『この雨が止むまでは(短編)』作者:水彩えのぐ / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約2.6枚



「大嫌いよ」

「大嫌い」

「近寄らないで」



目の前の青年は悲しそうにわらった。罪悪感なんかわかなかった
彼を傷つける事なんかにためらいなんかなかった
だって大嫌いなんだもの。憎んでいるといっても過言じゃないわ


「そんなに僕が嫌い?」


人のいい笑みを浮かべて彼は言う
整った顔立ちでそれはとても綺麗だ。私なんかがかなわない位
大嫌いよ。貴方の顔を見るたびに吐き気がするわ
そう言っても彼の笑みは消えない。なんだかむしょうに腹が立ってきた。


「でも僕は君が好きだよ」


だから何?それで何が変わるの?
その願いがかなうとでも思っているの?
だったら貴方は破滅的な大馬鹿野郎ね
トウフの角に頭ぶつけて死んでしまえばいいんだわ


「ねえ?本当に君は僕が嫌いなんだよね?」


何度言わせれば気が済むのかしら。あなたこそ本当に馬鹿なんじゃないの?


「だったら君は何で泣いてるの?」


ああ、頬が冷たいと思ったら雨じゃなかったんだ
知らないわそんな理由。おかしいなんて言わせない
人間なんて矛盾を糧にして生きてるんだから
そう言ったら彼はぽかんとして本当におかしそうに笑った。


「ねえ」

「僕は君が好きだよ」


だからそれを言ってどうするというの?何がしたいの?
私に何を言わせたいの?私に何をさせたいの?
どさくさに紛れて近づかないでよ
一歩下がろうとすればすぐ後ろは白い壁。ああ畜生
ねえ私に逃げる道はもうないの?


「僕は君が好きだよ

 だから

 泣かないで」


そんなの私の勝手でしょう?
指図なんかしないで。命令なんかしないで
あなたにそんな権利無いんだから。抱きつかないで。気持ち悪い
離して。束縛する権利なんてあなたに無い
そうこうするうちに雨が降ってきた
外で立ち尽くすしかない私の体は冷えてくる
こうなったのもこいつのせいだ。だけど


接している彼の体温がとても暖かくて


不覚にも安心してしまって。むしょうにまた泣きたくなった。


ねえ。本当はわかってるよ。わかってる
この相反するこの気持ちの名前を
だけど、もう少し、この侵食される心を無視させて
あと少しの間だけ、せめてこの雨が止むまでは

あなたが大嫌いな私でいさせてください
2004-12-09 22:15:18公開 / 作者:水彩えのぐ
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■作者からのメッセージ
長編がありますが投稿してしまいました。
感想ご指南おまちしております
この作品に対する感想 - 昇順
読ませていただきました。詩ですね。自分的には短編小説というよりはむしろ詩だと感じました。詩としては結構感じるものがありました。主人公の少女は難しいお年頃ということでしか理解できない自分をお許し下さい(笑
2004-12-09 23:37:18【☆☆☆☆☆】影舞踊
はじめまして。卍丸と申します。読ませていただきました。揺れ動く女性心が簡潔に描かれていて、最後の一行が印象的でした。もう少し文章的に膨らみを持たせれば、更に良い作品に仕上がった事と思われます。ストレートに情感が伝わってくるところには好感が持てたのですが、改行を多用し過ぎている点が少し気になりました。今後のご執筆もぜひ頑張ってください。
2004-12-10 00:06:40【☆☆☆☆☆】卍丸
こういう微妙な心理がちょっと理解できないメイルマンです(笑)。もっと心情を具体的に多く書き出して、読み手にその心理の理解を深めさせて楽しませるか。もしくはある程度の設定を提示してその中での物語で揺れ動く心を表現するか。どちらかにしていただければ個人的にはもっと面白く読めたのかなと思います。
2004-12-10 21:38:45【☆☆☆☆☆】メイルマン
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