『ココロの形【プロローグ・1〜3】』作者:さこ / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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【 プロローグ 】

最近ね、『サミシイ』ってよく思うんだぁ。

ううん。高校は普通だよ?まぁ成績はおいといて、友達とは仲良いし。
え?彼はいないけどさーって、お兄ちゃんもじゃない!
でもさ、もう3年でしょ?この間学祭終わったから受験モード一色。
うん。地元の短大だよ。
うん、うん。あはは、大丈夫っ。
うん、じゃあまたね。

プッ・・・ツーツーツー    カチャ。

電話したら少しは気が晴れるかなっておもったけど、やっぱり、サミシイ。
あーやだなぁ。こんなあたしイヤだなぁ・・・・・・。


「おはよ陸!」
「・・・・・・。」
 ―― パチン!! ――
「わっ!何よ早智っ。びっくりするじゃない!」
「何って、もぉ。」
「はよっ、どかした?」
「あ、おはよう亜子。ううん、なんでも。」
あーいけないっ。ボーっとしちゃってた。
「それより、陸。1限の古典訳やったの?あたるよ?」
「あ!・・・・・・忘れてた。」
「竹じいしつこいからね。頑張って。」
「ちょっと、助けてよぉ!!」
「「あはは〜。やってないv」」

で、居残り命令。

外はもう真っ暗。帰る人もほとんどいないし。
「竹じぃのバカァ!!女の子1人でこんな暗い道歩かせないでよ!!」
カツカツカツカツ・・・・・・人気の無い路地、足音がいつもより大きく聞こえるよぉ。
「なんか怖いじゃない。」

―――ドンッ

「あ、ご、ごめんなさいっ暗くてよく見えな・・・・・・。」
ちょっと待って、いくら暗いからって今、前に人なんていた?
「こっちはダイジョーブ。」
声のトーンがあたしくらいだ。よかった女の人だよね。
「悪いけど」
「っ!」
「僕は男だよ?」
目の前にいる男は、この寒いのに半そでにジーンズ、それに深かぶりの帽子で笑ってる。
十分怪しいじゃない。
「ちなみに、怪しい奴でもないから。」
何よ、なんで思ってることスラスラ・・・・・・って、
「関係ないわ。帰るんだからどいてよね。」
「わかったよ。 どうぞ。」
からまれるかと思ったのに、拍子抜けだわ。でも良かった。
「ん。じゃまたね佳枝 陸ちゃん!」
「!!なっ。」
すぐ振り返ったのに、もう影も形も見えなかった。

【 1:きっかけ 】

「進路調査の紙だした?」
「・・・・・・うん。陸は地元の短大だったよね?」
「うん。家から近いし、福祉科だから就職にも困らないかなって。
 亜子もでしょ?」
「・・・・・・ううん。あたし、ニュージーランドの大学に行くの。」
「「へっ!?」」
「2人とも黙っててごめん。ずっと迷ってて。
 でもやりたい事やれるチャンス逃したくなくて 思い切ってみちゃった。」
「へぇ、亜子もそんな事考えてたんだぁ。」
「 も って 早智も外国なのぉ!?」
「あ、や、外国じゃないけどさ。やりたいことやってみたいって、ね。
 あたし進学しないつもりなの。
 バイトしながらでいいから、染色 やってみたいんだよね。」
「は〜もぉ!!2人とも秘密主義なんだから!!」
「「ゴメンゴメン」」
「じゃあ2月から3人ばらばらかぁ。」
「サミシイけど、離れちゃっても頑張ろうね!!」
「「「うんっ。」」」


なんて、サミシイ。あたしだけ空っぽな感じ。
サミシイよ・・・・・・。


「―――く、陸。」
「・・・・・・へ?」
「もうHR終わったよ?」
あ、あ〜またボーっとしちゃってた。
「最近よくボーっとしてない?考え事?」
「な、何でもないよ〜。」
「そ?なら、いいけど。じゃ帰ろう。」
「ううんゴメン。用があるから先亜子と帰ってて。」
「そっか。じゃ明日ね。」
「バイバイ陸!」
「バイバ〜イ。」
ひらひらと2人に手を振る。ホントは用なんてないけど。
正直2人の傍にいるのが今はしんどい。
「んじゃ、僕と帰らない?」
この声は昨日の・・・・・・、って
「きゃっ!!あ、何ちょっ あんたココの生徒だったの?!」
「そうだよ〜って言ったら安心する?」
「どっちにしろ信用なんかしないわよ!あたしは1人でか・え・る・の!!
 じゃあねっ。」
「あ、待ってよ 陸ちゃ〜ん。」


【 2:視える 】

「まってってば。」
「なんでついて来るのよ!」
なんなのよ、こいつ。
「第一なんなの?そのカッコ。怪しいですっていってるようなものじゃない。」
怪しまないでっていう方が無理だわ。
「え?でもまだ10月だし寒く無いじゃん。」
「〜〜〜その帽子よ。」
「あー・・・・・・これ取ると余計に視えちゃうんだ。
 できれば 好きな人 のなんて視たくないから。」
・・・・・・?―――!!!
好きって、こいつが?あたしを!?
「僕のこと知らないのは無理ないよ。あんまり学校きてないからね。
 ―――佳枝さん、君に話があるんだ。」
〜〜〜調子狂うよ。

「ハイ。」
「あ、ありがと。」
缶ジュース・・・・・・気が利くじゃない。
「ね、ここいいとこでしょ。」
確かに気持ちがいいほど眺めのいいトコ。
丘の上にこんな公園あるって知らなかったな。

―――ぱさっ

え?・・・・・・・わぁっ
「綺麗。」
ふわふわの銀に近い白い髪に赤色の瞳。すっとした眼差し。
「ははっ。ここなら、まだ大丈夫だから。」
「ア、アルビノ?」
そういえば肌も白いし。
「知らないなぁ。でもこの目のせいで僕は良い事無しさ。
 これから、君と話す事で嫌われそうだしなぁ。」

「信じなくてもいいけど、
 ―――この目は、人のココロを映すんだ。
 帽子かぶって防いでても、時々勝手に入ってくる。
 それで、佳枝さんの事知ったんだ。
 それから僕はいつも君の事見てた。
 だから今、ぐちゃぐちゃになってるのほっとけないんだ。」

【 3:軌跡 】

「何それ、勝手に。プライバシーの侵害じゃないっ。」
「・・・・・・確かに、そうだね。
 でも、僕にもどうしてこんなことができるのか分からないよ。
 やりたくてやってる訳じゃないんだ。 ゴメンね。」
悲しい顔。
そんな顔したらあたしが悪い事したみたいじゃない。
「・・・・・・ね、ココロってどう映るの?そんな具体的?」
「そうだね。佳枝さんとか視えないひとは、他人の考えてる事って、
 表情とか仕草とかで、『イライラしてるな』とか思うでしょ?」
「うん。」
「あれに似てない事無い。ただ的確なだけ。
 場合によっては、その人が隠したがってるトコまで視える。」
ちょっと怖い。
「そう、怖い、よね。
 でも僕はその人を何か手伝うことはできるんだ。」
「・・・・・・?」

「ココロにも辿ってきた道があるんだよ。
 その道を振り返ると、ココロの源が見えてくる。本当のココロが、ね。
 その道を辿るのは、佳枝さんにもできるんだよ。
 意識してやればね。」
「―――あたしにも?」
「そ。やってみる?」

「―――やってみたい、な。」
空っぽで無くなる答えが出るかもしれない。







2003-10-19 15:16:20公開 / 作者:さこ
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■作者からのメッセージ
プロローグ・1を修正して再投稿しています。

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