『無題』作者:仙道 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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彼女は、よく意味を求める女だった。

「ねぇ、生きる意味が分かる?」
そして今日は唐突に、そんな奇妙な疑問をぶつけられた。


「――さぁ…知らない」
そんな突然の彼女の質問を、答えではない曖昧な言葉で返す。
しかし彼女は俺の返答などどうでもよかったらしく、無表情で黙り込んだ。
何の感情も無い彼女の黒い目が、ゆらゆらと視線を彷徨わせている。


「どうしてそんなことを聞くの?」
対する俺も、抑揚のない声色で訊ねる。
「別に。どうでもいいから気になったの」
彼女も、抑揚のない声で返す。
変な女。


「…じゃあ、君はこれの意味が分かる?」
俺はゆっくりと彼女の頭を引き寄せて、口付けをした。
彼女はさした抵抗もせず、目を開けたままそれを受け入れた。
俺も、彼女と見つめあうように目を開いたまま、唇を奪った。
「…分からないわ」
やっぱり、感情の感じられない声で言う。
少し光沢を増した、彼女の赤い唇が見えた。


「じゃあ、これは?」
俺は彼女の腕を掴んで、近くにあった刃物で軽く切りつけた。
す、と彼女の白い腕に赤い線が走って、少しだけ肌に滲んだ。
彼女は痛いとも言わず、嫌がるそぶりもせずにその赤を見つめた。
傷は浅かったため、血は滲んだだけですぐに止まった。
「…分からない。でも綺麗」
彼女はまた分からないといって、でもいくらか血の赤に興味を示したようだった。
その血は、酷く彼女に似合っている気がした。


今度は、思うより深く切りつけた。
彼女は、やっぱり何の反応もしなかった。





「深梛は分からないことが多いんだね」
俺は横たわって天井を見つめる深椰に視線を移した。
白い腕に赤の色をたたえて、両方の腕を投げ出して横たわる深椰。
その顔には、やはり感情が見られない。
さっきよりは、幾分か青白くなったかな。
「うん…私はどうでもいいことが多いの。だから分からないの」
呟くように、ただ言葉の羅列を吐く。
俺はその姿が愛おしいと感じてきた。
だから彼女に口付けした。


「…やっぱり意味が分からないわ」
彼女はまた意味を追求した。
「どうして貴方が私にキスをしたのか。どうして貴方は私を殺そうとしたのか」
淡々と、唇を動かして言葉を紡ぐ深椰。
「腕を切っても、確実に死ねるとは限らないのに。不確実なことをして私を殺そうとしたのか」
どうして、と俺の方へ目を向ける。


俺は少しだけ微笑んで。
「知らないよ」
と笑った。


深椰は、興味無さそうに「ふぅん」と呟いた。




ほんとは、ね。
実践してあげたんだよ。
物事に意味なんかない。
…少なくとも、俺の行動に意味はない。
深椰の腕を切ったとか、深椰を殺そうとしたとか、そんなの理由はないんだよ。
そんなの俺にも分からない。
深椰には、まだ教えてあげないけれど。


また明日から、深椰は意味を求め続けるんだろう。
2003-10-18 21:32:55公開 / 作者:仙道
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■作者からのメッセージ
初めまして、仙道と申します。
つたない文章ですが、投稿させていただきました。
意味が分からない上、なんだか気持ち悪い話になってしまいました。知らない女と、知らないけど気にならない男の話でした。
…ほんとに意味わかんなくてスイマセン。
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