しまなくていいんです』




医者が何で俺に説明するのかわからなかった。


俺はただの、しがない警察官で、おまわりで

なにも守れない……しょうがないほど何も出来ない人間なのに


彼女は何も言わずにベットの上で眠ってた。その顔は…

そのドラッグによって崩された顔は…

……決してきれいでなんかなかった。ドラッグは命を奪おうとするだけはなく、彼女の…俺が見たのは僅かな間だったが…あのきれいで、いつも怒ったような顔をしたあの顔も、奪っていった。今の彼女の顔は…あの気の強そうな顔なんか浮かべてなくて、どうしようもないほど、無表情だった。

―なあ、お前、嫌がらせしてんのか?
―俺が「無表情の女は嫌い」って言ったから?
―お前さ…澪さ……少しひねくれすぎてるよ
―…今更って感じか…ははは…

俺の勝手なつぶやきにも、彼女は返事なんかしなかった。それどころか、目をつぶって想像した、元気だった彼女の顔も、少しも笑わなくて……無表情だった。

「もう、骨がすかすかの状態です。」
医者は冷静だったと思う。
「ずっと続いていた痙攣によって、もろくなっていた骨が折れています。咳や、検診の脈を計るときの反動でさえ、折れます。いずれは…まことに残念なことですが…起き上がろうとしたときに彼女の首の骨が折れて…いえ、胸骨が折れて心臓に達する可能性のほうが高いかもしれません…意識はありますが、それはおまわりさん、あなたがいるときだけです。あなたがいなくなると彼女はスグに意識を失います。そして意識がある間…あなたに会っている間、彼女は骨折の激痛と戦っています。全身の。彼女は…あなたに会うためだけに生きているようなものです。」

……俺はなんと言ったのだっけ?

「…彼女にとって、なにが正しいことだと思いますか?」

……俺はなんと言ったのだっけ?

「……ここにモルヒネがあります。わかりますね。医療用の麻薬です。彼女にコレを致死量投与します。彼女は二ヶ月かけて、ゆっくりと、眠るように、死にます」

…ここは覚えている。
俺は言ったんだ

「死ぬときまでドラッグにたよるのか!?」

医者はいった

「あなたは医者ですか?」

俺は答えた

「違う…警察官だ」

医者はいった

「あなたは彼女がクスリに手を出しているのを知っていましたよね?初期の段階で。」

俺は答えた

「ああ。…それから…知ってから俺はアイツを助けたくて…あいつに何でもしてやった。やれることは全部!俺は自分の手柄のために、自尊心のために、アイツを警察に連れて行くことはしなかったし!アイツが監禁されるような病院には連れて行かなかった!全部やった!ドラッグからアイツが逃げ出せるように!」

医者はいった

「あなたは医者ですか?」

俺は答えた

「違う!」

医者はつぶやいた

「……ドラッグが愛の力で治るとでも?あなたが愛せば、あなたが抱きしめれば、あなたがキスをすれば、彼女は救われるとでも?………それは無理です。かぜをひいた子を抱きしめても、治りません。あなたが愛せば、彼女は背徳感でそれだけクスリにおぼれ、あなたが抱きしめれば、かすかすになった骨が折れて、あなたがキスをすれば、抵抗のなくなった彼女の体は合併症をおこす」

俺はなにも言えなかったんだっけ

「彼女に必要だったのは愛ではなく、治療だった。あなたは選択をあやまった。どうしてもっと早く、きずいた時にすぐに、医者に連れて行かなかったんだ!」


………なぜだろうか。
いや、言わなくてもわかる。俺は結局自分の自尊心のために医者には連れて行かなかったんだ。

彼女が捕まるから
彼女に会えなくなるから。
澪がすきだったから。

どうしてだろう。

どうして神様は俺に愛することすら禁じてたんだろう。



「…おい。何やってんだ?」
俺は駅前広場に近い裏路地で女の子を見つけた。彼女は暗闇でうずくまっていて、明らかに普通の状態なんかじゃなかった。
それでも彼女はゆっくりと俺を振り返ると、手に持った袋をポケットに入れる。
「…なにもしてないけど」
彼女は…高校生だろうか?…少し突っぱねたような表情で、茶髪に染めたショートの髪をすこしかきあげた。
「ポケットになんかいれたろ」
「……は?そんなことにも干渉するわけ?そういうの、ウザイから」
そういうと彼女は俺に肩をぶつけて駅前に歩いていこうとする。
「ちょっと待てって。ポケットに入れたもんだせよ!」
…たまにはいいではないか、少しくらい警察の権限を使ったって。
俺は止めようとして少し強引に彼女の肩を掴んだ。
「っ!ウザイって言ってんだろ!」
とそのとき、

ふわり

と彼女が浮かび上がった。

「(…え?)」
一瞬天使かと思ったけどそんなわけない。いくらなんでも天使が悪徳おまわりさんになんかに来るわけ無い。そう判断したとき、俺は…手を伸ばしてた

「むおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
いや、頑張りすぎだとか、熱血野朗とかそんな事態ではない。女の子の倒れ方はかなりヤバげな倒れ方でこのままいくと
「(舗装道路へ→ヘッドロぉぉぉぉック!!!!)」
いや、これはまあ、…我ながらよくわからない。でもこのときの俺の思い、マジこんな感じ。


「…アンタ、バッかじゃない?」
「……最近自覚してるよ」
次にあったときは病院のベットで、仲良く背を並べてた。



これが澪との最初の出会い
俺は今、ここに戻りたい。ここに戻って、抱きしめたい。


俺はお前のこと好きだ
抱きしめちゃ、だめなのかな?



彼女はシンナー常習犯だった。
これは彼女を見たときわかった。彼女の顔はとてもきれいだった。…ん。まあ、あれだ…そう、ここで結構好みだなって思ったけどさ。そりゃ別だろ?
でもその顔は口を開いたら少し犬歯が鋭すぎてた。これはシンナーで歯が溶けてる証拠だと、交番の先輩に昔聞いたことがあって、それを覚えてた。
「…吸ってんの?」
「…は?」
俺たちは正直似たもの同士だったと思う。だからあまり抵抗なく話せた。似たもの同志。この世界に絶望してて、でも何か成し遂げて世界を少しはマシにしようとは思わなかった。思えなかった。ただ、流れるがままに、その運命が広げる口の中に、抵抗なんて言葉さえ浮かばずに吸い込まれていった人間。
「シンナー」
「……おまわりさんだから捕まえんの?」
出会ってすぐに生徒手帳で身元割り出しを行ったこれまた先輩に名前を聞いた彼女、『澪』…彼女は「うざっ」とつぶやきながらベットから身を起こした。
「そういうの、ウザイから。おまわりさんだからってあんまり私のことなめない方がいいよ。あんたみたいなの、一発なんだから」
「………」
彼女はいつもこんな感じだったけど、俺はあまり気にならなかった。
第一彼女の顔はすごくきれいだった。見てて飽きなかった。その顔が怒ってるのも見ものだった。
「…ていうかさ」

「…なに?」
「そんなにイキがってんのに俺のことは『おまわりさん』なんだな」
「…っ!」
俺はそう言うとついでに「ぶはははははははははは」と思いっきり笑ってやった。ちょっとやられすぎかなって思ってたから、大人からの反撃って奴だ。
…ん?
…ぶーーー!!顔赤くなってやがる!あははははははははは!!恥ずかしいのか!ははは、そうだろう、所詮君は一般の庶民なのだよ。少々かわいいからってイキがってんじゃんねえよ!!ははははははは!おうおう、花瓶になんか寄りかかってどうすんだ〜?お、それを持つのかね、ほほう、それはさらに見ものだな、そいつをどうすんだ?ええ?

……え?

…いやいやいいやまてまてまてまてまてまてまてまてまて
俺が悪かった!ホント!マヂで!いいすぎた!ホント!そう思ってる!!
だからあれだ!そう!俺は警察官だぞ〜!公務執行妨害だぞ〜!大変なことになるぞ〜
それにそうだ!見ろ!

俺は『おまわりさん』だ!!


……



………………ごっ



げはっ



その後は…なんだっけ?とりあえずナースコールおしたっけ?
とにかく俺は彼女のあの顔が、恥ずかしそうに赤くなったり、おかしそうに笑ったりするのが楽しくて、TVの所有権も(なかば強引だったが)ゆずり、彼女の言うとおりパシリになったり、…そしてそれらよりに少し多めに彼女をからかった。

「花とかにあわないね」
「…うるさいんだけど」

「この芸人マジウケル!!うけねえ!?」
「…………………………ふ…」
「今笑ったよな、絶対。笑ったよな、すげー微笑だったけど笑ったよなわらっ――げは」

「はい、コーヒー」
「…あたしコーヒーとか飲めないんだけど」
「ぶーーーー!!ガキかよ!?………あ、ごめん、うそうそうそうそうそうそ―――ゲハ」


そのたびに彼女は少し笑ったり、顔を赤くしたり、怒ったりした。
ときたまシンナーの後遺症みたいなのが出て苦しそうだったけど、俺が笑わすといつもどおり少し無愛想に怒るから、そんなの気にならなかった。


幸せ。そのときの俺にはそれが当てはまる。
ただ、愛してればよかった。



「…なんでそんなに長く入院してるんですか?お二人とも」
そんな感じで二人とも追い出された。
ていうか検査入院でどんだけ入院してたんだか。五日ぐらい過ごしてなかったか?俺。
彼女もだけどさ…
「こっちが聞きたいんだけど」
けんか腰の彼女を無理やり引き連れて病院をでたのは昼ごろ。
「…なんであんなに居れたんだろ」
俺はそれなりの疑問をつぶやいたつもりだったけど、そのときの彼女にはあまり意味の無い質問だったらしく、
「あたしの家が無いから」
とすんなりと言ってのけた。

「…あ?」
「……なに?その言い方。ムカつくんだけど」
「え…いやさ…いきなり意味わかんねえこというから」
そんな俺を見ながら、彼女はしばらく逡巡してるようだった。
「…な…なんだよ」
ちょっとドギマギしながら俺は
なんかいつもと逆じゃねえ……!?
としょうも無いことを考えてたのを覚えてる。
そんなしょうもない俺に彼女は
「…アンタの家、連れてけ」
「…………………………………………あ?」
さらにしょうも無いことをいった。

いやいや、落ち着け俺。
いくらそれ相応の歳を重ねた者が二人、一つの屋根の下にそろったからっていくらなんでもそりゃあれだよほらばかだなあかんちがいさあははははははははははははは

と混乱した思いをいだきながら俺はその夜、床についた。
彼女は何も言わずにベットに入って…
よく話した。ほとんどは彼女の片思いの男の話だった。…うん。へこんだけどさ、そういうの関係無い無い。この俺の思いは片思いとかじゃなくて、軽い同族共感みたいなものだと感じてたから。彼女もきっとそうだろう。


ただ、俺には少し抵抗があったのかもしれない。

彼女が苦しんでるの知ってたから。
俺はなんでこのとき全部はいてしまわなかったんだろう。自分の思い。
必要ないって思ったから?
いきなりそういうチャンスにありつけたからか?

…ほら、こういう思い出にさえ、俺はあの思いでは省いてる。

記憶すら塗り替えて…俺はいったい何をしてんだろう。

…言い直します。

彼女はベットに入って半分死んでた。

ごめんな、今の、俺の願望が少し入ってる。
現実ってさ、過酷すぎるもん。
少しは逃げさせてよ。


ベットの中の澪がいま、きしむような音を立てて、痙攣した。


ああ、いうよ。正直に思い出すよ。
本当は、あの日。

彼女は退院したその夜、おかしな言動が目立ってた。「何か喰えるものを」とコンビニに行って帰ってきた俺に、彼女は「おみゃわりさん」としなだれかかってきた。

………ポケットの中からは液体の入った袋が、月の光を反射して俺に黒い光を浴びせてきていた。

「お前………………」

……その夜
…………俺は、何もしなかった。
ただ笑って「何言ってんだよ」と言っただけだった。
彼女をどこに連れて行こうとかは思わなかった。
連れて行ったら彼女が捕まると思った。
彼女は病院を死ぬほど嫌がってた。
俺は彼女の何でもない、一人の男なのだと思った。
だから考えなかった。

病院が、彼女の異常性に『気づいてて』退院させたのにも。
彼女が毎晩病院で『そう』なってたことも。


俺が殺した。

俺の自尊心で、彼女を殺した。


彼女は朝、ベットにはいなかった。
手紙が身勝手なこと書き並べておいてあった。…別に気にはならなかったけど。なんだか彼女はそんな人間って感じてたからか、それとも俺の傲慢か。俺は探すなんて事はしなかった。
その日、久しぶりに職場復帰した。
「……公務員でよかったな」
先輩は交番のデスクに腰掛けながら言った。はげしい嫌味だとわかったが、いちいちそんなことにかまわず俺は
「…そのかわりほら、先輩の言ってた英語勉強しましたよ。I‘m sorry」
ぺこり
「………」


……ごっ

………最近よく殴られるな。俺。

こんな感じ。



それから一週間。
パトロール中に携帯がなった。メールだった。
俺の携帯は最近ではほとんどならなかった。昔の友達は、俺がマッポになって忙しくなると次第にかけてこなくなった。だから少し面食らった。
携帯を見ると

受信メール『澪さま』

と出ていた。…どうも勝手に携帯に登録してたらしい。
その澪さまのメールは何なのか、俺は正直な話、あんまり気にしてなかった。
女の子には悪いが普通の男なら仕事中なんかにメール着ても返すようなことはしないもんだ。男は稼がなくては、女の子のように遊んで仕事は出来ない。…女性差別だけど。
でも俺は一応そのメールを見た。誰かから来る久しぶりのメールだったし、
…やっぱり昨日の後ろめたさもあったんだろう
そしてその一分後、俺は「やっぱり見なきゃよかった」とつぶやいた

『みんな、ごめんね、みおはわるいこだから、きっとこのまましぬんだとおもいます。いままでありがとう。たのしかったよ』

遺書だった。


俺は彼女がどこにいるかはわかっていた。
どこかのドラマみたいに思い出の場所なんかではなかった。
…いや、思い出の場所かもしれない。

「澪」
「…なんでアンタなのよ」

彼女は裏道に転がってた

「…俺じゃ不満か」
彼女を起こした。…彼女からはひどいにおいがした。
「…最悪」
俺はこのにおいを嗅いだことがあった。警察学校の、司法解剖室で。
「……どれだけやったんだ」
手に持ったビニールの袋から彼女の目へと視線を移す。彼女の目はうつろだった。黒目が異様に大きい。………動向が開いてた。
「…おまわりさん。…みんなに送ったの。み―んなに送ったの。…来たの、おまわりさんだけだったね」
俺ははっとして彼女を見た。
「…しっかりしろ」
彼女は「あの夜」の彼女になってた。
「…お母さんにも送ったんだよ?…でもね、来なかったぁ〜
…ねえ、おまわりさん、どうしてかな?なんでお母さんこないのかな?どうして?お母さんどうして――」


………澪、俺にはわからないよ。

「おまわりさん………最後に………キス、しよっか?」

彼女はそのまま目を覚まさなかった。
どうして最後の最後で俺の心を釘付けにしてくれたのか、よくわからないけど。

「おまわりさん………お母さんはね、私のこと、愛してないんだって。………おまわりさん、おまわりさんは、あたしの事………………嫌いかな?」

そんなわけ無いよ

俺はお前のことが大好きだよ
お前といるとサイコーだよ

そんなようなこと言ってた気がする。俺の意識はそこから少し薄れてる。

彼女が最後に言った言葉が、最後に何かにすがりたくて言った言葉だってわかってる。
彼女が愛したのは、俺ではなく、「自分を最後に愛す何か」だったんだ。

それでもいい
それでもいいよ、澪
短い間だったけど、俺はお前のこと、嫌いなんかじゃなかった。
お前が望んでたもの、これだろ?

俺と初めて会ったときも、お前、母親にメールしてたんだってな

死にますって

私は悪い子だから、死にますって

だから母親は警察に電話した。

実の娘のために、わずか300mすら歩かず、俺を、おまわりさんを使った。

お前、あの時、母親が来てたらどうするつもりだったんだ?

お前、やっぱり死んだのか?

俺が来て、どう思った?

…俺はお前が死にたいの、わかってたぞ。

母親も、「あの子は自分の意思でシンナーを吸いました。死ぬのも自己責任です」って

だからどこにも連れて行かなかった。

お前はそれ、知ってたのかな?



「モルヒネ、投与します」
医者は俺に
彼女の死場にいる、たった一人の患者の「友人」に
「いいですね」
と聞いた。その手に透明な液体の入った注射を持って。
………俺が拒否しても、それは彼女に与えられ、彼女の望んだとおり、
確実な『死』を
彼女にプレゼントするのだ。

ベットの上の彼女は、何も言わずに、ゆっくりと息をしていた。

「ええお願いします」

……自分でもひどく冷静に言ったものだと思う。
医者は僅かにうなずくと、注射針を、点滴に刺した。
そして
ゆっくりとその液体は点滴の中に押し込まれ…………………
なくなった

「………彼女はこれから二ヶ月かけて、眠ります」
それだけ言って、医者は部屋を出て行った。

俺はずっと座ってた。

彼女は何を望んでたのだろう
俺の目には、少なくとも「死にたい」と映った
周りに愛がなくて、それが欲しくて、シンナーに手をだした

彼女の顔は別に変化は無かった。いつもどおり、あの気の強そうな顔は見せなかった。

俺は顔を伏せた。もう、彼女の顔を見る気にはなれなかった。

「俺はさ、澪」

「死にたかった。」

「だってさ、何もないんだぞ?」

「お前にも何も無かったよな?」

「お前も俺と同じだった」

「死ぬことと、生きること、そこに何の差異もなかった」

「だから俺はお前に死を与えてやった」

「だって世界は偽善と自分勝手な正義にあふれてるじゃないか」

「死んで文句言う奴なんて…俺たちにとっては、クソみたいなものだったろ?」

「なあ、澪」

「お前はどうして欲しかった?」

「俺の意見あってるかな?」

「………うるさいんだけど」

「……え?」

彼女が俺を見てた。
「み…澪!!」
澪はぼんやりと、俺を見た
「アンタの意見、当たってるわよ」
「え?」
俺の呆けた顔を見て、澪は少しだけ笑ったような顔をした。
「生きてても、死んでても、誰も私を見るヒトはいない。だから、死んでもいい」
澪の顔にはあの、強い意思をもった表情があった。
「アンタにあったのが失敗だったけどさ」
さらに、ふっと笑う。
「アタシ、死にたくないよ。おまわりさん、死にたくないよ」
その顔に涙が伝った
「アタシ、おまわりさんと一緒にいたい。死にたくない」
俺はよくわからなくなった頭で「夢だ」と言いながら………

彼女をだきしめた

「死にたくないよ…死にたくない」
「ああ。」
「生きたいよ、おまわりさん、生きたいよ」
「ああっ」
俺の顔にも涙が伝ってた

ここでナースコールを押して助かっても、彼女にはいずれ『死』がおとずれる
クスリが、彼女の命を奪う

「死にたくないっ…でも苦しいのは…嫌」
「…っ…ああっ…」
「だから…これが最後」
「…ああっ」

俺たちはキスをした。

ずっとずっと、長い間。

そして朝が近づいた時
彼女は、目を閉じた


彼女はこの世界から消えた







彼女の抜け殻が完全に止まったと聞いたのは、それから二ヶ月後だ。
2005-01-26 00:32:19公開 / 作者:貴志川
■この作品の著作権は貴志川さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
なげ…
しかもわけわからんな…
辛口でお願いします……m(__;)m

もしかしたら連載するかもしれません(恋愛苦手なのに(ノT○T)ノ)
この作品に対する感想 - 昇順
読ませていただきました。途中でコメディーのようなノリになったところ少し気になりましたが全体に漂う雰囲気は好きでした。主人公と澪の過去がもっと詳しく書かれていれば、もっと感情移入できる作品になっていたと思います。おまわりさんの主人公ですが、かなり今時の青年という感じで、(個人的には)もっと堅物の方が物語が締まった気がしました。それほど長さは感じられず、するすると読めましたよ^^貴志川様の次回作も楽しみにしています。(この物語が連載になるのかな?
2005-01-26 22:59:47【☆☆☆☆☆】影舞踊
拝読致しました。中盤が少しついて行けなかった部分があったものの、最後の澪が死にたくないと発言したところには、思わず感極まりました。全体的な雰囲気がいいですね。連載になるのでしょうか? どちらにせよ、楽しみにしております。
2005-01-27 01:32:54【☆☆☆☆☆】昼夜
初めましてデス。読ませていただきました。
私こういう話やばい鴨。泣きそうでした。
一番気に入った表現は
》彼女が愛したのは、俺ではなく、「自分を最後に愛す何か」だったんだ。
これデス。この言葉がこの話の芯になっている気がします。これが分かったときの主人公の気持ちを考えると切なくなりました。
次回作、楽しみにしています。・・・しかし、ほんとに連載されるもデスか?
2005-01-27 16:23:22【★★★★☆】ギギ
拝読させて頂きました。澪のクスリに気が付いた時の「おまわりさん(笑)」の反応をもう少し描写してほしかったかな、と思いました。それと、漂う雰囲気にもう少し回想している感がほしかったです。けれど、淡々と書かれて、あっさりとした話にまとまっていてとても良かったです。貴志川さんの次回作がんばってください。ところで、このお話、連載されるおつもりなんですか?
2005-01-27 19:12:26【★★★★☆】若葉竜城
羽堕ですm(._.*)m読ませて頂きました♪タイトルが恋愛物ぽかったのでw私は、恋愛小説も好きなので、楽しく読めました(・_・)言葉を選ぶ、繋げるという力が凄いと思います(^o^)ただ、一つ一つの文章としては良いのですが、小説として全体で見ると若干読みづらい気がしました(言葉遣いとか、句読点とか関係なく)。読み返す回数が少なかったのかな?とか思いました。もっと、貴志川さんらしい文章でこのテーマを書いても素敵だったと思います(>o<")と毎回の事ながら、失礼な事、ツラツラと書いてしまい、申し訳ありません(。-人-。)もし、連載予定なら、続きも読みたいなぁーと思いました♪
2005-01-27 23:21:58【☆☆☆☆☆】羽堕
お久しぶりです、ココハです。いやー、貴志川さんって、恋愛系もかけるんじゃないですかっ!びっくりです。もっとなんか現実的な、近未来的な、ドライな感じの文章を書かれる方とばかり思っていました。でも、面白かったですよ。リアリティ、という面で言えばどこまでが事実なのか(背景に使われた設定の部分)というのがわからなかったですけど、つまり、シンナーについてとか、モルヒネについてとかそういうことに精通してる人から見るともしかしたら、子供の遊びに見えるかもしれません(酷っ でもぼくみたいな一般人にとっては、いい感じでしたよ。連載もいいと思います。とにかく総合的な面でかなり自信を持っていいいと思いまーす。ココハでしたー。
2005-02-07 11:33:28【★★★★☆】恋羽
計:12点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。