『Fate Breaker 1〜9話』作者:Unknown / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
全角38464文字
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原稿用紙約96.16枚
第1話「灯された、滅びという名の運命」


「さて、この星もそろそろ潮時かな・・・・・」
暗闇に響く声
「では、今回も?」
もう一人、こちらはやや幼い、どちらかというと少女の声だ
「うむ。」
「その星に危険因子は?」
「わからん。この星だけ未知数なのだ油断ならぬ」
「大丈夫なのですか?」
少女が問う
「わからぬ。だがこの星は明らかに歪んでいる。
 このままでは「秩序」が乱れる」
「わかりました」
「頼んだぞ」
そういうと、少女の声がプッツリ途絶え、フッ、という音とともに消えた。
「さて・・・・どうなるのか・・・・」

「どうやら動き出したようですね」
さっきとは別の場所のようだ。
若い、青年のような声の男性が言う。
「うむ。じゃがあそこには「あやつ」がおる。」
こちらは張りのある、男性の老人のようだ
「あの方・・・ですか」
「うむ。まぁ、あやつが動くとは思えんがな。
 ただあやつにはその力を受け継いだ
 息子がおる、と聞いておる」
「そうなんですか」

男性が言う
「じゃが力的にはまだまだ未熟じゃ」
「では、私の今回の任務は・・・・」
「うむ。頼んだぞ」
老人が真剣に言う
「任せてください」
そういうと、男性はどこかへ消えていった・・・・・


―ゴッ!!
辺りに鳴り響く強烈な音。
「いつまで寝てるんだよ!!」
一人の青年が今まで寝ていた青年の頭をを本の角でを容赦なく叩いたのだ。
「ッ!?・・・・・・・・くぅ〜〜〜〜」
―特徴的なハチマキを頭に巻いた
 青年は声にならない悲鳴を上げた。
そして叩いた青年はそんなのおかまいナシという感じで
「もう放課後だぞ!!今日は教師達が会議で授業が早くあがれるから
 レサイド・シティに行くんだったんだろ」
「・・・ハッ!そうだった!!今日は あのウザッたい見張り帝国兵もいな いのか!!!よし!!行くぞ、レイン!!」
そういい、叩かれた青年はダッシュで教室を出、5秒後にはもう校門にいた。
「いやマテこら!!早すぎだぞ
 いくらなんでも。いくら
 見張りがいないからって・・て
 待たんか〜い、リューク!!」
レインと呼ばれた青年はあ
 わててリュークのあとを追う。
ここは「アンウィル」と呼ばれる世界。

この世界はおよそ6つの大陸からなっていてそれぞれが
「ディレク」「エルヴィス」「フレイク」「レガ」
「メルス」「トーリス」と呼ばれている。また、未確認の島、大陸もあるといわれている。今から500年ほど前まではこの世界は
いたって平和だった。(最も、それ以前に関しての記録が全く見当たらない
だけだが)しかし、その年を境に6つの大陸でいちばん力を持って
いた「ディレク」が、突如、隣大陸である「エルヴィス」
に宣戦布告。戦争を始めたのだ。
有名な「オブスキュア戦争」である。
いままで軍事力らしい力を持っていなかった。
「エルヴィス」はこれになすすべもなく敗れ去っていった。その後「ディレク」は次々と他の国もたいらげていき、日増しに勢力を広げていった。しかし、最後の小さな名もない国が落ちようとしたそのとき、何かが起きた。
そして・・・・なぜかここから先がわからないのである。
歴史からも人々の記憶からもこのできごとから5年間のことは覚えていない。
わかることはその空白の5年後、世界にはまたいつもどうりの平和が戻り、人々は安息の日々を送っていた。落ちたはずの
「エルヴィス」や他の国も元通りの状態で・・・。
しかし、今から7年ほど前、またも「ディレク」
が動き始め、当時世界を治めていた王を抹殺。そして新しい「ディレク」の王、フレンが自らを皇帝と名乗り、「ディレク」を帝国とし
世界統圧を始めたのである。
しかし、「エルヴィス」がそれを黙ってみてはいなかった。昔とは違い「エルヴィス」も強力な「聖天騎士団」や「魔道戦士団」を組織しており
充分に帝国に対抗できるような力を持っていたのだ。
(世間一般的に「エルヴィス」を共和国、「ディレク」は帝国と呼ばれている。)
しかし、帝国の力は想像以上に強大で、真っ先にその影響下にされたのは
世界各地に点在する「ホ−ム」だった。
「ホーム」とは現実の「学校」と同じく、生徒の学びの場だ。唯一違うのは、そこで生徒は皆、戦術を学ぶということだ。
あるものは剣術を、あるものは魔術を、というふうに皆なにかしらの
戦術を持っているのだ。一日6時限のうち最低、2時間はこれが組み込まれている。
なぜそんなことをするか。それはこの世界に古くから住む動物が土壌から湧き出るわずかな魔瘴に蝕まれていき魔物と化したモノに対抗できるようにするためなのだ。
更に、最近は前にも増してその魔物の勢いがすごい。
そのための護身術、という意味合いもある。
ちなみにリュークは剣を、レインは槍を武器としている。特に、リュークの
剣才はすさまじく、我流でありながら、ホーム内トップである。
レインも、槍術なら学校でもトップクラスである。
しかも頭もいい。(リュークはダメダメダメダメ)
ちなみにこの「ホーム」、昔はそれぞれの名前をもっていたようだが今では「ファ−スト」「セカンド」「サ−ド」と階級別に区分されそこに番号がつくようになってしまったのだ。少しでも階級を上げようと
裏で泥まみれたことがされているとの噂もある。リュークのいる学校は
「セカンドホーム五番」とされている、いたって平和なところである。が、このあと、彼とその仲間たちが繰り広げる 一次元を巻き込む闘いが始まるとは誰も予想はしなかっただろう。

今、一人の青年の「運命」への「挑戦」が始まる・・・

第2話 「前哨」

「ったくあいつは・・・・・なにもあそこまで急がなくても・・・・・」
ブツブツぼやくレイン。
校門に来てみると、そこにはリュークのぼろぼろになった姿がッ!?
「どうしたんだよ、その姿!?」
そこでレインの存在に気づいたリューク。
「今、そこで校門を飛び出したら、いきなりセリアがぁ・・・・」
と、力尽きたか倒れ伏すリューク。
「セ・・・・・セリアが!?」
思わず声を上げるレイン。
すると校門の向こう側からあがる怒りとも思える声
「まだいたの!?懲りないわねぇ・・・・」
瞬間、校門のほうから何かが飛び出してきた!!
あわててよけるレイン。
「うわっ!」 
ズガンッ!!
飛び出した何かはそのまま突っ込んでいき、レインのそばに立っていた校門の柱をブチ砕いた!!
「な、なんだ?」
「?・・・あら!レインとリュークじゃないの!!・・・・どうしたの?その姿?」
飛び出してきたなにかは彼女だったのである。
「お前にやられたんだよ・・・・・」
かすれた声を絞り出すように言うリューク
「え?あれってリュークだったの?
 ゴメンゴメン。てっきりまたあたしの追っかけかと思ってさ」
セリアはこうみえて(みんなには見えないか)学力は非常に高い。
ホームでも5指に入るほどである
そして彼女は拳闘士であり、その実力は5年連続校内大会拳闘部門優勝である。しかもスタイル抜群。そのため男女問わず
彼女のファンが多く、常に彼女はそういうのに追われる立場となっている。
しかし、セリアはそういうのが嫌いで、相手が女性なら仕方なく逃げるが
男ならば、さっきのリュークのように容赦なく叩きのめす。
「あんたたち、これからなにしに行くの?」
「えぇ!?いや、ちょっとそこらを散歩・・・・・」
思わず言葉を濁すレイン。
「怪しいわねぇ・・・あんたたちが散歩?ありえないわ。察するに・・・
 あんたたち、レサイド・シティに行くつもりね?」
「ギギギクゥゥ!!なんでわかった?」
「そりゃあ腐れ縁ですもの、あんたらの行動は丸わかりよ。それに、 私は あんたたちと違ってここの出来が違うのよ」
といい、自分の頭を指す。
レイン、背筋に冷たいものを感じる。
「そうねぇ・・・じゃ、行くついでにおつかい、お願いできる?」
「いやだぞ、そんなの」
いつの間に復活したか、リュークが抗議する。
「なに?あたしの頼みが聞けないとでも・・・?」
ゴウッ
セリアから殺気を感じ取ったか、思わずあとずさるリューク
「う・・・いや決してそんな・・・」
「ならさっさと従いなさ・・・・」
なにを感じたのか。そこでセリアは言葉を切り、真後ろにあった大木に振り向きざま
「ハアッ!!」
と叫び、体を引き絞るように回転させ、返る力を反動にし、思いっきり大木を蹴ったのだ!!
ズドン!!・・・・ミシミシミシ・・・ドスンッ・・・
「ぎゃっ」
木が音を立てて倒れる音、それに紛れて誰かの悲鳴。
「あいかわらずすさまじい力をお持ちで・・・・」
「おかげさまで。それよりも今の声、気にならない?」
そしてセリアはある方向はあごで差す。
リュークたちがその方向を見ると・・・・・
「あ!!あれは「自称・セリアファンクラブ」の証であるリストバンド!! ってことはあれは・・・」
そう、そこには大木の下敷きになり、気絶している男子生徒の姿がっ!!
「あいつはあたしがここにきたときからいたっぽいのよね・・・・で、
 あんたたちがきてから・・・あたしと話してるあんたたちが羨ましかった んでしょうかね、後ろのほうから消していた
 気配が見え隠れするようになってね・・・・
 で、ついさっきあいつの位置が確信できてからやったってワケ」
「・・・・生きてんのか?あいつ」
「足とあばらを何本か折ったぐらいっしょ?」
「ヒィィィィ!!」
2人、小さな悲鳴を上げる。
「で?お使い頼まれてくれるの?くれないの?」
「わかったよ、いくよ・・・・で、なに買えばいいん・・・?」
「ああ!!それなら俺が聞くよ、こいつ聞いても自分に関係ないことは
 すぐに忘れっから」
「ぐ・・・なんだと?」
しかし無視されるリューク
「そう。じゃあ、必要なものはこの紙にメモしてあるから」
そういいレインに紙を渡した後
「頼んだわよ〜☆」
と送られ、出かけた二人
「「トホホ・・・・・」」
はたして彼らに待ち受けるモノとは・・・

第3話「お前もサボり」

ここはリュークたちの住むトーリス大陸でも2番目に
大きい都市「レサイド・シティ」である2人はというと・・・・・
ズシ−リ、ズシ−リ・・・・
重たい足運びで市内を歩き回るリュークとレイン。
2人とも両手に買い物袋2袋抱え、首にももうひとつさげ、非常に辛そうである。彼らの剣幕に気圧されてか、通行人は皆、彼らを避けていく
「重い!!重すぎる!!!ハァハァ・・・こんなんじゃ・・・・
 ホームに着く前に力尽きちゃうぞ!!」
「文句言うな、ゼェゼェ・・・リューク。
 んなこという・・・とよけい重く感じる・・・・」
などとあえぎながら言い合う2人。
2人が今いるのはレサイド・シティのほぼはずれに位置する場所である。
買い物を終えた2人はとりあえず休憩場所を探しているのである
「お!あそこなんかいいんじゃん?あの木の下!」
リュークが示したところは、なるほど、休むにはちょうどいい大きさだし
この昼間の暑い日ざしからも避けられる場所である。
が、そこへ行ってみるとすでにそこには先客が。
「ん?誰かいるぞ・・・って、あ!!リィナ!リィナじゃねぇか。
 なにしてんだ?こんなとこで。つうかいつの間にホ−ム、抜け出した?」
「んあ?」
今まで寝てたのか、目をこすりながら寝ぼけた声を出す少女
「こんなところで寝てていいのかよ・・・・・」
ややあきれた声を出すリュ−ク
「・・・?あ!!えと・・・・リューク君と・・・・レイン君?」
「「そうそう」」
彼女は先月転入してきたばかりでリュークたちのいるクラスに入った転校生である。
「で・・・なんでここにいんの?授業は?」
「ええっと・・・そうそう、ちょっとね、友達に頼まれて買出しに出てた  の」
リィナは魔法を習っており、その実力は、まだ魔法士大会に出てないので未知数だが話によると、ホーム内一の魔法力を誇る教師をも凌ぐらしい。
ちなみにさっきの説明にも出てきた「大会」とは、大きく分けて2つある。まず年に3回開かれる「種目別大会」。
そして年末に一度だけ開かれる
「ホーム内総合闘技ナンバーワン決定大会」がある。
リュークは2度、レインは1度、セリアは3度、この「総合〜」に優勝している。
「時間が無いから急いで戻ろうとしたんだけど、途中で
 「ま、いっか〜」ってなっちゃって・・・」
テレながら言うリィナ。
「へぇ・・・・つまりサボりか」
当然だといわんばかりに問うリューク
「ち・・・違うよ!!」
あわてて否定するリィナ。
「そんなことすんのはお前だけだって」
呆れ顔でいうレイン
「なぁにぃ?」
ムカッとくるリューク
「やめなよやめなよ2人とも!!仲良く仲良く・・・ね?」
「チッ。暑いから余計イライラする・・・・」
とりあえず怒るのはやめたリューク
「そろそろ帰ったほうがいいんじゃねぇの?みんな心配するだろ?」
「そだね。じゃあね〜」
手を振りながら帰るリィナ
「さて・・・と、俺たちももう少し休んで行くか。
 なんだかんだいって俺たちもサボってるようなもんだしな」
そこでなにに気をとられたかある一点を見つめるリューク
「どうしたんだよ・・・・?」
見れば、そこには普通の人なら絶対に気づかない
ひっそりとした場所に立っている武器屋がある。
「あそこになんかあんのか?」
しかし聞く耳も持たずボ〜ッと見続けるリューク。そして
「俺ちょっとあそこに行ってみる・・・・ここで待ってろ」
といいスタスタといってしまうリューク
「別にいいけど・・・・早く戻って来いよぉ」
「おう・・・・」
常人なら気づくはずも無い古ぼけた、地味な武器屋、そこは一体?

そして・・・・
「・・・・ここか。」
リュークが武器屋に入った
時とほぼ同刻、謎の集団が
レサイド・シティに現れた・・・・・・・

第4話「回りだす、歯車の先に・・・」

そこは言葉ではいい表せられない何かを感じる場所。
リュークが立ち寄った武器屋の中である。
「なんだ・・・・・・?」
なにか違和感を感じるリューク。
「なんだろう。なにか・・・一つだけ決定的な何かが欠けてる・・・
 一体なんだ?」
呆けた表情であたりを見渡すリューク。
見た目はなんら普通の武器屋と変わりはない。
が、リュークはその中に隠れている「なにか」を感じあぐねていた・・・。
「ほう、なかなか鋭い勘をしておる・・・・・。
 ま、それぐらいはなきゃ、ちと困るがの」
奥の部屋からカウンターへ、いつの間にか、やってきたのは1人の老人
「どわっ!?びっくりした・・・・じいさんがこの店の主人か?」
戸惑うリューク
「ま、そんなもんじゃろう。ところで青年よ・・・・・
 おぬし、何故ここに来た?」
問い返す老人
「何故って・・・なんかなんとなくここに吸い寄せられた感じで来たから
 理由は特に。つうかここなんなんだ?普通じゃないぞ」
「ほう。これまた面白い答えじゃ。ふむ・・・
 その問いに答えてよいか否か・・・
 どれ、こっちに来て「目」を見せてくれ」
「は・・・・?」
わけのわからないリューク
「いいから。はやくこっちにきんしゃい」
仕方なく老人の方へ向かうリューク
「どれどれ・・・・フム、いい目をしておる。澄んだ穢れなき目じゃ。
 最も、性格に問題があるようじゃがの。
 やはり間違いないようじゃな。よかろう話してやろう。
 ・・・・ここに来たとき、お主、
 なにか不自然に思っとったろう?」
「ッ!?」
思わず警戒するリューク。
なぜならここに入ってきた時、この老人は始めからカウンターには
いなかったはずだからだ!
「あんた、一体・・・?」
「ホッホッホ・・・・安心せい。わしゃあ悪党ではないぞ。単なる案内役じ ゃ。それより辺りをよぉく見てみよ、
 ここがどういう場所なのか、わかるはずじゃ」
言われて見渡すリューク。特に変わった
様子もなくコレといったものはないが・・・・・・
「あっ!?」
ふと振り返ったリュークはそこで驚いた!
なぜならさっきここに入ってきたときに
開閉した扉にはベルがついていたのだ。
だがおどろくのはそこではない。
なんと、そのベルは扉から離れ宙に浮いたまま、固まっているのだ。
ちょうど扉を開けたときの衝撃でベルが鳴る、その時のベルが揺れている
シ−ンを停止させたような状態だ。
「な・・・こんなことが!?」
唖然とするリューク
「あるんじゃよ。ここだけじゃがの。無論、本当の世界はこうはいかぬよ」
「ってことはここは現実の世界じゃないのかよ!?」
あわてるリュ-ク
「ホッホッホ。まぁそうあわてなさんな」
老人の表情は柔らかい
「そうだじゃのう。ここは言うならば現実と異次元、
 二つの世界の狭間に位置するところじゃ」
「なっ・・・!?」
言葉を失うリュ−ク
「ここは存在のバランスが不安定での、時の流れが
 止まっておるんじゃ。じゃからここでは意志なきもの、またはあってもそ れが弱いものはみな、「存在」という時の流れともいうべきものを失って しまうのじゃ。人間とて例外ではないぞよ・・・・」
だから意志のないベルなどの物質も止まっていたのである
「じゃ、じゃあ俺が感じた違和感ってのは
 時の流れがないってことだったのか。
 ん・・・・?待てよ?じゃあ異次元って
 トコは時間はながれてないのか?」
「いやいや、ちゃんと向こうでも時間は流れておる。
 ただ、こっちと向こうでは時間の流れかたに食い違い
 があっての。それでそのずれがここ、「次元のひずみ」
 としてあるわけじゃ」
「フ〜ン・・・・」
わかったふりをするリューク
「さて、お主にはこれを授けておこう」
やおら、老人が懐から取り出したのは、一振りの剣。
ただし、刀身はその三分の二ほどが折れており、
元々はあったのだろう鍔さえなく、ボロボロである。
「な、なんだよこれ。こんな
 不良品、俺はいらねぇぞ・・・」
顔をしかめるリューク
「そう言いなさんな。持ってても損はないじゃろ、それに、
 お主は、必ずこれが必要になるときが来る。」
のんびりという老人
「じいさん、もしや占い師か?」
いぶかしげに言うリューク
「いやいや、わしゃあそういった類の者
 ではない、予言と予想は違うものじゃ・・・・・
 さ、受け取るがいい」
差し出す老人、渋々受け取るリューク。
そしてそれを懐にしまう
「お主にはこれから困難で険しい試練がたくさん待ち構えておるておる。
 そして今はその目先で起こる一つ一つの試練を
 こなしてゆかねばならん。お主ならできるじゃろう。 
 が、越えることが絶対に不可能な壁が現れたとき、またここを訪れるとい い・・・・そして、抗えぬ運命に逆らうのじゃ」
渡しながら老人はこういった。
「あ、ありがとうな・・・ところで、
 ここから外の様子が全然わからないんだが
 ・・・どうなってんだ?」
ずいぶん大げさな物言いにしどろ
もどろさせながら言うリューク
「おお。ここでは外界の情報は一切シャットアウトされとるんじゃ。
 外じゃな。待っておれ・・・・」
そういうと老人は目と閉じ、静かに
瞑想を始めた。そして3分ほどたった後
「どうやら街が魔物の群れに襲われておるようじゃな」
静かに言う老人
「な・・・!?そんな落ち着いて言うなよっ!
 つうかそれってありえない事だぞ!!」
そう、普通ならありえないのである。
なぜ、世界中にはびこっている魔物が街を襲ったりしないのか。
魔物は大昔からすでにこの地に住み着いていて、古代人も困っていたようである。そこで古代人が考え出したのが
「護方陣」というヤツである。
これは「魔聖石」と呼ばれる石を街の外に5つ、組めば五ぼう星になるような形で埋める。そして、しかるべき
呪文を唱えれば「護方陣」と呼ばれるバリアができるのである。この中には
魔障の影響を受けたものは入ることが出来ないのであるもちろん、この街にもそれはある、だから魔物が侵入することはできないはずなのである。
「しかし、現実に起こっておるのじゃ・・・・」
「くっそ〜、いま剣持ってないから戦えねぇぞ・・・・・」
基本的にホーム生は外出時の武器持ち出しは禁じられている。(そりゃあ危ないよね)よってリュークもいまは剣を持っていないのである
「それならばこれをもってくと良かろう・・・・・」
そういって、いつの間に取り出したのか、なにかをほうり渡す老人
「これは・・・・・」
―「ロングソ−ド」、名前からわかると通り、いたってシンプルでスタンダ−トな剣である。
「それと・・・これももってくと良かろう」
次に投げてよこしたのは「スピア」、これも槍類では基本的な武器である
「ッ!?なんであんた、
 レインの武器まで・・・・!?」
そう、この人はレインと言う存在など知らないはず
「わしゃあ何でもお見通しじゃぞぉ」
おちゃらけて言う老人
「へ、そうかい・・・ありがとよ!!またな!!」
そういって勢いよく飛び出したリューク
「ああ、いってこい・・・お前ならできる」
そして、リュークを待ち受けていたのは
「ガァウ!!」
上から聞こえる声、振り仰ぐリューク。
―大きさは普通の狼より1回り大きいぐらい、
「ウェアウルフ」魔障により、凶悪になった狼である。
「いきなりおでましかぁ!」
リュークはすぐに構えを取る
「アォォォォォオ!!」
ひときわ大きいリ−ダ−格の一吠えを合図に、一斉に飛びかかるウェアウルフたち!その数およそ6匹。ひとまず槍を置いておく
リューク、そして
「よっと!」
軽い身のこなしで一匹目の
攻撃を避け、剣を抜きながら
飛びかかる狼の、その真下にかいくぐりその腹を一気に横に薙ぐ!!
ズバッ!!
「ギャアアウ!!」
腹を深く裂かれ、悲鳴をあげながら
絶命するウェアウルフ
「楽勝!!」
誇らしげに言うリューク
「オラオラかかってこいやぁ!!」
リュークの気合に気圧されてか、後にさがる狼たち
「・・・・グルルゥ・・・」
―しばしの膠着、そして
「ッガァアア!!」
一匹が痺れを切らして飛びかかって来た!!
他の狼たちも後に続くっ!
しかしその動きを先に読んで高く、空に舞いあがったリューク
剣を上段に構えながら狼の更に上を舞い、そして
「我王剣!!」
叫ぶリューク。
すると風を裂くような唸りを上げリュークの剣が風を纏った!!
そして上段から一気に剣を振り下ろすリューク
ズバンッ!!
真下にいた1匹を両断する。
そして、着地と同時に剣を地面に叩きつけるりューク
ガンッ!
すると、叩きつけられた剣から風の衝撃波が前方に拡散しながら狼たち
向かって走るっ!!
ズバンッ!ズビュウッ!!ズドンッ!
その衝撃波を受けたものは、あるいは
切り裂かれ、あるいは吹き飛び、
建物に叩きつけられ
蹴散らされていく。そして、
残ったのはリ−ダ−格の1匹。
「グルルル・・・・」
両者の間は15メートルほど。
剣の間合いからすればかなり遠い、が
「飛炎斬!!」
リュークが仕掛ける!
今度は逆風に(真下から真上へ)剣を振る!!
はるか間合いの外である。
が、剣を振ると同時に剣身から、炎を纏った風が
相手に向かってゆく!!
グバンッ!!
斬撃と火傷、同時の力を持った刃が狼を縦に両断する。
「ガ・・・・・」
倒れ伏す狼。
辺りに敵はもういない
「まさに雑魚だったな・・・」
呟くリューク、と
「グ・・・・ガァッ」
叩きつけられ気絶していた1匹が背後からリュークに襲ってきた。
「あっ・・・・!?」
思わず振り向き避けようとするリューク!!
が、わずかに遅い!!
すると、背後から叫び声とリュークの頬をかすめてゆくもの
「ウィンドショット!!」
かすめた何かは一直線に狼へ飛んでいく、そして
ドズンッ!
それは狼の顔面を貫いていった
「ア・・・ガア・・・・」
力尽きる狼
「油断禁物だぜ?リューク」
後ろから来たのはいつの間に取ってったのか、スピアをもって
やってきたレインである
「おう!!レイン、サンキュ−!!」
リュークも剣を収め、レインのもとへ向かう
「一体どうしたんだ?」
問うリューク
「ああ・・・お前がいなくなってちょっとしたら、中央広場から悲鳴が聞こ えてな。行こうと思ったんだがなんせ武器を持ってない・・
 で、ここで隠れて様子を見てたらお前がやってきて、んでお前が奮戦して るすきにタイミングを見計らって武器を取って、
 んですかさず技を放ったんだ」
槍をながめながらいうレイン
「しっかしお前、ホント、ナイスタイミングだったぜ。
 あと少し遅かったらって思うと・・・・」
「ま、俺のほうも色々あったんだがな・・・・
 とりあえず中央広場のほうに行こう!!」
「おう!」
急ぎ向かう2人
―そしてここは中央広場。
そこに悠然とたたずむのは黒い鎧甲冑に身を包みやや幅が広めの長剣を携え、黒いマントを着た者が1人。
そしてその周りには累々たる死体の数々。
その数およそ150・・・・・
「これで終いか?」
その鎧の奥から聞こえる声は男の声
「う・・・・・うああああ!!!」
今まで建物の裏に隠れていた兵士が男の後ろからいきなり斬りか
かってきた!!瞬間!
ヒュンッ!!
目にも止まらぬ閃光!!
そして、次に見えたのは、兵士のほうを向いた鎧の男と、
首が吹き飛んだ兵士の姿。
・・・太刀筋はおろか、剣を抜いた瞬間さえ見えない、正に瞬殺である
「他愛もない・・・・」
石畳の地面に兵士の流した血が染み込んでゆく・・・・・


第5話 「魔獣との闘い」
「こ、これは・・・・」
目の前に広がる無残な仲間達の有様に呆然と立ち尽くす兵士。
彼らは広場の方で援軍要請の信号が出たので派遣された者達だ。
「一体誰が・・・」
と、中央に目を向けてみるとそこには鎧甲冑の男が一人
「ん・・・?」
その視線に気づき、振り向く男。
「なんだ、まだいたのか?・・・それとも援軍か?」
男はつまらなそうに言う
「お・・・お前がやったのか!?」
声を張り上げる一人の兵士
「だとしたら・・・どうするというのだ?」
その男から放たれる圧倒的なプレッシャーと恐怖に声を失う兵士
「面白い奴らだ」
「な・・・なにをふざけたことを!
 この人数相手にたった一人で・・・・・どうにかなるとでも思って
 いるのか!?」
隊長とおぼしきものが言う。
 その人数は念には念を、ということで100人ぐらいである。
 あと少しでさらに50人、
 来る手筈である。
 「たった1人で・・・だと?」
鎧の男が言う
 するとフワリ、と男は宙に浮いた
 「その程度の人数で・・・笑わせてくれるわ」
  
 「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
懸命に走り急ぐリュークとレイン
 あの戦いの後、2人はこの魔物発生の原因があると思われる
 広場に向かっている。が
「 この街、ちょっと広すぎじゃねぇか?」
喘ぎながら嘆くリューク
 そう、この街はトーリスで
 最も広く大きい街である
 そして、リュークたちがいたのはこの街の端、向かって
 いるのが中央広場。・・・遠すぎるのである
「まだなのかぁ?レイン。中央広場はぁ・・・」
「まだだ。あと少しだ」
レインもやや疲れた様子で言う。
かれこれ10分も走りつづけている。
「どっちだよ・・・・・っと、そこだ!」
そういい、建物と建物の間に
向かって「飛炎斬」を放つ!
 ゴウッ!!
放った先を見てみれば 1匹の丸焦げた亜人種の魔物「ゴブリン」。
いまや、魔物はこの街一帯にまで広がっていた。
そしてどうやら住民はみな、どこかしらに避難したようだ。
リュークたちは妨害してくる魔物たちもなぎ倒しながら広場へ向かう。
そして
「あそこか!?」 
叫ぶリューク。
まだ遠くてはっきりとは見えないが先に見えるのは中央に街のシンボルで
ある噴水があるひらけた場所。
「ああ!!あそこが中央広場だ・・・・・
 だが、様子がおかしいぞ?」
いち早く異変を感じたのはレイン
「早く行こう!!」
そして、リュークたちがそこで見たのは見るも無残な光景だった。
累々たる屍の山・・・・その数およそ300以上!!
どうやらあの後に来た援軍をも蹴散らしたらしい。
 「なっ!?一体誰がこんなことを・・・・?」
思わず声を上げるリューク
「ん、またか・・?まだこの俺に
 挑もうとする無知な輩がいたのか?」
ハッと視線を広場の中央に向ける2人
「お前は誰だ!」
声を張り上げて問うレイン
「名乗る必要などない。・・・・貴様らは今、ここで、死ぬのだ」
言うと同時に瞬時にしてリュークたちの前に移動してきた
鎧の男!!両者の間は50メートル以上、その距離をほんの2、3秒で縮めたのである。
その仮面兜の奥は真っ暗闇で、どんな表情をしているかはわからない
そしてすでにその手には剣が握られている
―禍々しい装飾の施された、漆黒の剣を・・・・・
「な・・・・早い!!」
「言っておくが魔術などといった類のもので
 はないぞ。これは俺の足の速さだ」
そういい剣を振り下ろす男!次の瞬間!!
ギンッ!!
金属の触れ合う音
「くらうかよ!!」
持っていた剣で一撃を受け止めたリューク
1人で受け止めるのは無理と悟ってかレインも
一緒に槍で受け止めていた!
「この俺の一撃を受け止めるとは・・・・・面白い
 小僧共、名を名乗れ・・・」
「俺の名前はリューク=ラグナイン!!」
「レイン=アルべスだ!」
そして男は2人の正面を向き
「俺の名はラグナ−ドだ」
「?・・・聞いたことないな。
 帝国にこんなやつ、いたっけ?」
構えなおしながら言うリューク
「フッ。そうでないと困るんでな。
 そうだ、われわれが今、どこを攻めているか知らないのか?」
「んなもん知るかよ・・・・・」
リュークが怪訝そうに言う
「貴様らの「ホ−ム」だ」
面白そうに言うラグナード
「俺たちの「ホ−ム」だと・・・・・?」
絶句するレイン
「な・・・・!?」
思わず剣を下げるリューク
「じゃあ、今ごろみんなは・・・!?」
「安心しろ。お前らが 想像する全員皆殺しではない
 そんなことをして何になる?」
それに対しリューク、あわてた様子で問い返す。
「じゃあ、なんなんだよ?」
「制圧だ。お前らも知っている通り、われわれ帝国は世界統圧をしている
 だが、それには膨大な軍事力、財力、そして人材が必要なのだ
 そこで、われわれは、密かに世界中
 の「ホ−ム」制圧作戦を展開
 していたのだ。」
「そんな・・・そんなこと、
 今まで聞いたこともなかったぞ」
驚くリューク
「それはそうだ、今までわれわれはこれを超秘密裏に行ってきた。
 表に出ると、共和国の輩が騒がしくなるのでな。
 それにホ−ムによってはかなり山奥にあったりする。
 そうなるともし、情報が表に出たとき
 レジスタンスに襲われる危険性があるからな」
ここで言う、「レジスタンス」とは共和国とは別に
 独自に帝国に対抗している勢力でその
 支部は世界各地に点在しているという
「そうなる前に早く戻らないと・・・!」
2人、顔を見合わせる
「だけど、こいつを倒さなきゃ・・・・」
苦しそうに言うリューク
さっきの攻撃を見る限り、彼らに勝ち目はない
「フッ、残念だ。俺も貴様らと遊んでみたいんだが、あいにく、
 もう時間でな。代わりにこいつと戦うがいい・・・」
そういうと、ラグナードは剣を収め片手を地面につき、そして
「ハッ!」
すると、手をついた辺りの地面が紫色に光り、
その光はじょじょに強まり、魔方陣を形づくっていく!!
「これは・・・・・六傍星!?」
あわてて剣を構えるリュークたち。
そして、完成した六傍星は突如強い光を放ち
 ズドォォォォォン!!
低い、腹に響くような爆音が鳴り、辺りに煙が立ち込める
 そして、その中から現れたのは・・・・・
「ブルルル・・・・・」
―ミノタウロス、凶悪な牛の顔に生えた2本の角、異常なまでに
 筋肉が発達した人間の上半身、そして蹄の足を持ち(色は全身黄銅色)
 下半身は腰巻を巻いている(裸はねぇ・・・・・)
 そして手には巨大な斧を持っている。
「げ。はじめて見たぞ、こんなヤツ・・・・・」
驚くリューク
「当たり前だろ。こいつ、本当は
 魔界にいるって聞いたぞ」
呆然と言うレイン
この世界は、普通に生活していれば気づかないが、
地上、天界、魔界の三世界構成をしている。
なぜ三つに分かれてるかはわからない。
「そうだ。ま、もっともこいつは本物より力はかなり劣るがな。 
 また会えるのを楽しみにしてるぞ」
そういい残し、ラグナードは消えた
「くっそう、あの野郎逃げやがって・・・」
「いないほうがいいだろ。とにかくまずこいつをどうにかしなきゃ・・・」
「これもかなりヘビーだけどな」
「いうなって・・・」
このピンチになっても陽気さは失わないリュ−ク
対して、慎重になるレイン・・・・いいコンビである
「ブルルル・・・・・」
標的を見据え、斧を構えるミノタウロス
「来るぞ・・・・・避けろ!!」
言った瞬間、
 ドガァァァァァァン!!!
大地を叩き割る音、立ち込める煙。
ミノタウロスがあの体勢から
一気に斧を振り落としたのだ!
煙が晴れると・・・そこには半径
1メ−トルほどがえぐれてクレーターになった地面と
そこに立つミノタウロス。
2人は・・・・・
「ヒィィ!!あぶねぇ〜」
間一髪避け、ミノタウロスの後ろに回っていた!
「んじゃ、こんどはこっちの大技!いくぜ!!」
リュークはそういうと、一気に突っ込み間合いを縮め剣を下段に構えると
「裂空翔剣!!」
片ひざ立ちのしゃがんだ状態から一気に跳びそのまま斬り上げる!風をまとわせて。
 ザグンッ!
風の効果で威力をさらに増した斬撃がミノタウロスの背中から
左肩にかけて命中する!
 「グゥ・・・」
わずかによろめくミノタウロス
 「効いたか・・!?」
着地し、体勢を立て直すリューク
 「グ・・・・・・ガァァ!!」
唸りとも咆哮ともにつかぬ声でミノタウロスは背後にいるリュークに向かって斧を力任せに振り回してきた!!
 ガインッ!!!
巨大な斧の一撃を剣で受け止めるリューク
「ぐ・・・・・・」
 ビリビリビリ・・・・
すさまじいまでの衝撃が
リュークの両腕を走る!!
たまらず、弾かれるリューク
 「なんつうパワーだ・・・・」
もはや腕は痺れて(しばらくは使えないな・・・)と思った瞬間!!
 ザシュッ!!
武器がかみ合っていたときに力を抜いておいたのだろう。
ミノタウロスの素早い横なぎがリュークのわき腹に入る!!
 「う・・・・!」
遠心力の力も手伝い、威力の増した横なぎがリュークを吹き飛ばす!!
 ドゴォォン!!
近くの建物の中に突っ込むリューク
「大丈夫か!?」
駆け寄るレイン
「ぐ・・・・」
どうやら急所は避けたようである、が
それでもかなりのダメ−ジのようだ
「うわ、コリャひでぇ。ちょっと
 待ってろ、今さらしを・・・」
そこまで言いかけ、気配に気づき、
あわてて、横に避けるレイン
ズドンッ
斧がレインのいたところを叩き割る
「ブルル・・・」
立ち直ったミノタウロスが襲ってきた!
そしてその目は傷を負って動けないリュークを狙っている
 「く・・・・」
焦るリューク、と
「スピンブレ−ド!!」
ミノタウロスの背後からレインの叫び声
 ザシュッ!!
風を切る音とともに聞こえた円形の風の刃は
ミノタウロスの、リュークと同じ場所のわき腹を切り裂いた!
「・・・これでフェアだろ?」
不敵な笑みを浮かべるレインに怒りのまなざしを向けるミノタウロス。
「グウウウ!!」
どうやら標的をレインに変えたらしい
「お前の相手はこの俺だ・・・」
構える両者、しばしの膠着、そして
「ブルル・・・」
何を思ったか、片手を地面に向け力を込め始めるミノタウロス
「・・・・?」
理解できないレイン、と
「ガァッ!」
突如レインの足元の大地が隆起し
それは銛の形を成し、レインを串刺しにしようとしてくる!!
「な・・・」
あわてて避けるレイン
「ガガァッ!」
避けたそばからまたもや足元から大地の銛が襲ってくる!
「くっ!!」
避そこね、刃がレインの左腕を斬る
「これは・・・・・」
―ロックランス、その名の通り地面から鋭利な土の刃を発生させ、相手にダメージを与える基本魔法の一つである、が
 「なんで詠唱なしなんだ・・・?」
そう、本来その魔法を発動させるには呪文を唱え、その後で魔法を発動させる。そのため、どんなに簡単な魔法でも
最低5〜10秒はかかる。
それを詠唱なしで連発で撃ってくるため
ほとんど魔法と魔法の間はない。
つまり隙が出来ないのである。
「そういえば・・・きいたことあるぞ、魔界の魔物はここの生き物とは
 生体構造が根本的に異なるって。そしてその特殊能力の一つが詠唱ゼロ」
相変わらず、唱えるミノタウロス、
それをギリギリで避けるレイン、という
パタ−ンが繰り返される。
そして時間も少したったそのとき
「ウィンドストーム!!」
レインがあらかじめ唱えていた魔法を発動する!!と、
ミノタウロスの周囲から突如
激しい風の嵐が巻き起こり
ミノタウロスの体を切り刻んでゆく!!
ズシュ!ザシュ!ブシュ!
「ガアアア!!」
たまらず声を上げるミノタウロス
「ふぅ・・・コレで一息つけるか?」
この魔法、レベルで言うなら
 中の下、といったところだが、普通の戦士は
 唱えられようもないものである。
しかしレインは特別で、リュークの武技と魔法の割合が7:3に対しレインは5:5とかなり平均的。しかも彼は代々が風のスペシャ
リストで風以外の属性はダメだが風なら、かなり高位な魔法も
軽々使いこなすほどである。そしてその血がレインにも 受け継がれたのである。
「さて・・・・・」
腰を上げ、向き直るレイン
もはやミノタウロスの全身は傷だらけ
「グウ・・・グウウ・・・」
息も荒い、が、その目はまだ闘志を失ってない
「気をつけろ・・・レイン・・・」
なんとか傷は抑えたが
 まだ、苦しそうなリューク
「ああ・・・・」
構えるレイン、と
「グアガガアアア」
最後の力を振り絞り斧を
投げ飛ばしてきたミノタウロス
「く・・・・」
意外な突然の攻撃にあわてて避けるレイン
が、斧の柄がレインの足に入る!!
メキッ!!
骨がきしんだ音を上げる!!
「ぐっ・・・」
倒れる伏すレイン
「レイン!!」
よろけながら駆け寄るリューク
「大丈夫だ・・・けど・・・」
「ああ・・・絶対絶命ってやつだな」
ミノタウロスがよろけながらも悠然とこちらにやってくる
魔力ももう使い果たしたのだろう、魔法も使ってくる様子はない。
「畜生、あとチョットだったのにな・・・・」
少し悔しそうに言うリューク
「もう動けないしな・・・・」
そしてミノタウロスが斧を取り上げトドメの一撃をあげようと
 斧を振り上げたそのとき!!
「フリ−ズコ−ル!!」
 ギヂンッ
その声とともにミノタウロスは凍ってしまった!周囲の空間もろとも。
「大丈夫?」
にっこり微笑んできたのは
「リィナ!!」


第7話「リィナの戦い」

「お前、ホ−ムに帰んなかったのか!?」
「えへへ。帰ろうと思ったんだけど 途中で「ま、いっか〜」って
 なっちゃって・・・・で、アイス食べてたら魔物がわらわら出てきて
 広場のほうですごい爆音がしたから行ってみたら、ね?」
少し困りながら言うリィナ
「でも、ありがとな。おかげで助かったよ。しかしすごいなこの魔法。アイ ツ、凍っちゃったぞ」
礼を言うリューク
「うん・・・これ?これはあんまりたいしたことないよ。こいつが
 ある程度弱ってたからこうなったの多分、あと少ししたらこれ
 も割れると思うわ」
「いいのか?今、割らなくて・・・・」
不安そうに言うレイン
「大丈夫。その前にあなた達の傷、回復させとく」
そういうとまず、程度の浅いレインの前にかがみこみ
「ヒール!」
回復魔法を唱える。これは対象の自己治癒能力を一時的に高め
回復能力を向上、促進させる、ごく一般的な回復魔法である。
しかし、コレは対象の体力勝負にもなる。
結局頼るのは自己治癒力という、自分の力なのだから。
みるみるレインの腕の傷がふさがっていき足の骨折も回復していく。
「これでよし、と。で、リューク君は・・・と」
今度はリュークの方へ行くリィナ。
傷を見て、わずかに顔をしかめる。
そして詠唱体勢に入り、魔法を唱え始める。
少し経ち、
「リザレクション!」
今度は回復魔法の中位に当たる魔法を唱える。
ヒールとは違い、周囲にある
自然のエネルギーを回復力に
転換、対象の体力を消費することなく
ダメージを回復できる便利な魔法である
そして、リュークのわき腹もみるみる
内にふさがっていき
「よし!後は体力が回復
 するまでそこで休んでて」
ひと段落終え、立ち上がりながら言うリィナ
「でもまだあいつが・・・・」
 そういい立ち上がろうとするリューク、が
 ガクンッ!!
 「!?」
傷は癒えても体力までは戻っておらずたちまち座り込んでしまう
リューク。レインはなんとか平気のようである
「リュ−ク君達はまだ動かないで・・・。あいつは、私が倒すから!」
決意に満ちた表情で言うリィナ
それはいつものほんわかした彼女とはうって違い、
凛とした表情をみせている。
「だけど・・・・」
言いかけるリュークの言葉をさえぎるリィナ
「大丈夫!私に任せて」
ウィンクを送るリィナ
「でも一人は危ないだろ?」
傷の癒えたレインが前へ出る
「俺が奴を引きつける。
 けど、動けるといってもせいぜい
 攻撃をよけられる程度だ。
 だからその隙に・・・・」
「うん。じゃあ、お願いね」
リィナの言葉が言かける。と、風に乗ってきたかすかな
死体の腐乱臭と血の匂いをかぎ、クラッとするリィナ
「だ、大丈夫か!?」
2人が心配する
「う、うん・・・大丈夫」
少し青ざめながらも微笑を返すリィナ
「まぁ、無理もないよな」
そういい、辺りの無残な死体の群れを眺めるリューク
「ヤバかったら、無理しなくていいんだぜ?」
「大丈夫!」
強く言い返すリィナ
瞬間、ミノタウロスを覆っていた氷塊が割れる!
 ガリィン!
「ブルルルゥ・・・・」
その唸り声に最初の頃ほどの力強さは感じられない・・・が
「グゥ!!」
一つ唸ると、そばに転がっていた兵士の死体に腕を突き刺す。
 ズシュゥ!!
「う・・・・・」
飛び散る血に思わず顔を背けるリィナ。
みると、まだ血の気までは失ってなかった兵士の顔が
みるみるやつれていき・・・・
 ボゴン!
崩れるような音とともに兵士はミイラになり、それも風に
吹き流され、消えてしまった。
「今のは・・・・」
あれがなにか、レインは知っているようだ
「何だよ、今の?」
問うリューク
「アレは・・・魔族特有の力で奴らは、死体からならその
 力を、生気とも言うべきものを奪い、自分の糧とするんだ。
 まぁでも、そういうことが出来るのはアイツのような単純な思考を持った
 ツらしい。人間並みかそれ以上の知能を持つぐらいになると対象者と
 何かの波長を合わせるのが難しすぎるとどうとか・・・・」
「じゃあ、あいつ、今は体力満タンってか?」
「満タンとまではどうかと
 思うが、少なくとも70%は・・・」
解説するレイン・・・博識である。
リュークが声をかける
「そうか・・・気をつけろ!リィナ!レイン!」
「おう!」
「うん!」
レインは牽制しながら相手に近付く
「グォゥ!!」
唸りとともにミノタウロスが繰り出したのは
 「ロックランスか!!」
レインも苦戦させたあの連続魔法である
「よっと」
さっきとは打って変わって
余裕を見せながらかわすレイン 
「同じ手は、二度食わないぜ」
「グゥゥゥ!!」
あっさりかわされたのが癪に来たらしく
ムキになって乱発して繰り出すミノタウロス
「はっ!よっ!ほっ!えいっ!」
それらをことごとくかわすレイン、そして
「ファイアーボール!!」
後方で詠唱していたリィナの頭上に人の頭より
1廻りほど大きい火炎球が数発出現した!
そしてそれはミノタウロスめがけて真っすぐ飛んでいった!
 ゴウンッ!!
直撃を受け、よろける牛鬼
「グ・・・ウ・・・」
さらにリィナの攻撃は続く
「アイスアロー!!」
今度は十数本の氷の矢が飛んでいく!
 「ガアアアッ!」
何本かは刺さりながらもそれらを斧で振り払う牛鬼
 「ウガアッ!」
やけになり、斧をいきなり地面に叩きつける!
 ドンッ!!
地面を割りながら激しい石つぶてがレインたちを襲う! 
しかし何とか交わすレイン。
しかしリィナは避けきれず、石つぶてをもろに浴びる。特に左腕の部分にダメージを受け肩からは血が染み出ており、足には無数のあざが出来ている
「大丈夫か!?」
あわてる2人、しかし
「まだまだ!!」
リィナのその目はまだあきらめていない!
そして、なおも詠唱を続け、
「ライトニング!」
リィナの杖から雷がほとばしり、ミノタウロスを直撃する!!
 ばじぃっ!
 「ゴ・・・グ・・・」
うめく牛鬼。
しかし、どれも致命傷には到底及ばない
「こんなんじゃダメかな・・・・?」
ちょっと苦笑して言うリィナ。
どうやら戦いに集中してあの不快臭はもう気にならなくなったようだ
 「ガァッ!!」
ミノタウロスが兵士の死体がたくさん転がっている方へ突如走り出した!
「まずい!あいつ、片っ端から吸い取って全回復するつもりだ!
あせるレイン
 しかしリィナはあわてず魔法を唱え始める
 「ブルルゥ!」
ミノタウロスの、その目は怒りと狂気に燃えている
 そして、一番近くの死体の場所まであと1メートルというところで
「ファイヤーウォール!!」
リィナの魔法が完成する!
するとミノタウロスの目の前の大地から突如炎が噴き出してきた!
 ゴォォウ!!
炎は幾重にも重なり炎の壁を作り出す!
「ブオッ!?」
突然の炎の壁に驚くミノタウロス
「させるもんですかっ!!」
勝ち誇ったように言うリィナ
「グウ・・・グウウ!!」
それが癇に障ったのか、くるりと振り向き怒りをあらわにするミノタウロス
 「ガアアアアアアッッ!!」
ひときわ大きな雄たけびを上げるミノタウロス
 「な・・・・なんだ?」
不審がるレイン、と
 グゴゴゴゴ!!
激しく大地が鳴動する!
「こ・・・これは・・・ア−スクエイク!!」
アースクエイク、魔力で大地の精霊の力を借り、地殻変動を
起こし相手を叩き潰す中位魔法である
「リューク君、逃げて!!」
叫ぶリィナ
そう、この魔法は範囲が非常に広くこの場合だと
リュークも巻き込まれてしまう!
「レインとリィナは!?」
叫び返すリューク
「大丈夫!!」
力強く言うリィナ
「わかった」
そしてなんとか体を引きずってリュークは範囲外に出る
 グドンッ!!
突如、リィナの足元の大地が盛り上がり2人を宙に放り上げる、さらに
 ゴガガガッ!!
次々と周囲の大地が突き上がり
 リィナたちを打ちつける!
「ッ!!」
そのすさまじさに目を 見張るリュ−ク。そして
しばらくして、それがおさまり土ぼこりがもうもう
と立ち込める。
「2人は・・・・?」
心配そうに言うリュ-ク
それもそのはず、あんなものをくらっては、彼らはひとたまりもないはず、が、
「今度はこっちの番ね・・・」
悠然と立つリィナ。
あちこち擦り傷や服が破けたりしてるがいたって重傷ではない
「ッ!?」
「な・・・なんで・・・!?」
驚く1人(リューク)と1匹
「簡単よ、あいつが放った魔法と同質の
 魔力を私たちの周りに張ることで
 あの魔法を受け流したのよ」
平然と言うリィナ
「いやぁ助かった助かった」
本当にホッとした顔をして言うレイン
「そんなこと・・・できんのか!?」
レインの方を振り向きながら問うリューク
「授業でやったよ。ま、居眠り君は聞いてなかっただろうがな」
あきれながら言うレイン
「なにぃっ!?」
「でも、本当に出来るとは・・・普通の魔道士でも
 困難だって聞くぞ、あれは」
ムキになるリュークを無視し、感心するレイン。そして
 「今度はこっちのとっておき、いくよ!!」
呪文を唱え始めるリィナ
ミノタウロスは今ので、一気に大きな力を
使ったせいで、動けない!
「・・・・大いなる火の精よ
 我に仇なす悪を滅ぼさんが為、
 天へと舞い昇る大いなる柱を
 その御力により見い出さん・・・・・・」
高位の魔法であればあるほどその呪文、つまり詠唱は長くなる。
そしてそれは、そのまま魔法の威力を意味する!!
そして!
「ライジング・ブレイズ!!!」
ミノタウロスの足元が突如、真っ赤になり、そして
 グゥゴオオオオ!!!
すさまじい勢いで火柱が
 地面から出現しミノタウロスを焼き尽くす!!
 「グウウガァァァ!!」
火柱は天高く昇り、地上からでは見えないほどまで伸びていった。
そして、やっと火柱もおさまると、そこにはほとんど瀕死のミノタウロスがいた。
 「ガ・・・・ガ・・・アァ・・・」
ついに力尽きたか、その場に倒れ伏すミノタウロス
と、突然その体が真っ黒になり、灰のようになり次の瞬間、
風によって霧散してしまった。
「ひぇぇ。これが魔界の魔物の死に方か・・・
 おっかねぇな・・・」
呑気なことを言うリュ-ク
そして、リィナはその場にへたり込む
「大丈夫か!?」
あわててかけよる(苦しそうに)リューク
「へーきへーき、ただちょっとおっきな魔法
 を使っちゃっただけ」
笑顔を送り返すリィナ
「確かにあれはすごかったもんな
 あんなんはじめて見たよ・・・」
感心するリューク
「あれは私の中で1番か2番に強い魔法だもん
 ・・・・今のところだけどね」
「へぇ〜」
さらに感心するリューク。
そこへレインがやってくる
「ほんとすごかったよな・・・・・
 なんであんな魔法使えるんだ?
 普通あんなの、キミと同じ位の年の子は
 使えないよ。親が何かすごいとか?」
すると、とたんに顔を曇らせるリィナ
「・・・・・・・・・」
あわてるレイン
「あ、あれ?禁句?ごめんな・・・・・
 気、使ってやれなくて・・・・ま、
 どんな人にも言えないことの
 一つや二つ、あるよな」
すると、また笑顔を取り戻すリィナ
「ううん。気にしてないから・・・大丈夫。
 それより早くホームに戻りましょう!心配だわ! 
「あ!そうだった・・・な!・・・そうだったよな?」
素で忘れていたリューク
「まぁ、色々ごたごたしてたから
 忘れるのもしょうがないけど・・・・そうだよ」
またまたあきれるレイン
「よし!体力も回復したし、そうと決まればいくぞ!」
リューク、ハチマキを締めなおし、気合を入れる。
気力は充実したようである
「そうだな」
レインもホームのあるほうを向き、言う
「奴ら(帝国軍)何しでかすかわかんないからな」
「そうね・・・・」
リィナも立ち上がり、言う。
そして3人は急ぎ、ホームへと向かう。
・・・・待ち受ける惨劇を知らずに・・・・

第7話「強き者」


正門まであと1キロの所までたどり着いたリュークたち3人
「あの鎧野郎は制圧、て言ってたけど・・・・・」
「ええ。一体何をするのか気になるわ・・・・・」
走りながら話し合うリュークとリィナ
そしてレインは1人、黙々と何かを考えている
「何考えてんだよ?レイン」
それに気づき、話しかけるリューク
その声にはっと気づいたレイン
「え!?・・・ああ、ちょっと思い出せそうで思い出せないことがあって」
「?なんだよ」
問うリューク
「ああ。今日ってさ、誰かがホームに研修から帰ってくる日なんだよ。
 んで誰だったかな〜、と」
「お?言われてみればそういえば。誰だったか・・・・ん〜」
走りながら考えること30秒
突然、余計バテるにもかかわらず
大声を出すリュ-ク
「あ!!思いだしたぞ!!リービスだ!!
 リービス先生!!」
「ああ!・・・確かそうだったな」
なんとなく納得するレイン。
リービス先生、とは主に剣系統の生徒を指導するいわば専門教師である。
「そうか!あの人は普通の学科にもいないし、剣術教えてるだけだか
 ら俺知らなかったのか」
やっと思い出したレイン。
「????」
話についていけないリィナ。
それもそのはず。彼女はここに来てから半年たつか否かぐらいなのだから知らないはずである。
そんな混乱しているリィナにあわてて説明するリューク
「ああ!そっか、リィナは知らないのか。
 リービス先生ってのは校内一の剣の実力者なんだぜ!!
 しかもすごく優しい先生なんだ!」 
楽しげに語るリュ-ク
「何でそんなに楽しいの?」
苦笑しながら説明するレイン
「コイツ、その先生を倒すのが目標なんだよ。無理だってのに
 ・・・・・あの人、王都主催のあのグレイテスト・サバイバルで準優
 勝するほどの腕なんだぞ」
この説明をするためにはまず帝国のことについて説明しなければならない。
まず場所から言うと帝国という国はこの地上にはない。
帝国は空に浮かんでいる、浮遊大陸なのである。しかし元々は帝国も地上にあった。
史実的に統圧が始まったのは7年前とされているがその頃は
当時の帝国統主が死んだということで その側近同士の間で当主の座の争いが
起こり、お互いに同じ帝国兵を殺し合い裏ではお互いの陣営の
要人の暗殺が、絶えなかったという。
それ以前からずっとゴタゴタ状態に帝国はあったため、その頃の政治、
軍事など、あらゆるモノを取りまとめていたのは謎の戦士達と共に現れた
ラグナードという者だったという。
いつごろからラグナードが帝国にいたかは定かではないが
相当昔からいたらしく、今から20年ほど前に世界のほぼ中央に位置する「レイギア海溝」をサルベージし、はるか古代に失われていたとされていた浮遊大陸「バニッシュ」を引き揚げたのもこのラグナードの働きによるもの、と言われている。(ちなみにこのことは表向きには知られていない)
そして地上に残された元・帝国が今の王都「グローアス」
となったのである。一応帝国から独立はしているがいわば、地上版の帝国である。
そしてその王都で年に1回開かれるのが 「グレイテスト・サバイバル」なのであるこれは簡単に言うとただの「生き残り合戦」である が、
参加者はただ単に生きればいいだけではない。大雑把にルールを説明すると
参加者は、世界で最も広い面積を持つ街 、この王都「グローアス」の中で一週間、都に解き放たれた魔物およそ15万と一緒に暮らすのである。
もちろん仲良く暮らせ、というわけではない。
食うか食われるか、そんな中で生き延びるのである。
建物の中への侵入、および立てこもりは禁止。そして王都の外へ逃げたものは失格。食料は自分で調達。
そんな中で一週間ずっと外で暮らすのである。
そしてサバイバルに無事生き残ったもの同士で今度は王都内に
あるコロシアムで闘うのである。
そして栄えある強者の中から選ばれた優勝者には賞金1億ウィルと叶えられる範囲のものなら好きなものをなんでも一つ。
がもらえるのである。これにつられて出場する者達は、世界中から大体毎
年10万人程である。つまりこれに準優勝したということは世界で2番目に強い、と言えるのである。
「へ〜、そんなすごい先生がいたんだ。そんなにすごい先生にリューク君は
 勝つ自信、あるの?」
リィナが尋ねる
「もちろん!!」
自信たっぷりに言うリューク
「実はコイツもリービス先生が研修というか修行に行く2ヶ月に転校してき たんだ。・・・大体2年ぐらい前か?
 一生懸命何度も挑んでたなぁ・・・」
そこまで説明していた。
レインの言葉をさえぎるリィナ
「リューク君も転校生だったの!?」
「ん〜元々はここに住んでたんだけどコイツの親父さんがなんかあったらし くて今から5年前から3年間、一緒に旅してたんだ、どんなんか知らん  が」
またまた説明するレイン
「それで?」
興味しんしんに聞くリィナ
「全部負け、ハハ・・・・あの人は強いって」
恥ずかしそうに言うリュ-ク
「じゃあ、いつかは勝つつもりなんだぁ・・・」
問うリィナ
「もちろん!!!つうか今やったら絶対負けねぇ」
ガッツポ−ズをするリューク
それを見て、クスッと笑うリィナ
「?なんだよ」
それを見て不思議そうな顔をするリューク
「ん?いや、リューク君って前向きだなぁって」
そう言うリィナ
「ところで旅はどんな旅だったの?」
「それは・・・・ナイショ。ま、お前とおあいこっつうことで」
さらりとかわすリューク
「え〜!?ん〜仕方ない、わかったわ」
渋々納得するリィナ
「さて、もうそろそろ着くはずだけど・・・」
ふと前を向くレイン。
校門まであと少し、というところまで来た。
「よし、そこの林の中に隠れるぞ」
「なんで?」
問うリュ−ク
「馬鹿!正面から突っ込んだら敵の思うツボだろう!!」
「あ、そうか」
ようやく気づくリュ−ク。
そして3人は身を隠しながら徐々にホームに接近する。
「気をつけろよ〜」 
ゆっくりと忍び寄る3人。
そしてホームを囲む防壁まで来て
「俺が様子を見る」
レインはそう言うと、リュークが土台
になってその上に立ち外からのぞく。
「お?兵士がいないぞ・・・?
 まさかもう制圧は終わったとか!?」
「何だよ何だよ気になるだイテッ!」
下で騒ぐリュークを一蹴するレイン
「黙っとけ・・・・・ん?奥のほうで何か騒いでるようだな。
 人が2人いる、か・・・?・・・・よし!」
そういうと、土台(もといリューク)から飛び降り、
状況を説明するレイン
「・・・・だからなんとか中には入っても大丈夫そうだ。で、校庭の
 様子が気になるからそこに行ってみよう」
レインを先頭に、こっそりと中に侵入した3人。
「校庭の方でなんかあるみたいなんだ・・・人が2人
 向かい合っていたみたいだった」
うまく建物や木々の裏に隠れながら近づく3人。
幸い、兵士の姿はなくそれどころか人の気配すらしない。
「どうしたのかしら?いくらなんでも手薄すぎるような・・・?」
不審がるリィナ
「ああ。明らかにおかしい。まぁそれも向こうに行ってみるまでわから   な・・・・」
そこまで言いかけレインは前方の光景に目を奪われてしまった!!
「な・・・・・・!?」
あわてて前をのぞくリュークとリィナ
「あっ!?」
そこにいるのはまぎれもないウワサのリービス先生と、
そしてもう一人は・・・・・
「ラ、ラグナード!?」
思わず大声を出しそうになりあわてて抑えるリューク。
「何であいつが・・・?」
「多分、あいつが言ってた「時間だ」ってのがこれなんだ。
 つまり、このホームを落とす時間」
そしてそこにちょうど帰ってきたばかりのリービスが居合わせ、こうなったのである。
「ほう。お前はなかなか出来そうだな・・・・」
うれしそうに言うラグナード
「そう喜べるとも思えんが?」
そう言い剣を構え、ジリッ、と間合いを詰めるリービス。
しかし、ラグナードは丸腰だ。
「なんであいつ、あんな余裕なんだよ。
 俺達ならわかるけど、相手はリービス先生だぞ?
 敵の力量が読めないわけじゃあるまいし・・・・・」
隠れながらも様子を見守るレイン。
リュークの目は2人に釘付けだ。
リィナもジッと闘いを見ている。
「かかってきたらどうだ?」
相変わらずの余裕の態度で言うラグナード
「それでは・・・・お言葉に甘えて!!」
そういうと、一気に突進するリービス
ゴウッ!!
風を切り裂く音とともにリービスの剣が突き出される!!
「リービス先生の得意技「裂風閃牙撃」だ!!」
解説するリューク。こういうことはレインよりも詳しい。
さすがといったところか。そして、
(殺った!!)
リービスは内心そう思った
その一撃は確実にラグナードの心臓を捕らえていた。
加えてこの速度、避けられるはずがない、が
パシッ
いともあっさりとその一撃はラグナードの人差し指と中指にはさまれ受け止められてしまった。
「なに!?」
驚愕するリービス。
そしてそのままの状態からラグナードは
はさんだ2つの指でリービスを剣ごと持ち上げ、指を支点に
投げ飛ばし、地面に叩きつけた!
ドガァン!
何気ないラグナ−ドの一撃。
だがその一撃で地面が砕ける!
「く・・・・」
土煙の中からゆっくり起き上がるリービス。
どうやら背中を思いっきり叩きつけられたらしい。
背中を押さえている。
「どうした?今のが本気か?だとしたらオレとしてはとても残念    
 だな。あまり、このオレをがっかりさせないでくれ」
70キロはあろうリービスを指で持ち上げなおかつそれを投げ飛ばしたというのに息一つ、乱した様子はないラグナード。
「つ、つええ・・・」
息を呑んで思わず感心するリュ-ク
「ああ」
納得するレイン
そう、ラグナードの力は今見た限りでもリービスよりもはるかに
上なのである。
「フ。まだまだこんなものでは終わらんぞ・・・」
再び剣を構えるリービス。
その目から、もはや余裕の色は見えない、そして
ビリビリビリビリ・・・・
「う・・・!?」
リービスから発せられる闘気を感じ取り、
思わず後ずさるレイン
「先生、今度は本気か・・・・」
目は2人から離さず、つぶやくリューク。
その闘気を感じ取ってか、ラグナードも
今度はあの漆黒の剣を抜き取り構える
「・・・・・・・・」
今度は真剣なようである。そして
 「いくぞ・・・・ハァッ!!」
気合とともに突進する。
リービス、すると
ヒュッ
突然リービスの姿がかき消えた!
「ッ!?」
突然の出来事に慌てるリュークたち。
しかし、一瞬で居場所を察知し、天を振り仰ぐラグナード。
そこには高々と宙を舞い、剣を右手に地面に突き刺すよ
うに構えたまま持ち左手の手の平をラグナードに向けるリービスの姿が!
「食らえっ!」
叫ぶリービス
ドガァァン!!・・・・バリバリ・・・・
突如天から落ちた雷がリービス。
の剣に直撃する!
雷を帯び、剣はすさまじい程の光を放つ。そして
「天雷刃・一閃!!」
雷を帯びた剣をラグナード向けて
思いっきり投げるリービス
ヒュンッ!!
剣は風を裂き、光のごとくラグナード向け落下する
カッ!!
瞬間、辺りはすさまじい光に包まれ、そして衝撃に荒れ狂う風が
吹き荒れた!!
「ッ!!・・・・・」
思わず目を閉じ、かがむ3人。
そして少したち、周りを見渡すと
「な・・・!」
そこには悠然とたたずむラグナードとその後ろに転がる縦に真っ二つ
に割れたリービスの剣、そしてその剣の様にあ然とし、呆然とたたずむリービスの姿があった。
「バカな!・・・・あの攻撃を受けてもビクともしないのか!?」
驚くレイン。
そう、今のはリービスの、正に「必殺技」というべきものである。
それをいともたやすく、しかも剣を器用に割るというおまけつきを
やってのけるラグナード。
「やっぱただものじゃねぇ・・・あいつ・・・」
ごくり、と唾を飲むリュ-ク
「あの先生を赤子の手をひねるかのように・・・」
そしてゆっくりと振り返るラグナード
「さて、せっかく向こうにとっては一番強い技を見させてもらったんだ。
 こちらも、それ相応の礼を返さなくてな」
ゆっくりと、剣を構えるラグナード
リービスも我には返り、縦に割れた剣の片方を拾い、構える。
そして、
「いくぞ!!」
ラグナードが叫ぶ!

第8話「魔族再臨」

「ハァァァッ!!」
ラグナードが気合を入れる
するとラグナードの剣が紫色に発光しだした
「オオオオッ!!」
いっそうラグナードは力を入れる
ブウウンッ
その光はどんどん強くなっていく。
そしてもはや光が目を向けられないほど強くなった、その瞬間!!
ギュイイギギギ!!
空気が、いや、空間の軋むような音とともに突如、虚空から無数の黒紫色の筋のようなものが出現し、ラグナードの剣へ向かって収束してゆく。
ギュウン
それらの黒紫の筋が剣に触れると筋は剣に吸収されていき、そのたび、剣は不思議な点滅をし、徐々にその形を変えてゆく。
それから少し経ってみると・・・・剣はもはや元の形をしておらず
今や、魔剣と呼ぶにふさわしい物になっていた
―刃の部分は前よりも太く、長くなっており
先にいくにしたがって太くなっていく。
前は両刃だったのが片刃に変形しており、真ん中の部分はえぐれて、
ちょうど反るような形になっている
刃の根元はギザギザになっており、刃先は少しくねっている。
色は全体的に黒紫色、そして何よりも異形なのがつばの部分に埋まっている人のにぎりこぶしほどの大きさの目玉である。それは、まるで生きているかのように規則的に脈打っており、心臓をも思わせる。
「これが我が魔剣「クラウ・ソラムス」の真の姿だ」
異形の剣を握り締め、言うラグナ−ド
そして無造作に剣を空を薙ぐ
ガゥオン!!
すさまじい風が吹きすさぶ!!
そして、ラグナ−ドが剣を振った後の地面には触れてもいないのに大きくえぐられた後があった。
「ククク。やはり剣はこれがしっくりとくるな・・・・」
魔剣を眺めるラグナ−ド
「な、なんだよ・・・あれ?」
唖然とするリュ−ク
「魔剣って・・・・伝承の中での
 空想上のモノじゃなかったのかよ!?」
そう、本来魔剣や聖剣、などと
いった神がかり的な兵器は3000年程前に行われたという
「天魔大戦」と呼ばれる戦争の中の伝承でしか語られていない
「天魔大戦」、とは神族と魔族の間に起きた1000年にも及ぶ戦争である。それも今や伝説と化しており知っているもの自体少ない。
・・・・・その昔、この「アンウィル」という
星には「ヘヴンズガルド」「ミッドアース」
「ジャハンナム」という3つの世界があり、それぞれがそれぞれの役割を担って協力し合って生きていたという。「ミッドアース」は地上で平和な生活を営み、「ヘヴンズガルド」はその「ミッドアース」の監視、さらに「ミッドアース」においての偉大な、または偉かった人間の死んだ魂の行き着く場所、そして「ジャハンナム」は「ミッドアース」の死者、特に罪人や、悪人の死んだ魂が行き着く場所である。
「ア−スガルド」へと昇華していった魂はある者達による今までの行いの審査と生前の能力に見合った職に就き天から「ミッドアース」を「監視」していたという。それにそぐわなかったもの達も新たな魂として「ミッドアース」に送られ、そこで人間として過ごしてゆく。そして「ジャハンナム」に堕ちた魂はそこで魂を洗われ、新しい純粋な魂として生まれ変わってまた「ミッドアース」に送られていく。
こんなローテーションが何千年も何万年も
繰り返されていったという。しかし、あるときを境に異変は起きた
元々「ジャハンナム」に送られた魂はその邪気ともいうべきものを全て洗い流し、純粋な状態にして送りだしていたという。
では、その邪気は一体どこへいったのか?
それは本来なら在るべき場所に保管、処理されるはずなのだが、
「ジャハンナム」のある一ヶ所に管理者の目を逃れて集まっていったいう。
それも何千年もかけて何億もの「邪の魂」が。
そして集まった魂はいつしか何千何万単位で1つの形を成し1つの固体として存在するようになったという
これが始祖の魔族である。しかしこの「始祖」
は所詮ただの知能も自我もない浮遊体としか
存在しておらず、管理者達もさして気にはしていなかった。
さらにそのころ、「ジャハンナム」では魂にまだ自我と肉体が残っており、
生まれ変わるのに抵抗する、というものがでてきたのだ。
しかし結局は洗われ、また地上へ還っていったといのだが、そんな中、突如「ジャハンナム」に強大な力を持ち「負情」の名を冠する者が現れたという。その名は、「アドラレメス」
突如現れた「アドラレメス」はその圧倒的な力で
「ジャハンナム」の管理者達をねじ伏せ1年もたたずにそこを征服したという。そして、管理者がいなくなり、混沌とした世界では
魂が洗われなくなったため、抵抗していたものたちは
自由となり、そして・・・・・・・
あろうことか「始祖」の意思なき魔族と
融合し、新たな生命体として誕生したのである。これが今日語られている「魔族」である。そしてそんな風に様々な魔族が次々と誕生し
「ジャハンナム」に溢れかえったという。
そして、いつしか魔族たちは、管理者を滅ぼした「アドラレメス」を自分達の神とあがみ、そして、自分達をこの地よりも深い場所に落とした神々と人間に復讐を誓い、その翌年、「ミッドアース」と「ヘヴンズガルド」へ向けて総攻撃を始め、これに対して人間と神々は力をあわせて戦ったという。
これが「天魔大戦」の始まりである。
しかしこの伝承に関しては矛盾した点もあり、考古学者たちの間でも
5つも6つも意見が分かれたりしてはっきりとはしていない
なにより不可解なのがその終末である。 
なんとこんな大きな戦争でもあるのにその「終わり」に関する話が全くなく世界中探しても「終わり」に関する文献は見つかっておらず、謎のままである・・・。
以上が今現在、知りうる限りの「天魔大戦」である。
「ああ・・・・でも、実際この世界に
 あんな剣があるわけが・・・ない」
少し苦しそうな顔をするレイン
「なんだろ・・・なんかすごく気分が悪い・・・・」
「あ、レイン君も・・・?」
同じく肩で息をしながら言うリィナ
「?何疲れてんだよお前ら・・・・
 確かになんかやな感じはするけど」
ケロッとして言うリュ−ク
「タフだなおまえは・・・・・
 けどなんなんだこれは。これが未知の感覚
 ってやつなのか?この世のものとは思えない・・・・」
槍に寄りかかりながら言うレイン
「これは・・・・・・魔瘴気?」
「魔瘴気?」
オウム返しするリュ−ク
「魔瘴気ってのは瘴気が魔物の誕生する原因
 ってのは知ってるだろ?けどあれは
 魔瘴気を薄めた感じの「魔瘴」ってやつで
 んなたいしたことはないんだ・・・・・
 けど魔瘴気ってのは本来この世界には
 ない気なんだ・・・・・・俺たちが
 闘うときとかに発するのは「オーラ」・・・まぁ
 「闘気」ってやつだよな?
 けど伝承に出てくる魔族ってのは
 「闘気」ではなく「魔闘気」ってのを
 発していたらしい。これを「魔瘴気」
 とも言うんだ。これを
 発するもののあたりには「負」の
 力があふれており、常人ならば
 近づいただけど気絶してしまうものらしい・・・・
 そうだとしたら・・・・あれも」
苦しそうにも説明するレイン。
「とにもかくにも、今はリ−ビス先生が気がかりだ。」
ラグナ−ドは構えた剣をゆらり、と構える
「こちらも・・・・さっきの技に相応しい
 技を披露しよう・・・・・」
剣を頭上に構え、姿勢を低くするラグナ−ド、そして
「闇絶牙!!」
頭上に構えた魔剣が一気に振り下ろされる!!
ズドンッ!!!!
爆音にも似た音とともにすさまじい
勢いで黒い衝撃波がラグナ−ドの魔剣から放たれる
そしてそれは瞬時にリ−ビスの目の前まで飛び
ズバンッ!!!
狙いたがわず、リ−ビスを直撃する!!
「ぐはっ・・・・」
その一撃でリ−ビスの体はズタズタになり体中血だらけである。たまらず倒れるリ−ビス
「先生ッ!!」
思わず駆け寄るリューク
「な!?ま、待てよ!リューク!!」
苦しいのを堪えつつも追いかけるレインとリィナ
「ん?ほう・・・お前らは・・・・」
3人に気づいたラグナ−ド、がどういうわけか、手を出さない
「先生!!」
必死で声をかけ、その手をつかむリューク。しかしその目は虚ろである
「!!リ・・・・リュ−ク・・・来ていたんです・・・ね・・・・」
握られた手をにぎりしめ、驚きと安堵をない交ぜにしたようなため息をつくリ−ビス
「に・・・・逃げなさい・・・あ・・・あの男は
・・・・人智を・・・超えた・・・力を・・・持っている
・・・・・あなた達・・・の力では・・・・到底・・・・敵わない・・・・」
声もかすれている
「先生!!」
叫ぶリュ−ク
「俺は・・・・俺は・・・何も出来ないで・・・」
「大丈夫・・・・気にすることはありません・・・・・
むしろ・・・・私としてはうれしいです・・・・
私が・・・・やられる・・・その・・・瞬・・・間まで
じっと・・・飛び出さ・・・・ずに・・・我慢し・・・てくれた・・・・
それだ・・・・けでも私・・・・としては十分です。
さぁ・・・・はや・・・く・・・に・・・げな・・・さい
あなた達は・・・・ここで・・・・死ぬべきではありま・・・・せん・・・・」
そこまで言いかけて、リービスは意識を失った。
「ッ!!」
驚く3人
「安心しろ、殺しはしない。その程度の腕、殺ったところでなんになる」
そしてため息をつくラグナ−ド
「やはりこの世界に、この俺の好敵手となりうる者はいないか・・・・・」
「ちくしょう・・・・・」
握っていた手を離すリュ−ク
そして我に返り、あわててリ−ビスに駆け寄り息を確かめるリィナ
「なんとか大丈夫みたい。傷はひどいけど、なんとかなりそう。私がなんと かがんばってみる」
「ほ、本当っ!?」
「ええ」
一抹の安堵が流れる
そして立ち上がるリュ−ク
「ラグナ−ド!!」
その声に気づくラグナ−ド
「あのミノタウロスを
 倒すとは・・・・なかなかだったぞ」
そして剣を下げる
「だがその程度では俺の足元にも及ばん」
しかし声を張り上げるリューク
「うるさい!!お前を倒してリ−ビス先生の代わりに
 俺がお前を倒してやる!」
剣を構えるリューク。レインも槍を構える。
と、突如ラグナ−ドの体から
身の毛もよだつほどの殺気が放たれる
「この俺を・・・・・倒すだと・・・?」
すると途端に額から汗が流れ出すリュ−ク。
足が思うように動かない
「うぬぼれるなよ小僧!!!」
・・・・まさに咆哮。たったその一声でリュークはその場から動けなくなる。足下をみると自分の足がガクガク震えている。背中は汗でビショビショだ。そして怒りで満たされていた心はいまや完全に恐怖で埋め尽くされている。横目で見るとレインも同じようだ
「俺はお前の資質の高さをみただけだ。今の実力でこの俺を倒そうなど」
そして下げていた剣を再び構え、
「1000年早いわッ!!!」
一気に突っ込むラグナ−ド
「ハァッ!!」
魔剣がリュ−クめがけて振り下ろされる!!
しかし恐怖でリュ−クはその場から動けない!と
「だぁぁぁぁぁぁ!」
なんと!リュークは自分の剣で自分の左腕を刺した!
ドスッ!
「ぐっ・・・」
痛みに顔を歪ませるリューク。しかし、その痛みで緊張が解ける!
「そりゃっ!」
その瞬間、リュ−クの緊張は解け間一髪でラグナ−ドの一撃を避ける
 グオウンッ!!
そのそばを魔剣がかすめる!!
ラグナードと距離をとり態勢を立て直すリューク。
レインも今ので動けるようになり間合いを取る。が、
こちらは魔瘴気のせいか、動きがかなり鈍く、表情も苦しそうだ。
「気をつけて!あいつ、かなり危険よ・・・・・」
リィナが言う
「そっちは?」
ちら、とリ−ビスを見るリュ−ク
「こっちはなんとか今は生命を維持するのが精一杯。ごめんね・・・」
「いいよ、気にすんな。がんばれるだけがんばってくれればいい・・・」
そしてキッ、とラグナ−ドを見据える
「こっちも・・・・・がんばるから・・・・・!!」
その様子を面白そうにみるラグナ−ド
「ほう。恐怖を知って尚、この俺に挑むとは・・・・・面白い」
すると剣を鞘におさめるではないか!!
「な、なにをっ!?」
困惑する2人
「お前らのその尽きぬ闘争心に応え、特別に俺の正体を教えてやろ     う・・・・」
そしてその口から衝撃的な事実がもたらされる
「俺は、「魔族」だ・・・・」
一瞬の間、そして
「な・・・・・なに!?」
驚くリュ−ク
リィナも驚きのあまり手を止める
「ま、魔族は伝承の中だけの
 生き物なんじゃあ・・・・・・・」
レインも驚く
「ほう?今ではそうなっているのか?
 笑わせてくれる。これは事実だ、魔族は1000年以上もの時を経て、蘇 ったのだ」
そしてやおら自分の腕を突き出し
「これが証拠だ」
といい自ら指を切る!
ザシュッ
とそこから流れ出る血は
「黒・・・?いや、光ってる!?」
そう、その傷口から流れ出る血は赤ではなく、黒、すなわち・・・
「あれは、黒水銀・・・」
そう、伝承の魔族の特徴の一つとして挙げられているのが
その特異な血でしかも通常の水銀とは異なり通常の水銀よりもはるかに比重が軽く、今の科学をもってしても解明不明の物質の一つである。
「これで納得してくれたかな?」
唖然とする3人、それもそのはず。
魔族なんていうものは空想の産物程度だと思っていたからだ。
しばらくの沈黙、そして
リュークが口を開く
「でも・・・・じゃあなんでその魔族様が人間なんかに加担して、皇帝   にへこへこしてるんだよ」
ラグナードがにやり・・・・としたような気がした
「今はただ利用しているに過ぎん・・・・・・
 時が来ればヤツも帝国ももう用なしだ」
更にレインが問う
「じゃあお前らの目的は何なんだよ?」
「我ら魔族の目的はただ一つ!
 1500年前に封印された「アドラレメス」様の復活だ!!」
そのスケールの巨大さに呆然とする3人
「ま、それも目的の一過程に過ぎんがな。さすがにこれ以上のことは言えん な・・・・・」
しばらくしてリュ−クが言う
「じゃあなんでそんな大事な事を俺らに言うんだよ!?」
「自分を殺す者の正体ぐらい知っておきたいだろう?」
ハッとしてあわてて武器を構えるリュ−ク
「さぁ・・・・・せいぜい踊ってもらおうか!」

第9話「ヤミノチカラ」

ふと気がつくリューク
「そういえばお前、ホ−ムの
 みんなはどうしたんだ!?」
「さぁな・・・・基本的にホ−ムの制圧にあたっているのは
 ベルフェリオスだと思ったが・・・・」
「ベルフェリオス?」
怪訝そうに聴くリュ−ク
「そうだ・・・・我が帝国が誇る
 四天王「ナイツオブディサスタ−」の1人だ」
答えるラグナ−ド
「し、四天王って・・・あの!?」
驚く3人
「そうだ・・・・最近は新聞などでも知れ渡っているそうだな。帝国という国はまず第一に皇帝、そして次に側近で軍師の俺、その下にそれぞれの分野を得意とし、その配下をまとめ上げている四天王。更にその次に俺たち四天王のサポ−ト役が数人。これが帝国内での権力順だ」
「そして、上が出した命令は絶対で反抗したものは即処刑する」
さらに思い出したかのように言うラグナ−ド
「ああ・・・この俺も四天王の1人だ
 基本的に我々「ナイツオブディサスタ−」の間に頂点たる
 ものは存在しない。それぞれがそれぞれの
 意思で動いている。最もその目的が
 皆同じため、一緒にいるんだがな・・・・
 ま、だが大抵は俺が指揮している」
「てことは、その3人も・・・・」
「もちろん魔族だ。見た目はなんら人間と変わらんがな」
「そ、そんなことって・・・・・」
信じられない、といわんばかりのレイン
「さて、そろそろお喋りも終わりだ
 ・・・・・かかって来ないのか?
 それともこちらからいこうか?」
「言われなくともっ!!」
そういい飛び出すリュ−ク!!
そして
「我王剣!!」
気合一閃!風を纏いし刃がラグナ−ドの顔面を狙う!!
(捕らえた!!)
とリュ−クは思った。が、
ガシィッ!!
剣は、いともあっさりとラグナ−ドの
左手で剣を掴んで止められる!!
「この程度かッ!!」
と、ラグナ−ドは掴んでいた手を離し
瞬時にリュ−クの腹にひじ打ちを食らわす!!
ゴッ!!
その一撃で、リュ−クは吹き飛びホームの方へと突っ込んで行き
ドガァァン!!
壁をブチ砕き、そのまま教室の中に吹っ飛んでいく!!
ドガァ!
教室にあった椅子を吹き飛ばしながらなんとか止まる
「ぐっ・・・・」
しかしよろけながらもすぐさま立ち上がるリュ−ク
「な、なんちゅう馬鹿力だよアイツ。さすが魔族ってか?」
彼はむしろ自分の驚異的なタフさに驚かないのだろうか・・・?
しかしそんなことには気づかず、辺りを不審に見渡すリューク
「?誰も、いない・・・?」
こちらはレイン
「だ、大丈夫かよ、リュ−ク」
「普通の人間なら即死だな・・・・・」
平然と言うラグナ−ド
「あ、じゃあ大丈夫だな」
安心するレイン
「ほう。普通の人間なら即死の一撃を仲間が受けて安心できるとは」
「いや、あいつ普通じゃないから」
あっさりと言うレイン
「なるほど・・・・・」
そういい姿勢を低くするラグナ−ド
(あれは!!)
心の中で気づくレイン
(あれは先生を一撃で倒した黒い刃!!)
そしてラグナ−ドが振りかぶるとほぼ同時に横に避けるレイン!
ギュンッ!!
側を漆黒の刃が駆け抜ける!が
ザシュッ!
しかし刃はレインの予想を上回る速度で接近し、
彼の左腕をわずかに傷つける!
「な・・・・こんなに速いなんて・・・・」
「ほう・・・」
感嘆の声を漏らすラグナ−ド
「俺の「闇閃牙」を、
 手を抜いていたとはいえ、避けるとはな・・・・」
もう一度構えるラグナ−ド
「しかし今度は逃がさんぞ」
と、やおらレインが槍を構え、
「負けるものか!ラピッドスタッブ!!」
槍を持った右腕から無数の閃光が放たれる!!
「ハァァッ!!」
閃光はラグナードに向かって一直線に伸びる!
「ムッ!?」
警戒し、防御の構えに入るラグナ−ド
そして閃光をことごとく剣で弾く!
ギンギンギンギンギンッ!!
乾いた音を立て、閃光は弾かれると消えてしまうッ!
閃光の正体はすさまじい速度で繰り出したレインの「突き」である
「くそ・・・・」
その場にひざをつくレイン
今のでかなり体力を消耗したのである
「フム・・・小僧にしてはなかなか面白い攻撃だったぞ」
そして、
「だが、これで終わりだ」
「そうはいかないわっ!」
と横から聞こえる声
「リィナ!!」
そう、リ−ビスを介抱していたはずなのだが
そのリ−ビスは側にはいない。
「先生はっ!?」
「今は大丈夫!遠くで休んでる!下がって!」
それを聞き、あわてて下がるレイン
そしてリィナは唱えていた魔法を放つ!!
「レイブ・スパーク!!」
すると突如、ラグナ−ドの頭上の空が
荒れだし、みるみる雷雲を作っていき、そして
ピシャァァン!!
凄まじい音と共にラグナードに雷が落ちる!!
「ぬ・・・・!?」
さらに雷は勢いを増しあたり構わず暴れだす!
ドガァン!
「うおっ!」
あたりかけて、あわてて避けるレイン
「すごい魔法だ・・・・」
そして、しばらくしてリィナが魔法発動の体勢を解くと
ピタリと雷はやみ、空ももとの青空に戻る
「ふう・・・・・」
さすがに少し疲れた様子のリィナ
「すごかったぞ!リィナ」
側に駆け寄るレイン
「えへへ・・・・君たちが闘っている間に
 唱えていたの。いくら魔族でもアレぐらいの魔法なら
 効くかな〜って鎧を着てるんだし」
「そうだな・・・・」
うなずくレイン
「リューク君は?」
「ああ、アイツなら多分大丈夫だ」
「そう・・・・」
それを聞き、少し安心するリィナ
「しかし良くもまぁこんなものを・・・・」
改めて感心するレイン
「確かに、そうだな・・・・」
今だ、行き場を失った電撃が渦巻く土ぼこりの中から「声」は聞こえた
「だが、正直ガッカリだ・・・・」
雷の直撃を受けたというのに微塵も損傷を受けた
様子を見せないラグナード
「なっ!?」
あわてて振り返る2人
「今のが魔法か・・・?笑わせてくれる。1000年以上もの間に
 人間もずいぶん軟弱になってしまったものだな」
失望したように言うラグナ−ド
「い、今のを食らって余裕だなんて・・・・」
唖然とする2人
「確かに、あの魔法は中級位だから威力も驚くほどじゃないかも
 しれないわ。けど、少なくとも鎧の中を電撃が伝わって、ダメージは受け ているはずなのに・・・」
「あの程度、食らったところで蚊ほども痛くないわ」
そして剣をしまい、両手を前に突き出し印を組むラグナ−ド
「真の魔法とは・・・・こういうものだ!!」
そして組み終わると突如ラグナ−ドの目の前に
魔の六傍星が現れ
「ブラックホール!!」
ギュィウン!!
すると突然2人の後ろに黒い大きな球体が現れ、
凄まじい勢いで2人を中に吸い込もうとしてくる
グオオオッ!!
「くっ!?」
必死で抵抗しようと足を踏ん張るがズルズルと中に引き込まれていく。
そして
「うわああっ!!」
「キャアアッ!!」
2人は悲鳴を上げ、とうとう黒い球体の中に吸い込まれてしまった!
「・・・ここは・・・?」
辺りは一面真っ暗闇の空間、
一体どうしたんだ?と思った次の瞬間!
ズドドドドドドドドドドドッッ!!
突然周囲から見えない力に圧縮され、潰さんばかりの圧力が2人を襲う!!
「ぐわあああっ!!」
「くううっ!!」
今にもぺしゃんこにされそうな力は容赦なく2人を襲う。
そして、永遠に続くかと思われた時間はしかしすぐに終わった
「ッ!?」
次に目に入ったのは・・・・青い空
「元に、戻ったのか・・・・?」
もはや息をするのがやっとの2人
「いかがかな?我が魔族が誇る闇魔法は?感想を聞くため、
 手を抜いたがなかなか効いただろう?」
「闇魔法・・・・・」
その言葉でなにかに気づくリィナ
「な、なんなんだ「闇」魔法って?」
「闇魔法は・・・・・この世界では
「禁呪」とされている部類の魔法で人間でも扱えるのは
ごく少数、なによりそれを使ったものは魔法使いの間では外道とされ魔道の世界から永久追放されるらしいわ・・・・・・」
か細い声で言うリィナ
「ま・・・・そんなところだ。そもそもこの「闇」魔法は魔族が独自に編み 出したものでそれを一部の人間が真似て、人間界にも知られる
 ようになったのだ」
「なんていう威力だ・・・・」
そしてこちらはリュ−ク
「やけに静かだなぁ」
不気味なほどの静まり返った
校舎内を見渡し、呆けていたが
「うわああっ!!」
「キャアアッ!!」
という、2人の悲鳴を聞きつけ、あわてて引き返すリュ−ク
「リィナ!!レイン!!」
校庭に出てみるとそこには全身傷だらけで倒れ伏す2人の姿が!!
「やめろぉぉっ!!」
リュークが飛びかかる!!
「ムッ!?」
すぐさま振り返るラグナ−ド
「あれほど吹き飛ばされて平気とは・・・面白い!!」
リュークが剣に風を纏わせる!!
「食らえっ!」
しかし動じぬラグナ−ド
「その攻撃ならもはや見切った!!」
しかしいくら近づいても
リュークは「我王剣」を放つ様子は無い
「バーカ!!そう同じ技を何度も出すかよ!」
そして一気にラグナ−ドの懐へもぐり込む!
あわてて左手の手甲で受け止めようとするラグナ−ド
「旋荒裂破斬!!」
左足を軸に、体を回転させながら剣を薙ぐリュ−ク。
そして剣がラグナ−ドの手甲に触れた瞬間、
一気に剣が纏いし風を炸裂させる!!
ズビュゥンッ!!
すると、ラグナ−ドの左手の小指から真っ黒な血が吹き出す!!
「何ッ!?」
驚愕するラグナ−ド
「へへっ・・・・」
してやったり、ニヤリとするリューク
今のはつまり相手の体に直接「我王剣」を放ったのである
しかも炸裂させた際の斬撃も加わり威力は
通常の3倍、4倍にもなるのである
「フフ・・・よもや人間に、・・・しかも年端もゆかぬ
 小僧にやられるとは・・・・」
ゴウッ!!
辺りの空気が吹き荒れる
「なるほど。追い詰められた鼠は何をするかわからんからな」
剣を構えるラグナ−ド。
その構えには一分の隙も見られない
「いくぞ・・・・」
フオッ
風が吹き流れた・・・・と思った瞬間
ズビュウウッ!!
「がっ・・・・」
その場に倒れるリュ−ク。一瞬で全身傷だらけだ
「いつの間に・・・」
「今のは俺の技の一つ「ヴァロスティファング」だ」
しかしリュ−クは立ち上がる
「ほう。本当にタフなヤツだな・・・」
再び構えるラグナード
「よかろう。もう一度食らわせてくれよう・・・・・」
「もうよせリュ−ク!!立つな!!」
「もうやめて!!」
止めようとするリィナとレイン。が、
「へへ。寝てたまるかよ・・・」
剣を構えるリュ−ク
しかし立っているのがやっと、といった風だ
「せめてもの情けに一撃で葬ってやろう」
そして再びラグナ−ドの姿がかき消えた!!
「「リュ−ク!!」」
叫ぶ2人!!
次の瞬間!!
ギィンッ!!
リィナはとっさに目を閉じる
しかし、いくら経っても倒れる音は聞こえてこない
「・・・・?」
ゆっくりと目を開くと、そこには・・・・・
「彼らを・・・・・殺させはしない!」
そこにはラグナ−ドの高速剣を受け止める1人の男の姿が!!
2005-01-06 00:36:54公開 / 作者:Unknown
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■作者からのメッセージ
こういった投稿は初めてなので不備な点は多々あると思いますがみなさん、よろしくお願いします(^^;;。作品ですが・・・思いっきりのファンタジーです。最初の1〜3は下らない学園コメディと思われそうですが4話からちゃんと戦闘も用意されております。批評、不評、ガンガンお願いします!
この作品に対する感想 - 昇順
読ませて頂きました。が,読んでいる間ずっと改行ばかりしていたのがずっと気になっていました。「。」がないところをみると恐らく狙って改行しているのかと思われますが,個人的な意見として文の途中で改行はしない方が文体としては読みやすいかと思われます。そのせいで行がかさんで折角の活劇が台無しになっててもったいないです。ケチつけてばかりになりましたが引き続き頑張って下さい。
2004-12-28 10:17:08【☆☆☆☆☆】ねやふみ
ご指摘どうもありがとうございます!
そうですか・・・確かに見づらいかもしれませんね。
これからはその点、改善していきます
今後とも、よろしくお願いします!
2004-12-28 14:55:34【☆☆☆☆☆】Unknown
計:0点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。