『私的記録』作者:憂理 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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 あたしが住んでるマンションの8階にはいろんな人が住んでいる。バリバリのリーゼントの人や明らかにカケオチしてきた2人、光モノをジャラジャラつけた人はたぶんヤクザだと思う。でもほんとはみんなとてもいい人たちで、すごく仲がいい。
 そして、あたしが住んでるのもその8階で、その隣にはひとつ年下の男が住んでる。でも家庭が家庭だけにうちら2人は色々と問題も多いんだ。

 ピーンポーン
 お風呂上り。ベランダに出て一人涼んでいた所にチャイムが鳴った。
「美紗ーねぇ開けてー」
「・・・ちょっと待って」
 ドアを開けるとにっこり笑った稜がそこに立っていた。
「お土産買ってきたからさ、入れて?」
「あんたまたおばさんいないの?」
「んー、なんか最近帰ってこない。今日もお金だけ置いてあったし。美紗んとこはまだ帰ってこないの?」
「うん。時々お金置いてってるけど」
「ふぅん。おじゃましまーす」
 そう言って稜は勝手に部屋に上がりこんだ。
「ほら、お土産」
 稜の手にはチューハイが2本にぎられていた。
「またそんなもの飲んでる。あんた未成年でしょ」
「そうだけどおいしーじゃん、チューハイ」
 稜はソファーに横になるとチューハイを開け、テレビを見始めた。
 中学2年になったばかりのころ、稜はいきなり髪を脱色した。そしてピアスを開け、ビールを飲み、時々煙草も吸う。いつもヘラヘラしてる性格だけはハジける前と変わらなかったけど。
「ねえ、あたし勉強しなきゃなんだけど」
「あーそういえば美紗、受験生だったよね。どこの高校行きたいか決めた?」
 どこの高校に行きたいか。
 あまり考えたくないことを思い出してあたしは黙りこくってしまった。
「どーしたの?」
「・・・うちらの場合さ、どこの高校って前に行けるかもわかんないでしょ?」
 少なくともこの状況が直らなければたぶんあたしは高校に行けない。
「・・・そーかぁ」
 あたしと稜の母親はめったに家に帰ってこない。たぶんどこかの男の部屋に住んじゃってる。あたしはここ数ヶ月母親の顔を見ていないけど、母親はあたしがいない昼間、こっそりここに帰ってきて少ないお金を置き、あたしが帰ってくる前にまた男のところに戻る。たぶん、そこでは私のことなんか忘れてる。
 これが、あたしたちがこのマンションの8階に住んでるワケ。



2003-08-08 20:20:19公開 / 作者:憂理
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■作者からのメッセージ
某作者のマンガのタイトルを使わせてもらいました。
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