『中学生の素』作者：千夏 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
全角2622文字
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原稿用紙約6.56枚
＃１
私は公立中学校に通う１３歳の青島和歌。ただの普通の中学生だ。
「はい、次ねー、４８ページ開いてねー、鹿島さん読んでー」
変な訛りと『ね』が口癖の、数学の斉藤。私が最も好む教師である。
斉藤が教科書に目を向けた瞬間、その一瞬一瞬が私たちの勝負だ。後ろから苺折りをされたピンクの手紙が投げられた。それには『Dearわか　Fromひとみ』と書いてあった。
斉藤に気づかれないように机の下で丁寧に苺を開いた。
『Dearわか☆　マジ斉藤の授業つまんないー↓↓「ね」多すぎだしッ！でもレター書けるからいいよね☆気づいてんのかな〜。気づいてるよね、やっぱし。だったら注意しろって感じ↑↑まぁそこが斉藤のよいトコロ↑↑あぁ〜〜次は体育だ〜。わか今日の体育やるの？やるんだったら一緒に更衣室行こうＹＯ☆　Fromひとみ』
私は笑いそうになるのを堪えて、机の中からメモ帳を出した。一枚切り取って、斉藤に気付かれないように机の上に出す。すかさず筆箱で紙を隠した。ペンケースからピンクの細いペンを取り出す。
何度も黒板を見るようにして、私は返事を書いていった。
『Dearひとみ。　ホントホント。斉藤の授業のつまんなさは一級品だねッ☆ぶっちゃけ家で自分でやったほうがいいっていうか↑↑あ、体育はわかもやるよ〜ん☆一緒行こうじぇ！！そういえばひとみ、今日遊べる？？遊べたらこの指とーまれッ！　Fromわか』
フロムの前に指を描いた。我ながらこういう絵だけは得意だと思う。
ふと時計を見ると、丁度授業が終わる時間だった。
（キーンコーンカーンコーン）
「えーもう終わりなのー？まだ全然進んでないじゃなーい。もうこれ宿題ねー分かったー？号令ー」
斉藤は次が体育と知ってすぐ終わらせた。号令係が「起立、礼」と早口で言った。みんなちゃんと礼をする者はいなかったが、私もその一人、手紙を折っていた。
後ろで仁美が「はー終わったー」と伸びをしていた。私は「ギリギリＯＫ！？」と言ってミルクビンの形に折った手紙を仁美に渡した。
「あーありがとう」
微笑んで仁美は「更衣室、行こっ」と言い、廊下にかけてある体育着を取って二人で更衣室へ向かった。

＃２
シンと静まり返った教室。ついさっき社会の加藤が教室を出たところだ。
後ろから二番目の席に座っている私は、クラスの様子が見渡せる。そう、この先生がいないという絶好のチャンスを機に私たち女子は手紙を回すのだった。「綾香に回してっ」「麻生、これ加奈子に」…そして私も。
「はい、仁美」
後ろを振り返り渡した。仁美は「ありがと」と言うと「私も書いたよ」と微笑み、手紙を交換した。私が今手に持っている苺折された手紙の数は三つ。仁美には渡したので二つだ。
私は隣りの席の紺に「これ、陽子ちゃんに渡して」と言って、苺折の『陽子ちゃん江』と書かれた手紙を渡した。紺は何も言わずに隣りの女子に回した。私はその子に「ごめんね」という仕種をして見せ、紺にも一応お礼を言っといた。
遠くの席の子に回すのは、それまでに居る子にも手伝ってもらう。もちろん私も手伝うのだから、お相子だろう。それが男子だとしても。

さっき仁美からもらった手紙を破れないように丁寧に開いた。その瞬間、廊下側の男子が小さな、でもみんなに聞こえる声で言った。
「加藤が来る！」
女子は一気に静かになった。クラスは静まり返った。ガラッとドアを開ける音がして、社会の加藤が入ってきた。
「えらいですねぇ。ちゃんと静かにしていましたか」
何人かの男子が「そりゃ〜小学生じゃないんだから」とノっていた。こういう時、こういう男子は役に立つのだった。
それからの授業、私は手紙を必死で書いていた。

＃３
寒い〜、と腕を摩擦で暖める私の横で仁美は叫んだ。
「最悪！あたし今日ジャージ忘れてる！」
私はその言葉を聞いて「ヤバイ！」と心底思った。冬の体育にはジャージは欠かせないのである。
「ごめん和歌〜。一組までついてきて〜」
手を合わせて私に言う。私は「いいよいいよ、行こっ」と明るく返事を返し、仁美の鳥肌たった腕を引っ張って一組の教室まで走った。
教室に着いて友達からジャージを受け取った瞬間、チャイムが鳴った。
「ありがと！給食の時間返し来るから！」
仁美はそう言って私にもお礼を言った。
「ごめんね付き合わせて！ありがと！」
私たちはダッシュで体育館へ向かった。

「もう、時間始まってるんだけどなぁ？気付かなかったのか？何してたんだ？」
私と仁美はもう号令が終わったところで入ったので、体育の相島の得意のクエスチョン付きの話を始めた。正直、この喋り方は変態である。なぜ女子の体育の教師も男なのかがさっぱり分からない。
長々と変態相島の話を聞いてから、最後に私たちは深く頭を下げ謝った。
「すいませんでした！以後気をつけます！」
相島は「じゃ、早く体操しろっ」と私たちを列の中に入れた。
私と仁美は背の順でも隣なので、仁美が何度も謝った。
「ごめんね、和歌本当にごめん」
私は言われるたびに「いいよ」とだけ言った。そしてたまには話を逸らせる。
「っていうかマジ変態じゃない？喋り方。早く体操しろって、あんたがうちらを怒ってるんじゃん。気をつけますって言ってんのに」
仁美はまだ少し謝って、「ホントホント」と話を合わせた。

体育はバスケットボールだった。仁美と私は丁度違うチームになり、今は仁美が試合している。
数人の女の子が近寄って来て、私は微笑んだ。どうしたの、と言って。
「大丈夫ー？さっき和歌と仁美なんか相島に言われてなかった？」
心配して来てくれたのだった。
「ううん、大丈夫。まったく、相島の喋り方じゃ耳の中にも入らないし。ワタシアイシマゴワッカリマセーン」
外人を真似て、相島語と言う。女子の中では相島語イコール変態っぽい喋り方ということになっている。女の子たちは笑って「今の和歌かなり面白い」と私を褒めた。面白くしているのに面白くなかったらどうしようもないな、とふと思ったりする。
それから私たちのチームの番になって、コートへ入った。
後ろで仁美が「和歌がんばれー！」と言っているのが分かる。私は「がんばるぜぃ」と微笑んで返した。
笛の音が鳴った。
（続く）
2005-01-10 18:26:24公開 / 作者：千夏
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■作者からのメッセージ
こんにちはッ♪
ちょっと久しぶりの更新になりました；スイマセン；
私の学校は７日に始業式があって、明日から普通の授業です＞＜
もうホント手紙書く紙買わないと…（ぉぃ
ではでは、感想など待ってますッ！
この作品に対する感想 - 昇順
初めまして。中学かぁ…でも高校でも手紙回すのはやりまくりですよ（笑）話の内容はとても親近感を持ちながら読む事ができました。この先どういった展開で進んでいくのか楽しみです。次回の更新も頑張ってください☆
2004-12-27 17:58:33【☆☆☆☆☆】満月
久々の千夏さんの新作ですね。さっそく読ませていただきました。分量的にかなり短めのスタートなのでストーリーに対するコメントは難しいのですが、ノンフィクション作品と言う事で、千夏さんのごく日常の学園風景を綴っていく連載物になっていくのでしょうか？　次回以降の更新に期待しております。
2004-12-27 19:53:11【☆☆☆☆☆】卍丸
読みました。初めまして、影舞踊といいます。ノンフィクションですか。中学生の時は確かに紙回すのはやったなぁと懐かしく読ませていただきましたｗでも１３歳つったらさっきまで小学生ですよね(さっきまで！？　これからの展開に期待しています。
2004-12-27 20:42:05【☆☆☆☆☆】影舞踊
初めまして、Rikoris(リコリス)と申します。ノンフィクションですか。紙回しは私の学校でもはやってますね。私の学校にも、『ね』が口癖の先生が居て（笑）重なってしまいましたよ。これから、どう話が展開していくのか楽しみです。次回の更新も頑張って下さい！
2004-12-27 23:40:56【☆☆☆☆☆】Rikoris
みなさんレス有難うございます！満月さん→はじめましてｖｖ私もきっと高校行っても手紙回すと思います；この話は展開というか、極々当たり前の日常を赤裸々に語っていく感じなので、特に「！！」というものは考えておりません。予定は未定です。　卍丸さん→お久しぶりですｖｖそうなんですよ！投稿してから気付きました；短いことに；；卍丸さんの予想通り、ごく日常の学園風景を…と思っております！　影舞踊さん→はじめましてｖｖやっぱ紙回さないとやってけません。あんなつまんない話。って、えッ！？さっきじゃないですよ！！去年ですって！（それくらい分かります。 Rikorisさん→はじめましてｖｖ紙回しってやっぱ普通ですよねｖｖ（安心）「ね」口癖の先生がいるんですか！？もうホントに可笑しいですよね！！実は同じ先生だったり…（ォィ
2004-12-28 00:19:48【☆☆☆☆☆】千夏
続き読みました☆日々当たり前に起きている事を言葉にするって簡単そうで以外と難しいんですよねぇ。でも千夏さんは文章の形もきれいだし、とても読みやすいなぁと思いました。次回の更新も楽しみに待ってます！　頑張ってくださいね
2004-12-28 15:37:48【☆☆☆☆☆】満月
手紙回しかぁ……やりますね。一時間ずっと手紙かいてたこともあったのですよ（オイ　それから、『ネ』が口癖の先生。いました、いました！！　みんなで一分間に何回『ネ』言うか、数えてました（爆笑☆ちなみに軽く百回超えてましたよ。
2004-12-29 00:08:03【☆☆☆☆☆】ゅぇ
レス有難うございますッ！満月さん→文章の形きれいですか！？ありがとうございますｖ読みやすいのは心がけてるのでそれも言ってもらえると嬉しいですｖ私はけっこう言葉にする、という行為が得意なのかそれはあまり苦になりません。でもたまに全然できなくなることありますよ；　ゅぇさん→手紙回しやりますよねーｖｖ私も一時間ずっと手紙書いてることよくありますｖｖ教科によって書けたり書けなかったりしますし；ゅぇさんのとこにもいましたか！？「ね」先生！！意外といるもんですね。私も入学した時はみんなで数えたりしましたが今はしてません；きっともう手紙で必死なんだと思います；
2005-01-10 17:58:24【☆☆☆☆☆】千夏
こんにちわ!!読ませていただきました!!手紙回し…女子がよくやっていたのは覚えているけど、その時の教師が「禁止令」とかうるさく言ったせいでやんなくなったものだなぁ…って!?何私事に入ってるんだ!?
ストーリーが入り込みやすくて、とっても柔らかい雰囲気を漂わせる感じの話だと思います!!これからの展開が楽しみ、なので、次回も期待して待ってます!!
2005-01-10 19:13:54【☆☆☆☆☆】ニラ
こんばんは。最近はすっかり読専にまわっている卍丸です。久々の更新ですね。もうストーリー性うんぬんは抜きにして、中学生パワー全開といった印象です（笑　ここまで行ったら、とことん突っ走っていただきたいですね！　主人公と等身大の千夏さんが描く学園風景、ごく天然な雰囲気が良いですね。続きもぜひぜひ頑張ってくださいっ。
2005-01-10 20:03:18【☆☆☆☆☆】卍丸
すげえなつかしい！（笑）一年前だけど中学おもいだしたあ〜〜。やってたなあ手紙交換。どれだけやんだよってぐらぃ（再笑）色々男はつっこんでたなあ〜。でもコレ読んだら気持ちわかってしまう。おれもやろうかなあ・・
（いや、マヂで）
そしてやっぱり体育教師は全国共通・・・ということが勉強になったなあ・・・と（￣▽￣；）
更新楽しみに待っています。同じAB同士頑張りましょう！
2005-01-10 22:22:21【★★★★☆】貴志川
暫く読んでなくて、２・３通して読ませていただきました。特に何が起こるというわけでなく、普通の学校生活を描いた作品ですね。(もしかしたらここから何か起こるのかも　明るい中学生の姿が懐かしいです。次回も頑張って下さい。　ｐ.ｓうちの学校には「はい」を連発する先生がいました。そりゃもうすごいもんで(初めての授業の時、爆笑でしたｗｗ
2005-01-11 16:48:00【☆☆☆☆☆】影舞踊
やっぱり懐かしいですねぇ……うん、セーラー服。まだ着れる！！（吐。今回も楽しく読めました。ホント、『中学生の素』って感じ。ちょっぴり文章が単調になってきたかなっ？とも思ったりしましたが、いやいや、若さ全開で羨ましい。続きも頑張ってくださいねっ♪
2005-01-11 21:57:39【☆☆☆☆☆】ゅぇ
レス有難うございます！！　ニラさん→『禁止令』ってありましたよ！でもあんまり効果無くて、みんな普通に手紙書いてました；（←その中の一人。）柔らかい雰囲気が漂ってますか？自分では思いもつかない感じだったのでそう言ってもらえると嬉しいですｖありがとうございます。　卍丸さん→読専ですか；卍丸さんの作品読んでるんですけど未だに最後まで読めてません＞＜でも面白い設定だと思ってますよｖ中学生パワー全開で書いてますよッ！！ならでは、というのを目指していますので、どうぞ続きも暇あれば読んでみてください♪　貴志川さん→懐かしいですか！？ってことは高校ではやらないのか…。体育教師以前に「ね」が多い教師も全国共通なんだということも分かりましたよ。発見の多いみなさんの感想ですｖＡＢ同士がんばりましょうね！　影舞踊さん→特に何が起こるわけでもないですが、みなさんを退屈にしないように何かをしようと思ってます＞＜少々お待ちを…。「はい」連発する教師もいるんですねｖでもまだ笑える感じだからいいと思います。「ね」は段々うざったくなってきますから；　ゅぇさん→セーラーだったんですか！？羨ましい＞＜私の学校はブレザーなのでセーラーとかかなり羨ましいんですよ！文章が単調になってきてますか？これからは気をつけますッ！続きがんばらせてもらいます♪
2005-01-13 19:22:53【☆☆☆☆☆】千夏
面白いです、正直に認めさせていただきます。いいなあ、中学生かあ・・・。
・・・（笑泣）。・・・（しみじみ）。更新楽しみにしてます。
2005-01-17 00:03:48【☆☆☆☆☆】ココハ
計：4点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。