『虹』作者:liz / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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ある晴れた朝。私は空港に向かった。手続きを終え、無料だというインターネットカフェに向かった。私は、震える手でパソコンをなぞりだした。

「もう、疲れちゃった。」
私の本当の気持ちだった。
「これ以上友達のままではいられない。」
心からそう思う。
「どうしてそんなに子供っぽいの?」
成長しきれていない、時が止まっているかのような彼がはがゆくて。
「このままじゃ大人になれないよ。」
本気で思っていた。

このままでは、彼は大人になりきれない大人になって、年老いてもこのままなのだろう。そう思った。そんな人だった。

6年間ずっと思い続けた人だった。彼が私をふってから1年が去り、私は再び彼と会った。久しぶりに会う彼は、私が思っていた彼と丸っきり違う人だった。彼は、幼稚で、頭でっかちで、体だけが大きくなった子供だった。幼稚園のころの私よりもずっと幼稚だった。私はというと…・・。口数が減らない。曲がったことが嫌い。偉い人だろうが立ち向かっていく怖いもの知らず。音楽への情熱が人一倍熱い。綺麗だね、と言われたことがほとんどない。かわいいというより怖いとしか思われたことがない。外国人から見て、おもしろい女らしい(外国人皆に異口同音で言われる。なぜだー!)。その割には、日本人からは面白みがないと言われる。外国人から10歳年上に見られる(どうせ、ふけてるのさ)。知性的、とか才能があると言われているのにその単語の意味を知らない。そして知らないのにその意味を調べようとも思わない女(これを知性があるとは絶対に言わないんだー!調べようとするまでに7ヶ月が経過)。


しばらくメールを打っていると、出発の時間が気になりだした。

「さよなら。」

私の出した結論は、彼との別離だった。最後の言葉をなぞり終えて、私は、送信ボタンを押した。急いでゲートへ向かった。

日本にいる間に彼との関係に対して結論を出したいと思っていた。いついつまで。それで片付けられるほど人間関係は簡単じゃない。分かっているつもりだったが、私は、どうしても出したかった。

日本で彼と再開して、彼の子供っぽさにがっかりした。たまにする彼のあやふやな行動が私を傷つけたりもした。本当にひどいと怒り心頭した私の鋭いメールに彼は反省のメールを送ってきた。これでいい、そう思った。だけど、私は気付いてしまった。

彼は、自分のことしか考えていない?

私は、頭を抱えた。彼がものすごい自己中心な男性だということに、6年の時を経てようやく気付いた。

どうして6年間私が彼を好きだったのかは、以前書いたと思う。だが、簡単に記しておこう。私は、彼に告白しようと思っていたが告白できずにいて、その後悔を5年間ひきずり、そして電話で告白した。彼は1つ上で、卒業だったから。この機会をと思った。彼とメールしたりしたが、結局1年後にはっきりと振られた。それから1年後私は彼と会うことになった。振られてからの1年間、ずっと友達でいた。

とにもかくにも、青春の貴重な6年間の恋心を私は彼に捧げてしまったのだ。私は非常に後悔した。どうして、あんな人をずっと好きでいたんだろう。彼のメールのふしぶしでどれだけ彼がわがままで自己中心的か分かったのに。彼が時々示すあやふやな優しさに目がくらんだのか・・。きっと、恋をしていたから盲目だったんだろう。そう思うと、とても腹が立った。

6年は長い。おかげで、私の心の中には、今でも彼がいるのだ。

「私の6年を返せ!」
私は、最後のメールにそう書いた。といっても、彼に罪はない。ただ、私の心の叫びなのだ。私の6年間捧げた思いを、私に返して。私を好きになって。彼は、私が書いた本当の意味を分かっていないだろう。いくら勉強ができても、この心の叫びに彼は気付かないし彼に響くことはないだろう。悲しいけれど。彼は、私を好きでないのだから。


フライトの時刻が近づいてきている。私は時計に目をやりつつ目を閉じた。






涙は全てここに置いていこうと思った。


彼に届かなかった思い、全てを綺麗に洗い流そうと思った。苦しげな瞳を洗い流し、希望に満ちた瞳に変えようと思った。今、私が雨を降らせたなら、そこにはきっと虹が広がっていく。そんな気がしたから。


つー。


一筋の虹が、空を舞った。一筋の飛行機雲とともに。



窓の外を見た。雨上がりの空に、希望が広がっている。
2005-01-21 03:34:32公開 / 作者:liz
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■作者からのメッセージ
実話です。「彼」が見たら、怒鳴り込みに来そうです。でも、こういうところにきそうもないので、書いちゃいました。赤裸々告白?ていうか、私の自己紹介?みたいな、変な文章ですが、もしよろしければ、感想お願いします。
この作品に対する感想 - 昇順
どうも、昼夜です。読ませて頂きました。ああ、何かリアルだなぁ、と思ったらやはり実話でしたか。全体的な構成が凄く綺麗にまとまっている感じがしました。彼と『私』の間にどんな関係があったかが具体的だったらもっと良かったかも。でも、具体的じゃないのがリアリティーを出しているんですかね。次回作も頑張ってください。
2005-01-21 08:35:36【☆☆☆☆☆】昼夜
はじめまして、読ませていただきました(え、実話!? そういえばlizさんはドイツでバイオリンをされているんでしたね(掲示板見ました。ああ、でも分かります。あんたを好きだった○年間返せよ!!って。で、別れたあととかに、いろんなことを考え直した結果、『あたしの○年間は、幻だったなぁ……』とか『あれは間違いだったよな……』とか思うわけですな。笑。これはショート?? ですよね? 次回作も頑張ってください♪
2005-01-21 09:49:21【☆☆☆☆☆】ゅぇ
読ませていただきました。lizさんの実体験と言う事で、やはり生々しい印象を受けますね。「私の6年を返せ!」には思わずドキリとさせられました。これに近いニュアンスの言葉を言われた経験があるもので(汗 読後感こそ切ないのですが、全体的には何かこう、澄み切ったような綺麗な雰囲気が流れておりますね。ノンフィクションならではのリアルな情感を楽しませていただきました。連載作品の更新、ならびに今後の新作にも期待しておりますのでっ。
2005-01-21 12:59:53【☆☆☆☆☆】卍丸
読みました。なんともいえぬ読後感で、あぁ実話なのかと。ん〜むなんといっていいのかわかりませんが、切ないというよりも吹っ切れた感じですかね。liz様の心の中に彼はまだいるのかなと、最後疑問に思いましたがおそらくもういないんでしょう。経験してわかることもありますからねぇ、6年間返せとの気持ち。なるほどなぁって感じで受け取りました。その6年間が全く無駄なこともないんでしょうが、無駄に感じられてしまいますね。次回作も頑張って下さいな。
2005-01-21 17:06:27【☆☆☆☆☆】影舞踊
大人の恋愛…高校生には味わえませんね〜正直あまり進んで食べる気もおきませんが…(←ちょー失礼) 男の俺には「彼がものすごい自己中心」という言葉に「ぐはっ」ってきましたね…女の子は結構言いますよね〜でも男にとっては「俺はこんなにつくしてんのに!」って感じのときが多いらしい(ダチ談)。俺はまだ言われたこと無いけど、言われたらたぶん同じこと思うんでしょうね〜男と女は不思議です。だからこそ面白いんですよね。時々人間に二つの種別があるのは神サンがおもちゃにしたかったんじゃないだろうかと思うときがある(笑)
2005-01-22 00:40:44【★★★★☆】貴志川
計:4点
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